大人になりたい少年の話   作:かゆ、うま2世

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完結したし、イフ君の戦績を整理してみま

VS不良生徒→勝利(ヒナのサポート)
VS不良生徒→勝利(ワカモ、アキラのサポート)
VSアリウス生→勝利(アズサとのタッグ)
VSミカ(一戦目)→戦ってたら勝ってた。拘束したという点では勝ち
VSアリウススクワッド→勝利(暴走状態)
VSアリウス生→勝利(サオリとのタッグ)
VSミカ(二戦目)→勝利
VSベアトリーチェ→勝利(スクワッドとの連携)
VSバルバラ&アンブロジウス→敗北(ミカ庇わなきゃ勝ってた)


と、このようにかなり強めに設定したんですよね。戦闘面では最強だけども、根底を折られるとよわよわなイフ君を作る為です

生徒達からの信頼を既に持っていた対策委員会編、大人という無謀な夢を追っているからこそアリスを肯定できるパヴァーヌ編と、イフ君は一章二章に対してはメタを持ってたわけですね。流石にエデン条約編はきつかったみたいだけど
ちなみに本編時間軸のイフ君は力がほとんど入らないよわよわイフ君なので簡単に押し倒せます。彼はヤる時はMです


番外編
BADEND1 飛鳥馬トキの牢獄


「イフ様、どこに……?」

 

 

走る。走る。走る。当てもなく、直感だけを頼りに、彼を求めて走り続ける

 

発端は、彼が退院したという知らせを受けた事だ。あの怪我では日常生活を送る事すら難しいだろうと判断し、メイドとして彼の補佐をしようと──いや、取り繕うのはやめよう。ただ一緒にいたかっただけだ

 

だが、彼の家はもぬけの空だった。ナギサ先輩に聞いてみても、どこかへ走り去ったっきり戻ってこないとの事だった

どこへ行ったのかは知らないが、彼はきっと自分の家に帰る筈だ。なら、私の役目はそれを迎える事だと、そう思っていた

 

それが今は──ただ胸騒ぎがする、なんて変な理由でキヴォトス中を駆け回っている。自分らしくない行動なのは理解している。それでも、行かなくてはならない。彼に会わなければならない。そう思ってしまったのだ

 

 

「イフ様……!イフ様……!!」

 

 

真夜中の街を、ただ駆ける。誰もいない、眠った街を、たった一人を探して駆ける。そして───

 

 

「ッ───!?爆発!?」

 

 

近い距離から聞こえた爆発音。昼間ならまだしも、真夜中の今爆発がするのは珍しい

───嫌な予感がする

 

 

「イフ様っ……!」

 

 

不安を拭い去るように、ただひたすらに夜を走る。その先で──私は信じられないものを見る事になる

 

 

「……は?」

 

 

火に包まれて倒れている人型。私が探していた人だと、何故かわかった。わかって、しまった

 

周りに人はいない。キヴォトスの生徒が犯人なのであれば、そもそもこんな回りくどい事はせずに撃つ筈だ。火の火力が明らかに強い。油か、ガソリンか──何かなければ有り得ない程の火力だ

 

 

「──火、火を、消さなくては」

 

 

思考して、やっと出てきた言葉はそれだった。でも、どうやって?水は持ち合わせていない。この辺りが何処なのかもわからないから、川などの水場の位置もわからない

どうにかして、火を───

 

 

「……これは」

 

 

手に落ちた水滴。一滴だけではなく、無数に降り出したそれは───

 

 

「……雨」

 

 

……運に、助けられた。メイドとしては失格かもしれないが、今はとにかく喜ぼう。とにかく、イフ様を病院に───

 

 

「…………」

 

 

それで、いいのか?

そもそも、イフ様がトリニティから逃げ出した理由は体の秘密がバレて迫害を受けたから。ならトリニティに戻すのはまずい。ならゲヘナ?救急医学部との繋がりはあった筈だ、そこなら信頼できる───

 

 

「……ふふっ」

 

 

気を失った彼の体を抱えて歩く。行き先は──私の家だ

ガソリンの爆発を至近距離で受けたようだが、四肢の欠損も見られない。彼の体の性質を考えれば、傷の処置をして安静にしておけば勝手に治るだろう

 

私の役目は、イフ様を支える事だ。体の秘密に対し、誰が何を思っているかなんてわからない。トリニティもゲヘナもアビドスもミレニアムも信用できない。信じられるのは自分とイフ様だけ

 

疑心暗鬼?そうかもしれない。だけど──あぁ、そうだ。最初からこうしておけばよかったのだ。こんなに傷ついた最愛の人を、何処の誰とも知らない人に預けるだなんて、間違いだったんだ

 

 

「ふ、ふふっ、あはははっ」

 

 

手当たり次第に進み、家までの道を模索する。重傷故の浅い呼吸。それでも、生きようとしている強い呼吸。きっと、まだ折れてはいないのだ。だからこそ、私はイフ様が好きなのだ。でも──もう充分だ

 

これから、完膚なきまでにイフ様を折る。夢を目指しても傷つくだけだと分かった以上、言葉を選ぶ余裕はない。大丈夫だ。心に空いた穴には私が入る。彼が壊れないように支えよう。私が、ずっと傍にいよう

 

 

「……私が、報いる番です」

 

 

──────────────────

 

 

「……俺、は」

 

 

確か、ガソリンに火をつけて爆発したはずだ。なら何故生きている?失敗したのか?ならここは何処なんだ?

