大人になりたい少年の話   作:かゆ、うま2世

3 / 53
飛鳥馬トキの喜び

アコにキレられた後、建物の側面を爆速で走って逃げた。そのまま適当な建物の屋上に立っていると、モモトークの通知が鳴り響いた

 

 

「……トキか」

 

 

飛鳥馬トキ。ゲーム開発部の一件以来、俺が面倒を見ている色々と特殊な生徒

リオの専属メイドをしていた関係上、トキは世情に疎く、友達も少なかった。どうしていいかわからなくなった彼女が訪ねたのは俺だった、という事だ

 

そんな彼女は……正直、俺も掴みきれていない。というのが本音だ。初めて会った時はクールなタイプかと思ったが、存外寂しがり屋な一面もある。加えて、掃除や料理などの家事はほぼ完璧に近いのに、休みの日には俺にポテチを取りに行かせた事もあった

 

これ、リオはトキに世話されてたのか世話してたのかどっちなんだろう

 

 

「どれどれ…」

 

 

トキからのモモトークを確認する

 

 

「『暇です、遊びましょう』ね……」

 

 

確かに今日は休日だが、こんな風に誘ってくるなんて珍しい。いつもなら連絡もなく突然来るし、そもそも彼女はゲーム開発部とも、C&Cとも仲がいい。俺を起こしにやって来る事はあれど、こうして誘ってくるのは珍しい

 

 

「……ま、付き合ってやるかな」

 

 

了承の返信をして、俺は目的地へと向かった───

 

 

「いたけど……」

 

 

ミレニアムまで行くと、トキは居た。ただ死ぬ程居心地が悪そう……と言えばいいのか、周りの人を避けながらキョロキョロしていた

 

 

「おーい、トキーぃぃい!?」

「っ!」

 

 

声を掛けるなり俺に抱きついてくるトキ。本質的には人見知りなのだろう。そんなトキが俺にここまで懐いているのは……何と言うか、嬉しい

 

 

「で、どこ遊びに行くの?」

「……考えてません」

「あぁ……趣味は見つける最中だったもんな。それの一環?」

「はい」

「んー、なら適当に動き回るか。それでいい?」

「構いません」

「よし、行こう」

「はい」

 

 

進み出した俺の手をトキが握った。トキの手は小さく、柔らかい。緊張しているのか、少し熱かった

 

 

「トキ?手…」

「はぐれては困るので」

「……そうだね」

 

 

諦めて俺はそのまま歩き始め、向かったのは──遊園地だった

 

 

「うおおおおお!?」

「────!」

 

 

最初に乗ったのはジェットコースター。ただ……これは……

 

 

「──────!!」

「……はは」

 

 

声こそ出ていなかったが、とても怖がっているのは理解できた。相変わらず表情は動かないが

 

 

「…………」

「…次はゆっくりしたやつ乗ろうか」

「はい……」

 

 

次に乗ったのはメリーゴーランド。隣同士になるように乗り込んだ。ゆったりとした音楽と共に、ゆっくりと上下に揺れる。トキは小さく笑みを浮かべていた

 

 

「よし、写真を撮ってあげよう」

「……ピースピース」

 

 

両手でピースを作ったトキを写真に収める。ほぼ無表情でダブルピースという中々にシュールなものだが、トキらしくていい

 

その後も……

 

 

「バカっぽい星形のグラサン買ってきたから写真撮ろうぜ」

「せーの…いぇい」

 

 

 

「お化け屋敷行く?」

「嫌です」

「よし行こう」

 

 

 

「トキ!コーヒーカップ回し過ぎ!」

「ごめんなさい、楽しくなってきました」

「これ以上はまず……うっ」

 

 

 

そんなこんなで時間は過ぎていき、俺たちは茜色の夕日を観覧車から見つめていた

 

 

「楽しかった?」

「はい」

「なら良かった」

 

 

急遽始まったお出掛けだったが、トキが楽しかったのなら満点だ

 

 

「……ねぇ、トキはさ───」

 

 

その言葉を言い切る前に、観覧車の外を見て言葉を失った。観覧車の外……地面に見えたものを見て、苛立ちを含んだ声で呟いた

 

 

「ヘルメット団……綺麗に終わらせてくれないんだな。トキ、ここで待ってろ。ドア蹴破って下に降りる。何、修理代ならセミナーの会計に──!?」

 

 

トキの方に目を向けるが、そこにトキは居なかった。ドアは既に破られていて、落ちていくトキのメイド服も戦闘形態だ

 

 

「全く……」

 

 

ため息をつきながら、俺も飛び降りた

 

 

 

──────────────────

 

 

結論から言えば、俺がついた時には既に終わっていた。あまりに早い。C&Cの名は伊達じゃないようだ

 

気絶している大勢のヘルメット団達の中、トキは俺を見つけるとメリーゴーランドの時のように両手でピースを作った

 

 

「……あぁ、うん。お疲れ。後のことはヴァルキューレに任せて帰ろっか」

「はい」

 

 

そうして二人並んで帰り始める。少しして、トキが思いついたように言った

 

 

「イフ様、私は頑張りました。なのでご褒美を要求します」

「いいけど、何が欲しいの?」

「撫でてください。迅速に」

「は?え、それだけ?」

 

 

思わず聞き返す。こういうのは普通高いものを要求されるのでは…?

まぁ、撫でるだけなら今すぐに終わるし……

 

 

「わかったよ」

 

 

トキの頭を優しく撫でる。その瞬間、俺は驚愕した

 

トキの表情が、驚くほどに動いたからだ。トキの表情筋は硬い。それは間違いないのだが、今のトキは誰がどう見ても笑っている

 

 

「……驚いた、そんな顔もできるんだな、お前」

「……?」

 

 

撫でるのを辞めると、トキの表情は元に戻ってしまった。名残惜しいが、一瞬見れただけでもよしとしよう

 

 

「顔、ですか?」

「あぁ、珍しく表情筋が動いたなって」

「でしたら───」

 

 

 

 

「──きっと、イフ様のおかげです」

 

 

先程の笑顔の面影を残す微笑みを浮かべ、そう言い放った




こちらは行く当ての無くなった状態の自分の面倒を見てくれただけじゃなくゲーム開発部やC&Cとの仲も取り持ってくれた人に依存気味のトキちゃんです
これをな……フヒヒ

もっと感想くれてもええんやで(強欲)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。