超能力?そんなの(ヾノ・∀・`)ナイナえっあるの? 作:黎火
時計は7時40分を示している。
始業まであと20分弱といったところだ。
まだ一日は始まったばかり、だというのに、何回もあくびを嚙み殺している。
少し夜更かしをしてしまったのが原因だろう。
気付いたら机に突っ伏していた。
少しぐらいなら、眠っても大丈夫だろう。
ホームルームが始まる前までなら許されるはずだ。
・・・あ~、すっげぇいい感じに眠れそう。
なんで学校や電車に限って眠くなるんだろうな・・・
うむ、このウトウト感が個人的にはすき
「(おはよう。よく眠れたかい)」
「ふへふ!?」
「そんなビックリすることかい?」
「た、小鳥遊さん!?」
めっちゃきれいな声で囁かれたんですけど。
誰かが起こすだろうと思ってたけど、小鳥遊さんだとは思わなかったし。
というかめっちゃ周囲に注目されてるんですけど。
「どう、どうしたんです、小鳥遊さん」
「えらく他人行儀じゃないか。もう少しフランクな感じが嬉しいんだけど」
そんな間柄じゃないですよね?
回数両手で数えられるレベルでしか、話したことないですよね?
「ははは・・・、で、あの、どうしたんです?」
「いや、君が朝から眠たそうにしてたからね。もうすぐホームルームも始まるし、起こしてあげようと思ったんだよ。」
もう少し普通に起こしてくれませんかね?
というかこの人に最近からかわれてる気がする。
なんか意地悪いというか楽しそうな表情してるし。
小鳥遊さんが席に戻った後、前の席の田中が話しかけてきた。
「(おい斎木っ!お前いつから小鳥遊さんと仲良くなったんだよ!?)」
「(これ仲良しっていうのかめっちゃ疑問なんすけど。からかわれてるだけじゃねーの?)」
「(小鳥遊さんは基本こっちからのアプローチはさらっと流す人なんだぞ、そんな人に逆にアプローチされるってお前・・・
あの噂マジなのか?)」
「(噂ってなんだよ)」
田中が噂の内容を話し始めようとしたとき、ちょうど担任が入ってきて、聞く機会を逃してしまった。
というか噂ってなんだ?俺に関する噂なんて聞いたことがないんだが?
◇───◇
午前中の授業が終わり昼休みに入った。
夜更かしもあって弁当は作れなかったので学食にでも行こうかと、思っていると
「あ、あの!斎木君、ちょっといいかな?」
「佐々木さんどうしたの?」
クラスメイトの佐々木さんが話しかけてくるとは珍しい。
彼女は大人しめ、というか内気な性格で自分から話しかける事は少ないはずだ。
「あ、あの噂って本当なのかな」
「すまん、あの噂ってなんだ」
そういえば朝に田中が言ってたな、噂がどうとか。
「えっ知らないの?」
「いや知らないが」
「斎木君が小鳥遊さんをふった、って皆話題にしてるよ」
「いや知らないが!?」
朝から感じてた眠気全部吹っ飛んだわ
どっから出たんだよその噂
というか思わず大声出したせいで皆がこっち見てるし
「いや、まず告白すらしてないぞ」
「そ、そうなの?」
「うん。話したのだってそこまで多くないし」
「じゃ、じゃあ小鳥遊さんのことどう思ってるのかな?」
じゃあってなんだよ、じゃあって(困惑)
クラスの前で女子の印象語るとか、何かの拷問にでもかけられてるんじゃないのか俺
「い、いやー、美人だとは思うぞうん。
高嶺の花過ぎてどう接すればいいか分からないぐらいには」
「な、なるほど。で、ど、どうなのかな?」
「・・・何が」
「き、気があるかなーとか・・・」
気があるか、というのは異性として好きかどうかということでいいんだろうか。
小鳥遊さんのことは美人だとは思うし、悪い人ではないとは思う。だが、
「分からない、かな」
「分からない・・・?」
「気があるかとかそういう以前に、俺は小鳥遊さんのことを理解していないというか。
彼女がどんな人間かもわからないなら、気がある以前の問題だろ?」
「そ、そっか」
「逆に気になるんだが、佐々木さんは小鳥遊さんをどう思ってるんだ?」
なんというか以前から思っていたんだが、俺と周囲の小鳥遊さんへの認識には
どこか温度差があるような気がする。
俺は思ったよりも冷淡な人間だったりするんだろうか。
「小鳥遊さんは魅力的だよ」
「どの部分に魅力を感じるんだ」
「全部だよ。あの顔も、あの髪も、あの目も、あの匂いも、あの雰囲気も、一つ一つの言動も、あの名前も」
「・・・どうして魅力に感じるんだ?」
「魅力的だからだよ」
「いや、だからどうして」
「魅力的だからだよ」
「いや、あの」
「魅力的、だからだよ」
なにかやばい気がする。なんというか話が通じてない感じが凄いする。
というか怖い。何がそこまで彼女をそう思わせるのか。
これは会話を切り上げた方がよさそうだな。
「・・・すまん、学食行くわ。」
◇───◇
あの日、彼に魅了をかけようとして失敗した日からある噂が流れていた。
『斎木颯真が小鳥遊美麗を振った』
恐らくあの日のやり取りを誰かに見られたのだろう。
彼を堕とすのはこれからなのに、これではもう敗北しているみたいだ。
こんな噂、『魅了』の力を使って取り消そうと思ったのだが──
「(待てよ、これはこれで有りかもしれない。)」
この噂で、周囲の視線は私と斎木君に向いている。その状態でアプローチをかけるということは
自分たちの関係を周囲にアピールしていることと同義だ。
本人から攻略するだけではなく、外堀から埋めていく。
ただ、この『振られた』という部分だけはいただけない。
少々外部からの認識を改めさせる必要がある。
「佐々木さん、今時間大丈夫かな?」
「う、うぇ?!は、はいだ、大丈夫です・・・」
「実は少しお願いがあるんだ。あの噂、知ってるかな」
「え、あ、はい。知ってます・・・あの、やっぱり事実なんですか」
「ふふっ、どうだろうね?それはそれとして、少し彼・・・斎木君に聞いてほしいんだ、私のことをどう思ってるかを」
「え?わ、たしがですか・・・?」
「噂のこともあって少し、彼と関わりにくいんだ。だから私の代わりに聞いてくれないかな。お願いだよ」
「は、はいっ」
彼のことだ、噂そのものを否定するだろう。
噂の信憑性は曖昧になる。
そのあと彼にアプローチをかければ
『振った、振られた』の部分は消え、
残るのは、彼と私が絡んでいるという事実だけだ。
悪いと思うけど、使えるものは何でも利用させてもらう。
どんな手を使ってでも堕とすと決めたんだ。
私に魅了されない君が悪いんだよ。
◇───◇
次の日から
『斎木颯真が小鳥遊美麗を振った』
という噂は
『斎木颯真と、小鳥遊美麗は倦怠期』
に変わっていた。
「((なんか変な方向に噂が変わってるー!?))」