「暑いなあ…」
「暑いわね」
「暑いですね」
ここはいつものトレーナー室。本日は晴天なりということで季節外れの暑さとなっている。しかしそれだけならまれによくあることでそこまで悲観することではない。三人がそれぞれうめいているのには訳がある。
第一にエアコンが壊れている。今日は暑いし来るべき夏に向けてテストしておこうとリモコンのスイッチを入れたがうんともすんとも言わなかったのが今朝のこと。すぐに修理の依頼をして一週間以内には修理できそうという返事がきたのがお昼頃のこと。そして今直近の問題は愛バ二人がトレーナーの両脇にピッタリとくっついているため三人の体温で、主に真ん中のトレーナーが暑くなっているのが今のおやつの時間である。ちなみに今日のおやつは煎餅でありいつもの異物入りではない。
「トレーナーさん、今日は暑いから汗がすごいわね。私のフワフワハンカチでしっかり拭いてあげるわ」
と右からアヤベが
「トレーナーさん今日は暑いですね。汗は私の芝の香りハンカチでしっかり拭きますからね。はやいですよ?」
と左からスズカがそれぞれの得物でトレーナーの汗を狩っていく。
「二人は優しいな。こんな二人を担当できて俺は幸せものだ」
現状の暑さの原因に感謝するくらいにはトレーナーの意識は飛びかけている。それでも幸せを感じるくらいには二人にゾッコンなのがこの男である。
「トレーナーさん、汗をかいて喉が渇いたでしょ?はいお茶よ。今日は少し高めのお茶にしてみたの。しっかり適温にしてあるから早めに飲んでね。」
と右からお茶を差し出すアヤベ。ちなみにお茶の適温は80度以下らしい。今このお茶はホカホカと湯気が出ている。適温のようだ。
「トレーナーさん。紅茶も美味しいですよ?今日は香りがいいものを用意したんです。こちらも適温ですよ。」
左からスズカが紅茶を出してくれる。ちなみに紅茶の適温は95度くらいで抽出するものらしい。少なくともこれは湯気が出ている。
「優しいうえに気が利く。まさに理想的な家庭の様子じゃないか。二人の旦那が羨ましいな。」
「もう、トレーナーさんったら。まだ結婚してないのに気が早いんだから」
「そうですよ。でもそれだけ楽しみにしてくれてるってことですよね。」
内と外からの熱量により完全にオーバーヒートしてるトレーナーは何を口走ってるか自覚できていないだろう。さらにこの言動で二人のもともと高めの体温も少し高くなった。わざわざ自分の首を絞めているだけである。
「ところで二人とも暑いだろう?少し離れてもいいんだぞ」
ここでトレーナー起死回生の一言を放つ。どうしてこうなるまでこの言葉が出なかったのかは誰にも分からないが。ともかくこれで助かると考えるのはまだ早い。
「もう、何言ってるんですかトレーナーさん。冗談がお上手なんですから。」
「そうよ。大事なトレーナーさんを暖めるのは愛バの大事な役目じゃない。だからこのままでいいのよ?」
「トレーナーさんが冷房病で冷え性になったら大変ですからね。これでいいんです。」
「そうかあ…そうだったなあ…」
もはや何を言ってるか分からないがまあ大したことは言ってない二人に太刀打ちすることはできないトレーナーであった。そもそも冷房はストを起こしているのに冷房病になるはずがない。このおやつシリーズもここまでかと思われたその時トレーナーの携帯が鳴る。
「おや何だろう?もしもし…」
死の間際に一瞬覚醒するが如くまともな対応をとるトレーナーを横目にそれぞれお茶のお代わりを準備するアヤベとスズカ。実に気が利いているし湯気もホカホカだ。
そうこうするうちに電話が終わる。また汗かきゾンビと化したトレーナーは二人に告げねばならないことができてしまった。
「二人とも聞いてくれ」
「どうしたの?お煎餅のお代わりはダメよ。夕飯が食べられなくなるわ。」
「そうですよ。紅茶に砂糖とミルクはダメですカロリーオーバーです」
「そうかあ…じゃあ仕方ないなあ…エアコンの修理が明日できることになったから明日から快適に過ごせるぞ…」
会話のドッジボールの末に要件を無事伝え終えたトレーナーは今度こそやり切ったように清々しい顔をしていた。汗だくで。
「あら。そうなの。それじゃあ明日からは快適に引っ付くことができるわね。」
「でもそうすると汗を回収できませんね。困りました。」
「そうだ、修理業者さんが来るならこの前話してたカメラを仕掛けられるか聞いてみましょう。」
「ああ、それいいですね。専門家ですものね!」
「二人とも仲良いなあ」
ここでトレーナーは今更ながらの疑問をぶつけることにした。
「そもそもどうしてアヤベが緑茶でスズカが紅茶なんだ?なんかイメージカラー的には逆じゃないか?」
「何言ってるのよ。それだと私の色は青よ?青汁が飲みたいの?」
「それはそれで健康的ですけどやっぱり緑ですよ?強いて言えば…コーヒーとかどうですか?」
「そうね。今度はコーヒーにしましょう」
「じゃあ私は青汁を用意しますね。ホット青汁って美味しいんでしょうか?」
「それじゃあおやつはスルメかしら?ここで焼きながら食べましょう。」
「たぶんどっちにも合わないし結局暑くなるんだよなあ」
エアコンの修理は無事完了したしカメラは仕掛けられないと断られたそうだ。
実はアヤベさんとスズカさんと煎餅とかスルメとか硬いものが好きなんですよ。青汁は苦手です。今日は天気もいいしまあまあ暑かったから離散型ロジスティック方程式してえなあと思ってたら生えてきました。なんなんですかねこれ。これをウマ娘と呼ぶ度胸タグ案件ですかね?
最近おやつシリーズのネタが5回くらい使った出涸らしティーバッグ的にスカスカ。要はネタ切れなんですよね。なんとか搾り出した結果こんなのが生えてきた次第です。まあ初心にかえってアヤベさんとスズカさんに挟まれてえなあという思いでコンクリの割れ目からひっそりと生えてきたものということにしましょう。