「「トレーナーさん!会いたかったわ!!今日こそ結婚しましょう!!あと監禁して!!」」
今日も妄言を吐きながら元気に扉を開けるアヤベとスズカ。
「「トレーナーさんがいない……」」
残念ながら愛するトレーナーは留守のようだ。しかしハンガーに彼の上着がかかっているのを本能で感じ取った二人。
「「仕方ないわ。上着で我慢しましょう」」
誘蛾灯に群がる虫の如く吸い寄せられる二人。いつも通りだとここからどっちが上着の主導権を握るかで血で血を争う戦いが始まる。その時上着から音が鳴る。
「「あら?」」
音はすぐ止んだ。見ればポケットがわずかに膨らんでいる。トレーナーのスマホだ。なんとなくそれを取り出す二人。
「スズカさん、これはトレーナーさんのスマホよね?」
「そうですね」
「ということは妻である私のスマホよね?」
「一部違いますね。妻である私たちのスマホですよ?」
「そうだったわね。思わず早まってしまったわ」
またも妄言を吐きながらトレーナーのスマホを舐めまわすように見る二人。
「アヤベさん。妻である私たちはトレーナーさんのスマホの中身を見る必要があるとは思いませんか?」
「そうよねスズカさん。ちょうどそう思ってたところよ」
という謎理論によりトレーナーの赤裸々な秘密が暴露されてしまうところなのだが…
「パスワードがかかってるわね」
「さすがトレーナーさん、セキュリティもバッチリですね。」
誰でも設定しているとは思うが…とにかくこのままでは赤裸々な秘密も見られないし監視アプリも入れられない。これは困った。
「こういうのは誕生日と相場が決まってるわ。」
早速自分の誕生日を入力する青い方。普通に弾かれる。
「違うみたいね?」
「やっぱり私の誕生日ですよ。任せてください!」
後に続く緑の方。もちろん違う。
「ダメですね?」
「これは困ったわ…まさか!!」
「そ、そんな!!」
「「私たち以外のメスの誕生日……」」
そんな最悪の想像をしてしまう二人…なんということだ、もう二人の脳内では結婚式から葬式まで済ませているというのに…許されることではない…なんとしてでもこのスマホから情報を得なければならない!と盛り上がる。
「そういえばトレーナーさんの誕生日を試してなかったわね」
「とりあえず試しましょうか」
弾かれる。
「ダメですね。」
「手強いわね。レースの記念日かしら?」
違う。
「それじゃあこの日は…」
違う。
「じゃあこっち…」
これも違う。
「いよいよお手上げですね…」
「あと残ってるのは…」
二人は顔を見合わせる。
「「チームの結成日」」
「なるほどさすがトレーナーさんね。」
「そうですね。私たちの大切な日ですからね」
早速入力する…結果は…
「「嘘でしょ…」」
残念ながら違う…
「間違えたかしら…」
「いやあ合ってますよ?」
一応前後の日も入力してみる。しかし
「「ダメ……」」
なんということだろう。全部違うらしい。
「どういうことなの…」
「そんな…結婚記念日も初デートの日もお葬式も試したのに…」
その時ガチャリとドアが開く。
「おお、二人とも来てたか」
最愛のトレーナーが帰ってきた。
「「トレーナーさん!どういうことなの!!」」
「な、なんだ、どうした…」
「スマホのロックが解けないわ!」
「そりゃパスワードがかかってるからな?というか開けようとするな」
「あらゆる日付を試したのに開かないんですよ??」
「安直に日付にしてないからな??」
「「どうして結婚記念日じゃないの??」」
「結婚してないからだよ??」
二人は驚いたように顔を見合わせてヒソヒソと
「トレーナーさんがおかしいわ。私たちと結婚してないって言ったわよ…」
「もしかして頭を打ったとか?私たちと結婚したことを覚えていないなんてあり得ません…」
「正常だよ?結婚してないからな?」
「「結婚…してない……??」」
二人は呆然と空を仰ぐ…トレーナーは二人が何を言ってるのか理解できないというかしたくない。一種の混沌が発生していた。
「トレーナーさん…落ち着いて聞いて…」
「そうです…冷静に聞いてくださいね…」
「なんとなく言いたいことは分かるけど聞こうか」
「「トレーナーさんと私たちは結婚…」」
「してないよ?」
「「……」」
「どうした…今日はやけに粘るな…」
「そっか…結婚してなかったのね…」
「そうだよ?」
「あの景色は…なんだったのでしょう…」
「どれ?どの景色?」
「「ということはもう一回結婚できるということね!!」」
「どういうことだよ…」
「どうしましょうスズカさん!今度はどこで式をあげましょうか??」
「次こそ海外じゃないですか??ハネムーンも兼ねましょう!!」
「とりあえずスマホ返してくれる?電話かかってきてたと思うんだけど…」
ようやく本来の目的であるスマホにたどり着く。二人は手を取り合ってキャーキャーと盛り上がっている。そっとスマホを回収するトレーナー。
「あ、結局スマホのパスワードは何だったの?」
「そうです。妻としてしっかり把握しておく必要がありますからね!」
「まだ引っ張るのか…しょうがないな一回だけだぞ?」
サササッと8桁ほどの数字を入力する。当然覚えられるものではない。
「ランダムに生成した数だから意味は無いよ」
「「えー……」」
「ほらトレーニングの時間だぞ。準備して。」
「「はーい」」
二人を追い払うトレーナー。
意味はあるんだよな。二人の記念日を足して割って…色々するとこうなる…特別な数字だ…
実はアヤベさんとスズカさんが病んでたり病んでなかったりするのが好きなんですよね。これはまだ本格的に論文化されてないので未発表なので誰にも気づかれてないと思うんですけど事実上明らかなので感動して咽び泣いてください。いつものおやつらしい話になりましたね。アヤスズの二人は脳内でトレーナーさんと結婚してるので実質的に夫婦なのです。トレーナーさんは諦めて判を押すべきなのに無駄にあがきますね。いけないと思います。人間諦めが肝心ですからね。そもそもアヤスズと結婚できるのに否定する必要なんて1インチもありませんよね?それなのにこのトレーナーさんはまだ無駄な抵抗をしようとしているのです。理解できません。人間がウマ娘に勝てるわけないとどこかのドイツ人が言ってましたからね。諦めて全てを差し出せば楽になれるのに全く困ったものです。