タキオンさん助けて、俺ウオスカの間に挟まれちまう   作:フルゥチヱ

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【挿絵表示】

お友だちがイラストを描いてくれました。
TS繋がりでおにまいOPのパロディとのことです。
感しゃい☆


第19話 重いコンダラ直線一気

「二人とも、遅いですね……」

「ああ。プスカ君はともかく、あのスカーレット君が集合時間に遅れるだなんて考えられないが……」

 

 

 待ち合わせ場所で先に落ち合っていたアグネスタキオンとマンハッタンカフェの二人は不安げに話す。

 特にタキオンの方は落ち着かない様子で、表情こそいつも通りだが、尻尾の毛先がゆらゆらと揺れていた。

 先ほど送ったLANEにも、未だ既読すらつかない。いっそのこと電話を掛けてみようかと通話ボタンをタップしようとした瞬間である。

 

 

「──た、タキオンさーん! カフェさーん!」

「スカーレット君! 良かった、心配したよ」

「ご無事で何よりです……」

 

 

 長いツインテールをはためかせてダイワスカーレットが駆け込んでくる。

 再会の喜びも束の間、タキオンは彼女の表情が鬼気迫るものであることに気づいた。

 

 

「すみませんタキオンさん! あ、アタシ……」

「落ち着きたまえスカーレット君。何があったかを簡潔に話してくれるかい?」

「は、はい! えっと──プスカとはぐれちゃいました! あの子、たぶん今迷子になってます!」

「なんだってー!?」

「恐れていた事態ですね……」

 

 

 三人はひとまず駅構内図の前に移動し、状況を整理する。

 

 

「ここの服屋までは一緒に居たんです。ただその後、プスカがあれよあれよと人波に流されちゃって」

「ふぅン、その集団がどこに向かって行ったか心当たりはあるかい?」

「確かバーゲンが始まったとアナウンスが流れてた気がします。多分、この辺りのお店のどれかかなって」

「手分けして虱潰しに探しましょうか……」

「いや、流石にそれは効率が悪いだろう。それにプスカ君が移動している可能性もあるしねぇ」

「ああどうしよう! あの子、きっと道の隅っこで体育座りして泣いてるわ!」

 

 

 えぐえぐと涙ぐむ姿が目に浮かぶ。

 そして彼女の不安はある意味的中していた。

 

 

「タキオンさん、既に連絡は……?」

「当然したさ。しかし既読すらつかないんだ。これは何か異常が起こったと考えるべきだろう」

「そうですよね。普通、迷ったらまず連絡を取るはずですもんね」

 

 

 残念なことに、迷子になってるあの子は"普通"ではなかった。

 

 

「異常、というと……?」

「例えば──拐われた、とか」

「そ、それって誘拐されたってことですか!?」

「こんな往来で誘拐が実行されたとは考え難いがね。しかし……」

 

 

(((あの子ならあり得る……!)))

 

 

 誘拐実績に関しては右に出る者がいない少女である。

 まあ、一度目の誘拐の犯人もこの中にいるわけだが。

 

 

「こんな何も知らない場所で一人、プスカ君はきっと孤独に涙を流しているだろうねぇ」

「ここ観光地ですよ……」

「メチャクチャ周りに人いますね」

「もしかしたら、修学旅行に来ている小学生と間違われた可能性もある……!」

「トレセン学園の制服を着てますが……」

「あの子、中身は5歳児並ですけど身長はそこまで低くないですよ。カフェさんと同じくらいですよね」

「ああ! こんなことなら彼女のスマホにこっそり見守りアプリをインストールしておけば……!」

「流石に子供扱いしすぎなのでは……?」

「いや、アタシは割と真面目にその案に賛成です」

 

 

 そんな会話を交わす三人。

 すると、ピンポンパンポーンというチャイムと共に、おもむろに館内アナウンスが流れ始めた。

 

 

『──迷子のお知らせをいたします。東京都府中市からお越しのアグネスタキオン様。お連れ様のディープスカイちゃんが迷子センターでお待ちでございます。至急、迷子センターまでお越しくださいませ』

 

 

 それを聞くと、タキオンは飛び上がるように駆け出す。

 

 

