大人になりたい少年の話   作:かゆ、うま2世

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バシリカへ

 

 

 

あれから少しして目覚め、喧嘩していた二人を止めてから五人で話し合いを始めた

 

 

「敵の戦力は大量のアリウス生徒と無限のユスティナ信徒、あとババア……ベアトリーチェか」

「ユスティナが厄介だね。ちょっと無限は無理があるかな……」

「私達の時みたいに、権限を破壊できないのか?」

「俺の特性……創造と破壊は意識的に使えるものじゃない。それに、権限を持ってるのは恐らくババア本体だ。ババアに触らなきゃ壊せない」

 

 

対してこちらは五人だけ。彼女が合流した以上かなり楽にはなるが、それでも厳しい状況なのは変わらない

 

 

「俺は万全の四分の一も無いしな。目もよく見えなきゃ腕も足も上手く動かん」

「それであれなんだ……」

「ま、そんなだから俺はお前らを頼るし、お前らも俺を頼れ。特にお前な、クーデターの時もそうだけど、あんまり一人で抱え込むなよ」

「……うん」

「よし、それで作戦だが……」

「な、何ですか…?」

 

 

 

「……突っ切る!」

 

 

──────────────────

 

 

 

 

物静かな自治区に、何かを砕くような音が響く。音の発生源は一つの建物。やがてその建物の壁が崩れ──

 

 

 

「イフ君もうちょっとちゃんと掴んで!」

「話しかけんな今は!」

 

 

尾噛イフ達が現れた

作戦はこうだ。彼女が俺を抱えて走り、スクワッドはそれについて行く。抱えられた俺は触手の操作に専念して銃弾を捌きつつ、建物を破壊して直線距離でバシリカまで向かう。シンプルだが一番効果的だ

彼女は俺を抱えて走る程度簡単だし、スクワッドも交戦を避けて体力を温存できる。俺は触手を動かす事に専念できるから一発も銃弾を通さない自信もある。完璧だ

……俺を抱えたまま普通にスクワッドと同じ速度で走られると、流石にちょっとびっくりする。結構頑張って鍛えた筈なんだけど

 

 

「……これさ、姿勢はどうにかならなかったの?」

「イフ君に弾が当たったら大変でしょ」

 

 

今の姿勢は所謂お姫様抱っこというやつだ。確かにこの方が被弾率は下がるけど、なんか、こう……うん

 

 

「……!来たよ!」

「お仕事開始だ!」

 

 

アリウス生達とユスティナ信徒が現れ、銃を放つ。無数の弾丸は──触手に触れた瞬間ドロドロに溶けて消えた

弾いたわけでもなく、溶かした訳でもない。取り込んだのだ

黙って触手を動かし続け、飛来する弾丸を呑み込んでいく。空気の揺らぎで全ての弾丸の軌道が読める。文字通り一発だって通さない

 

 

「後ろからロケットランチャー!」

「任せろ!」

 

 

あまりにも大きいものは取り込めないが、ロケット弾程度なら問題なく取り込む事ができる

そのまま全ての障害を無視して走り続け、遂に目的地であるバシリカが見えてきた

 

 

「イフ君!あそこの門!」

「分かってる!」

 

 

巨大な扉を触手で開き、全員中に入った瞬間に閉じる。これでひとまず安全だろう

 

 

「はぁ…やっと着いた」

「……とりあえず降ろしてくれないか?」

「あ、ごめん」

 

 

全員で門を背にして座り込み、大きく息をつく。追手はしばらく大丈夫だろうし、一息つくぐらいの時間はありそうだ

 

 

「イフ、顔色が悪いようだが」

「……ロケット弾の火がちょっと効いただけ」

 

 

触手の弱点は炎……というより高温だ。万全ならある程度耐えられるが、今はそうも行かない。体内に入れているようなものだし、若干の影響はある

 

 

「ちょっと休んだらすぐに行こう。ユスティナが湧いてこないとは限らな──」

『珍しい顔ぶれですね』

 

 

響いた嫌な声。ホログラムが投影され、そこに映ったのは──ベアトリーチェだった

 

 

「ババア……!?」

『久しぶりですね、ウロボロス?私が与えた触手を上手く使っているようで何よりです』

「私が与えた……?」

『懐かしいですね。四肢を千切っても、目玉をくり抜いても繋がって──本当に、気持ち悪い』

 

 

触手を入れられた当初の耐久実験の事だ。どこまでの怪我が治せて、どこまで傷つければ治らないのかを調べる為に、散々痛めつけられた。あの時は痛かったが…痛いだけだ

 

 

『どうやら、悪い大人に騙されたようですね。貴方達に次のチャンスなんてある筈がないというのに。貴方達の罪を償う方法など存在しません』

「……うるさいな」

『スクワッドが放ったミサイルでウロボロスはバラバラになりましたね。それも元を辿れば、そこの馬鹿な女が騙されたせいだとか?』

 

 

誰も、何も言わなかった。皆、ババアの言葉に思うところがあるのだろう

 

 

『チャンスがあるなどという嘘を信じ込み、ここまで足を踏み入れた。そして……私がいる限り、決して逃れる事はできません』

「御託はいい、さっさとアツコを返せ。そうすれば殴らないでおいてやる」

『……返せ?無理な相談ですね。儀式は既に開始しています』

「…!?早すぎる…!」

「……そんな事だろうと思った」

 

 

ババアのやりそうな事だ。だからこそ、最短でここに到着する必要があったのだが

とはいえ、このまま言われっぱなしも癪だし

 

 

「……アツコを守らせた目的を、お前は俺に教えたことがあったよな」

『……あぁ、そんな事もありましたね。その結果…サオリだけが逃げることを拒否して、貴方は一人逃げ出した』

「お前の狙いはそれか。アツコの儀式の時、必ず俺の邪魔が入る。殺すのも面倒だったから、アリウスの外に出るよう仕向けた」

『……正解ですが、それが何か?』

 

