元気でーす!
アクアが宮崎旅行に誘ったのは劇団ララライ所属女優の黒川あかねだった。
東京ブレイドの共演者であり、同時にアクアの彼女(番組公認)である。
ルビーが黒川さんとワイワイ話しているのを横目に私は有馬先輩とMEMさんの方に寄る。
有馬先輩は先程のテンションが嘘だったかのように沈んでいる。そんな先輩に意図しない一撃が飛んでくる。
「あのっ...あかねさんの事、“お姉ちゃん”って呼んでもいいですか?」
「えっ!?」
「私ずっっとお姉ちゃんが欲しかったんです!あかねさんは“いずれ私のお姉ちゃんになる”んですよね!“結婚する”んですよね!?」
「いや...そのぉ...」
ルビーと黒川さんのそんな他愛ないやりとりだが、それは先輩にとって有効打だった。
「うぅぅぅ...、どうしてこんなっ...こんなっ...。私この旅行楽しみにしてたのにっ...」
演技ではなく本物の涙を流す有馬先輩。流石にこの状態の人を茶化すほど私はイカれていない。
MEMさんは、有馬先輩を応援するべきか黒川さんを応援するべきかでオロオロしている。
ここは私が...行こうと思ったが、適切な言葉が浮かんでこないため動くに動けない。
「MEMさーん、この状況どうしましょう...」
「いやー、あはは。私もわからないなぁ...」
普段はフォローに回る側の私とMEMさんだが、こんな稀有な状況の解決方法なんて知る由もなく、ただただ見守ることしかできなかった。
「そういえばルルちゃん?」
「ほぇ?どうしましたか」
「ルルちゃんはあかねちゃんに話しかけに行かないの?」
「一応面識はありますし、あとでいいかなーと思いまして...」
「ふーん...それでいいなら別にいいけど」
それから私達は、宮崎へと旅立った。
そんなこんなで...。
「いらっしゃい高千穂へ!私は“映像Dのアネモネ”って言います」
私達を迎えてくださったのは、今回MVの撮影を担当してくださるアネモネさんだ。
「アネモネ!」
「MEMちょ、おひさー!」
アネモネさんはMEMさんの友人で、個人的にこういうツテがあるってすごいなぁとMEMさんへの尊敬度が上がった。
「この度はお忙しい中こんな田舎にわざわざ来て頂いて!」
「いえいえ...」
ふむ、ミヤコさんがアネモネさんの勢いに押されているなぁ。でも話に割り込む必要性も感じないから放置でいいかな。
ぬぉっ!アレは!?
「ミヤコさん!ちょっとそこのコンビニ行ってきますっ!」
「え、ちょっと!?」
私はコンビニのカウンターにある物を見た途端、それに釘付けになってしまった。
「私がついて行くので、ミヤコさんはルビーちゃん達の方に行ってくださいっ!」
「それなら頼んだわよ」
何やら後ろでMEMさんとミヤコさんのやりとりが聞こえた気がするが、それは今重要なことじゃない。
「ちょっとちょっとルルちゃん、いきなりどうしたのさ?」
慌てた様子で着いてきたMEMさんに私がいきなりコンビニに突撃した理由を聞かれる。
「いや、これです、コレ!」
私が指差した先にあるのは、吉備団子味のデリシャス棒だ。宮崎名物とかでは無いし、時期を待てば全国で手に入るようなものであるが、私としては手に入れられるのであればできるだけ手に入れておきたいのだ。
「つまり...コレが好きってこと...?」
「そうですっ!ラスク味とはまた違う優しい甘みと濃厚さがクセになるんですよ!」
「それって、ここ限定の味なのかな?」
「いえいえ、全国販売ですけど人気度が高いせいか関東圏内はどこもかしこも売り切れなんですよー♪」
「あぁ...そういう...」
「店員さーん、この箱の中身全部下さーい!」
「え〝 、全部!?持てるの?」
「デリシャス棒の為なら余裕でごぜーますよ!」
私は約3000円を犠牲にしてデリシャス棒入りダンボールを手に入れた。
会計を終えてミヤコさんのところに戻ろうとすると背後に般若を浮かべたMEMさんが居た。
「あれ?MEMさんどうしてここに?」
「何でだと思う〜?」
「ははは...、すいませんでした」
ミヤコさん達の所に戻りながらMEMさんからありがたいお説教を頂きました。
何気ない顔で集団の中に戻ると重曹先輩がどこかに行きたがっているのが少し気になった。先輩もデリシャス棒目的かな?...それは無いか。
「えー、参拝行こ!話には聞いてたけど私来た事なかったのよね」
む?参拝か。高千穂で参拝...芸能の神様の天鈿女命が祀られた荒立神社の事かな。
そうなると重曹先輩が参拝行きたいっていう理由も納得できる。
「うんうん、是非見ていってね。でもその前に...」
あ、そういえば何か忘れている気が...。
「今回は“MVの撮影2本”ありますんでね!スケジュール詰め詰めなんですわ!早く衣装に着替えてスタジオに入ってもらいましょう!」
「うぇ〜〜〜...」
あぁっ!アネモネさんの一言で重曹先輩のテンションが再び低下を!
作品の方針について
この作品は原作追従型ですが、核心に迫る部分は描写を避けたりします。
主人公も進んで関わろうとしませんので、今後描写しない部分は『一方その頃...』って感じで白ノ宮が頑張って想像を膨らませて原作には無いお話を書きます。
書かない部分が気になるって方は是非とも原作を購入するなりして、自身の目でご確認ください。
ちなみに現在白ノ宮はその『一方その頃...』の作成に苦戦中でございます...。