「うおおおおお待っていろプスカ君!!」

「タキオンさん!? す、すごいスピード……! アタシもいつかあんなウマ娘になりたいわ……!」

「……いえ、タキオンさんのようにはならないほうがいいかと」

 

 

 そんなカフェの呟きは、目を憧れでキラキラと輝かせたスカーレットの耳には届いていなかった。

 

 

   ◯

 

 

「いないじゃないかぁー!?」

 

 

 思わず叫んでしまった。

 駆け込んだ迷子センターには、探している少女の姿は既になかったのである。

 そこにいたのは迷子の子供たちと──何故かここに居る知り合いのウマ娘の姿だけだった。

 

 

「……クリーク君? 君はこんなところで何をしているんだい?」

「あ、タキオンちゃん。奇遇ですね~」

「いや、こんな奇遇は通常起こり得ないと思うが……」

 

 

 京都レース場で会うならともかく、なぜ迷子センターで?

 スーパークリークは子供たちに囲まれてとても幸せそうにしていた。

 

 

「私も天皇賞の観戦に来たんですよ~。タマちゃんの後輩が出走するので~」

「……クリークさんとタマモさんは、天皇賞と縁が深いですもんね……」

「ですね~。やっぱり毎回、どの子が勝つのかは気になっちゃいます。そして気づいたら、迷子センターにいたわけなんです~」

「あの、文脈が繋がっていませんが……」

 

 

 困惑するカフェの言葉に、クリークは温和に微笑んでいる。

 

 

「ところでクリーク君。話は変わるのだが、迷子センターでウマ娘を見なかったかい? 身長はカフェと同じくらいで、栗毛の中央に走る流星がとても愛らしい子なのだが」

「まあっ! ディープちゃんのことですね!」

「おや、知っているのかい?」

 

 

 ならば話は早い。

 可及的速やかに彼女の行方を聞き出さなければ。

 

 

「とっても残念です……。もうちょっとで私の赤ちゃんになってくれそうだったのに、まさかあんなことになるだなんて~……」

「待つんだクリーク君。君は彼女に何をしようとしたんだい?」

「でもっ、トレセン学園できっとそのうち会えますよね~。またいいこいいこしてあげないと……!」

「クリーク君? 聞いてるかい?」

 

 

 とても不穏な予感がした。

 できれば金輪際うちの弟子には近づかないで欲しい。

 

 

「……タキオンさん、今はそんな話をしている場合ではないでしょう」

「いや、プスカ君の平穏な学園生活の為にも結構重要な気がするのだが」

「クリークさん、ディープさんがどこに向かったかは知っていますか……?」

 

 

 カフェの冷静な問いかけに、クリークは頬に手を当てて思案する。

 

 

「それが分からないんですよ~」

「分からない、とは……?」

「う~ん、なんと言ったらいいのか──信じられないかもしれないんですけど、突然現れたサングラスにマスクの異様な二人組がディープちゃんを連れ去ってしまって」

「「なるほど把握」」

「あらっ!? 理解がとってもスムーズ!?」

 

 

 流石のクリークも二人の順応の早さには驚きを隠せなかった。

 すると、サングラスという言葉に耳をピクッと反応させたスカーレットが制服のポケットをゴソゴソと漁る。

 

 

「クリークさん、その二人組が掛けてたのってこれと同じものでしたか?」

 

 

 スッと彼女が差し出したのは──黒光りするサングラスだった。

 

 

「あ、これですね~」

「待ちたまえスカーレット君。なぜ君はそんなものを持ち歩いてるんだい?」

「だって、いざ顔を隠さなきゃいけないって時に必要ですよね?」

「えっ?」

「えっ?」

 

 

 お互いに「え?」と顔を見合わせるタキオンとスカーレットである。

 カフェはツッコむのも面倒なので無視して続けた。

 

 

「……そんないかにも怪しい格好をした二人組なら、目撃してる人がいそうですね」

「クリーク君、情報提供に感謝するよ」

「はぁい。お役に立てたのなら何よりです~。ディープちゃんを助けてあげてください」

「ああ。任せておいてくれたまえ」

「まだお膝にあの子の感触が残っています。とっても素直な良い子でした……うふふっ、いつかあの子の本当のママに……♪」

「アタシ、犯人に心当たりがあるんです! 行きましょうタキオンさん!」

「待ってくれスカーレット君! その前に私は一度クリーク君と子育てについて真剣に話し合う必要がある!」

「……色々と語弊がありそうなことを大声で口にするのはやめてください」

 

