私、魔術師です   作:みえふぁ

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今後は気を付けます

 前回、「ギルドマスターが悪魔についての研究をしている」ということを書きました。実はあれ、まだ公表されていなかったものらしくて。日報の出た翌日にギルドマスターから呼び出され、大目玉を食らってしまいました。

 昔はともかく、最近はあまり呼び出されていなかったんだけどねえ。ちょっと久しぶりでした。

 まあそうして、カンカンに怒られ終えた後、ふとマスターが「一体いつ、君にこの話を明かしたのだろうか」と呟きました。

 

 いくら私とマスターに個人的な付き合いがあるといっても、研究の上では、私は完全に部外者です。その私が、ギルドマスターが隠れて行うような研究の内容を、そう簡単に聞けるはずがありません。

 私は「なんかマスターから直接こんな話聞いた気がするな」というぼんやりとした記憶のもと、あの文章を書きました。しかしマスターは、私に話したことはないと主張するのです。こうなると話は平行線を辿るばかりで、終わりが見えません。

 そんな中で、ちょっと神妙な面持ちのマスターが「まさか、資料か何かを盗み見たんじゃないだろうな」などと言ってきたものですから、私も少し焦り始めました。

  

 正直、私はわざわざ盗み見るほど研究に興味はありません。マスターも私がそういう人間だと知っているので、半信半疑な様子。

 若干気まずい空気が流れる室内で、隣で見守っていた職員さんが「先日飲みに行かれたときはどうされたのですか?」と尋ねてきました。

 

 言われて、そういやそんなことあったな、と二人揃って思い出しました。

 少し前に、ちょうど仕事を終えたマスターと出くわして、そのままマスターの家でお酒でも飲もう、という話になったのです。酒場だと、まあ、我らが魔術師ギルドマスターの可愛らしい外見では、無用なトラブルを招きかねないので。

 

 なぜ二人とも言われるまで忘れていたのかと言うと、その日はそれはもう、すごい量のお酒を飲んだからです。何かの貰い物だとかで、いくら飲んでも減らなさそうなくらいに用意されていたものですから、羽目を外してしまって。

 私は基本暇なので翌日中ずっと寝ていましたが、マスターは酷い顔色のまま仕事に出かけていきました。可哀そうに。

 

 マスターが酔った勢いでポロっと研究の内容を話し、私がそれを朧気に記憶していた、ということだったのでしょうね。「そういやそんなこともあったねえ」と笑い合っていると、真面目な顔をした職員さんに、2人揃ってお説教をもらってしまいました。反省です。

 酔った勢いで隠すべき話を漏らしてしまうマスターもマスターですし、本人に確認をとらずに日報へ載せてしまった私も私でした。

 

 どうやら私のせいで、もう少し先だったはずの研究発表を早めに行うことになったらしく。

 大部分は終わっているものの、仕上げを大急ぎで進めているらしくって、それはいやいや申し訳ない、と上辺だけで謝っていると「そう思うなら少しは手伝いなさい」と、作業に参加させられました。

 

 おかげで暇だったはずのその日、クタクタになって帰ることになりましたよ。私の不注意が原因ですし、結果として貴重な体験もできたのでしょうが……。当分書類は見たくありません。

 (エスメラ)

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