【完結】元ぼっちのTS魔法少女ちゃん、ダンジョン配信中に本性がバレて何故かバズってしまう   作:水品 奏多

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第十話 ゲームチェンジャー

「……んー、まだまだだね。

 そんなんじゃ、私すら倒せないよ?」

 

 次の日、秘匿07ダンジョンにて。

 

 仲よく地面に倒れ伏す俺たち三人と三匹の前で、もえさんがぶんぶんとロングソードを振る。

 

「全く、みんな怖がりすぎ。

 例え腕が吹き飛ぼうと、HPがゼロになろうとな~にも感じない、それがダンジョンなんだよ? あと数億歩くらいは踏み込んでこないと」

 

「そういわれても、怖いものは怖いんですっ」

 

 あまりに俺らが情けなかったのか、珍しく先生らしいことを言ってくるもえさん。

 蛍が若干涙目になりがら声を上げる。

 

 怖がりすぎ、か。

 確かにそうかもなあ。さっきももえさんが接近してきた時に本来の動きが出来ていなかった。もえさんの攻撃を、あるいは味方への誤射(フレンドリーファイア)を恐れて、全ての行動を一瞬躊躇してしまったのだ。

 

 でもやっぱりこれじゃだめだよなあ。今までは純粋な身体能力でやられているし、せめてスキルの一つくらいは使わせないと。

 

「風音、蛍。例のあれ、やろうぜ」

 

「いいね」「なになに? 面白そうな響きだね」「……まじですか?」

 

 楽しそうな風音とクロとは対照的に、不安そうに眉を寄せる蛍。夜の作戦会議の中でこの案が出た時、一番反対していたのが蛍だ。

 小さな彼女に勇気を持ってもらえるよう、優しく微笑みかける。

 

「ま、失敗しても死にゃしないんだ。

 気軽にやろうぜ?」

 

「……でももし私が失敗したら、二人の努力が水の泡です。

 二度目もありません」

 

 ぎゅっとステッキを握りしめ、蛍が震える声で零す。

  

 ……普段はあんなに強気な態度なのに肝心なところでは二の足を踏むんだなあ。

 はたしてそれにどんな事情があるか、それは分からない。ただ今は勇気を持ってもらわないとな、と適当に考えた煽りを口にする。

 

「その時はまた別の方法を試せばいいだろ?

 それとも蛍はたった一度の失敗で諦めちゃうよわよわな女の子なのか?」

 

「っ……いいでしょう。そこまで言うならやってあげますよ。

 失敗しても文句は言わないでくださいね?」

 

「だいじょぶ。

 わたしなんかいつも迷惑掛けてるのに、蓮花は何も言わない」

 

「……それは確かに」

 

 風音の言葉に得心したように頷く蛍。

 風音のそれも前とは違って本心から言っているようには感じられなくてーー軽やかな気分で二人の前に立った。

 

「……れんか、見ない間にまた何か変わったかい?」

 

「どうだろう。ま、心境の変化はあったな」

 

「そっか。……男子、三日合わざれば刮目してみよってやつかな?

 何にせよ、れんかがこんなに大きくなってくれて僕は嬉しいよ」 

 

「一体、何目線なんだ、それ?」

 

 そんなどこか懐かしいやり取りをする俺らの前で、もえさんがちゃきりとロングソードを下段横に構えた。

 

「作戦会議は終わったかな?

 じゃあ、はじめよっか」

 

「っ、魔法の風刃(マジカルウィンドカッター)」「魔法の火弾(マジカルファイアバレット)

 

 相変わらずすまじい速度で突っ込んでくるもえさん。

 すかさず俺と風音で魔法の弾幕を張り、もえさんがそれらを最小の足さばきや重心移動で避けながら突き進んでくる。

 ーーここまでは今まで通り。

 あとは、と蛍の方を見れば彼女は額を汗を浮かばせながら力強く頷いてみせた。

 

魔法の小流れ星(マジカルリトルシューティングスター)

 

魔法の風檻(マジカルウィンドジュエル)

 

 俺らの目の前、もえさんの進行方向上に現れる光の流れ星。

 それをもえさんが横によけると同時に、彼女の周囲を風の檻が覆う。ーー前に立っていた俺と共に。

 

「わあ、捕まえられちゃった。

 でもどうするのこれ? 絶体絶命ってやつじゃない?」

 

「こうするん、ですよっ」

 

 きょろきょろと楽しそうにあたりを見渡すもえさんに対し、魔法の火球(マジカルファイアボール)を発動しながら突っ込む。

 

 その無謀な行動に、もえさんは獰猛な笑みを浮かべた。

 

「あはっ、いいねっ。この私と接近戦しようって?」

 

「元々こっちの方が好きですからねっ」

 

 ごお、と横に振られたロングソードを慌ててバックステップで回避。ついでに火球をもえさんにぶつける軌道に乗せて追撃を防ぐ。

 それをこれまた横っ飛びで躱すもえさん。

 多分、今被弾覚悟で追撃してくることもできただろうに、こう見ると結構手加減してくれてたんだなあ。

 