 

 こうして三人は迷子センターを後にしたのだった。

 

 

   ◯

 

 

「……どうやらここのようですね」

「ふぅン、こんな路地裏の店に連れ込むだなんて許せないねぇ」

 

 

 聞き込み調査を経てたどり着いたのは、細道に店を構えた小洒落たスナックバーだった。バーとはいっても、店の前に立てかけられたメニュー表を見る限り、提供されるのはお酒ではなくノンアルコールカクテル──いわゆるモクテルの類のようだが。

 しかし、女の子をこういったお店に連れ込むというのは、あまり良い結果が想像できるものではない。ましてや連れて行かれたのはちょっと純粋すぎるあのウマ娘だ。うまいこと口車に乗せられ、騙されて泣いている姿が目に浮かぶようだった。

 彼女は自分が守護らなければならない。タキオンは強くそう思った。

 

 

「なあカフェ、一つ聞いてもいいかい」

「なんですか……?」

「見守っていると温かい気持ちになって、いなくなると凄く心配で、いつも側にいて導いてあげたくなる──この感情はなんと形容すればいいのだろう?」

 

 

 カフェは「ふむ……」と顎に手を当ててから、こう答えた。

 

 

「……父性、ですかね?」

「そうか、これが──父性か」

 

 

 色々な意味で合ってるけど間違ってると思う。

 

 

「突入しましょう二人とも! アタシが先陣を切ります!」

 

 

 スカーレットが「失礼します!」とバーの扉を元気よく開くと、ドアベルがカランカランと鳴った。

 すると、店主(ママ)と思わしき黒髪の女性が「いらっしゃいませ」と軽く会釈をする。

 同時に響いてくるのは、三人のウマ娘の声。

 

 

「聞いてくださいよギムレットさんっ! 俺を助けてくれた時、タキオンさんなんて言ってくれたと思います? なんて言ってくれたと思いますか!?」

「あの狂気の研究者(マッドサイエンティスト)ならば、『君を実験動物(モルモット)にしていいのは私だけ』──とかか?」

「違いますよー! 『愛弟子が空から降ってきてくれるなんて今日は良い日だ』って言ってくれたんです! すっごくカッコよかったんですよ!」

「アイツがそんなことを……? フッ、どうやらお互い、後輩のことは甘やかさずにはいられないらしい」

「えへへ~、それにしてもこの飲み物美味しいですねっ。何杯でもいけちゃいますよ!」

「プスカにも分かるか、モクテルの旨さが! すんません店主(ママ)さん、俺とこいつにロックのおかわりください!」

「おっとウオッカよ。後輩の前で飲みっぷりを見せつけたくなる気持ちも分かるが、飲み過ぎ(オーバードーズ)禁忌(タブー)だぞ」

「ギム先輩、タブーは破るためにあるんすよ!」

「アッハハハ! 艱難辛苦に挑むか……面白い!」

「それにこれ、ただの麦茶なんで!!」

「麦茶おいしいれすねー!」

 

 

((なんでこいつは麦茶で酔っ払ってるんだ……?))

 

 

 探していた空色の瞳のウマ娘──ディープスカイは、(バーという空間の雰囲気で)へべれけになっていた。

 

 

「プスカ君にはまだそういうのは早いと思うねぇ!!!」

 

 

 タキオン(お父さん)、キレた!!




◇アグネスタキオン
 トレセン学園が誇る天才かつ問題児だが、後輩たちには振り回され気味。
 最近父性に目覚めた。

◇ダイワスカーレット
 タキオンさんってなんでも知ってるしなんでも出来て完璧なのよね!
 アタシも見習わないと!

◇ディープスカイ
 タキオンさんって優しくてカッコよくてもう憧れが止まりません!
 俺も頑張らないと!

◇マンハッタンカフェ 
 唯一の常識人。
 強く生きて……。
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