「それで、どちらを選ぶのかしら?答えはわかっているけどあなたの口からハッキリ言ってもらいたいわ。」
「そうですね。わかりきった事ですけどここはトレーナーさんに宣言してもらいたいですね。」
自分は今究極の選択を迫られている。中央トレセンのトレーナーたるもの選択の場面などキリがない。強いて近い状況と言えば選抜レースだろうか。誰を選ぶかで運命は大きく変わる。現に二人の担当愛バのどちらかを選択するという難題を課せられている。自分の右側には「輝く一等星」アドマイヤベガ、左側には「異次元の逃亡者」サイレンススズカ。どちらかを選べば選ばれなかった方は消えてしまうのではないかという儚さを持った二人だ。そして彼女たちから選択を迫られているものは…
「食べるのは私の手作り星形クッキーよね?」「いいえ私の手作り苺大福ですよね?」
選択を迫られているものは本日のおやつである。二人の手作りが被るとは運がいいのか悪いのか。そして、
「どうしても選ばないとダメか?」
「ダメね」「ダメです」
一応聞いてみるが即答かあ、仲いいな。
「スズカさんの大福は大きすぎる。トレーナーさんにはカロリーオーバーよ」
「これは”二人で”分け合って食べるから大丈夫ですよ?いいですよねトレーナーさん?」
分け合うのはいいとしてその皿にはフォークが1本しか見えない。
「ご心配なく。ちゃんと交互に食べさせ合いっこしますから。」
フォーク1本で食べさせ合いっこというなかなかの爆弾発言。さすが大逃げのスズカ一気に先頭に躍り出た。もう顔が蕩けてるぞ。対してアヤベは呆れてるときの顔だな。ジト目が強くなってる。
「そう…じゃあ私もそうしようかしら?ねえトレーナーさん。このクッキーを私が食べさせてあげる。手が汚れなくていいでしょ?それに…」
そう言いながらアヤベは指に巻いていた絆創膏を見せつけるように剥がす。傷は小さいものだ。
「それにもしかしたらクッキーと一緒に指まで口に入ってしまうかもしれないけど… そうしたらごめんなさいね?スズカさん?」
スズカもアヤベが言いたいことが伝わったようで眉をヒクヒクさせている。結構カチンと来ているようだ。滅多にない表情。
そしてアヤベのあの傷は恐らくわざとで…
「このクッキーね、隠し味も入ってるの。とっても珍しくて…他には無いの…もちろん何かは内緒よ?食べて当ててみて。」
追い込みのアヤベも一気に追撃してきたな。さすが状況に合わせて効果的に武器を使ってくる。
「トレーナーさん…このイチゴも一品物ですよ?ほらとても”赤くて”美味しそうですよね?是非とも召し上がってほしいです…」
スズカの上目遣いおねだり。普段は走りたいときに使ってくるが別の場面で使われるのは新鮮でこれは強力だ。それからスズカも手に絆創膏付けてるな?
これは参ったな。どちらも非常にいじらしくてカワイイ。正直選べないぞ。交互に食べるとか半分ずつにするとかでいいじゃないか。なんで選ぶ必要があるんだっけ?そもそも… ふとカレンダーが目に入る。
「ちょっと待った。明日って…健康診断の日じゃないか」
「え?」「は?」二人の息はピッタリだな。
「ごめん。そもそも今日は指定の食事以外摂れないことになってるんだよ。なんでも特別な検査とやらで。」
二人共呆然としている。
しかしせっかくここまで”準備”してくれたのだ。その心を無駄にするわけにはいかない。
「だから明日の夕方。検査が終わってから頂くよ。出来立てじゃなくて申し訳ないけどそれで勘弁してくれないかな?」
「…そういうことなら…」「仕方ないですね…」
やはり仲が良いようだ。
「まあ先に食べてもらえれば」「それでいいですよ」
明日の自分、頑張ってくれ。
後書き>
実はアヤベさんとスズカさん好きなんですよね。ということは二人に挟まれて圧死するとそれは素敵だなってことでこの話は脳から生えてきました。カワイイアヤベさんとスズカさんに病んでるスパイスをかけるとすごくすごい美味しいです。つまりカレーにカツが載ってるとつよい理論ですね。ウッカロリー… この話については今までの作品とは繋がってないのでここから読んでもごあんしんです。せっかくだから前のも読んでくれると嬉しいです。まあアヤベさんの方はあれで一旦〆ですけどスズカさんの方は続きとか作ってみるのもあったりなかったりするかもです。つまり予定は未定。
この話は以前アヤベさんとスズカさんが並走だとかみ合わないイベントいいよね…ってところから生えてきました。ほんとはもうちょい最終直線並の競り合いをさせたかったけどどっちか選ぶのなんて無理では?だって二人ともあんなに健気に準備してくれたのに…かわいそうじゃん?というふうに選択を先延ばしするといいことがないよねというお話にしたかったりそうでもなかったり。キャプション部分は脳内出力直結だから特に意味は無いです。でもアヤベさんのお話で書いたRTTTアヤベさん最高のくだりはむしろこれを書きたかったくらいの勢いではあるんですね。あんな素晴らしいものが供給されてしまったら書かざるを得ないの精神。