大人になりたい少年の話   作:かゆ、うま2世

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戦闘開始の一撃目を担ったのはベアトリーチェだった。花のような頭の中心から放たれた何本にも分かれたレーザーが、俺達を襲ってくる

 

 

「避けろ!」

 

 

全員散開し、それを避ける。僅かな隙をついてサオリと俺で銃弾を撃ち込むが、そう高い効果は見込めない。効いてない訳ではなさそうだけど、決定打には欠ける

望みがあるとすればヒヨリの狙撃か、ミサキのスティンガーミサイルくらい。後は──こっそり考えている切り札か

 

 

「囲め!」

 

 

壁を走ってベアトリーチェの周囲を回りながらハンドガンで射撃。全員それに合わせて動き、俺達は円陣を組むようにして取り囲んでいく

 

 

「ヒヨリ、ミサキ、撃て!」

「はい!」

「言われなくても!」

 

 

狙撃とスティンガーミサイルが放たれ──枝のような腕に防がれた

 

 

「……防がれた」

「防がなきゃいけないって事だ。サオリと俺で隙を作る。お前ら二人が鍵だ、頼むぞ」

 

 

サオリは銃撃を繰り返し、俺はベアトリーチェの周囲を駆け回る。時折飛んでくる攻撃を避け、奴の注意を引きつける

ただ、二人の攻撃は目立つ。いくら注意を引きつけても無駄だろう。大事なのは隙を作る事、その為に、デカい一撃を食らわせてやる

 

 

「危ないだろうが!」

 

 

枝のような鋭い腕がこちらに伸びてくるのを触手で弾く。そのまますぐに駆け出し、周囲を回るのを再開。走りながらも触手を伸ばし、奴の腕や足を狙って攻撃を繰り出していく

貫ける程の柔らかさではないけど、奴の注意を引くことはできた。頭の上に赤黒いエネルギーが集まり、それがやがて球体になっていく。それを俺に向けて放つ瞬間───

 

 

「読めてるんだよ!」

 

 

首元を通過した時に張っておいた触手を首に巻きつけ、ベアトリーチェの頭を上に向けた。球体は天井に飛んでいき、大爆発を起こす

 

 

「……終わりだ」

 

 

瞬間、ベアトリーチェの周囲に壁と壁とを繋いで張り巡らされた大量の触手が姿を現す。ベアトリーチェを取り囲むように現れたそれから──大量の銃弾が放たれた

バシリカに来るまでに取り込んでいた大量の銃弾。それの一斉放出。奴の周囲を駆け回ったのは、触手をこのように貼り付けて使うため。これで、当たる

 

 

「今だ!」

 

 

二人は同じ位置──ベアトリーチェの頭に狙いを定め、同時に引き金を引いた

 

 

『─────!』

 

 

取り込んだ銃弾を撃ち尽くすのと同時に、狙撃とスティンガーミサイルが叩き込まれた。流石に効いたようで、ぐったりと上を向いて固まった

やるなら、今しかない

 

 

「ッ──!」

 

 

ナイフを握りしめ、ベアトリーチェの頭目掛けて飛ぶ。花のような頭の中心に、思いっきりナイフを刺そうとして───

 

 

──俺の腹を、枝のような腕が貫いた

 

 

「イフ!」

「あいつ、まだ──!」

「……っ」

 

 

口から血が溢れ出る。明確に傷を負ってしまった。銃弾が掠ったのとは比較にならない程の傷。今も尚、奴は腕を動かして俺の腹を掻き回している

だが───

 

 

「……これでいい」

 

 

小さな容器が一つ、俺の服から落ちた。中身はガソリン。死ぬ為に用意して──使う事のなかった物

意図を理解したヒヨリがスナイパーを構える。少量だが、充分な威力だろう

 

 

「どこいくんだよ」

 

 

俺から腕を引き抜いて逃げ出そうとするベアトリーチェに対し、触手を地面に繋げて体を固定し、腹に刺さった腕を掴んで離さない

 

 

「敵の腹刺したんだろ?離しちゃダメだろうが!」

 

 

ガソリンの入った容器をヒヨリが撃ち抜き──俺を巻き込んで爆発した。触手の一部が飛び散ってステンドグラスに飛んでいくのだけが見えた

 

それでも尚、ベアトリーチェを倒すには至らない。腕を自ら切断し、ベアトリーチェは爆発の直撃を免れた。あの爆発では、尾噛イフも無事では済まないだろう

 

 

『────』

 

 

爆発の煙の中から飛んできたナイフに対し、片腕を体の前に持ってきて防ぐ用意をする。苦し紛れの一撃。そう思って油断し───

 

 

『──!?』

 

 

───後頭部で爆発が起きた

 

 

(……ロケット、ランチャー?)

