タキオンさん助けて、俺ウオスカの間に挟まれちまう   作:フルゥチヱ

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第15話 追い込みっ!LOVE A LIVE

「おお! これがライブ用の衣装なんですね!」

「STARTING FUTUREって言うんだよ。逃げシスみたいに専用の衣装は用意できないけど、ま、アタシたちは新人ウマドルだしね」

「はい、ありがとうございますシービーさん! これすっごくカッコいいです! すたーてぃんぐふゅーちゃー!」

「まだ☆3解放できなかった頃を思い出すぜ。テンション上がるなぁ~~」

「ゴルシは何を言ってるの?」

 

 

 新たに追い込みシスターズのメンバーに加わってくれたシービーさんが持ってきてくれたのは、白のジャケットとブーツが目にも鮮やかな衣装だった。オリジナルの勝負服を持たないウマ娘に与えられるトレセン学園指定の汎用勝負服でもあり、誰にでも似合いそうなシンプルながらもスタイリッシュなデザインである。

 

 

「ど、どうでしょうか……? 変じゃないですか?」

「うん。似合ってるよリーダー」

「マゴにも衣装ってやつだな!」

「なっ、どういう意味ですかそれ!」

 

 

 なんだかゴールドシップさんからはやけに子供扱いされている気がする。いや、長身のゴールドシップさんと比較したら実際俺は子供みたいなものだけど。というか、シービーさんもゴルシさんも背が高い。俺も中等部の平均身長くらいでそこまで小さいわけではないはずなのだが、この二人とは10センチ以上の差がある。

 衣装の着用に問題がないか確認するために鏡の前でくるくると回ってみる。すると、なんだかお腹の辺りがスースーした。

 

 

「腰回りが全開ですねこの服……」

 

 

 ちょっと恥ずかしいような……。

 いや、スカートを穿いている時点で今更なのだが。

 

 

「ん? 別にキミ、太ってるようには見えないから大丈夫だよ? むしろ細いくらいだよ、ちゃんと食べてる?」

「違うぞシービー。ディープはお腹を出して風邪引かないか不安なんだよな? ゴルシちゃん動きます。ほら、この腹巻きを使いな」

「わあ、温かいです!」

「……ステージに出る前にちゃんと外すんだよ?」

 

 

 そんな話をステージ裏でしていると、コツコツと近づいてくる足音が二つ。

 初めてお会いする逃げ切りシスターズの方たちだった。

 

 

「ハァイ♪ 追い込みシスターズの皆! その着こなし、バッチグーでチョベリグよ!」

 

 

 なんかすんごい強烈な人が来た。

 

 

「やあマルゼン。まさかこんな形でキミと相対することになるとはね」

「あたしもおったまげちゃったわ。まさか肩書きに縛られないシービーちゃんがウマドルデビューだなんて、オドロキ桃の木山椒の木よね!」

「ふふ、そうかもね。アタシも自分に驚いてるよ。でも、そのおかげで面白い原石と出会えたんだ」

 

 

 特徴的な話し方をするその先輩──マルゼンスキーさんという方とシービーさんはウマドルになる以前からの友人のようで、気さくに話をしている。

 そしてもう一人、俺たちの方へと近づいてくるのは、サンバイザーとそばかすが印象的なウマ娘だった。

 

 

「はろはろー。キミが追い込みシスターズのリーダー?」

「は、はい! 今日はよろしくお願いします! ディープスカイです!」

「あたしはアイネスフウジンなの! こちらこそよろよろ~」

 

 

 とても明朗快活なお姉さん──アイネスフウジンさんはヒラヒラと手を振ってくれる。

 二人ともウマドルを名乗るだけあって凄い美人さんだ。

 ファル子さん、サイレンススズカさん、ミホノブルボンさんもとんでもない美少女だったし、レベルが高すぎるぞ逃げ切りシスターズ……!

 

 

「おい、なんで誰もゴルシちゃんに声掛けてくんねーんだ?」

 

 

 俺がアイネスフウジンさん、シービーさんがマルゼンスキーさんと話をしていると、そんな拗ねたようなゴールドシップさんの声が響く。

 

 

「分裂してる不審者に声なんて掛けたくないの」

「ゴルシちゃんめんごめんご~。今日は一緒にがんばルンバ♪」

 

 

 すごい。三人になってるゴールドシップさんを見ても驚かないだなんて。やっぱりウマドルとして潜ってきた修羅場の数が違うのだろうか。

 というか、彼女たちも背が高いな。目測で165前後ありそうだ。ゴールドシップさんもシービーさんも長身だし、この空間では明らかに俺だけ小さい。

 うう、今更だがこんな長身美少女たちと一緒に歌って踊るだなんて、恥ずかしくなってきた。

 

 

「──さあ追い込みシスターズの皆! 準備はいいかな?☆」

 

 

