あくまで原作沿いではあるけど、原作で描写されていないところを書けるといいなぁ。
東京ブレイドの講演が千秋楽を迎え、アクアの予定は当分の間無くなった。
いつも何かに追われているように精力的に活動しているイメージのアクアだったが、最近は燃え尽きたような様子だ。
これが俗に言う燃え尽き症候群だろうか?
ココアを注いだマグカップに口をつけて、アクアをチラッと見る。
いつものアクアなら、この程度の視線でも察知して視線が一瞬こっちを向くか、纏っている感情の動きが変わる。
しかし、今はソファーの上でただ虚空を見つめてぼーっとしており、何かを考えているようだが、行動に移すほどの気力がない...という様子だ。
あくまで素人の推測なのでこれがどこまであってるのかはわからない。
本当は何も考えずボーっとしているだけかもしれないし、思考回路を働かせすぎて体の動きや目の動きが停止しているのかもしれない。
時折儚げにつく溜め息は、アクアのファンにとって目がハートになって戻ってこれないほどの威力を持つだろう。
物陰でアクアを観察している重曹先輩なんて特にそうだ。
目がハートって程ではないが身体から溢れ出るハートや感情の高ぶりですぐにわかる。これは完全にアクアのイケメンブレスにやられている。
「アクアって今何か悩んでるのかな〜?儚げな様子もカッコ良すぎる〜ッ///」
小声だけどギリギリ聞こえるんですよ、重曹先輩。というか貴方は全肯定ボットか何かで?恋は盲目とは正にこの事か...。
儚げなため息なら私だってできるよー。
特に意味があるわけではないが態とらしく重曹先輩の前で溜息をつくも、食いつかずにアクアを見つめている始末。
ま、重曹先輩のアクア熱はいまに始まった事じゃないか。
何故かホットで作ってしまったココアをちょびちょび飲みながら私もアクア観察の会に参加する。
事務所内にいる二人の少女が一人の少年に熱い視線を送る様子...これはどう見ても数カット後に修羅場の予感...!?
なんてこともなく、打ち合わせが終わったルビーとMEMちょとミヤコさんが戻ってきてこの一室内の男女比は大きく偏った。
この文面だけなら、一部の殿方たちが悔しさの血涙を流す事だろう。苺プロダクションは腐っても芸能事務所、関係のない事務員が複数いても顔面偏差値は早々落ちない。
「魂の抜けた顔しちゃってからに...。あ、アクアも宮崎のロケ行く?」
「宮崎ってMVのロケ...だったか」
「うん、どうせ暇でしょ?【東ブレ】終わって“無職”だし」
「別に辞めてはないし学生だし」
魂抜けたアクア...抜けアクアはルビーの提案に反応し、言葉を返す。目線だけ向けた姿勢で、だらし無さが目立つ。
ホント、何があったんだろ。
アクアのその様子を抜きにしても星野兄妹の視線が交差する様子は一枚絵のように美しい。
重曹先輩ではないが、私ですらもそう思ってしまう。顔が良いってすごいなぁ...。
「舞台の慰安も兼ねてって先輩が」
「宮崎か...」
いつのまにかルビーの後ろに移動していた重曹先輩。この短い間にどんな移動方法を...?
重曹先輩はこちらに背を向けているが、そわそわした様子でアクアの方をチラチラ見ている。
近くにいたMEMちょさんは重曹先輩の存在に気付いてギョッとしている。
そうなりますよね、普通。私だって知らないうちにすぐそばに人が居たらびっくりしますもん。
それにしても宮崎か。
確か芸能関連のものを司る荒立神社っていうのがあったな。そこは必ず寄ることになるんじゃなかろうか。
観光としては照葉大吊橋とか?吊橋としては最大級の高さを誇る...だっけか。
そういえば一ヶ月前に友達が宮崎旅行行った時の話で高千穂神社を勧めてた気がする。
でも縁結びだから芸能人からしたら微妙かも。
私がそんなどうでも良いことを考えていると、しばらくの沈黙を経てアクアが結論を出した。
重曹先輩のそれはもはやチラ見ではなくガン見だ。ちょっと微笑ましいね。
「そうだな、行くか」
その一言を聞いた瞬間、重曹先輩の表情が明るくなる。
先輩の後ろにいくつものライトがセットされてるんじゃないかと疑うほど明るい。
ここまで明るいと[私、アクアと一緒に旅行行きたい!]って言ってるようなものだ。
やはり、女優とはいえ年頃の少女ということなんだよな。実に可愛らしいことで何よりでございます。
「今回は二泊三日の長期滞在よ!準備とかできてるの?キャリーケースとか持ってる?」
重曹先輩は先程とは打って変わって水を得た魚のように活き活きとしている。
MEMちょさん、そろそろ再起動の方をお願いします。
やっと首を動かしたアクアはある方向へ視線を向けた。
その先には哀愁漂う様子で端っこに倒れているキャリーケースがあった。
あれ良さそう。
「いや、事務所に転がってるの使うから良い」
アクアも同じ考えだったようだが、重曹先輩は違う考えのようだ。
「そんなのダメよ!役者は地方ロケも多い!アイドル活動にも必需品!キャリーケースは私達芸能人の相棒よ!!」
いきなり大声出して喉痛めないと良いけどなぁ。あとで龍◯散渡しとこうかな。
「まぁアンタは右も左もわからないだろうし...私も午後は“たまたまオフ”だし?」
何か今「たまたまオフ」の部分を強調していたが気のせいだろうか?
