私、魔術師です   作:みえふぁ

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ローブより、私

 私も一応、他所のギルドなどへ出向くときは、基本的にローブを着ていきます。魔術師なので。

 しかし、ご存じの通り、ローブ姿は野暮ったい上にとても地味です。しかも、魔術師の正装でもあるため、着崩したり、装飾を増やすというのも好ましくないとされています。色を染め直すのもだめ。

 その上、動きにくい。急いで走っているときなど、この鬱陶しい裾を何度引きちぎってやろうと考えたか、分かりません。

 このローブを正装に指定した人間は、よほどセンスがなかったのでしょうね。感性を疑います。

 

 そのような服ですから、私は魔術師ギルド内では着崩しています。さすがにちょっと、ダサすぎるんですよねえ。

 初めは白い目で見られたものですが、割と早めに何も言われなくなりました。何なら着崩している人は、私以外にも数名いますからね。

 やっぱりみんなダサいと思ってるんですよ。変えましょうよこの服。こんなの着てるから、魔術師に胡散臭いイメージが定着するんですって。

 

 冒険者ギルドには、そもそもローブを着ていきません。あんなの着て魔物と戦おうなんて、正気ではない。

 ローブを着たまま悪魔討伐に向かう魔術師はちらほら見ますが、皆どこかで音を上げます。長距離の移動にも不向きです。

 お偉いさん方のごちゃごちゃした正装と違って、ばっと羽織って終わりという手軽さだけが、唯一の長所と言えるでしょう。

 

 しかし、魔術師として他所のギルドへ行くときには、さすがに着崩せません。仕事の相手に不誠実に思われることを想像すると、まあ、こんなのでも着た方がいいでしょうから。

 先日、乾燥魔術の関係で職工ギルドを訪れたときも、地味なローブを着て、大人しい顔をしていたわけです。

 

 ところが、名前をギルドの受付で名乗ると「あのエスメラさんですか?」と驚かれるではありませんか。

 「あの」とは、もちろんこの枠のことです。顔こそ売れていませんが、名前の方はここを通して知られているようでして。

 文章を通してしか私を知らない読者のイメージを崩さないよう、この日は結構気を遣って会話しました。昔、愛読していた魔導書の著者とお会いしたことがあったのですが、イメージと違って、勝手にショックを受けてしまった経験があるのです。

 

 こうなってくると、もうローブのダサさなんてどうだって良くなるというものです。なんと言ったって、私個人で十分目立っているのですから。ローブがなんだと言うのでしょう。

 今度からは、名札でも下げて他所のギルドを歩こうかしら。正装に名札が増えたところで、別に品性に欠くってこともないでしょうしねえ。

 (エスメラ)

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