【完結】元ぼっちのTS魔法少女ちゃん、ダンジョン配信中に本性がバレて何故かバズってしまう   作:水品 奏多

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第五話 願い

 台座から剣を取り、檻の中のスライムに向ける。

 はてさてどんな職業が出る事やら。

 

「あ、ちょっと待って。

 先にステータスを確認してみない? 何かあるかもよ?」

 

「あー、確かにな」

 

 万が一があるかもしれないか。なにせTSとしゃべるという猫という超特異事例に遭遇してるのだから。

 そんな軽い気持ちで教えられた呪文を唱える。

 

「ステータスオープン」

 

_______________

 

 伊奈川 蓮花 Lv1   HP 10/10 MP 30/30

  職業 『魔法少女(炎)Lv1』 

  スキル 『魔法の火弾(マジカルファイアバレット)Lv1』『魔法の火球(マジカルファイアボール)Lv1』 

  装備 『魔法少女(炎)セット』(OFF)【固定】

  使い魔 クロ(マジカルキャット)(OFF)

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 はたして、眼下に浮かび上がったのは半透明のプレートだった。

 使い魔という項目を除けば、事前説明通りのステータスボード、つまり俺はモンスターを倒していないのに職業やらを持っていたことになる。

 

 試しにスライムを剣で刺して倒してみると、体が煙のように消えて小さな魔石を落とすと同時

 ______________

 

 経験値を獲得しました。

 ______________

 

 との表示。

 ついで魔法少女姿に変身してみれば、装備欄には『魔法少女(炎)セット』(ON)の文字。

 これは……。

 

「クロ、どういうことだと思う?

 魔法少女はダンジョン産の能力なのか?」

 

「……ごめん分からないや。

 ただダンジョン側にはちゃんと認識されているようだし、何か関係があるのは間違いないだろうね。

 あ、でもちょっと待って」

 

 未だ状況が飲み込めぬ内、地面に落ちた魔石に近づいてくクロ。

 そうしてーーぱっくりと食べてしまった。

 

「な、何やってんだクロ? 

 そこまで空いてたのか? ほら帰りに何か買ってやるから……」

 

「……うん、やっぱりだ。僕はこの感覚を知ってる。

 今はまだ”繋がり”が弱いけど、モンスターを倒してレベルアップしていけば色々分かってくると思う。

 僕たちは間違いじゃなかったんだよ、れんか。

 ……それと僕に食事は必要ないよ」

 

 クロはぺっと魔石を吐き、呆れたように目を細める。

 

 繋がり、ねえ。またよく分からないことが増えたな。

 まあでもやることは変わらないわけか。

 

「それじゃあさっさとダンジョンの方に行こうぜ。

 スキルの検証は戦いながらでも出来るだろ」

 

「うん、そうだね。引き続きよろしく頼むよ、れんか」

 

 

 変身を解除して受付に戻り、何かわかるかもと一応職業の詳しい情報を記入した紙を提出する。

 

「お待たせしました。こちらがお客様の冒険者カードとなります。

 再発行には別途料金が必要となります。紛失にはご注意ください。またここの一・二階層は非常に厄介な敵が出現しますので、護衛などを雇うことをお勧めします。その場合はあそこの掲示板をご利用ください。

 それでは、良き冒険者ライフを」

 

 等々色んな説明を聞いた後、職員から一枚のカードを渡される。

 ブロンズ色のそれに載っているのは俺の名前と顔写真、そして銅を示すBの文字。

 ダンジョンに潜る冒険者たちはその能力と実績に応じて、下から『(ブロンズ)』『(シルバー)』『(ゴールド)』『白金(プラチナ)』の四つのランクに分けられている。

 新米の冒険者たる俺はブロンズランクからスタートってわけだ。

 くぅ、やっぱりこういうシステムは男なら憧れるよなあ。

 

「蓮花ちゃんもカード発行終わったところ?」

 

「うえ?」

 

 カードを見ながらにやにや笑っていると、いつの間にかクラスメートの久志本莉々さんが手元を覗き込むように立っていた。

 綺麗な茶色の髪がさらさらと頬に当たる。

 ち、近いなあ。これも役得ってやつなのか? 女子とこんなに至近距離で接したことないから、正直全く落ち着かないんだけど……。

 

「そうだ。蓮花ちゃんが良かったらさ、今日は私と一緒に潜ってみない? 

