ピンクの魔人と共に   作:クー(無課金勢)

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前回に続き今回も戦闘回。

上手く書けてる気がしない。


ヒュドラ 第二形態

「クソッ……腕一本持ってかれたか」

 

 新たに現れた銀頭が放った極光をエネルギー弾を当てることによって、軌道をずらすことに成功し、オレはなんとか回避することができた。しかし、完璧に回避できたわけではない。その代償に右腕を持っていかれた。

 だが、所詮腕の一本程度。このくらいならばすぐに再生する。

 

「……ん?」

 

 一秒も経たない内に再生した右腕だが、オレには何か違和感を感じた。

 

「毒か?」

 

 なんとなくではあるが、再生を妨害されたような気がする。それに、少しだけではあるが自分の体が内側から溶けていく感覚。この感覚は今まで食らった攻撃の中では、毒が一番近い。多分あの極光自体に肉体を溶かす毒のような効果が付与されていると考えた方がいい。

 

「……相手がオレじゃなかったらやばかったな」

 

 感じられる感覚から考えれば、かなり強めの毒だと分かる。毒によって溶ける速度よりも再生速度の方が圧倒的に速いオレにとってはさほど問題ではないが、もし普通の人間が相手だったならばとっくにこの世から去っている。それほどまでの特殊効果のある極光を放つ時点でもう分かっているとは思うが、最初の六つの頭の状態よりも今の銀頭だけ方が強い。

 

 それに火力もさっきとは段違いに高い。ボスには第二形態がつきものだが、やられる側からしたらたまったものではない。

 

「それでも……負ける気はしないがな!」

 

 目の前でオレを見下ろすヒュドラにエネルギー弾を連射する。数にして約30。さっきと違い、今回は壁役の黄頭はいない。もし個体としての能力が他よりも高かったとしても、頭の数が限られている以上限界はある。オレは数で攻めることによりヒュドラよりも優位に立とうとした。

 

「なっ!? 嘘だろ!」

 

 だが、そんな予想とは裏腹に銀頭はオレの放ったエネルギー弾と同等の数の光弾を放ち、なんとそのすべてを相殺した。

 

「っ……それなら!」

 

 今度はエネルギー弾よりも火力の高いエネルギー波を放つ。しかし、それは再度放たれた極光と衝突する。また相殺される程度ならばまだいい。だが、今度はヒュドラの極光がオレのエネルギー波を押し返してきた。それはつまり、少なくとも今のオレよりもヒュドラの攻撃の方が強いことを意味する。

 

「ちっ! 火力勝負じゃこっちが不利か!」

 

 このままだといずれはこっちまで押し返される。そう理解したオレは、エネルギー波を極光を巻き込ませながら横に曲げ、大きく横に逸らす。軌道のずれた極光は近くの壁に衝突し、衝突した場所には大きな穴が開いた。今のぶつかり合いで分かったが、単純な火力勝負になる遠距離で戦うのは確実にこっちが不利だ。

 

 それならどうすればいい? 単純だ。

 

「物理で殴る!」

 

 どれだけ火力があってもあの図体じゃ素早い動きが出来るわけがない。すぐさま近距離戦に移ることを決めたオレは自分の放った極光をずらされ、体勢を崩された銀頭の目の前まで一瞬の内に接近し、下から突き上げるように顎であろう場所にアッパー食らわせる。

 

「クルゥアアン!」

 

 めちゃくちゃ硬いが、手ごたえはあった。その証拠に初めてダメージらしいダメージを受けた銀頭は怒りの声を叫びながらもオレに標準を合わせて再度極光を放とうとする。だが、この距離ならばオレの方が速い。その極光が放たれるよりも速く、オレを銀頭の真上まで移動し、足を大きく振り上げてから鼻辺りに勢いよく振り落とす。

 

「グボァアアアン!!」

 

 発動を強制的に中断された極光は銀頭の顔前で爆発する。目の前でその爆発を受けた銀頭はダメージもそうだが、それ以上に目が眩んだことによって苦しみながらも、その首をジタバタと動かして暴れている。

 

 やみくもに暴れる敵はそこに意図がない分行動を予測しずらい。それを理解しているオレは暴れる銀頭に巻き込まれないようにその場から後方に離れ、未だに目が眩んでいる銀頭にイノセンスキャノンを放つ。それは避けるという動作すら見せない銀頭に真っ直ぐと直撃し、大爆発を起こす。

 

「やっぱり、さっきより硬いな」

 

 実際に拳をぶつけてみて分かったが、あの銀頭は第一形態のタンク役だった黄頭よりも防御力が高い。今、オレの出せる最大火力の技ですら数秒よろめつかせる程度のダメージしか入っていない。

 

 しかし、数秒時間を稼げれば十分。

 オレは一度目よりも数を増やした。視界を埋め尽くすほどのエネルギー弾を放つ。だが、どれほど数を増やしたところで、銀頭はオレと同等の速度で同量の光弾を放てる。エネルギー弾がそのまま直撃するかと思われたその瞬間、視力が戻った銀頭は一瞬の内に光弾による弾幕を張り、先程と同じように全てのエネルギー弾を相殺した。……だが、それでいい。

 

 この攻撃はあくまで目眩し。防がれることは予測済みだ。

 視界をオレの放ったエネルギー弾と自身の放った光弾によって埋められていた銀頭は、反撃をするために先ほどまでオレがいた場所に向かって極光を放つ。そこにはすでにオレの姿がないことも知らずに。