 すると、一曲終えたファル子さんがサイレンススズカさんとミホノブルボンさんを引き連れて舞台袖へと戻ってきた。

 いよいよ俺たちの出番らしい。

 

 

「おう! 三人のゴルシちゃんがダンスフロアと風呂を沸かしてやるぜ!」

「アタシもオッケーだよ。ま、気楽にやらせてもらうね」

「プス子ちゃんはどう?」

 

 

 ファル子さんと俺は身長が同じくらいなので、ピタリと目が合う。

 お互い、メンバーの中で一番背が低いのにリーダーだなんて、なんだか面白い。

 でも、同じなのは本当に身長くらいだ。

 俺は駆け出しウマドルで、ファル子さんはトップウマドル──あまりにも格が違う。

 

 

「大丈夫だよリーダー。何かあってもアタシたちができるだけフォローするから」

「シービーさん……はい、俺頑張ります!」

「そうだぜディープ! お前はリーダーらしくドーンと無い胸張っとけばいいからよ!」

「ゴールドシップさんは本当に失礼ですねっ!!」

「ぐふっ」

「どうしてスズカちゃんまでダメージを受けてるの!?」

「原因を解析中──『とばっちり』と推測します」

 

 

 そうだ。

 転入してきたばっかりの俺に協力してくれる、こんなに頼もしい先輩たちがいるじゃないか。

 だったら俺は、俺にできることを精一杯やるだけだ。

 

 

「行きましょうファル子さん! あなたの期待に応えてみせます!」

「やっぱり、プス子ちゃんを選んでよかったよ!☆」

 

 

 ステージに踏み出す。

 幕が上がる。

 

 

   ◯

 

 

 ──腹巻き外すの忘れてた!!!

 ど、どうしよう!? もうステージに立っちゃったよ!?

 期待に応えてみせますとは言ったけど、まさかボケ的な意味での期待に応えてしまうとは流石に自分にビックリだ。

 

 

「みんなー! 今日はファル子たちのライブに来てくれて本当にありがとう!☆」

 

 

 マイク越しに響くファル子さんの力強い感謝の言葉。

 それだけで会場のボルテージは跳ね上がる。

 ファル子さんの一挙手一投足に、この場の全員が注目しているのだとビリビリと伝わってくる。

 こんな数の視線を向けられれば、どれだけメンタルが強い人でも緊張してしまいそうなものなのに──彼女の表情からはそんなもの微塵も感じられない。

 これが、最強で無敵のウマドル……!

 

 

「実は、今日は皆にサプライズを用意してたんだ! 特別ゲスト、新生ウマドルユニット"追い込みシスターズ"の皆さんで~す!☆」

 

 

 ファル子さんは華麗なステップで横移動しながら片手を大きく広げて、観客の視線を巧みに俺たちへと誘導する。

 すると、客席からすごい歓声が上がる──

 

 

『きゃああああああああああ!?』

『どうしてゴルシが三人もイルノー!?』

『やばいじゃん! トレセン学園はもう終わりだし!』

 

 

 あ、これ歓声じゃなくて悲鳴だ。

 

 

「おうおうおう! 最凶で最恐のウマドルゴールドシップ様×3参上だぜ! てめえら立ち上がれ! ゲートの中でも立ち上がりやがれえええええ!」

「あはは、やっぱりゴルシは愉快だね」

「なに呑気なこと言ってるんですかシービーさん! は、はやく止めないと!」

「大丈夫だよプス子ちゃん!」

 

 

 俺たちだけに聞こえるよう一瞬マイクを切ってから、力強くファル子さんはそう宣言する。

 

 

「"個性"を抑えているようじゃ本物のウマドルにはなれないよ! 逃げシスのライバルはこうでなくっちゃね!☆」

 

 

 そう笑ってからゴールドシップさんの元へ駆けていくファル子さん。

 その表情に、その背中に、思わず見惚れてしまった。

 でも、なんでだろう。

 彼女の、遥か高みにいるトップウマドルの姿が一瞬だけ──どこか寂しそうに見えてしまった。

 

 

「……逃げシスの、ライバル」

 

 

 個性──自分の本質。魂の叫び。

 今、俺がイチバン叫びたいこと。

 

 

「俺もっ!」

「リーダーが行くならアタシも付き合わせてもらうよ!」

 

 

 自然と駆け出した俺を、シービーさんは追走してくれる。

 弾むように、本当に楽しそうに走るその姿は、きっと観客を魅了してやまないのだろう。

 俺にはシービーさんのようなカリスマも、ゴールドシップさんのようなエキセントリックさもない。歌もダンスも、間違いなく今このステージ上で一番未熟だ。

 でも、きっと、俺にしかできないことだってある。

 

 

「──はじめましてっっ!!」

 

 

 マイク越しとはいえ、それが自分の口から出た言葉とは思えなかった。

 かつての人生も含めて、一番大きい声を出したかもしれない。

 

 

