タキオンさん助けて、俺ウオスカの間に挟まれちまう   作:フルゥチヱ

13 / 34
第13話 結成!追い込みシスターズ

「ここは……どこだ? 今は、西暦何年だ……!?」

 

 

 突然天井から飛び降りてきたゴールドシップさんは、何故かタイムリープしてきた未来人みたいなことを言い出した。

 

 

「ご、ゴールドシップさん、お、お久しぶりです……」

「おお! ひっさしぶりだなあディープ! 元気してたかあ!? 元気してっかこの野郎!」

「どうしてここに……てかどこから出てきてるんです!?」

「そりゃお前、学園内のダクトの経路を把握しておくのは乙女として当然の嗜みだろ?」

 

 

 制服に付いた埃を払いながらあっけからんと言う。

 そんな乙女の嗜みが存在しないということは元男の俺にもすぐ分かった。

 

 

「な~んだ、ゴルシさんだったんだ。それなら安心だね☆」

「ステータス『デストロイモード』を解除、警戒レベルをセーフティに再設定します」

「いえ、ゴルシ先輩のことは違う意味で警戒した方がいいと思うの……」

「ねえねえゴルシさん、ファル子たちに何か用かな?」

 

 

 逃げ切りシスターズの皆さんは正体がゴールドシップさんだと判明した途端普通に会話を始める。

 ゴールドシップさんの奇行に慣れすぎでは……?

 

 

「ああ、実はさっきディープが誘拐される場面を目撃しちまってな……」

 

 

 えっ。

 もしかしてゴールドシップさん、拐われた俺を探すために……!?

 破天荒に見えるけど、本当は優し──

 

 

「アタシ抜きで楽しそうなことしてんじゃねーよ! 一枚噛ませろ!!」

 

 

 うわぁん! 誘拐犯が増えた!

 

 

「あ、もしかしてゴルシさんもウマドルになりたいの? 勿論大歓迎だよ!☆」

「あん? ()()る? もしかしてダートに埋めに行くってことか?」

「何をですか!? 何を土に埋めるつもりなんですか!?」

 

 

 このままじゃ埋められちゃう! 助けてタキオンさん!

 ファル子さんは「違うよウマドルだよ!」と訂正した後、しばらく俺とゴールドシップさんを「う~ん☆」と見比べてからこんなことを言った。

 

 

「そうだ! プス子ちゃん、ゴルシさんをメンバーにするっていうのはどうかな!?」

「え? えええええっ!?」

「なんだメンバーって? バンドでも組むのか? ドラムと太鼓と木魚ならいけるぜ?」

「プス子ちゃんとゴルシさんって、なんだか相性良い気がするのっ!」

「い、いやいやいや! 何を言ってるんですか!」

 

 

 どこをどう見たら相性がよく見えるのだろうか。

 見ての通り俺は全くと言っていいほどゴールドシップさんについていけていないというのに。

 

 

「ったりめえだろ! アタシとディープは河川敷で夕日をバックに殴り合った仲だからな!」

「そんな青春(アオハル)の記憶は存在しませんっ!」

「けどよ、アタシはビンビンに感じてんだよ! お前と一緒なら偉そうにふんぞり返ってる三冠バの連中を超えた四冠バになれる可能性ってやつを! テメーはゴルシちゃんを、ゴルシちゃんはテメーを補い合う良いバディになれると思うぜ! 例えるならウッチャンに対するナンチャン! 高森朝雄の原作に対するちばてつやの『あしたのジョー』つぅ感じによお~~!」

「あなたは本当に何を言っているんですか!?」

「いいから黙って全部アタシに投資しろ! 120億ウマいね稼いでバズってやっから!」

「承認欲求モンスター!?」

 

 

 ゴールドシップさんの場合は本当にできてしまいそうなのが恐ろしい。

 

 

「う~ん──ゴルシさん、プス子ちゃん……そうだ! ユニット名は"追い込みシスターズ"なんてどうかなっ!?☆」

 

 

 言い争いをする俺とゴールドシップさんに対して、ファル子さんは力強く宣言する。

 へ? 追い込み……なんて?