 と、そんなこと思いながら魔法の火弾(マジカルファイアバレット)を発射。

 その合間を縫うように詰めてくるもえさんを再び魔法の火球(マジカルファイアボール)と共に迎撃する。

 

「うん、やっぱり君はそっちの方が似合ってるよ」

 

「そりゃあどうもっ」

 

 何かよく分からないことをいってくるもえさん。

 

 その彼女からとんでもない精度で放たれてくる攻撃をかわしながら、その視界を遮るように、あるいは後ろに飛ばして注意をそらすように縦横無尽に火球を動かして彼女と渡り合う。

 

 一手間違えれば、一瞬でも判断が遅れれば彼女の剣先が俺の喉元を引き裂く。彼女が俺の攻撃を避けてくれているからこそできる小康状態。

 そんな危機的状況なのに、何故か思考だけは冴えていた。まるで絶え間ない大河のような深い集中が続く。

 

「……なんか久しぶりだね、その表情」

 

 肩の上のクロがまたおかしな発言をした。

 久しぶり、か。俺は一体、どんな表情をしているんだろうなあ。

 

 とはいえ、元々身体能力に大きな隔たりがあるのは事実。

 次第にもえさんの動きに反応できなってきてーー今も火弾を躱したもえさんが突っ込んできた。

 火球は彼女の後方。今度こそ、本当の終わり。

 

 ーーでも一応ここまでこれた。あとは彼女次第。

 

「それじゃ、ばいばい蓮花ちゃん。

 ま、ゴブリンの次くらいには楽しかったかな?」

 

「っ」

 

 上機嫌に笑って剣を振るうもえさん。

 その刃が俺を吹っ飛ばさんと向かってきてーーぶつかる前に、俺の胸の真ん中から極小の光の線が飛び出してくる。

 作戦通り、蛍の魔法の光線(マジカルレイ)だ。

 

 うおおおお、完全に俺の体を貫いてやがる。 

 やっぱり分かってても怖いな、これっ。

 

 体に走るのは身がすくむような恐怖。

 それでも完全に意表を突けたはずだ、と目の前のもえさんを窺ってーー彼女の口角が上がっているのに気付いた。

 

「リフレクター」

 

「ぎゃっ」

 

 もえさんの胸の前に現れる六角形の青い盾。

 光の光線をそれにあたると同時に反射して、再び俺の体を貫くと共に多分後ろの蛍に被弾する。

 

 やっぱそう上手くはいかないよなあ。

 心の中に、失望に似たそれでもどこか充足感に満ちた感情が広がっていく。

 

 呆然とする俺たちの前で、もえさんがゆっくりと戦闘態勢を解いた。

 

「……本命はこれ、視覚外から魔法の光線(マジカルレイ)かあ。

 周囲の魔法の風檻(マジカルウィンドジュエル)はその目くらまし、蓮花ちゃんの接近戦はここ、蛍ちゃんが背中で完全に体で隠れる場所までの移動が目的。

 うん、いいと思うなっ。初めてパーティらしいところが出せたねっ」

 

「おおー」「やた」「……ふう、当たり前です」

 

 初めてもらえたお褒めの言葉に、大きく息を吐く三人。

 視界の端で俺たちを囲んでいた光の檻が消えていくのが見えた。

 

「丁度いいし、今日はここまでだね。

 お疲れさま。今回みたいのを今後も続けるように」

 

「「「はーい」」」

 

 もえさんがそう解散の合図を告げると共に、光の檻に遮られていた霧が急速にこちらに近づいてくるのが見えてーー

 

「れんかっ、何かが来るっ」

 

「みんな、周りに集まってっ」

 

 ーークロともえさんと同時に叫ぶ。

 

 でも完全に気を抜いていたせいで反応できなくて、勢いを増した霧に飲み込まれしまった。視界を覆うのは完全なる白。まるで濁流にのまれているかのような前後不覚の感覚に襲われる。

 

 

 やっべ。確か霧の中には不安定な空間があるんじゃなかったかっ。

 そんなことを思い出しているうちに、今度は一気に霧が晴れてーー気が付けば俺は洞窟のような場所にいた。

 四方を囲む茶色い土の壁。子天ノ内ダンジョンのように等間隔に設置された松明。

 

「れんか、大丈夫かい?」

 

「あ、ああなんとかな」

 

 肩の上に乗ったクロに声を掛けられ、慌てて腰のポーチからHPポーションを取り出して飲む。

 ここがどこかは分からないけど、とにかく今は周囲の状況を確認しねえと。

 二人の反応から察するに明らかなイレギュラーなのだ。最悪死んで脱出するにしても情報が多いに越したことはない。

 

魔法の火弾(マジカルファイアバレット)

 

「!?」

 

 と、何やら聞き覚えのある声と共に現れたのは見覚えのある火の弾。

 慌てて横にずれて躱せばーーちりりとした()が肌を焦がした。

 

「おおー、ほんとにいるじゃん、俺」

 

 同時に洞窟の奥より一人の少女が現れる。

 赤いドレス服に身を包み、深紅の髪をポニーテールに結んだ少女。

 

「は?」

 

 俺、伊奈川蓮花とうり二つな少女がそこにいた。

 

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