やっぱりストックが溜まる速度おっそいです。
書籍を読むと自分の練度の低さがよく分かります。
でもそんな自分の書き方...自分は好きです。
「あ、皆さん。先程新曲が届いたので確認の方よろしくお願いします」
そう言いながら私はパスワードの書かれた紙をルビーに渡した。言わずもがな届いたのは新生B小町の新曲だ。
ルビーが別のパソコンでパスワードを入力して新曲の再生ボタンを押したのを尻目に聞き耳を立てながら業務を進める。
それにしても新曲には仮歌が付いているのだが、歌声が完成されたものでそのまま出しても間違いなく売れるようなクオリティであり、これをうちのアイドルに歌わせてクオリティがどれくらい下がるのかと思うとなんとも言えない微妙な感じである。
「わーっ!ヒムラさんの歌うっま!」
「仮歌で十分商業クオリティだねぇ!」
ルビーとMEMさんが口々に言う。表情は笑顔でありまさに絶賛している。こういう輝くような表情のできる彼女らは紛れもなくアイドルだ。笑顔が全てというわけでは無いが、そう言っても良いほどにファンを魅了する笑顔という武器は重要だということだ。
そこで表情を暗く一変させて重曹先輩がため息を吐く。
「これからこの曲を“アンタ達の歌声で汚す”と思うと申し訳なさしか無いわね」
「今日も辛辣だね、せんぱい」
辛辣というか事実というか...。
B小町の中で一番歌が上手いのは重曹先輩だ。
比べてみるとこんな感じ。
[重曹先輩>>MEMちょ>>>ルビー]
ルビーだけは歌声が微妙なのだ。
歌が下手というわけでは無いんだが、決して上手いわけでは無い。ある意味中途半端な出来の為、残念な感じが拭えないのだ。正直、アイドル志望でもなかった重曹先輩が一番上手いというのも皮肉なものだと思う。
「大丈夫大丈夫!“音源はキューベースやプロツールスで調整しまくる”し、“音源の歌でもそこそこ聞ける”ものになるよ!」
「言ってて悲しくならないの...?」
MEMさんのフォローになっているか怪しいものに重曹先輩が呆れ、再びため息を吐く。重曹先輩、溜息自体は別に良いですけど吐きすぎは幸運が逃げますよー。
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そうして少しの時が過ぎて、遂にMV撮影と慰安旅行を兼ねた宮崎出張の日が訪れた。余談だが、重曹先輩とアクアを追跡していた際に私もスーツケースを新調した。アクアが買ったものよりも一回り大きく、それなりに重量のあるものだが力がそれなりにあると自負している私にとってフル積載でも問題ない重さだった。
滞在の日程から考えて荷物は結構少なく、スーツケース内に余剰スペースが大幅にできた。予算は多めに持ってきているので土産でも詰め込もうかなとも思っている。
メールに記載されていた待ち合わせ場所に時刻よりも1時間早く到着した。結果的に飛行機の出発時刻からは2時間30分も余裕ができてしまっているが、余裕に余裕を重ねるのは不測の事態に備えるためでもある。とはいえ今回は人数も少ない方なのでアクシデントが起きるとは考えにくいのだが、それとは別に何か引っかかるものがある。
それがなんなのか思い出せないが、とにかく心構えはしておこう。
-待ち合わせ時刻40分前-
以前の失態を繰り返さない為なのか、重曹先輩が一番早かった。
「あら?やっぱりルルってこういうのは早いのね」
「おはようございます、有馬先輩。調子はどうです?」
「ふふん、バッチリよ!なんせ今日は...ふふふっ♪」
「愛しのアクアきゅんと宮崎旅行ですもんね」
「ちょっ!どこにアイツがいるのか分からないのにそういう事は言わないのっ!」
重曹先輩が顔を赤くして私の口を手で塞ぐ。
「おっと、それは失礼しましたー♪」
私はすぐにそれをどかしてティッシュ並みに軽い謝罪をした。
「それでなんですけど...」
「な、なによ...」
「この旅行をハネムーンにする勢いで攻めちゃうっていうのはどうですかねー?」
「ハ、ハネムーンって...そんなの、そんなのっ...////」
私としてはおふざけ100%だったのだが重曹先輩はそれを想像してしまったらしく顔が赤くなる。いやー、青春だねー♪
「って、それ略奪愛じゃないのっ!」
「そうですねぇ。でも場合によっちゃ、ありなんじゃないんですか?」
「それは...。いや、流石に無いわね」
えー?略奪愛って結構ポピュラーじゃないかなー?