 しかしゴールドシップさんは気に入ったようで、歓喜の声を上げていた。

 

 

「おお! いいじゃねーかファル子! これからアタシたちは追い込みシスターズだぜ! M1優勝目指すぞディープ!」

「俺はM1優勝じゃなくてG1優勝を目指したいです!」

「クエスチョン。そもそもディープスカイさんは追込脚質なのですか?」

「そうよね、私が感じた限りだと少なくとも逃げではなさそうだけれど……」

「ファル子の勘はウマドルの勘! だから間違いないない!☆」

 

 

 ウマドルってやっぱり凄い。

 

 

「よっしゃあ、行くぜ追い込みシスターズ! まだ見ぬ強敵(メンバー)を求めて! しっかり掴まってろよディープ!」

 

 

 ひょいっとゴールドシップさんに片手で抱き抱えられる。

 

 

「お? なんだこの密着感。まるでマックちゃんを持っているようだぜ」

「ま、マックちゃん……?」

「……ああそうか! マックイーンとディープは胸のサイズ感が同じくらいなのか!」

「ど、どういう意味ですかそれ!? 謝ってくださいっ! マックちゃんさんと俺に謝ってくださいっ!」

 

 

 という俺の怒りの声を無視してゴールドシップさんは勢いよく走り出す──何故か扉ではなく窓の方へと。

 

 

「ちょちょちょゴールドシップさん!? ここ四階ですよ!?」

「誰もアタシたちを止めらんねえ! ゴルシちゃんゲートイン! ランニングデュエルアクセラレーション!」

「残りのメンバーはクール系の子を探すと良いかも~!☆」

「サンキューファル子! キンキンに冷えた奴を見つけ出してみせるぜえええええ!」

「お願いですから人の話を聞いて──ひゃああああ!? 助けてタキオンさーん!」

 

 

 ゴールドシップさんは豪快に窓枠に足を乗せ、そのままダイナミックに飛び降りてしまう。

 俺は二度も誘拐されただけでなく、二度も空から落ちたウマ娘という醜態を晒すことになった。

 

 

   ◯

 

 

 ~case1.アドマイヤベガの場合~

 

 

「あ、あのう、ちょっとよろしいでしょうか……?」

「……どちら様かしら。見ない顔ね」

「えっと、俺は最近転入してきたディープスカイって言いますっ。アドマイヤベガさんですか……?」

「そうだけど、なにか用?」

「と、突然なんですけど、あ、アイドルに興味ありませんか!?」

「……は?」

「そ、その、実は追い込みシスターズっていうウマドルグループを結成したんで、新しく加入してくれるメンバーを探しているんですっ」

「……まさかとは思うけれど、私にメンバーになれと……?」

「ど、どうでしょうか……?」

「お断りよ。私はそんな戯れに付き合っている暇はないの」

「うぁ……そ、そうですよね、すみません……うう……」

「──これは単なる事実確認として聞くんだけど、あなたがリーダーなの?」

「は、はい、一応」

「そ。リーダーならもっと堂々とすればいいじゃない。別に興味無いけど」

「ご、ごめんなさいっ」

「だから謝らなくていい。それとあなた、ちゃんと眠れてる?」

「え? あ、えっと、昨日は荷物を整理していたのでちょっと遅くまで起きてました」

「睡眠は生活の全ての根幹よ。それを疎かにするなんてウマ娘失格。遅くとも十時には布団に入りなさい」

「は、はい……」

「そう、ふわふわの布団に入って温かくして目を閉じるの。そうすれば自然と眠れるから。あとあなた、布団乾燥機は持ってる?」

「フトンカンソーキ? ってなんですか?」

「あ、あなた、まさか布団乾燥機を知らないの……!? あ、あり得ないわ……ちょっと待ってなさい、今持ってきてあげるから……!」

「え!? いやそんな、悪いですよ!」

「大丈夫よ。私、布団乾燥機は複数持ってるもの」

「複数必要になることがあるんですか!?」

 

 

   ◯

 

 

 ~case2.ナリタタイシンの場合~

 

 

