タキオンさん助けて、俺ウオスカの間に挟まれちまう   作:フルゥチヱ

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第11話 君は完璧で究極のウマドル(前編)

「ぷす~……」

 

 

 放課後。

 なんとかノートを取り終えた俺は、糸が切れたように机に突っ伏していた。

 こんなに字を書いたのはいつぶりだろう。

 疲れたという声を上げることすらできないくらいの疲労感が両肩に重く伸し掛かっていた。

 

 

「ククク、だらしないなプス子よ。どうやら先ほど感じた圧倒的強者の気配は勘違いだったようだな」

 

 

 すると、そんな尊大なことを言いながら誰かが近づいてくる。

 顔だけを上げると、そこにはホームルームの時に堂々と遅刻してきたウマ娘の姿があった。

 確かシエルちゃんに"キャプテン"と呼ばれていた子だったか。

 

 

「むっ、そういうあなたこそちゃんと授業についていけてるんですか?」

 

 

 人を見た目で判断するのは失礼なことだが、あまり頭が良さそうには見えない。なんかでっかい帽子被ってるし。

 

 

「ウム──授業中は寝てたから知らん!!」

 

 

 見た目通りだった。

 いや、むしろ賢いのかな……?

 

 

「吾輩の名は"キャプテントゥーレ"! 影すら踏ませぬままやがてクラシック三冠の頂点に君臨するウマ娘である! 貴様の目標も三冠らしいが……残念だったなプス子よ。この私と同期だった不幸を呪うがいい! クックックッ」

 

 

 ババーンとポーズを決めて高らかに宣言するキャプテン。

 すごい自信だ。

 身体は小さいが、その身に宿る闘志は誰よりも大きいのかもしれない。

 

 

「お、お手柔らかに」

「ウム。……あ、後さ、さっきの授業のノート取ってた? よかったら写させてほしいのだが……」

 

 

 あ、本当に寝てたんだ。

 

 

「俺のノートでよければ。どうぞ」

「あ、ありがと──感謝するぞプス子よ」

 

 

 ちょいちょい素の口調が漏れ出てるなこの子。

 

 

「だが恩があるからといって、同じ戦場で相見えることがあっても容赦はしないぞ。全身全霊をかけて貴様を倒してやる」

「もちろんですよ。じゃあ今日から俺たち、ライバルですね」

「ら、ライバル……! ウム、我々はライバルだ! 友と書いてライバルと読もうではないか! エヘヘ……」

 

 

 可愛いなこの人。

 仲良くなれたら嬉しい。

 

 

「そういえばプス子よ。貴様、チームの見学には行ったのか? なんだったらこの吾輩が案内してやっても──」

「あ、チームはもう決めたんで大丈夫ですよ。あとトレーナーさんも」

「……ほえ? 転入初日でか?」

 

 

 若干引きながら首を傾げるキャプテン。

 あ、やっぱり初日で決めるようなことじゃなかったんだ……。

 

 

「うん。まあ、トレーナーさんの方から声を掛けてくれたから、自分で選んだわけじゃないんだけどね」

 

 

 最終的にはタキオンさんと同じチームで一緒に走ってみたくて、自分で選んだけれど。

 そういえば今更だけどトレーナーさんは、模擬レースで走っただけの俺をチームに誘ってくれたんだよな……。きっと転入初日で何も知らない俺に気を遣ってくれたのだろう。タキオンさんのトレーナーなだけあって、彼女と同じくとても優しい人だ。身体は発光してるけど。

 

 

「そ、それってスカウトじゃないか!?」

「すかうと?」

 

 

 驚愕した様子のキャプテンに、思わずオウム返ししてしまう。

 はて、スカウトとはなんだろう?

 確かお昼休みにケンちゃんたちがそんなことを言っていた気がしなくもないけど……。

 

 

「転入初日にスカウトされたのなんて、スペシャルウィーク先輩くらいだぞ!?」

「すぺしゃるうぃーくさん?」

 

 

 知らない人だ。

 でも、キャプテンがこう言うのならきっと凄いウマ娘なのだろう。

 

 

「き、貴様、自分が何をやったのか本当に分かっていないのか……?」

「何をやったって言われても……本当に何もしてないし」

 

 

 強いて言うならその後誘拐されたりしたくらいか。

 冷静に考えてどんな転入初日なんだ。

 

 

「おのれぇ、吾輩ですらまだスカウトされたことないのに……負けてたまるかッ!」

「あ、ちょっとキャプテン!?」

 

 

 悔しげに歯噛みしてキャプテンは教室を飛び出していく。

 影すら踏ませぬと豪語するだけあって、確かに凄いスピードだ。

 

 

「行っちゃった……」

 

 

