重曹先輩の気持ちがダダ下がりになった出来事の少し後、私のバイトとしての勤務時間が終わった。
その日は何故かお腹の空きが凄かったので近くのカフェに寄ることにした。
メニューの値段の関係上、普段はこんな場所には行かない。
基本的にスーパーで何かしらのお惣菜を買って家でパーティーなのだが、たまに逆らえない食欲ってあるじゃん?
え?太るって?
...人が食べ物で太るなんて迷信でしょ。
私どれだけ食べても太らないよ?
喫茶《ヴェルサイユ》、名前が仰々しい事で有名な茶店。名前の割に良心的な値段で量も多い。
どこかに似たコンセプトで営業している喫茶店があるがそこはまだ行ったことがない。
喫茶店の定番メニューのナポリタンとカレーとオムライスに舌鼓を打つ。味も凄くいい。
食べてる間、周囲から興味や恋慕といった複雑な感情や思考が混ざった視線を受けるが知ったこっちゃ無い。
今私は食べることに忙しいのだ。邪魔しないでもらおう。
10分ほどして私の目の前にあった料理は全て私の消化器官に収められた。
ほわ〜、満足しました〜♡
さて、と。
会計を済ませて店から出ようとして席から経とうとしたら気になる男女一組が入ってきた。
男女ともに顔が整っていて芸能人オーラは無い...隠せているが、その顔は私の知っている人だった。
(あかねさんとアクアだ。なかなかいい雰囲気...でも無いな。あれほんとにカップル?なんか男女の友達って感じしかないんだけど...)
距離感は一定の距離を保っていて、あかねさんは楽しそうであるが恋人によく見られる感情や雰囲気が見られない。
人様の恋愛事情に首は突っ込みたく無いが、これだけは言いたかった。
パシャっていう撮影音がしたのでどこかで盗撮でもされたかとテーブルから視線をあげて音のした方に目を向けるとアクアがポーズのとったあかねさんを撮っていた。
(なんだ、それっぽいことはやってるのね。楽しそうに会話してるし、危惧するほどでは無いのかな?...ん??)
二人の会話は聞こえないが、比較的感情が見取りやすいあかねさんを見ていると、唐突に雰囲気が変わったのが伝わってくる。
(急に温度下がったな。アクアがノンデリ発言でもしたのかな?あかねさんの感情が暗くなったし...もしかして別れ話?いや、流石にそれは無いか。恋愛未経験の私にはわからないなー...)
二人の間に神妙な空気が流れ、そのまま店から出ていく。私は好奇心が勝ったので会計を済ませて急いで店を出た。
人が尾行に気付く距離や視線の熱量、歩く速度を考慮して二人を尾行する。
この特殊な目を使って幼少期の頃探偵に憧れて修練した技術だ。
興味を周囲に向けることでストーキングだと思わせない技術、ある意味これも演技の一種だったりしてね。
こうして役者カップルを騙せているんだから私みたいな素人としては上出来じゃない?
気付けば二人は歩道橋に上がっていて、あかねさんがアクアに後ろから抱きついていた。
やっぱり美男美女のこういう光景って良いよね〜。バックが夕焼け空だから余計に美しく見えるよ。この光景を写真として保存したいな、しないけど。肖像権の侵害だし。
(ん?今またあかねさんから嫌な感じがしたな。これは戦慄...?SAN値減少的なものの気がするなぁ。何か恐ろしいことにでも気づいたのか?もしかしてアクアの性癖がやばかったとかか?知りたくは無いな〜...。よし、帰ろう)
これ以上はお二人の事情を知るわけには行かないため、退散することにした。
アクアの性癖なんて知りたくないし...。
あ、そうだ。
スーパーで菓子パンでも買ってこーっと。
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別の日
自宅から事務所に向かう道で私は非常に気色悪い人とすれ違った。
容姿はとても良い方だと思うんだけど、彼からこぼれ出ている汚泥のようなヘドロのような汚染しきっているドロドロの感情が、私に精神的負荷をかける。
悪感情でえずくなんて何年ぶりだろうか。
すっかり悪感情に慣れたかと思っていたようだがそうでも無かった...いや、上には上がいた。それだけのことだろう。
しかし、あの感じで隠しているのであれば解放された時私は気絶せずにいられるのだろうか。
私は振り返って悪感情の残留をしっかり目に焼き付ける。次こんな感情を見た時、すぐ防衛行動や逃げに徹せられるように。
...あの金髪の人、微妙にだけど星野兄妹と似てる部分があったような。
ま、気のせいか。
ストックは残り3話...。