大人になりたい少年の話   作:かゆ、うま2世

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スクワッド

 

 

 

 

 

 

「ロイヤルブラッドの保管場所を移します」

 

 

呼び出されるなり開口一番これだ。本当に人の事を道具か何かと勘違いしてるんじゃないかと思う。勘違いじゃなくて普通にそう思ってるのか

 

 

「場所は?」

「貧民街です。私が自治区を統合するまでそこで匿います」

「確かに、教会も結構人来るからな。ただあそこの治安の悪さを舐めないほうがいいぞ。俺一人じゃ厳しい」

 

 

あそこに落ち着ける場所なんて無いに等しい。あそこは文字通り、ゴミ溜めみたいな所だから。花が生えてる分、アツコはお気に入りなんだろうが

 

 

「私が選んだ三人を付けます」

「信用できるのかとか、使えるのかとか色々問題があるように聞こえるんだけど」

「だから貴方がいるのです」

「丸投げかよ、きっしょ」

「何か?」

「何でも」

 

 

まぁいい。ここじゃ信頼なんて一瞬で崩れ去る。重要なのは命令に従うかどうかだけだ。ババアが選んだ三人ならそれなりの実力者だろうし、言う事ぐらいは聞くだろう

 

 

「わかったよ、今から行く」

 

 

──────────────────

 

 

 

「はい注目ー。この子がお前らが護衛する事になったロイヤルブラッドこと秤アツコちゃんだ」

 

 

ババアに示された場所に向かうと、そこに居たのは三人の少女。青髪が錠前サオリ、黒髪が戒野ミサキ、水色髪が槌永ヒヨリ。うん、名前と顔が一致する

 

 

「イフ……あの子たち……」

「お前の護衛だよ。仲良くな」

「……で、アンタは誰」

 

 

ミサキが俺を睨みながら言う。この中じゃ一番気難しいタイプだな

 

 

「尾噛イフ。お前ら──アリウススクワッドのリーダーをやる事になった。よろしく。名前は知ってるから自己紹介は要らない。任務内容は知ってるな?」

「はい……」

「問題ない」

「……知ってる」

 

 

アリウススクワッドの任務。ロイヤルブラッド──秤アツコの護衛。期間は……待て、いつまでだ?

そもそもババアは何でアツコを守らせる?ロイヤルブラッドとは何だ?

一瞬疑問が入り込めばそこからは早い。知りたい事が山ほど出てくる

……今度本人に聞けばいい

 

 

「あー、じゃあそれに当たってちょっとしたテストをしよう。お前らが何処までやれるのかが知りたい。全員でかかってこい」

 

 

俺の言葉を聞いた三人組は、各々武器を取り出して構える。物分かりがいいのは評価点だ

 

 

「ルールは簡単。俺に一撃でも入れられれば合格だ。できなきゃ俺がお前らを鍛える」

「……どの立場で言ってるの、それ」

「お前らのリーダーだよ。ババアにも言われた事だし、お前らがどんだけ使えるのかは結構重要だ」

「手加減はしないぞ」

「殺す気で来い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、思ったよりも優秀だったな」

 

 

結果は俺の勝ち。数ヶ月かけて習得した弾避けがかなり身についていた。これならアツコに泣かれなくても済みそうだ

 

 

「っ………」

「いたた…」

「何なのアンタ……」

「傷の処置をする。アツコ、手伝ってくれ」

「うん」

 

 

三人についた傷を治療していく。元々はアツコ用の包帯だが、多めに持っていて正解だった

三人は思ったよりも優秀だ。ババアが選んだだけの事はある。この調子ならすぐに強くなるだろう

 

 

「それじゃ、約束通り俺がお前らを鍛える。せめて俺に一撃入れられるくらいにはなってもらうぞ」

「無理でしょ……あんな速度で動かれたら……」

「馬鹿正直に当てようとするからそうなるんだ。頭を使え」

「……イフ、それ私もやりたい」

「んー……?」

 

 

まぁ、アツコが強くなる分には問題は無い。自分の身ぐらいは守れるようになって欲しいし

だが、その過程で怪我でもされるのはババアにキレられるし、何か嫌だ。………でもまぁ、背に腹は代えられないか

 

 

「いいぞ、怪我だけはしないようにな。俺はアツコだけは絶対殴らない」

「本当!?」

「待って、私は殴るの?」

「殴るけど」

 

 

これが、スクワッドとの出会いだった

 

 

 

 

──────────────────

 

 

「はい、今日はここまで」

 

 

あれから数年。ババアの自治区統合は完了したが、俺達は未だ貧民街で暮らしている

数年前と変わった事。アリウススクワッドが一人増えた事だ

 

 

「イフ、今日の私はどうだった?」

「悪くないぞ、狙いも正確だし、変な所から飛んでくるから避けるのに苦労した。アズサは優秀だな」

 

 

六人目のスクワッド、白洲アズサ。自治区統合後に合流したメンバーだ。教えた事の飲み込みが早い。それはスクワッド全体に言える事だが、アズサはその中でも特に早かった

 

 

「でも、うん。上手くなってきてる。俺に一撃入れられる日も近いかもな」

「イフの教え方が上手いからだ」

「……そうか」

 

 

何だかむず痒い。褒められたことなんてなかったせいか、こういうのは慣れていない

 

 

「……まぁいい、動くよ」

「イフ兄さん、ちょっとお願いが……」

「ヒヨリ、イフに迷惑を──」

「気にしないで、サオリ。ミサキ、こっち。アツコもアズサも早く行くよ」

「……わかった」

 

 

相変わらずやる事は変わらない。人を撃って、人から奪って、命令を遂行する。ただそれだけだ

アツコはサオリ達と一緒に居る事が増えた。仲は良いらしい。ミサキは口は悪いが、最近は割と素直に言うことを聞いてくれるようになった

 

 

「………」

 

 

そろそろ、俺自身の変化にも向き合うべきだろう。スクワッドに入る前、口癖だった虚しい、という言葉。今はもう言わなくなった

アツコ──スクワッドの事も、今では大切だと思える。最初は道具としてしか見ていなかったが、いつの間にか絆されていたようだ

 

 

「イフ、どうかした?」

「……何でもない、行こう」

 

 

もし、もしもこいつらが、こんなゴミ溜めのような場所じゃない、もっといい場所──アリウスの外で産まれて、普通に生きられていたら。俺はどんなに幸せだっただろうか。そんな事を、たまに考える

こんな、憎しみと戦う事だけを教えられるような場所では無くて、楽しいことを沢山経験して、友達を作って、恋をして────

 

 

「無理に決まっているでしょう」

 

 

嫌な声が、耳に響いた

目の前にはババア。呼び出された事を思い出す

 

 

「口に出ていましたよ」

「……ちょっと変な事考えただけだ。忘れろ。何の用だ?」

「ロイヤルブラッドを護衛させている目的、貴方に教えましょう」

「……?」

 

 

 

 

 

「──生贄、ですよ」

 

 

「───は?」

 

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