大人になりたい少年の話   作:かゆ、うま2世

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尾噛イフ
ヘイローは飾り気のない円の中に、一体の蛇が♾️の形をとっている
戦闘力的にはヒナと同レベル





空崎ヒナの楽園

「お疲れ様、ヒナ」

「そっちこそ」

 

 

あの後、離れた場所にあるベンチに二人で座って話していた

 

ゲヘナの風紀委員と、ティーパーティー。立場的には決して相容れる筈のないもの同士だが、俺達は三年前からこうして仲良くしている

もっとも、そう会える時間が多い訳でもないのだが……

 

 

「毎日あんなのの相手だろ?ヒナは凄いよ」

「好きでやってるわけじゃ無いけど……やらなきゃいけない事だから」

「ありがとう、ヒナ」

「何で?」

「ヒナのおかげで、この辺はちょっとだけ平和になったからな」

 

 

ヒナは少しはにかんだ。それが何とも可愛らしくて、つい見惚れてしまった

 

 

「イフも、ありがとう」

「何で?」

「今、こうして続けられてるのは多分、イフのおかげ」

「……そう言って貰えると嬉しいよ」

 

 

ドロドロした世界を生きている俺たちにとって、こういう時間は本当に大切なものだ。俺も、そしてヒナにとっても

 

 

「……どう思う?エデン条約」

「あれさえ結ばれれば、ゲヘナは平和になる。そうなれば……私もこの仕事を辞められる」

「──待て、辞める?辞めちゃうのか?」

 

 

思わず声が大きくなってしまって、慌てて口を塞いだ。幸い周りに人はおらず、聞かれてはいないようだが……

 

 

「アコには言わないでね」

「そう、か……辞める…まぁ、充分すぎるぐらいには頑張ってたからな……その後どうするんだ?」

「後………」

「ちゃんと決めとけよ、やる事がないと人生は退屈だからな」

「イフは?」

「変わらないよ、大人を目指すだけ」

「そう、応援してる」

「ありがとう」

 

 

ヒナが立ち上がるのと同時に、俺も立ち上がる

 

 

「そろそろ戻らなきゃ」

「俺も行く。手伝える事はあるか?」

「アコが怒るよ?」

「いーの、お前がもうちょっと寝る為だ」

「そう、それなら手伝ってもらおうかな。ありがと、イフ」

「気にすんな、友達だろ」

「友達?」

「違う?」

「友達……うん、そうだね。友達」

「あぁ、友達だ」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「ヒナ委員長!お帰りなさ──げ、尾噛イフ!?」

「げ、はないだろアコ」

「イフじゃん、久しぶり」

「おや、イフさん」

「チナツもイオリも久しぶり」

 

 

風紀委員会の本部に来た俺とヒナを出迎えたのは、風紀委員会の面々──天雨アコ、銀鏡イオリ、火宮チナツの三人だ

 

 

「出迎えご苦労……早速だけどお仕事の時間です。アコ、ヒナを寝かせたいなら睨んでないで協力してくれ」

「……ヒナ委員長に免じて、ひとまずは目を瞑りましょう」

「変わらないね、頼りにしてるよ、アコ」

「この男…!」

「コーヒーでも淹れましょうか」

「助かるよ、チナツ」

「イフ、この書類って……」

「あぁ、これは……」

 

 

そうして書類を処理している俺を、ヒナがじっと見つめていた。何か用でもあるのだろうか

 

 

「ヒナ、どうかしたか?」

「……いや、頼られてるなって思って」

「そうか?ありがたい事だな」

「今更だけど…ティーパーティーが風紀委員会の仕事を手伝うって大丈夫なのか?」

「ティーパーティーとしてここに来た訳じゃないから大丈夫。変な話が出たら全部俺の方で潰してるし」

「そうか、ならいいんだけどさ」

「イフ、その話はまた今度にしよう。今はこっちに集中して」

「はいよ」

「……何だか、仲良さそうだよ、アコちゃん」

「尾噛イフ……!」

 

 

そんな感じで時は過ぎていき、時刻は深夜に差し掛かって来た

イオリとチナツは帰ったので、この場にいるのは俺とヒナとアコだけ。もっともアコは────

 

 