 その、ここの一階層に二階層はちょっと特殊で、誰かと一緒に攻略した方がいいと思うんだ~」

 

「う、うん。私も知ってる。

 でもそれだと久志本さんも危ないんじゃ……?」

 

「私は大丈夫だよ~。こう見えてシルバーランクなんだ。

 上の階のモンスターなんて相手にならないよ」

 

 久志本さんが胸元に掛けられた銀色のカードを掲げる。

 

 彼女の提案は正直かなりありがたい話であった。

 ここは地下一階層から地下五階層まで続く複数階層型のダンジョンで、その上部一・二階層はネットで見たようにエ〇トラップの宝庫。俺一人で進むとすれば大惨事は免れなかっただろうし、護衛を雇うにも別途お金が必要だ。

 ただ問題は俺のせいで久志本さんに迷惑がかかる上に、そういう目に遭ってしまうかもしれないことでーー

 

「あれ? 可愛い女の子が酷い目にあうのが見たいんじゃないのかい?」

 

 クロが不思議そうに首を傾ける。

 

 うっさい、よく考えたら知り合いがそういう目にあうのは嫌だったんだよ。

 護衛は誰かほかの男(ここ重要)の冒険者に頼めばいいし、うーんなんて断ろうかなあ……。

 

「……あの、実はね。私の友達みんなそういうトラップに引っかかちゃって、そのせいで冒険者を引退しちゃったんだ。

 だから蓮花ちゃんには辛い思いはしてほしくない、ここが楽しい場所って知ってほしいんだ。迷惑、だったかな」

 

「ぐぅ」

 

 そう恐る恐る聞いてくる彼女の湿った瞳に捕らえられる。

 ああ断ったら傷つけちゃうなとか、みんなやめちゃったから俺を誘ってるのかなあ、とかそんなことが頭をよぎってーー

 

「そ、それじゃあお願いしよっかな。

 お、私も一人だと不安だったんだ」

 

「よかった~。それじゃ、大船に乗った気持ちでどしーんと構えててね」

 

 ーー気付けば了承していた。

 久志本さんがぱあっと花が咲くように笑う。

 

 くう、何たる不甲斐なさよ。それなら追加で他の冒険者を雇おうと思ったらーー事態は思わぬ方向に向かっていった。

 

 

「良かった。久志本さんと一緒なら安心ですね」

 

 と受付の人にそんなこと言われ、ダンジョン内部ではーー

 

「あそこにトラップがあるよ~。蓮花ちゃんは下がってて」

 

 遺跡内部のような石の壁に囲まれた道を進む俺たち。

 久志本さんが足を止め、5mくらい前の床に向かって魔石を投げると、ぐしゃああという気持ち悪い音共に無数の緑色の触手が両壁からせりあがってくる。

 さりてと触手はうねうねと体をくねられるだけで、俺たちにその凶先が届くことはない。

 どうやら久志本さんはトラップの位置を完全に把握しているようで、こうして事前に安全な距離で作動させてしまうのだ。しかも一階層は触手以外の敵がいないから、俺がお荷物であることを除けばめちゃくちゃ平穏な冒険だった。

 

「それじゃあ今のうちに攻撃しちゃおっか」

 

「う、うん……変身っ」

 

 魔法少女姿に変身した後、魔法のステッキを触手の群れに向け、魔法の火弾(マジカルファイアバレット)を発動させる。

 

 _______________

 

 魔法の火弾(マジカルファイアバレット)Lv1 消費MP1

 魔法のステッキから炎の弾丸を放つ。

 一撃の威力は低いが、連射性能は高い。

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 説明の通りステッキ先端の赤い宝石から射出され、触手を着火させる高速の炎の弾。五発ほど打ち込んだところで触手全体に炎が広がり、やがてぎゅおおおおおという断末魔と共にその姿は消滅した。

 ごとり、と小さな魔石がその亡骸があった場所に落ちる。

 

「よしっ」

 

「きゃーっ、やっぱりかわいいよっ、蓮花ちゃん。

 どうせならずっとその姿でいたらいいのにっ」

 

「か、解除。こんな恥ずかしい姿、絶対嫌だよ」

 

「えーもったいないよ~? 女の子なら可愛く着飾らないと。

 蓮花ちゃんならちゃんとすれば男の子にも引く手あまただよ? あ、勿論そのままでも十分可愛いけどね」

 

「い、いや本当に大丈夫。特に男にモテるのはちょっと……」

 

「ふーん、そうなんだあ?」

 

 久志本さんにぐいぐいと抱きしめられながら、TSホモ展開を完全に否定する。

 

 あー、魔法を使うのにこの魔法少女衣装が必須じゃなければなあ。

 変身のたびに抱き着かれて、しかも色々当たるもんだから、こっちとしては気が気じゃないんよ……。

 

「そのわりには鼻の下を伸ばしているように見えたけど?」

 

 うっせ。裏切者は黙ってろ、と久志本さんの頭の上に座るクロを睨む。

 どうやらクロはダンジョンの中でなら自由に顕現できるみたいで、(なぜか声は聞こえなかった)こうしているとき以外は久志本さんに抱かれていたのだ。かわいい~、と目をハートマークにしていた彼女の胸に。

 

 ……悲しきかな。彼女は単に可愛いものが好きというそれだけなのである。

 だから決して叶わぬ恋などするんじゃないぞ、俺?