 

 

「目が覚めましたか?」

 

 

ぼんやりとした意識の中、声をかけられた。聞き覚えのあるような無いような……そんな曖昧な感覚に囚われながらゆっくりと起き上がると、そこには見知った顔があった

 

 

「トキ……?」

「はい、イフ様」

 

 

いつも通り、感情の読めない表情。でも、彼女がいるという事はここは病院?

 

 

「私の家です」

「え?」

 

 

よくわからない。何がどうなって、どうして俺がトキの家にいるのか。そんな疑問を抱いていると、彼女は口を開いた

 

 

「倒れているイフ様を発見し、ここにお連れしました」

「いや……何でトキの家に…?」

「イフ様の状況は理解しています。私の家の方が安全かと」

「え、あ、そう……」

 

 

……考えてみれば、一理あると言えなくもないかもしれない。いや、正直何処へ行こうとどうでもいい。死のうとしていた訳だし

 

 

「……何で助けた?」

「助けたかったからです」

「死のうとしてたのわからないのか!?」

 

 

思わず怒鳴ってしまう。俺は死ぬ為にあの場所に居たし、死ぬ為にガソリンに火をつけた。爆発に巻き込まれて意識が消えた時、死ねたと思った。なのに───!

 

 

「……もういい。俺をここから出せ。さっさと死んでくる」

「その命令は聞けません」

「ッ……!」

 

 

ベッドから降りようとした体が、彼女の腕によって引き戻される。振り払おうとしても、力が強く抜け出せない。いや…俺の力が弱いのか

 

 

「離せ、離せよ!もう死にたいんだ!もう何もかもどうでもいい!だから早く死なせてくれよ!もう生きていたくないんだよ!!」

「駄目です。絶対に死なせません」

「何で!?もう、もう俺には何も無い!全部無くなって、空っぽになって、生きてる価値なんかない!お前だってわかって───」

「イフ様」

 

 

圧のある声に、思わず押し黙る。いつの間にか涙が出ていた。泣きたくないのに、泣くつもりは無かったのに。それ程までに、追い詰められているのだろうか?

 

 

「二度目です。壊れた貴方に寄り添うのは」

「……だったら、何だよ」

「これではっきりしました。貴方を一人にしておくと大変な事に──いえ、違う。私が、嫌なのです。イフ様が傷ついて、泣いている姿を見ているのは」

「なん、で、お前が、そんなこと……」

「私は、イフ様に救われた人間ですから。それを抜きにしてもイフ様の事は好きですよ」

「……わけわかんねぇ」

「構いません。とにかく、私はイフ様から離れません。イフ様がどんなに嫌がっても」

 

 

そう言って、彼女は強く抱きしめてくる。抵抗する気力は湧いてこなくて、そのままされるがままになる

 

 

「……間違ってたのかな、俺」

「……えぇ、間違っていました。大人なんて、放っておいてもなれるものをわざわざ目指して、傷ついていました。馬鹿ですね」

「馬鹿……」

「……子供のまま、甘えていいんですよ。辛い時は支え合うものです。大人を目指すのは辛かったでしょう?だから今度は───」

 

 

優しく頭を撫でられる。まるで子供をあやすかの様に、慈愛に満ちた手つきで

 

 

「私が支えます。永遠に。イフ様の傷も、悲しみも、劣情も、全てを受け止めましょう。それが私の役目であり、喜びでもあるので」

「……そうか」

 

 

つまりは、俺が傷つかないよう守ってくれるということだ。何も無いと思っていたけれど、こんなに想ってくれる人が傍にいる。なら、俺はまだ───

 

 

「……トキ」

「はい」

「……多分、俺はもう駄目。二度と前みたいには戻れないと思う」

「そうですか」

「……それでも、一緒にいてくれる?」

「勿論です」

 

 

即答だった。迷いなど微塵もなく、当然だと言わんばかりに断言された。ならもう迷わない。これから先、どれだけ傷つこうとも彼女と一緒にいよう。そしていつか、彼女が傷ついた時に支え合えるようにしよう

 

 

「……ありがとう、トキ」

「その為の私ですので」

 

 

──────────────────

 

 

 

「…………」

「………」

 

 

何をするわけでもなく、ただ二人くっついて座っている。安静にしていたおかげか、傷はもう塞がっていた

この生活が始まってはや一ヶ月。その間、特に何かがあったわけではない。俺が学校に行く事は無いし、トキも俺から離れることはしない。俺がトキに甘えて、トキがそれに応える。時折身体を重ね、二人で暇を潰す。それだけの生活だ

 

 

「……これでよかったのかな」

「良いのですよ、きっと」

 

 

全てを投げ出して、トキと共に過ごした事。未だに、思う事は消えてくれない。だけど、それでいいのだと思う。忘れる事は出来ない。でも、ずっと抱え込む必要もない。今は、こうして寄り添えれば充分だ

 

 

「……テレビつーけよ」

『速報です。シャーレの先生が何者かに殺害されたとの情報が入りました。傷口から、ショットガンによるものと見られ───』

「面白いのやってないね。映画でも見るか」

「えぇ、そうしましょう」

 

 

今日もまた、変わらない一日が始まる。でも、隣にトキがいるだけで、それは素晴らしいものに思えた

 




さて、先生をぶっ殺したのは誰でしょう
ヒント:ショットガン
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