「俺はディープスカイ! 追い込みシスターズのリーダーをやってます、新人ウマドルです! まだまだ若輩者ですが、これから何卒よろしくお願いします!!」

 

 

 客席はシーンと静まり返っている。

 ファル子さんと逃げ切りシスターズを見に来たのに、いきなり知らない奴が大声で自己紹介し始めたのだから当然だろう。

 いつもの俺だったら、この居た堪れない空気に泣き出しているはずだ。

 でも、関係ない。

 そんなのは関係ないんだ。

 だって──俺は今、ファル子さんのことしか見ていないのだから。

 

 

「ウマドルとしての目標は……あなたに追い付く、いや追い込むことです!」

「えっ──?」

「逃げ切りなんて簡単には許しませんよ! ファル子さん(トップウマドル)!」

 

 

 マイクと反対の手でビシッと指を立てながら宣言する。

 間違いなくファル子さんは最強無敵のトップウマドルで、対して俺は無名の新人ウマドル。普通に考えれば相手にもならない、あまりにも不躾で一方的な啖呵。

 でもファル子さんは、やっぱり笑ってくれるのだ。

 だって、彼女は完璧で究極なのだから。

 

 

「……えへへ。まさかプス子ちゃんがこんなに生意気な子だったなんて」

「そうです! これが俺の魂の叫びなんです! 虎視眈々と追い込んじゃいますよ!」

「いいよ、いつでも受けて立つよ! ファル子、全力全開で逃げ切ってみせるから!☆」

 

 

 ステージ上で向かい合う俺とファル子さん。

 すると、ゴールドシップさんとシービーさんが力強く背中を叩いてくれた。

 

 

「よく言ったぜディープ! それでこそアタシの見込んだウマ娘だ!」

「うん。やっぱりキミは──面白いな」

「ディープスカイさんからの『宣戦布告』を確認」

「そんなこと言われてジッとしてられるほど、大人なウマ娘じゃないの!」

「でも、一番速いのは私だから。ウマドルの先頭も譲らない……!」

「若さがマブいわね! あなたたち、とってもイケイケよ!」

 

 

「「勝つのは──」」

 

 

「逃げ切りだよ!☆」「追い込みですっ!」

 

 

 突き抜けるような歓声が上がる。

 ライブはまだ、始まったばかりだ。

 

 

   ◯

 

 

「──うっ、なんだかやけに首元が痛むな」

「ひょあぁぁ~~~~ッ!? 寝起きの顔も良い~!? お顔が良すぎりゅううううう~!!」

「……起き抜けにデジタル君の叫びは効くねぇ」

「タキオンさん……目が醒めたみたいですね」

「カフェ、今は何時だい?」

「夜の九時です。アナタ、十二時間も眠っていたんですよ……? これに懲りたら徹夜はやめることですね……」

「前向きに善処する方向で検討させてもらうよ。そういえばプスカ君はいないのかい?」

「プスカさん? 誰ぇ?」

「ああ、デジタル君は彼女のことを知らないか。実は最近、弟子を取ってねぇ。ディープスカイ君というとても愛らしい──」

 

 

「ヒョエエエエ~~!? ディープスカイさんってタキオンしゃんのお弟子さんなんですかっ!? お、推せりゅうううううう!!」

 

 

「……カフェ、彼女は何を言っているんだい?」

「タキオンさん、いいですか……落ち着いて聞いてください。アナタが眠っている間に──ディープさんはアイドルデビューしました」

「アハハ。まさかカフェ、君がそんな冗談を言うなんてねぇ」

「いえ、冗談ではありません……」

「ご存知、ないのですか!? 彼女こそ、一番星(トップ)ウマドルに熱いライバル宣言をした超新星(ニュー)ウマドル、ディープスカイさんです!!」

 

 

「…………えー!?」




◇ディープスカイ
 流星のように現れた駆け出しウマドル。
 下手ながら頑張ってる姿が一部のウマ娘の母性や庇護欲を刺激するらしい。

◇スマートファルコン
 完全無欠の一番星(トップ)ウマドル。
 いつかきっとトレーナーさんのことも手に入れたい。

◇ゴールドシップ
 この後パフォーマンスに熱が入りすぎてステージを破壊しだした。

◇ミスターシービー
 歌詞もダンスも一瞬で記憶できる天衣無縫の天才。

◇マルゼンスキー
 朝日杯を大差で圧勝した最速の激マブスーパーカー。

◇アイネスフウジン
 ダービー史上最高の観客動員数を誇るバイト戦士。

◇アグネスタキオン
 目が醒めたら愛弟子がアイドルデビューしてた件について。

◇アグネスデジタル
 師匠×弟子……推せるッッ!!

◇マンハッタンカフェ&お友だち
 会場の隅で後方腕組みして見守っていた。

◇追い込みっ!LOVE A LIVE
 作詞作曲:ゴールドシップ
 追い込み!(追い込み!)追い込め!(追い込め!)
 だってYOU ARE MINE‼︎
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