「アコ、顔色酷いぞ?もう寝ろよお前」

「貴方とヒナ委員長を二人きりになんてさせられません……」

「無理すんなって、ほら、仮眠室空いてるからそこで寝ろ」

「アコ、無理しないで」

「ヒナ委員長、しかし……」

「後は私とイフでどうにかするから」

「…………分かりました、では失礼します。尾噛イフ、ヒナ委員長に何かしたら……」

「分かった、分かったから早く行け。そもそも俺がどうこうできるほどヒナは弱くない」

 

 

渋々……というか、やるせなさそうな表情を浮かべながらアコは部屋を出ていった

 

 

「ごめん、こんな時間まで付き合わせちゃって」

「構わないよ。いつもこんな感じなんだろ?本当、ヒナは凄いな」

「そんな事──」

「あるよ。ヒナは凄い。誰が否定しても、俺はそう思うよ」

「………そういう事、簡単に言わないで」

「ヒナにしか言わないよ?」

「っ、バカ!」

「えぇ…」

 

 

怒られてしまった。よく分からないが、とりあえず謝ろう

 

 

「ご、ごめん」

「別に怒ってる訳じゃ無いけど……。ねぇ、イフ」

「どうした?」

「私が風紀委員辞める事、反対しないの?」

「ヒナが選んだ事だろ?口出しする権利は俺には無いよ。思う事が無いわけじゃないけど、生徒のしたい事を応援するのが───」

 

 

その先の言葉を言いかけて、飲み込んだ。俺はまだそれを言っていい人間じゃない

 

 

「どうしたの?」

「何でもないよ。……もうこんな時間か」

 

 

時計の針は深夜2時を回っている。今日は二人ともここに泊まる事になるだろう

 

 

「よし、これで終わり。トキに連絡しとかないとな………」

「私も終わり……早く寝よう」

「あ、でも仮眠室のベッド後一つじゃね?」

「……本当だ」

 

 

二つあるベッドの一つをアコが使っている為、残りは一つ。けど俺たちは二人だから……

 

 

「ベッド使え、俺はソファで寝る」

「それはダメ。イフが使って」

「ヒナが使うべきだ」

「イフが」

「ヒナが」

「……」

「……」

 

 

お互い無言になり、見つめ合う。やがて、ヒナが思いついたように言った

 

 

「一緒に使えば解決」

「俺アコに殺されない?大丈夫?」

「その時は庇う」

「ありがとう。けど流石に一緒はまずいと思うんだ」

「むぅ……あ、そうだ」

 

 

ヒナは不満げに頬を膨らませたあと、何か閃いたのか手を叩いた

 

 

「イフは大人になりたいんだよね?」

「うん」

「なら、子供の私のお願い、聞いてくれる?」

「……まじか」

 

 

大人、それを引き合いに出されると弱い

 

 

「ただアコからは庇ってくれると助かる」

「分かった、約束する」

 

 

こうして、ヒナと一緒に寝る事になったのだが……

 

 

「……狭いな」

「……うん」

 

 

シングルサイズのベッドに二人で横になるのはキツすぎる。必然的に距離も近づき、肩と肩がくっついている状態だ

 

 

「……眠れるか?」

「多分」

「そうか……」

 

 

こっちは意識しまくってとても眠れそうにない。俺がそう思っていると、ヒナが不意に俺の手を握ってきた

 

 

「ヒナ!?」

「静かにしないとアコが起きちゃう」

「そ、そうだけど……!」

「手ぐらいで動揺しないで」

「……はい」

 

 

このままでは大人を目指す者としての面目が立たない。落ち着け俺……!

 

 

「……手、大きいね」

「まぁ、男だし。お前よりは大きいんじゃない?」

「そうかも」

 

 

そのまま沈黙が流れて、しばらくしてからヒナが呟く様に言った

 

 

「私が風紀委員長じゃなくなっても、会いに来てくれる?」

「もちろん」

「……そう、なら良かった」

 

 

小さな欠伸が聞こえてきた。どうやら眠る時間らしい。

 

 

「おやすみ、ヒナ」

「イフも、おやすみ」

 

 

後日、アコにキレられたのは言うまでもない




下地は既に出来上がっております。こちら三年間ほど褒め続けた空崎ヒナさんです。どう調理するのかはご想像にお任せします

てことで感想と評価ください(血涙)
評価は五人してくれれば色つくから……
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