 

 とまあこんな感じで探索は順調に進み、二階層からは追加で服を溶かすスライムが出てきたりしたけどーー

 

「あいつは私がやるから心配しないで」

 

 と、何やら私怨が籠ってそうな言葉と共に巨大な雷が落ちて、瞬時に丸焦げにされていた。基本一本道だから奇襲の心配もない。

 そうして開始から2時間ほど経ったころーー

 

「三階層到着、だね~」

 

「お、おおー」

 

 階層を繋ぐ階段を下りて、俺たちは三階層へと足を踏み入れていた。

 

 視界に広がるのは、晴れ渡った青空とどこまでも続く原っぱ、そして手前のセーフポイントで群がる人だかり。

 そこは、地中なのに空があるという不思議パワーに満ちた場所だった。

 ついでにここからは普通のモンスターが出現するから、子天ノ内ダンジョンの冒険者たちにとってはここが本当の一階層という大方の認識なのだとか。

 

「せ、セーフポイントの中には結構人がいるんだね……」

 

「そうだよ~。全然いなかった一・二階層が異常なんだって」

 

 人類の安全圏として、各階層入り口に設置されているセーフポイント。

 檻にぐるりと囲まれて出来たそこにはテントやら露店が立ち並び、冒険者たちがのどかに歩いていた。

 広さとしては体育館くらいだろうか。きょろきょろと中を見渡しながら進み、中央に鎮座する青色の宝玉ーー転移の宝玉に触れる。

 

 転移の宝玉。それは地上と各階層の入り口に存在し、階層間のワープを可能にする不思議アイテムだ。

 使用方法はいたってシンプル、どれかに触れながら移動先の宝玉をイメージすればいい。そうしたらあら不思議、イメージした宝玉の前に立っているらしい。

 ただし転移先の宝玉は一度触ったことのある宝玉に限られるから、新しい階層に来た時はこうして宝玉に触るのが大事とのこと。

 

「よし、これで直接ここに来れるようになったね~。

 お疲れ様、蓮花ちゃん。ごめんね、なんかでしゃばってるみたいになっちゃって……」

 

「う、ううん、そんなことない。楽しかった。

 久志本さんがいなかったらどうなっていたか分からないし……本当にありがとう」

 

 あははと頬をかく久志本さんに、ぺこりと頭を下げる。

 

 実際俺がやったのは遠くから魔法で攻撃するのと、久志本さんの話に相槌を返すことくらい。(それでも話題が尽きなかったのだから、流石のコミュ力だ)

 まあ確かに最初の冒険でこれかいっという思いはあるけど、善意でやってくれたことにケチは付けたくなかった。

 

「そっか。それなら良かった~。

 ちょっと心配だったんだ。蓮花ちゃん、口数少なかったからもしかして怒ってるのかな~て」

 

「あ、う。……頑張る」

 

「ふふ、頑張るってなにそれっ」

 

 違うんだこれが最大値なんだよっ、という俺の言葉に久志本さんがくすくすと笑う。

 ……うん、幸せなら全部OKです。

 

「それで、蓮花ちゃんはこれからどうする予定~?

 私は上に用事があるから、別の行動になっちゃうかもだけど……」

 

「あ、うん大丈夫。

 ちょっと一人でやってみたいと思ってたところだから……」

 

「おっけー。それじゃあここでお別れだね。

 蓮花ちゃんにクロちゃんまたね~。今度はちゃんと潜ろうねっ」

 

「う、うんまた」

 

 ひらひらと手を振って、あっさり去っていく久志本さん。

 

 今度、か……これは次の予定が出来たと思っていい感じ?

 よっしゃあ!!!

 

「……あ、そうそう。今回の冒険で一つ、確信したことがあるんだ。

 聞いてくれるかい?」

 

 心の中で喜びを噛みしめていると、久志本さんから解放されたクロがゆっくりと歩いてやってくる。

 

「お、早いな。元に戻る方法でも分かったのか?」

 

「いいや、そうじゃないさ。

 ほら前に言ったでしょ、他の魔法少女がいるかもしれないって。その確信が持てたんだよ」

 

「へえ、それで? どこにいるんだ?」

 

「残念だけど詳しいことは分からない。どこにいるのかも、どんな姿なのかも。

 だからね、れんか。

 君には人気ダンジョン配信者として名を馳せて、他の魔法少女たちの道標になってほしいんだ」

 

 どこか申し訳なそうに、けれど強い意志を灯した声音でクロはそう言った。

 

 

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