でもまぁ、このやり取りで重曹先輩の調子が良いことは理解できた。後はミヤコさんと星野兄妹とMEMさんだね。
-待ち合わせ時刻30分前-
次に到着したのがMEMさんだった。
「おぉ〜、かなちゃんにルルちゃん早いね」
「おはよう、MEM」
「おはようございます、MEMさん。体調の方は万全ですか?」
「うん!しっかり睡眠とったから元気100倍って感じだね」
「それは良かったです♪」
「アンタってホントMEMに対しては丁寧よね〜。その違いってなんなのかしら?」
「うーん...威厳?」
「はっ倒すわよ」
「ごめんなさいです...」
[ワイワイ楽しく待機中]
-待ち合わせ時刻25分前-
重曹先輩と小声でギャーギャー騒ぎながら待っていると、次に到着したのが星野兄妹とミヤコさんだった。
こう一緒に来るのは予想できるのだが、誰から声をかけるかというとやはり...
「おはようございます、社長。本日から数日間、お世話になります」
「ルル、いつも言ってるけどそんな畏まらなくても良いわ」
「いえ、雇用主に対してそれはちょっと...」
「はぁ、なら社長命令。これでいいかしら?」
「お手数お掛けします...。分かりました、しゃちっ......ミヤコさん」
こんなやりとりがあったり。
あとは...
「あ、この後もう一人くるから」
「アクアの友達?」
「まぁ、似たようなもんだな」
「へー...」
「ルル、なんだその顔は?」
「いやぁ...アクアって友達いたんだなぁって」
「は?」
「ごめんごめん!冗談だって!そんなピキらないでよ〜♪」
「ルルって結構変わってるよね...」
「んな心外なっ!?」
ルビーだって結構変わり者でしょうよ。
というか芸能界にいるってだけで十分変わり者だよみんな。
-待ち合わせ時刻15分前-
アクアの言ってたもう一人って誰だろう...?
「来たな」
アクアがそう呟いたのを聞き取って視線の先を見た途端、私は固まった。
「お邪魔します...」
「「......」」
なんとアクアが誘ったのは、『今ガチ』で出来た彼女さんである『黒川あかね』だった。
私と重曹先輩が数瞬硬直した。どちらも似たような表情を浮かべていただろう。感情は全く別だが。
「なんで部外者が付いてきてんのよ...」
重曹先輩は私よりも早く復活してそんな事を言った。部外者って暗に私のことも含めてませんか?今チラッと目が合ったし。
「お前が慰安旅行として一緒に来たらって言ったんだろ」
「あーもう、そーだけどー!」
アクアに言われた重曹先輩は若干顔を顰めて頭を抱えた。
そういえばそんな事言ってたねー。でもさ、いくら共演者とはいえまさか彼女連れてくるとは思わないじゃん?
私としても結構衝撃的だよ。
以前あんな空気が走っていたけど、なんとか持ち直せたんだね。
これが果たしていい事なのか悪い事なのかは私の知る話では無いけど、少なくとも重曹先輩にとっちゃよく無い事だろうなぁ。
原作崩壊させない程度にオリジナル要素ぶっこむのってやっぱり難しいですね。
あと別作品での宣伝効果凄い。
皆さん曇らせ好きなんですね。