「この地方ロケのベテランが直々に選んであげても...」
「いや、今日はあかねと約束あるから」
おっと、ドンマイ先輩、次があるさ。
「じゃあ明日!!それもダメなら明後日もオフだけど!?」
「オフばっかじゃん」
引くに引けなくなった重曹先輩は自分にとってもダメージになるようなことを言ってまでなんとかアクアとの予定を取り付けようと必死になっている。
これが青春ってやつなんだね。
「じゃあ、明日」
そう言ってアクアは事務所から出て行った。
あかねさんとの恋愛模様はどうなっているんだろうか?
私としては両者幸せならどんな感じでも良いんだけどね。
「あかねと約束......」
折角アクアとの約束を取り付けられたというのに重曹先輩はアクアの現彼女との約束の事を聞いて落ち込んでしまっている。
MEMちょさんは...まだ固まってるからダメだ...。私がフォローしなきゃ。
「有馬先輩、これはいつものアリバイ作りですよ。番組上彼氏彼女って事になってますし」
「別に分かってるわよ。でも“番組が終わってから結構経つ”じゃない。そろそろ“番組への義理も果たした頃”だと思うのよね...」
「それもそうですね」
「いつ...別れるんだろう?」
「まぁ、芸能人とはいえ学生の恋愛はそう長続きしないって言いますし、もうそろそろなんじゃないんでしょうか?」
「...そう、よね」
「ええ!今は待ちましょう!あっ、そうだ。有馬先輩、こちらをどうぞ!」
「何かしら?飴?...むぐ....、まず....」
「先程大声を出されていたようだったので一応ケアが必要ですよねって」
「あぁうん、ありがとね...」
「いえいえー♪」
重曹先輩の気分の落ち込みが若干酷くなったのはなんでだろう?
ま、ほっとけば治るでしょ。
それよりMEMちょさん起こさないと!
「あのー!MEMちょさーん!!大丈夫ですかー!!!」
体を揺することなく肩を軽く叩いて呼びかけること20秒ほど。
「はっ!?私は何を!」
「良かった、再起動成功」
「あれ?ルルちゃん?アクアくんは一体どこに...」
「アクアなら先程事務所を出ていかれましたよ。あかねさんとの約束だそうで、そして私はMEMちょさんを起こすためにこうして呼びかけていたわけです」
「もしかして私、気絶してた...?」
「はい、人って立ったまま気絶できるんだなって勉強になりましたよ」
「そっか...」
「MEMちょさん...」
「何かな?」
「最近しっかり眠れてます?」
「えっ...とぉ...」
「しっかり休まないとダメですよ。やることがたくさんあるとはいえ貴方はアイドルなんですから。倒れてしまってはファンが悲しみます、もちろん私たちもですけど」
「あはは...そうだね。心配してくれてありがとね」
アラサーって無理が効かなくなってくるらしいですからねぇ...。
「ん?今何か言ったかな?」
「いきなりどうしたんですか?」
「気のせいかぁ、そっか。ごめんね、なんでもないよ」
ウチのプロダクションに限らず私の知り合いって勘が鋭い人多すぎませんかね?
え?気のせい?
そんなものなのかなー?
そうそう、その慰安旅行を兼ねた催しに何故か私も同行することになった。
未だになんで?っていう気持ちが強いけど給料が出るとなるとついていくしか選択肢はないだろう。
これを仕事として出してきたミヤコさんの意図は不明だが、当日を楽しみにしておこう。
最初から最後までの巻を買わない人っていますよね?私は8巻から11巻買いました。
アニメも含めて有馬さんかわいいっすね。