「す、すみません! ちょっとお時間いただけますかっ」

「……なに? 見ての通り、アタシ今ゲーム中なんだけど」

「本当にちょっとで大丈夫なんで! な、ナリタタイシンさんですか?」

「……そうだけど」

「俺、転入生のディープスカイって言いますっ。えっと、ナリタタイシンさんにお願いしたいことが」

「イヤ。拒否。お断り」

「内容を聞く前に!?」

「アンタさ、自分では気づいてないんだろうけど、聞く前から『断られるんだろうな~……』って顔に出てる」

「あぅ」

「そんな顔した奴の頼みなんて聞いてやる義理はないね」

「す、すみません……」

「──ところでさ、このゲームマルチプレイに対応してんだけど、ソロでやんのも飽きてきたしアンタちょっと付き合ってよ」

「へ? お、俺このゲームやったことないです……」

「別にいいよ。初心者介護すんのも遊び方の一つだし。ほら、ここのスティックとボタンで操作ね」

「おお! 凄いです、動いてます!」

「……え、なにその感想。アンタさ、子供のころ親にゲームとか買ってもらえなかったタイプ?」

「わああ!? これってどうやって避けるんですか!?」

「右に倒して!」

「こ、こうですか!?」

「違う! 倒すのはアンタの身体じゃなくてスティック!」

「は、はい! すみません!」

 

 

   ◯

 

 

 ~case3.タニノギムレットの場合~

 

 

「こ、こんにちは……あの、タニノギムレットさんですか……?」

「ほう? この俺を呼んだか? それが鎮魂歌(レクイエム)前奏曲(プレリュード)になるやもしれんぞ?」

「れくい……えむ? ぷれ、りゅーど……?」

「フッ、無垢なる乙女(ジャンヌダルク)か。この邂逅もまた一興」

「あ、あの! いきなりなんですけど、アイドルって好きですか!?」

作り物の偶像(アイドル)? ハッ、そんな贋作(フェイカー)など眼中にない」

「そ、そうですか……」

「だが──オマエには興味があるぞ、蒼穹を駆ける少女(ブルーメイデン)

「へっ? な、なんと……?」

「良き虹彩(アイリス)だ……ここまで澄み切った瞳の歌姫(ディーヴァ)と出会ったのは我が最愛の天使(エンジェル)以来だな」

「よ、よく分からないですけど、褒めてもらえて嬉しいですっ」

「嗚呼。だが哀しいかな──ワタシには見える、聞こえる、オマエの未来(フューチャー)に鳴り響く終末を告げる絶望の蹄音(アポカリプティックサウンド)が」

「???」

「俺はオマエだ。そしてオマエはワタシだ。いや、同一ではないな。だが、限りなく写し身(シャドウ)。まさに二律背反(アンチノミー)……」

「?????」

「オマエはこの運命(フェイト)適合(アブソーブ)するか、それとも叛逆(リベリオン)するか。陰ながら見守らせてもらうことにしよう。しがない戦士だった老兵(エインヘリアル)として」

「???????」

「また逢おう蒼穹少女(ディープスカイ)。オマエの進むべき道(ロード)無限に広がる荒野(インフィニティ)だ。だが立ち止まるな、己の手で、足で、未来を切り拓け──こんな風にな!!」

「柵がっ!?」

 

 

   ◯

 

 

「おーいディープ! お前、ちゃんとあいつら三人に会えたかあ?」

 

 

 そんな気の抜けたゴールドシップさんの声で、俺は記憶の海から意識を引き戻された。

 

 

「──あ、はい! ちゃんと会って追い込みシスターズに誘ってみました!」

「おお! で、どうだったよ収穫は?」

「えっと……アドマイヤベガさんは布団乾燥機をくれましたっ。ナリタタイシンさんは一緒にゲームで遊んだ後にジュースを奢ってくれましたっ。タニノギムレットさんは壊れた柵の一部をペンダントに加工してくれましたっ」

「え? お前マジで何しに行ったの?」

「皆さんとっても優しい人たちでしたっ!」

「ああ……うん。お前はそのままの変わらないお前でいてくれよな」

 

 

 ゴールドシップさんは何故か温かい目で優しく頭を撫でてくれた。

 なんでぇ?




◇ディープスカイ
 追い込みシスターズのリーダー。
 常識のある新メンバー募集中。

◇ゴールドシップ
 追い込みシスターズのメンバー。
 子供には優しい紳士。

◇アドマイヤベガ
 追い込みシスターズの追加メンバー候補。
 布団乾燥機をプレゼントしてくれた。

◇ナリタタイシン
 追い込みシスターズの追加メンバー候補。
 一緒にゲームで遊んだ後に飲み物を奢ってくれた。

◇タニノギムレット
 追い込みシスターズの追加メンバー候補。
 出会いを祝して柵を折った後ペンダントをくれた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。