「……で、俺が儀式の邪魔をする事は防げたかな?」

 

 

ババアが顔を顰めた。痛い所を突かれたようだ

 

 

「防げてないよな?俺はここにいる。アツコを助けにな。つまり──俺がここに来た時点でお前の計画は崩壊した。もうお前の負けは決まってる」

『傷を治せない貴方に何ができると?今の貴方では障害になり得ません、対策を考えるまでもない。憎しみで私を追ってきたのでしょうが、貴方のような半端者には何もできません』

「勘違いしてるようだから言っとくけど──」

 

 

 

「──別に、憎んでないよ」

 

 

呆けたような顔。まさかこんな事を言われるとは思っていなかったのだろう。まぁ確かに、俺はずっと憎んでいたけど。今は違う

 

 

「別にお前は……正直どうでもいい。アツコを持って行かれたままは困るってだけ。いい大人は誰も憎んだりしないのさ。多分だけどね」

 

 

そう言って、肩をすくめる。これは本心だ。俺達はアツコを取り戻しに来ただけで、ババアを殺しに来たわけじゃない

 

 

「それに、一回の失敗で道が潰えるなんて事あり得ない。そんな事言ったら俺とか失敗ばっかだしな」

 

 

アリウスから逃げ出して、彼女を止められなくて、守りたかったものを傷つけて、先生に迷惑をかけて──それでも俺は、ここにいる

 

 

「皆には無限の可能性がある。例え道が閉ざされても、また新しい道を作るのが大人の役割だ。アツコの道を作るために、俺達は来た。だから───」

 

 

 

「お前の役目は終わりだよ、ババア」

『──戯言もそこまでになさい!』

 

 

「ッ───!?全員離れろ!」

 

 

背筋に走った悪寒。本能的にそう叫んでいた。全員がそれに従って走り出し、扉から離れて数秒後

 

──扉が吹き飛んだ

 

 

「……アレ、何」

「や、やばそうです…!」

 

 

吹き飛んだ扉の影から出てきたのは、大量のユスティナ信徒。その中に、目を引くものが二つ

 

 

「アンブロジウスと……あれは何?」

「……サクラコから、ちょっとだけ聞いた事がある。ユスティナ聖徒会に置いて最も偉大と謳われた存在──聖女バルバラ」

『貴方達は見逃されていただけ。本気で大人に勝てるとでも思っていたのですか?』

 

 

見ただけでわかる、圧倒的なまでの強さだ。今の俺では勝てるかどうかわからない程に

 

 

「……全員倒してでも進むしか──」

「無理だ、時間が足りん。儀式はもう始まってる。……かといって、放っておく訳にもいかない。アレとババアを同時に相手は無理だ」

 

 

俺が残って……駄目だ、勝てるかどうかわからない

……なら、アレの出番か

 

 

「……俺が教えた事覚えてるか?どうしようもなくなった時の最後の手段」

「お前、まさか……」

「……あぁ」

「や、やるんですね!?」

「え?何それ」

「お前は掴まってろ、タイミングが重要なんだ」

 

 

彼女の手を握り、集中する。奴らが近づいてくるのに合わせ、少しづつ後ろに下がり──全員、後ろを向いて駆け出した

 

 

「逃げる!」

「放っておけないんじゃなかったの!?」

「馬鹿言え、周りを見ろ!」

 

 

建物内にある柱。これを崩せば時間稼ぎにはなるだろう。その間に速攻でババアを倒し、全員でバルバラを迎え撃つ。これが恐らく最善策───

 

 

「は───!?」

 

 

──瞬間、彼女以外の全員の体が前に押し出された

 

 

「っ……お前何やってんだ!」

「ごめん、イフ君」

 

 

そう言うと、彼女は素手で柱を壊して道を塞ぐ。スクワッドと彼女の二つに分断された

 

 

「……セイアちゃんが言ってたの、イフ君が危ないって。多分、今がその時。アツコを助けに行ってあげて。大丈夫、こう見えても私結構強い──って、イフ君はよく知ってるよね」

「今すぐそっち行くから──」

「イフ君!」

 

 

一際大きい声。俺の声を遮るように響いた

 

 

「……信じて」

 

 

そんな事を言われたら、そうするしかなかった

 

 

「……必ず助けに戻る。待ってろ」

「……うん、待ってる」

 

 

──────────────────

 

 

 

建物内を走り回り、アツコの元へ直行する。地理感覚は失われておらず、アツコの場所はよくわかる

ステンドグラスが印象的で──俺に触手が埋め込まれたあの場所へ

 

 

「アツコ!」

「……!あれ!」

「いました!」

 

 

十字架に、未知の植物のようなもので磔にされたアツコの姿があった。そして──傍らには、ベアトリーチェの姿も

 

 

「……なるほど、子供を一人置き去りにするとは…最低ですね」

「黙れよババア。さっさとアツコを離せ」

「……えぇ、いいでしょう。ここまで来た以上──私が直々に叩き潰して差し上げます」

 

 

元々醜かったその姿が、さらに醜く歪み始める

足と手は枝のように分かれ、顔は蕾が開くように、花のように変形していく。体は縦に伸びていき、元々大きかった身長はさらに大きく膨れ上がった

 

 

「やっと中身に見合う姿になったな、この化け物が」

「……行こう」

「ベアトリーチェ…お前を倒して、アツコを救い出す!」

『さぁ、始めましょう』

 

 

アツコを救う為──一斉に駆け出した

 




最近暑くない?熱中症には気をつけて感想を書くんやで(乞食)
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