ピンクの魔人と共に   作:クー(無課金勢)

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ちょっとサボろう思ったら、かなりサボってた。



これからも大分不定期更新となりますが、それでも読んでいただければ幸いです。


第二章
遠ざかる再会


「おぉ……まさか太陽を目にしただけでここまで感動する日が来るとは……」

 

 ざっくりと一ヵ月くらいでオルクス大迷宮の攻略を果たしたオレは現在、【ライセン大鋏谷】と呼ばれる大陸を北と南に分ける巨大な谷の底にいた。

 

 かなり久しぶりに視界に収めた本物の太陽の眩しさに少しではあるが目が眩むも、それが地上に出たというなによりの証拠であると理解したオレの心は歓喜という感情に支配されていた。その舞い上がり具合は自分でも異常だと思う程で、外に出た瞬間にいきなり襲いかかってきた魔物共を無意識の内にオーバーキルしてしまう程だ。

 

「オレはー! 戻って来たぞー!!」

 

 

 

~クールダウン中~

 

 

 

「少し……はしゃぎ過ぎたな」

 

 テンションがハイになっていたオレが冷静さを取り戻したのは……それから約十分後のことだった。興奮するのはある程度仕方ないとはいえ、誰もいない場所であの行動は思い出すだけでも恥ずかしい。

 

「そういえば、ここは魔法が使えないんだったか? ……少し試してみるか」

 

 王宮で暮らしていた頃に座学で習った内容では、ライセン大鋏谷では魔法が使えない不思議空間だと教えられた。そのためライセン大狭谷では魔法よりも近接戦闘の方が重視されるということも。

 

 試しにこれまで使う機会のなかった念力を使ってそこら辺に転がっている魔物の死体を持ち上げようとするも……発動しない。ただ、聞いていた話とは少し違うような感じがした。

 

 座学では魔法そのものが封じられると習ったが、実際に試してみたら発動自体はしていた。ただ、発動した瞬間に強制的に魔力が分解されているだけだ。

 

「なるほどな。少し聞いてた話とは違うが魔法使いが役に立たないって話は本当そうだな。過剰に魔力を注ぎ込めればゴリ押しでいけるかもしれないが、今のオレじゃあちょっと無理か」

 

 一応オレの魔力も普通の人間と比べればチート級ではあるが、分解しきれないほどの魔力を込めて魔法を発動させるだなんて馬鹿げた芸当はまだ出来そうにない。

 

 とはいっても、分解されるのは魔力だけだ。気に関してはなんの制限を受けていない。基本的に戦闘に支障はないから大丈夫だろう。

 

「問題はこれからどこに向かうかだな……」

 

 

 

 今のオレには大雑把に分けて三つのルートがある。

 

 1.ライセン大鋏谷から抜けて、適当に進む。

 目の前にある絶壁は常人ならば超えることなど不可能であるため普通はここを登ってライセン大狭谷を抜けるなど考えもしないだろうが、舞空術を使えるオレにとっては障害でもなんでもない。これといって大きなメリットもデメリットもないがそこから先がノープランであることだけが難点だ。

 

 2.ライセン大鋏谷を樹海側に向かって進む。

 きっと安全性を求めるならばこのルートが一番だろう。樹海側ならば町も近いだろうし、いずれ帰るであろうハイリヒ王国も確か樹海側にあったはずだ。それに樹海には亜人族が隠れて暮らしているはずだ。運が良ければケモ耳の女の子達に会えるかもしれない。

 

 3.二つ目と同様、ライセン大鋏谷を通りながら真逆の砂漠側に向けて進む。

 他のルートとは違い魔物が強く、砂漠という危険地帯を通るため危険度こそ高いが、オルクス大迷宮を攻略した今のオレならば進めなくはない。

 

 

 

「さて、どうするか……」

 

 重要な選択だからこそじっくりと脳を働かせて考える。ちなみに今、ギャルゲーで攻略するヒロインを確定させる選択肢ぐらいにはガチで悩んでいる。

 

 こうして選択肢を複数上げておいてなんだが、はっきり言って一つ目はなしだ。知っての通りオレの最終目標は神を殺すことではあるが、今のオレではきっと神には歯が立たない。無様に返り討ちにあっておしまいだろう。だからこそ、オレには解放者が作った迷宮でより強い敵との戦いと新たな力がいる。

 

 オスカーから植え付けられた記憶が正しければ、その解放者が作った七大迷宮の一つがライセン大鋏谷にもある。詳しい場所はオスカーの記憶を探っても分からなかったが、間違いなくライセン大鋏谷のどこかにあることだけは確かだ。せっかく七大迷宮が近くにあるならば、探した方が効率は良い。

 

 そういうわけで、ライセン大鋏谷から離れる選択肢1はなしだ。

 