 教室に一人取り残される。

 キャプテンはまるで嵐のように大胆不敵なウマ娘だった。

 

 

   ◯

 

 

「へえ、チームってこんなに沢山あったんだ……」

 

 

 朝は気づかなかったけれど、校内を歩いているとあちこちにチームの宣伝や勧誘のためのポスターが貼ってあることに気づいた。

 中には短距離ウマ娘だけを集めたスプリンター専門のチームや、長距離ウマ娘だけを集めたステイヤー専門のチームなんかもあって、それを眺めてるだけでも結構面白い。

 そうやってポスターを探しながら廊下を練り歩いていると、いつの間にかエントランスにやってきていた。

 一面がガラス張りのその空間の一角には巨大な掲示板が設置されていて、そこにも様々なポスターが貼られている。

 

 

「天皇賞春……最強のステイヤーを決める春の大一番」

 

 

 ポスターに書いてある言葉をそのまま読み上げる。

 天皇賞以外にも、もうすぐ開催されるレースのポスターが所狭しと何枚も貼られていた。

 

 

「桜花賞……皐月賞……あ、そっか、皐月賞もこの時期でした」

 

 

 皐月賞。

 クラシック三冠の一戦目。

 当たり前のことだが、まだデビュー前の俺は当然出走できない。狙うなら次回開催ということになるだろう。

 

 

「他には──"逃げ切りシスターズ"……?」

 

 

 レースのポスターが並ぶ中、一つだけ雰囲気の違うやけにポップなポスターが目に付いた。

 可愛らしい衣装を身に纏った五人のウマ娘が決めポーズで写っていて、その横にはライブの告知情報が記されている。

 新人ウマドルも募集中☆という謎の募集要項と共に。

 

 

「ウマ、ドル……?」

 

 

 なんだろうウマドルって。

 急に知らないワードが出てきた。

 

 

「ウマドルに興味あるのかな?☆」

「は、はい!?」

 

 

 急に背後から声を掛けられる。

 ビックリして振り返ると、そこには左右の髪をカラフルなリボンで結った、笑顔が素敵な栗毛のウマ娘がいた。

 あれ? なんだかこの人、見覚えがあるような……。

 

 

「やっぱり! ファル子、あなたみたいな子が現れるのをずっと待ってたの!」

「へ?」

 

 

 ガシッと両手を握られる。

 え、なに? 何を言ってるのこの人。

 お、落ち着け、冷静になって今の流れを振り返ってみよう。

 まず俺はウマドル? に興味があるかを聞かれた。

 急に声を掛けられて驚いた俺は大声で「はい」と答えた。

 

 

「……あ」

 

 

 なるほど。

 これじゃ元気よくウマドル? に興味があると返事したも同然じゃないか。

 

 

「あ、あのですね、今の『はい』は同意という意味での『はい』ではないというかっ」

「おーいスズカちゃん! ブルボンちゃん! 例の子見つかったよ!☆」

「話を聞いてほしいのですがっ!?」

「この探索能力の高さ。流石ですねスマートファルコンさん」

「私にはファルコン先輩の早合点に思えてならないのだけれど……」

 

 

 ファル子さん? の背後にいつの間にか二人のウマ娘が現れていた。

 は、速すぎて見えなかったのか……?

 というかこの人たち誰? 誰なの? 怖いよおッ!

 

 

「ということでスズカちゃん! ブルボンちゃん! やっておしゃ~い!☆」

「了解。ターゲットロックオン、ミッションを開始します」

「ごめんね、あなたに恨みはないけどリーダーの頼みだから……」

 

 

 瞬間、今度は忽然と視界から消える二人。

 

 

「な、なんですか!? 本当になんなんですかっ!?」

「大丈夫! あなたはファル子がちゃんと立派なウマドルにプロデュースしてあげるからね!☆」

「う、ウマドル!? プロデュース!? 一体なにを──もがーっ!?」

「「「えっほえっほ」」」

 

 

 トレセン学園生活二日目。

 俺は既に、二度目の誘拐をエクスペリエンスしていた。




◇ディープスカイ
 またしても誘拐された主人公。
 逃げ適性Gなのでウマドルからは逃げられない。

◇キャプテントゥーレ
 海賊が好きすぎるあまり中二病を拗らせた。
 彼女もアグネスタキオンに憧れている。

◇スマートファルコン
 逃げウマ娘5人で構成されたウマドルユニット"逃げ切りシスターズ"のリーダー。
 まさに最強で無敵のウマドルであり3兆人を超えるファンがいる。

◇サイレンススズカ
 逃げ切りシスターズのメンバー。
 嘘でしょ……また巻き込まれてる……。

◇ミホノブルボン
 逃げ切りシスターズのメンバー。
 アクロバティックなパフォーマンスに定評がある。
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