私、魔術師です   作:みえふぁ

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海だ、水だ、何だ、これは

 やあ皆さん、ご機嫌いかがでしょう。私は今、港町ペレイラにてこれを書いております。潮風が気持ちいい。嘘です。私はどうも、あの磯の匂いが苦手なようです。

 地元の人の話によると、時期によって匂いは変化するものらしいので、タイミングが悪かったのかもしれません。

 

 ここへは、護衛依頼でやって来ました。例の如く、片道のみの護衛です。ちょうど遠くで観光でもしたい気分だったので、依頼を見つけてすぐに受けました。

 道中は大した危険もなく、無事到着。依頼主様も常識的な方でトラブルも起きず、実に穏やかな護衛でした。

 珍しく一度、魔物に襲われたりもしたのですが、実は私、護衛中に出くわす魔物が大好きなので、これも問題ない。

 

 倒した魔物の素材を剥ぎ取ることは、もちろん良くない行為です。護衛中に冒険者の都合で、依頼主を待たせることなどあってはいけませんから。

 つまり、素材をダメにしてしまっても構わないわけです。風刃で切り刻もうが、岩砲でペシャンコに圧し潰そうが、業火で黒焦げにしようが構わないのです。

 そのような燃やし放題の相手ですから、むしろ襲って来てくれないものかと、目を凝らして魔物を探しました。結果的には警戒をしているようなものなので、許されます。

 

 ですが、過去に一度、火のついたために暴れ狂い、依頼主の荷車へ突撃しかけた魔物もいたので、油断は禁物。

 そのときはそうしたのかって?これはマズいと焦った私は、必死に頭を回し、完璧な解決策を思いついたのです。高圧の水流を魔物に放てば、魔物はひるむし火も消える。非の打ちどころがありません。

 その魔物は消火を通り越し、陸上で溺れ死んでいました。荷車も濡れてしまって、いくつか商品がダメになり、弁償もさせられました。金欠の冒険者に、なんたる仕打ちでしょうか。

 

 さて、お話を戻します。港町ペレイラといえば、何と言っても海産物です。セハードで買おうとすれば、値札に書かれた数字の大きさに伸ばしかけた手を引っ込めることとなりますが、私は今、現地にいるのです。

 もう、安い安い。懐にも余裕があったので、色々なものを食べてきました。

 

 地元で愛されていそうな(店主さんが恐いお店は愛されているもの)居酒屋で、おいしい焼き貝をつまみに一杯飲んで、気分は最高です。

 しかしその後、港近くで漁師さんに勧められたわけの分からない何かを食べさせられました。思わず顔をしかめてしまいましたが、吐き出さなかっただけ良しとしましょう。「オエッ」くらいは言ったかもしれませんが、仕方ない。

 あれは結局、何だったのでしょう。明日、お腹を壊していないかが心配です。

 近頃は魔術による保存技術の普及のおかげで、よく知らない名前の食べ物が市場に並んでいるものですが。そのうち食卓に並んで、「あっ、お前は!」と名前が発覚するのかも。

 

 お土産は、気味の悪い形をしたものを無視し、無難なものをいくつか選ぶつもりです。漁師の助言?無視です。あのオッサンたちはアテにならない。

 ペレイラからセハードまでは数日かかりますが、第一級魔術師としての技術を以てすれば、腐らせずに持ち帰ることなど容易ですとも。

 買ったものを魔術で冷やし、転移で持ち帰ることだって朝飯前。こんな運搬の依頼を魔術師ギルドに依頼すれば高くつくでしょうが、私が私のためにする分にはタダです。

 明日も変なものを口にしないよう気を付けて、楽しんで来ようと思います。

 (エスメラ)

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