 そうなると残り二つのルートから選ぶわけだが、

 

「そういえば……樹海にある迷宮には入場制限があるんだったな」

 

 ハルツィナ樹海にある迷宮は少し特殊で、四つの迷宮を攻略した証と特定の魔法を使えることが必須条件であり、そのどちらかでも欠けていたら入ることすらできない。

 

 残念ながら今のオレではそのどちら条件にも当てはまらない。もしこの情報が本当なら運良く迷宮の入り口を見つけられたとしても多分入れないだろう。

 

 つまり、樹海側に進んだとしても無駄足となる可能性がある。

 

「……決まりだな」

 

 そうなると効率重視で考えれば、消去法で三つ目の砂漠ルートを進むのが一番だ。

 

 多分一番危険なルートだとは思う。魔物も強く、環境も厳しい。だが砂漠の中には七大迷宮の一つである火山があり、その先を進んだ海の底にももう一つ迷宮があったはずだ。海底にある迷宮にも入場制限はあったはずだが、それは火山の方の迷宮を攻略すれば解決できる程度の制限でしかない。リスクに合ったリターンはある。

 

「砂漠は……あっちだな。よし、さっさと行くか」

 

 色々と考えた結果、最も厳しい道を進むことに決めたオレは余計な魔物との戦闘を避けるため、地上を視界におさめられる程度の高度と速度を保ったまま舞空術を使い、ライセン大鋏谷沿いに西へと向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 それが、親友が進んでいった方向とは真逆だということも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ついに来ちまったよ」

 

 あれから迷宮の入り口を探しながら飛び続けること約三時間。道中襲ってきたプテラノドンのような魔物の羽を根元からへし折って地面とKISSさせてやったことを除けば概ね問題なく進めていた。

 

 ただ一つ予想外であることは、結構注意深く探したとは思うのだが、未だにオレはライセン大鋏谷にあるはずの迷宮の入り口を見つけられずにいる。

 

 そして今、オレの目の前の景色は……赤銅色の世界と言っていいほどの砂漠に染め上げられていた。

 

「これは……多分ハズレを引いたな」

 

 ここまできて七大迷宮の入口を見つけられないということは、もうほぼ確で樹海側に迷宮の入口があるとしか思えない。どうやらオレは二分の一のガチャを外したようだ。

 

 だからといって引き返すわけにもいかない。目の前の場所はまた別の七大迷宮のがあるであろう【グリューエン大砂漠】だ。ここまで来て引き返したらそれこそこれまでの移動時間が無駄になる。

 

「どうせハイリヒ王国に戻る時にまた近くを通るだろ。その時に改めて探索するとして……今は先に火山の方を探すか」

 

 それにこっちの七大迷宮は火山と名が付けられるくらいだ。きっと見た目はデカいし知名度もあるに決まってる。隠されてる迷宮を探すよりもずっと楽に見つけられるだろう。

 

「唯一の難点はこの視界でどうやって探すかだが……」

 

 目の前の砂漠は強風によって砂が舞い上がり、それこそ中に入れば以前ヤコンと戦った時の暗闇ほどではないが、視界が塞がれることぐらいは容易に予測できる。

 

 やろうと思えばこの砂嵐を吹き飛ばすくらいならできなくないだろうが、流石にそれは最後の手段だ。もし人がいれば確実に殺す自信がある。だが、現状方法が全く思いつかないのも事実だ。もう少し対策を考えてくるべきだった。

 

 

 

 それからオレはひたすらに悩んだ。視界が塞がれた状況で目的の火山を探す方法を。

 

 しばらく思考に意識を集中させていると、オレはとあることを思い出した。

 

 

 

「そういえばこの砂漠の中に国があるんだっけ?」

 

 

 

 以前、ハジメが海人族に会うためにはどこを通ってどこに行けばいいかというのを必死に調べていたのに付き合わされたことがある。その時の記憶が正しければ砂漠を越えるための中間地点としてオアシスを中心に作られた国があることをオレは思いだした。

 

 もしかしたら、この砂漠の中で暮らしているその国の住民ならば七大迷宮である火山について知っているかもしれない。自分でやみくもに探すくらいならばそこで聞き込み調査した方が現実的だ。

 

「そのためには……まずは町を探すことが先決だな」

 

 場所は分からず、視覚は頼りにならない。それでもそこが国であるならば必ずそこには人がいる。そして人がいるなら気を感じられる。つまり多くの人間の気が集まっている場所を見つければそこが国である可能性が高い。

 

 以前に比べ、気を探知できる範囲も精度も比べ物にならないほどに上達した。頑張ればこの砂漠全体を探ることすら可能だと思う。

 

「っ……」

 

 オレは目を閉じ、砂漠の中にある気の探知に意識を集中させる。範囲が広いうえ、今回は人間のみの気だけを区別して調べなければならない。今まで感じたことのない情報量に脳がパンクしそうになるが、一つ一つ整理して、確実に砂漠にいる生物の気を探っていく。

 

 

 

 大きな気が二、いや三だな。塊になって動いてる……これは魔物だな。

 

「違う」

 

 人間の気だとは思うが、一人だな。それにしてもやけに気が小さい。これは子供か?