 

 

触手から発射されたものに違いない。何故後ろから──と考え、気づく

さっき、ステンドグラスに飛び散った触手の破片。あれから──?

 

そして、ベアトリーチェは一瞬腕を止めた

 

 

「……ヒット」

 

 

その一瞬、ベアトリーチェは防ぐ事もできずまともにナイフを受けた。花の顔の中心にナイフが突き刺さり、それと繋げた触手を使って顔目掛けて飛んでいく

ただ殴っただけでは決定打にはなり得ない。しかし──

 

 

「終わりだ」

 

 

──全力を込めて、突き刺さったナイフを殴りつけた

 

 

『────!!』

 

 

声にならない叫びを上げ、変異したベアトリーチェの体が元に戻って崩れ落ちる。煙が晴れていき、勝利を確認したスクワッドの面々がアツコの元へ向かう

 

 

「………さて」

 

 

それを横目で見ながら、ババアの頭を掴んで引きずっていく。俺は俺でやる事がある

 

 

「いい格好だな、ババア?散々喚いてた割には呆気ないな」

「っ……貴様……」

「黙れ。お前に言う事は一つだけだ」

 

 

ババアの首を掴み──顔面を思いっきり殴りつけた。全力を込めた一撃。二度目は無い

 

 

「アリウスから手を引け、二度と俺たちに関わるな。次は殺す」

 

 

ババアをその場に落として背を向ける。もう触れる必要もない。アツコの様子を見ると、サオリに抱きしめられていた。若干戸惑っているように見えるが、特に目立った様子はない。無事なようだ

俺も行こうとして──足を止めた

 

 

「………俺は、ダメかな」

 

 

全てを裏切って、全てに背を向けて逃げ出した俺が、今更どんな顔をしてアツコに会えというのか

……早く彼女の元に───

 

 

「イフ?」

 

 

その声に、足を止めた。今尚一人で戦っている彼女の元へ向かおうとした足を止めて振り返る

 

 

「……イフ、だよね?」

「……アツコ」

 

 

嬉しそうな笑顔を浮かべ、こちらに駆け寄ってくる。何でそんな顔ができるのかわからない。裏切って逃げ出した俺に、どうして

 

 

「ずっと……会いたかった」

「……恨んで、ないのか?離れないって、あんだけ言っといて、俺──逃げたのに」

「……色々、思う事はあったけど」

 

 

「こうして、助けに来てくれたでしょ?」

 

 

──考えるよりも先に体が動いた。目の前の少女を、力一杯抱き締めていた。涙が溢れるのすら気にせず、ただ、ひたすらに

 

 

「……遅くなってごめん」

「ありがとう、助けてくれて」

「……生きてて、よかった」

 

 

しばらくそうしていただろうか。どちらともなく体を離す。まだ言いたい事はあるけど、今はやるべき事を優先させよう

彼女を助けに行かなくてはならない。アツコの事もあるから、スクワッドは置いて俺一人で行く

 

 

「……あー、疲れた。もう傷だらけ」

 

 

息を整える為に一瞬座り込む。元々負っていた傷に、ババアに刺された腹と爆発によるダメージ。触手は機能不全を起こして使えなくなった

それでも、行くしかない

 

 

「イフ、大丈夫なの?」

「いいから、アツコを頼んだ。あいつを助けに行かないと」

 

 

腹を抑え、よろめきながらも立ち上がる。痛いのは嫌いだけど、それでも、まだ立てる

 

 

「イフ」

「ん?」

「……死んじゃ、ダメだからね」

「……わかってるよ」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「……見つけた、どこまで行ってるんだよ」

「……イフ君?」

 

 

バシリカの入り口で別れたはずの彼女は、どういう訳か全然違う場所に居た。場所の特徴で言えば──やはりオルガンと楽譜、蓄音機……ここ、聖歌隊室か。アリウスもトリニティと同じ授業を受けていたんだ。当然と言えば当然。アリウスでキリエを聞いた事は無かったが

 

 

「何で……」

「約束したでしよ。それに傷だらけ」

 

 

髪もボサボサだし、体は傷だらけで血が滲んでいる。バルバラとアンブロジウスに随分やられたらしい

 

 

「傷だらけなのはイフ君も同じでしょ。私も……」

「いいから下がってろ。俺がやる」

 

 

ハンドガンとナイフを握る手に力が入る。確かな怒りを込めて、それでも冷静さを保つ

 

 

「……覚悟しろよ」

 

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