大人になりたい少年の話   作:かゆ、うま2世

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ん、短い


辛苦のスクワッド

 

 

 

「隣失礼」

「うわぁっ!?イフ兄さん!?」

「……雑誌?」

 

 

地面に座って何かをしていたヒヨリの手には、一冊の雑誌があった。内容はどうでもいいが……ここでもそんなの拾えるんだな

 

 

「どっから拾ってくるんだそれ」

「えへへ……意外と落ちてますよ?イフ兄さんも読みます?」

「後でクロスワードの答えだけ書いといてやるよ」

「そんな!?も、もうダメです……生きがいを奪われてしまいました…」

「冗談だって、そんなに悲観的になるなよ。……今度見つけたら拾ってきてやる」

「あ、それならこれの最新刊でお願いします」

「図々しいなお前」

 

 

ヒヨリの特徴。何かあれば過剰なまでに悲観的になる。そして立ち直りが異様に早い。そして図々しい。この環境でよくもまぁここまで図々しく育ったものだ

 

 

「……腹減ったな、なんか食うか」

 

 

持ってたパンを取り出して齧る。味はしない。触手を突っ込まれたあの日からずっとそうだ。最早腐ってるか腐ってないかすら関係ないと気づいたのはいつの事だったか

 

 

「…………」

「……そんなに見てもやらないぞ」

「えぇ!?」

 

 

自分の分もあるくせに、わざわざ俺のをじっと見つめてくる。本当に図々しい奴だ

……まぁ、それをなんだかんだ叶えている以上、とやかくは言えないか

 

 

「ヒヨリ」

「どうしまし───んっ!?」

 

 

ヒヨリの口に俺のパンを突っ込む。そのままモゴモゴしているヒヨリの頭を撫でながら、俺は空を見上げた

 

 

「んぅ……んぐ、イフ兄さん……」

「……もう一つあるけど、いる?」

「餌付けですか!?このままイフ兄さん無しじゃ生きられないようにされてしまうんですね!?」

「いらないなら俺が食べ……って無い!?お前あの一瞬で取りやがったな!?」

 

 

モゴモゴと俺のパンを頬張るヒヨリを見てため息を吐きつつ、俺はもう一度空を見た

……本当、癖の強い奴らだ

 

 

「……美味しい?」

「はい!」

「そりゃ良かった」

 

 

笑った顔が眩しい。ヒヨリの笑顔を見ると、自然と自分も笑う事が出来る。不思議な感覚だ

 

 

「……あ、でもイフ兄さんの分が……その、ごめんなさい」

「お前にそんな気持ちがあったことに驚きだよ。俺は大丈夫だから気にすんなって」

「……ありがとうございます」

 

 

ヒヨリの頭を撫でる。いつも通り、柔らかい髪質だ。触っていて心地いい

 

 

「……イフ兄さん、最近よく笑いますよね」

「そうか?」

「はい!最初の頃は怖かったですから……今も怖いですけど」

「おい」

「でも、最近は優しい顔をしています。イフ兄さん、昔はそんな風に笑ってなかったですよ」

「……そうか」

 

 

……柔らかくなった自覚はある。こいつらと過ごしていて、少しずつだが心も変わっていった

虚しくなんかない。胸を張ってそう言える

 

 

「……ヒヨリはさ」

「?」

「皆でアリウスから逃げようって言ったら、ついてきてくれる?」

「勿論です。私はイフ兄さんについていきますよ?」

 

 

即答だった。迷いなんて微塵も感じさせない、真っ直ぐな瞳で見つめられる

 

 

「……そっか」

 

 

思わずまた笑みが溢れた

慕われるのは、嬉しいものだ

 

 

──────────────────

 

 

走馬灯のように、幸せだった頃の記憶が蘇り、目の前の光景が私を現実へと引き戻した

 

 

「……どういう事?」

「っ…ミサキ、待て──」

「命令しないで!イフがいなくなったってどういう事!?」

 

 

ミサキちゃんはサオリ姉さんの胸ぐらを掴んで怒鳴り、アズサちゃんと姫ちゃんは座り込んで俯いている

 

 

「イフが私を──私達を置いていく筈ない!」

「っ、ミサキ──」

「や、やめてください!」

 

 

思わず口が動いてしまった。だって、見ていられなかった。こんなの、あまりにも残酷過ぎる

 

 

「っ……!」

 

 

ミサキちゃんはサオリ姉さんを突き飛ばして何処かに走って行ってしまった。多分、イフ兄さんを探しに行ったんだと思う

 

 

「……」

 

 

何も言わずに、サオリ姉さんは走り去っていくミサキちゃんを見つめていた。表情からは何を考えているのかわからない。ただ、悲しげな目をしていた

 

何故、イフ兄さんは何処かへ行ってしまったのだろうか。私が我儘を言い過ぎたから?それとも、もっと別の理由?

考えても答えなんて出ない。ただ、そこにあるのは───

 

 

リーダーを失った、スクワッドだ




次回、激重ミサキ
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