アヤベさんとスズカさんとの日常   作:鉄鷲

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雨の後アヤベさんとスズカさんが濡れたままケンカするいつものオヤツです。
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アヤベさんとスズカさんと雨の後

夏も終わりに近づき天気が悪くなることが増えてくるこの頃。練習途中に突然の雨に降られたアヤベとスズカ。トレーナー室に退避して早々仲良くし始めた。

「ねえスズカさん…悪い事は言わないわ。そのままだとトレーナーさんに迷惑になるの。だから…」

「アヤベさんこそ…そう言ってトレーナーさんを困らせてますよ?だから…」

「「私がトレーナーさんに拭いてもらうの!!」」

「いいから二人ともシャワー浴びてきなさい…また風邪ひくぞ」

どうしてこの二人はいつもいつでも仲が良いのだろうか?今日も今日とて仲良く火花を散らしている。

「トレーナーさん、大丈夫よ。すぐフワフワタオルで拭いてもらうわ。大切な愛バ、つまり私を拭いてくれるのよね?」

「あ、抜け駆けはズルイです。私も拭いてください。」

「あのねぇ…残念だけどダメよ。トレーナーさんの手は二本しか無いのよ?両方とも私をフワフワで包むのに忙しくなるの。スズカさんにはフワフワを貸してあげるから自分で拭いてね。」

「フワフワは大丈夫です。自分でタオル持ってきてますから。私もトレーナーさんの愛バです。だから拭いてもらって良いはず。それに私の方が先に担当になってもらったんですよ?ここは私が先では?」

「分かった分かった。二人とも拭いてあげるからまずシャワーを浴びてきなさい。本当に風邪ひくぞ…」

まあこうなるとお互い引かないんだよなあ…変に仲が良いのにどうしてこうなる…

「まったく聞きわけが無いのね…その引かない姿勢、嫌いじゃないけどレースか練習中にしてくれる?それならいくらでも相手になるわ。」

「それはそっくり同じです。どうしていつもお姉さんぶるんですか?同い年でしょ?」

あ、それは…禁句…

「そうよ、同い年だけどスズカさんはカレンさんと同じくらいに見えるわ。」

おいおい…お互い大丈夫か?逆にそれだけ頭に血が昇ってるのかもしれん…それはそれでマズイな…

「……へえ…今日は大丈夫なんですね…」

そしてスズカの目が細まる。こういうときのスズカは…鋭すぎる。

「…何が言いたいの…?」

「おねえ…」

これ以上はダメだ!!!また同じことになる!!

「二人ともいい加減にしろ!!なんだ子供みたいに喚いて!!それでもG1ウマ娘か!!」

二人がピタリと止まる。そしてこちらを驚いたように見る。

「この前のことがあって…また風邪なんかひいて次のレースに影響したらどうする!!二人とも自分だけの身体じゃないんだぞ!大勢のファンをガッカリさせる理由がバカなケンカで風邪ひきましただと?ふざけるな!!そんな気持ちでターフに立つ気か!!G1のゲートに入れるのが何人か!そこに入りたい思いがどれだけか自分が一番知ってるだろう!!」

そこで一息いれる…

「いいか…今日はもう寮に帰ってすぐ風呂に入るんだ。そこでどうして自分は走るのかよく考えてからあがるんだぞ。それから明日は練習休みだ。自主練も禁止だからな。これは絶対だ。フジ寮長とルームメイトにも言っておく。分かったか…」

二人は一瞬戸惑いそして、

「「…はい……」」

二人はそう言って黙って出ていく…言い過ぎたかな…

 

二人が出ていったドアの鍵を閉める…

「ごめんよ二人とも…いくらでも恨んでくれていい…」

自分が恨まれるのは別にいい。またアヤベを泣かせてスズカを悪者にしてしまうより万倍マシだ…また同じように二人が傷つけあうより二人が無事ならそれでいい…

「大事な二人が元気に走ってくれればそれでいいんだ…」

今日は湿っぽいな…湿度計がよく見えない…

 

フジ寮長と二人のルームメイトに連絡を入れる。二人が抜け出さないようにしてほしい事と体調不良になっていないか見ていてほしいということを…すぐに了承してくれた旨の返信が来る。やれやれどっちがお姉さんなのか…

 

姉か…アヤベにとっては特別な関係だものな…アヤベにとってはどうして走るのか、いや、生きることさえ妹のためだった…それが無くなってしまって…どうやってかはあえて詳しく聞いてないがスズカが励ましてくれたからアヤベは壊れないで走っていられる。俺は何もできていない。

スズカが走れなくなった時はアヤベが助けてくれた。俺は手助けを少ししただけ。二人は立派なウマ娘だ。それを怒鳴るなんて…俺は救いようのないバカだ。二人に甘えていたのは俺も同じ。何とも情けない…