 

「バーカ、後ろだ」

 

 気配を消して回り込んでいたオレは銀頭の背にくっつき、右手の親指を曲げ、他の4本の指ピンと伸ばして密着させた手刀の形で腕ごと銀頭のうなじらしき場所へと突き刺す。そして、そのまま腕が体の中に入り込んだ状態でエネルギー弾を放つ。

 

「グゥルアアアア!!!」

 

 いくら体の外が硬くとも、内側まで鍛えることなどできるはずがない。そんな生物の基本には銀頭も当てはまるようで痛みのあまり、叫びながら暴れまわっている。その痛みからすぐにでも逃れたい銀頭は必死にオレを引き剥がそうとする。勿論オレもそう簡単に離れてやるつもりはない。さらにエネルギー弾を放ちながら、銀頭の体にしがみつく。

 そんなオレをとうとう銀頭は壁に自分の体ごと叩きつけることで潰そうとする。いくらなんでも潰されるのは困る。銀頭が壁にぶつかるよりも早く、オレは自分の右腕を()()()切り離してその場を離れる。

 

「グゥルアアアアアアア!!!!!」

 

 オレがやっと自身の背中から離れたことを理解した銀頭は内側からの痛みを与えたオレに怒りの声をあげる。先程のように極光や光弾を使う程頭が回っていないのか、頭に血がのぼった銀頭は本能に身を任せてオレを噛みちぎろうと口を大きく開けながら襲いかかってくる。

 

 しかし、それを避けるつもりはない。いや、避ける意味がない。

 

 なぜなら、銀頭の攻撃がオレに届くことなど、もうないのだから。

 

「はい、おしまい」

 

 オレはそう言って銀頭の体の中に残してきた右腕を自爆させる。

 

 自爆は文字通り自分の体を爆発させる技能だが、それはオレの切り離した体の一部でも使用できる。五体満足な状態で、なおかつ全力で自爆すれば、オレの命と引き換えにこの迷宮くらいならばこっぱみじんに吹き飛ばすことすら可能な危険な技能。

 

 そんな爆発を体の一部、しかもこちらへの被害を抑えるために威力を下げているからといって体の内側からそれ受けて耐えられるはずがない。そんなオレの予想通り銀頭は断末魔すら上げる間もなく、内側からの爆発によって首の根本から粉々に砕け散った。

 

 今、オレの目の前にあるものは首から上の無いヒュドラだった魔物の死体だけだ。

 

「…………気は……完全に消えたな」

 

 先程のような失態を防ぐために今度はちゃんと気を感知して、第三形態がないことを確認する。結果、ヒュドラからは気を感じなかった。それはつまり、今度こそヒュドラが死んだという証明となる。

 

 それと同時にゴゴゴッと何かが動くような音が響いた。音の発生源はヒュドラの死体を挟んで反対側にある扉から。ヒュドラを倒したことで魔法が発動したのかひとりでに開いていく。

 

「気は……感じない。新手はなさそうだな」

 

 完全に安全とは言えないが、少なくとも敵がいないことを把握したオレはヒュドラの死体を飛び超え、開いた扉の奥へと慎重に進む。

 

 そこにあったものは、

 

「……これは」

 

 広い空間に住み心地が良さそうな住居。中にはベッドルームがある。男物と女物の服が散らばっているが、そこに関しては気にしなくていい。……気になるが気にしちゃいけない。多分R18的な何かがあったんだろうなーなんて想像するのもだめだ。

 

 いや、そんなことは本当にどうでもいい。今はどうしても無視できない問題がある。

 

「何故オレは…………ここを知っている」

 

 来たことは勿論ない。話に聞いたことがあるわけでもない。ブウの記憶にすらない。なのに、オレはこの場所を知っていた。初めて来たにも関わらずこの場所を懐かしいとすら思っている。

 

「これはデジャヴってやつでいいのか?」

 

 日本でも似たような経験自体はあった。見たこともないもの、初めて見た景色に既視感を覚える。そんな経験誰だってある。ただ、今回のコレはそのレベルで済ませられるような単純なものではない。

 以前に来たことがあると確信を持って言える。オレが記憶喪失になってこの場所のことを忘れてしまっていたと言われた方がまだ納得できるくらいだ。

 

「あそこに行かなければ」

 

 あそこ……とはどこのことなのか、オレ自身にもよく分からない。分からないまま感覚に身を任せて歩みを進めていく。

 進んでいる最中、様々の物が目に入った。天井にある人工太陽、壁一面の滝、昔は色々なものが育てられていた畑、以前は誰かが住んでいた住居、その全てにオレは見覚えがあった。

 

「ここ……だ」

 

 感覚に身を任せて歩いている内に、オレは気づけば全体的に白い石造りの住居の三階の奥の部屋まで辿り着いていた。その部屋の地面には魔法陣が刻まれ、魔法陣の向こう側には豪華な椅子。その椅子の上には豪華な宝石が飾られた黒い宝箱のような物が置いてある。

 

 そんな明らかに怪しい魔法陣にオレは何の躊躇いもなく足を踏み込んだ。その瞬間、魔法陣が光り輝き、部屋を白く染め上げる。

 

 やがて光が収まると、

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 目の前には黒いローブを着た不思議と初対面とは思えない青年が立っていた。




これにてオルクス大迷宮はクリア。まだまだハジメには会えません。
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