いけないな。腐っても俺は二人のトレーナーだ。二人が走りたいと思うなら全力でサポートしなくてどうする。しっかりしろ!とにかく練習スケジュールをたてようかな…いやその前にメンタルケアが必要だろうか…?そういえば二人に怒鳴ったことなんてあったかな?そんなこと思い返さなくたってすぐ分かること。本当に悪いことをした…二人はとてもいい子だ。アヤベはしっかりしてるし、スズカはあれでいて目が据わるときは誰よりも鋭くなる。新人の自分にはもったいない二人だ。才能の塊に甘えているのはどっちだと言われればこちらだろう。ああ…どうにも気分が湿ってしまう…結局この日は何も考えがまとまらなかった…

 

翌日も天気は下り坂、自分の気持も整理できない不甲斐ないトレーナーですまない。今日は二人とも休みにしておいて良かった。幸い今のところ風邪をひいた等の連絡は来ていない。それにはホッとする。さて、こちらは仕事をしなければ…二人のメンタルケアだ。と言ってもアスリートとはいえ年頃の少女二人のケアだ。付け焼き刃で行って拗らせたら大変だからな…慎重にやらないと…こればかりは教本通りというわけにはいかないし…こういうとき世の教師陣は大変だな…頭が下がる…

待てよ?教師陣…チームトレーナー…頭を下げる……

あ、いるじゃないかこの道のプロでしかもこちらの事情を良く知ってる先駆者が…早速バクシン…いやいや慌てるな、今度はいきなり押しかけたりしないできちんとアポを取らないと…

 

「お久しぶりです。メジロアルダンさんのトレーナーさん。あのときは申し訳有りませんでした…」

「いやいいんですよ。アドマイヤベガさんも無事復帰されたみたいで良かったです。アルダンも喜んでいました。それで、どうされました?」

「お忙しいところ大変申し訳ないのですがご相談したいことがありまして…」

相談したのはメジロのチームトレーナーもしているメジロアルダンのトレーナーさん。以前アヤベを救って貰ったときには大分無茶をしてしまって迷惑をかけてしまった…ダメ元で連絡してみるとたまたま午前中ならOKと言ってくれた…本当にありがたい。

「なるほど…二人が口論してしまいトラウマを引き起こすワードが出そうになったため止むなく怒鳴って止めてしまったと…」

「はい…身体も冷やしていましたので無理やり寮に帰してしまいました…今のところ体調に問題は無さそうなのですが…二人のメンタルが心配で…本当に悪いことをしてしまいました…」

「そうですねえ…うちのチームでもたまにあります。どうしてもそういう事は起きますよ。こればかりは仕方がない。」

やはりそうだよなあ…

「トレーナーさん。お二人は大切ですよね?」

「もちろんです!その気持ちに嘘偽りはありません!」

これだけは誰にも負けないと言える。

「それなら大丈夫です。それをお二人に正直に言ってあげてください。そして何があっても堂々として、お二人を受け止めてあげてください。やはりトレーナーが心配していては彼女たちも不安に思ってしまいます。表面上は元に戻ったように見えてもほころびが出るものです。大丈夫です。あなたはあのマッサージをすぐに覚えられるほど彼女たちが大切なのですから、思いは必ず伝わりますよ。」

そう笑顔で教えてくれた…

 

自分のトレーナー室に戻ってもう一度考える。周りを見れば二人が取った栄光の数々がある。もちろんどれも大事だが…ふと一枚の飾り気のない枠に入れた写真が目に入った。そうだ、一番大事なのは三人で撮ったなんでもない日の写真だ…これはちょうどアヤベのダービー前、スズカ曰く『アヤベさんが楽しそうで私も走りがいがある』なんて言ってくれた時だな…

 

よし…

腹を括ろうじゃないか…

 

『二人とも明日の放課後、いつもの時間に来てくれ』

 

すぐに了承のメッセージがくる。

 

翌日、天気はぐずついているが…気持ちは落ち着いている。

 

控えめなノック音のあと二人が入ってくる。やはり…どこかよそよそしいな…

「二人とも来てくれてありがとう。まずは座ってくれ。」

「はい…」

「失礼します…」

二人をソファの対面に座らせる。

「まずは二人に謝らせてほしい。怒鳴ってすまなかった。申し訳ない。」

そう言って頭をさげる。

「トレーナーさん…」

「そんな…」

「いや謝罪は当然だ。二人を傷つけてしまったのだから。」

「「…」」

二人は黙ってしまった。どう話していいのかわからないのかもしれない。当然だろう。まだ高校生なのだ。

「それでだ。俺の本心を正直に伝えたい。聞いてくれるかな?」

二人は頷いてくれた。

「この部屋には二人の努力の結果がたくさんある。アヤベのダービー。スズカの天皇賞。その他も、どれも大切だ。それは間違いない。でも、それでも俺にとって一番大切なのはこれなんだ。」

そう言ってあらかじめテーブルに置いておいた『なんでもない日の写真』を二人の前に置く。

「トレーナーさん…!」

「これって…!」

「覚えているかな?二人が楽しんで走ってくれているときの写真だよ。あの時は二人とも本当に楽しそうだった。今でも走ってるときの二人は楽しそうだけどね。」

一拍置く。二人は黙って聴いてくれている。

「二人が元気に走ってくれること。それがどんな賞より一番大事な事なんだ。それから二人が仲良くしていてくれる事も必要だ。もちろん永久に仲良しこよししてくれというわけじゃないぞ?この写真の頃か、もしくはそうだな。ちょうど二人がお互いに助け合ってもう一度走れるようになった事があっただろ?あの時みたいにお互いにリスペクトして高めあってほしい。そして俺にできる事はそのサポートでしかないけれど、二人が元気でいてくれる様子を一番側で。二人のトレーナーとして観させてほしいんだ。」

一旦二人の様子を見る。じっと聴いてくれている。その目は真剣そのものだ。

「これが俺の本心だ。聴いてくれてありがとう。でももし俺を許せないなら遠慮なく言ってくれその時は…」

「ダメよトレーナーさん。そんなの許さないわ。」

アヤベが言う。スズカは…何も言わずにアヤベの方を向く。

「トレーナーさんは何も悪くない。悪いのは意固地になっていた私よ。ごめんなさい。スズカさんにも酷い事言ってしまったわ…ごめんなさい…」

「それなら私も同じです。意地になって…アヤベさんに酷い事言おうとしてしまったんです…本当にごめんなさい…トレーナーさんにもご迷惑をおかけしました…すみませんでした…」

「二人とも…ありがとう…」

アヤベが続ける。

「それから…トレーナーさん。私もあの後お風呂で考えたの。走るのはもちろんあの娘のためもあるわ、だけどね。トレーナーさんも私の走る目的の一つなのよ?サポートしかできないなんて寂しいこと言わないで。そんなことないわ。それにスズカさん。あなたも私の目標よ?」

「私もですか?」

「そうよ、まだあなたをG1で抜かせていないわ。だから走るのを止めたりしないでね?」

そう言って微笑むアヤベ。そしてスズカも

「それなら尚更、先頭は譲れませんね。アヤベさんが追ってきてくれないとタイムが縮まりませんから。私、速いですよ?」

そう言って笑ってくれた。

やはり二人は笑顔のほうが似合うな…

 

それから少し二人と話をして、トロフィーの掃除をすることにした。雨も降ってるし、思い出話もたまにはいいだろう。やはり二人は現役ウマ娘。お互いに思い出のレースに興味があるようだ。言葉は少なくても通じるものがあるらしい。ザッと拭き終わるころにふと思いついた。

「そうだ、写真を撮らないか?ここにもう一枚追加したいんだけどどうかな?」

それはあの『なんでもない写真』の隣。

「わあ、いいですね。アヤベさんは?」

「もちろんいいわよ。この写真はちょっとぶっきらぼうすぎだしね。」

「アヤベさんらしくていいと思いますよ?キリッとしてるというんですかね。」

「あなたは目を細めるのはターフの上だけにした方がいいわよ?そういう時は鋭いんだから。」

「そうなんですか?」

「自覚は無かったのね…」

「お、二人とも窓を背景にしよう!ちょうどほら…」

窓の外を指差す。雨があがって…

 

そこには虹が出ていた。

 

写真の出来?もちろん最高だ。




実はアヤベさんとスズカさんとトレーナーさんが仲良くしてくれているのが好きなんですよね。これはこのシリーズがいつの間にか25作超えていたので…え?25作?いつの間に…とにかく総集編めいたものを作ろうかなあ…ついでだからシリアスを小さじ一杯分振りかけて…しまった間違えてバケツいっぱいぶっかけてしまった…せっかくだから箱に入れてリボンもつけて、としてたらオヤツシリーズにあるまじき長さになってしまいました。というわけなのです。そうなんですアヤベさんとスズカさんが病みやすいのはもちろんなんですけどトレーナーさんも大概なのですということをアッピルしたかったのです。
実はプロットの段階ではまたもや全然違う展開。それこそいつものオヤツだなあ…というのを考えていたのですがなんかどうにもアヤベさんを泣かせてしまう展開になってしまったので止むなくトレーナーさんに切れたナイフをしてもらいました。あ、そうだこれアヤスズ視点でもう一回使えるじゃん。というのは書き終えてこの妄文をカタカタ打ってるときに思いついたので30回目で使うかもしれませんし次かもしれませんし明日には忘れてるかもしれません。要するに何もかもが未定なのです。ただ一つ確かなのはアヤベさんとスズカさんに挟まれてえなあという思いなのです。このキャプション部分はいいことを言ってるようで別に大したこと言ってない、いつものオヤツ文書なのです。

あとここのアルダンさんとアルトレさんは神がかった善人さんなのではやく永遠刻んでください。最近目に光のないアルダンさんがマイブームなのです。
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