 

「これも違う」

 

 これも人間の気か……大人が二人に子供が三人。やけに子供の気が弱ってるのが気になるが、こっち側に移動してる所を見るに町の中にいるわけじゃないな。

 

「これでもない」

 

 それからもいくつかの気の反応を除外すること約二分。ようやく目的の気を発見した。

 

「……間違いない。これだ」

 

 あまりにも人の数が多過ぎるから全員は把握できていないが、大人や子供を含めた多くの気が一つの場所に集中している。実際にこの目で確認しないことには分からないが、この規模は一つの国だと考えても不思議ではない。

 

 距離はそこまで遠くない。馬車とか使って行くなら数時間はかかるだろうが、オレが全力で飛べば10分あれば着く。どうやら今日は野宿の心配はなさそうだ。

 

「…………ん?」

 

 思いのほか上手くいきそうな流れにオレが内心ほくそ笑んでいたその時、先程探った気の中の一つである単独行動をする子供の気に違和感を感じた。

 

「まずいな……このままだと死ぬぞ」

 

 その子供は一番最初に見つけた三体の魔物が集まっている場所に向かって一直線に進んでいた。このままでは後数分もしない内に子供は魔物と鉢合わせる。気の量から考えてもどうやっても子供の方に勝ち目はない。

 

「これは流石に助けてやった方がいいよな」

 

 いくらなんでも助けられる力がありながら子供を見殺しにするほどオレも鬼畜ではない。天之川ではないが、困ってる奴がいたら助けたいと思う人間らしい感情自体を失っているつもりはない。

 

 気がかりなのは助けた後にオレの姿を見たそいつがどんな反応をするかだが、最悪の場合は助けた恩を理由に口封じすればいい。

 

 オレは今出せる全速力で舞空術を使い、その子供の元まで飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グリューエン大砂漠』

 通常では馬車などを使わなければ通ることすら困難であるほどの砂が吹き荒れ、空に輝く灼熱の太陽は多く生物から水分を奪う。一流の冒険者ですら事前の準備を怠れば命の危険すらある過酷な地。そんな砂漠を一人の少年がたった一人で歩いていた。

 

 少年の名はポポロ。

 商人である両親を持つ十代前半の少年だ。彼自身も幼い頃から両親の仕事ぶりをその目で見ていたため、将来の夢も両親と同じような商人になることであった。

 

 そんなポポロがこんな砂漠をたった一人で歩いているのには勿論理由がある。

 

 ポポロの両親は大陸でも有名な商人であり、父親に至っては大陸中を飛び回って色々な人と商売をしていた。中には王族の人間すらいるという話もある。そんな忙しい父だからこそ、ポポロ達が拠点としている町である【アンカジ公国】から長期間離れることも多々あった。

 

 そんな多忙な日々であっても、ポポロの父親はなんとか時間を作ってはポポロと母親の元へと帰り、遠出している時には頻繁に手紙も送っていた。そんな父親のことをポポロは不満に思うことはなく、むしろ尊敬していた。

 

 まさに幸せな日々を過ごしていたポポロの日常が壊れ始めたのはあの時からだった。

 

 

 

 突如、母親が謎の病によって倒れた。

 

 

 

 医者に見せても原因は不明。治癒魔法を使えるものが魔法をかけても病状の改善は見られない。頼りになる父親は現在帝国の方にまで商売に出ているため、しばらくは戻ってこれない。

 

 どんどん母親の病状は悪くなり、ついには寝床から起きることもなくなった。

 

 もはや母親の生存は絶望的、そんな状況の中で怪しい男がポポロに声をかけてきた。男の話によると、砂漠でごく稀に見つかる黒い薔薇ならばどんな病気であっても癒せる効果があり、それならば母親の体調も良くなるのではないか、という話だった。

 

 その情報を知ったポポロはたいした準備もせずに急いで外の砂漠へと向かった。両親や町の大人には一人で町の外に出てはいけないとしつこく言われていたが、今のポポロにはそんなこと考えられるほど冷静ではなかった。胡散臭い話であることを承知で信じるしかなかったのだ。

 

 しかし、子供が一人だけで乗り越えられるほどグリューエン大砂漠は優しい環境じゃない。

 

 まだ未成熟な子供の体であったポポロにはこの砂漠はかなり厳しいものだった。小さい体を無理矢理動かし、長い間砂漠を歩いていたからだろう。疲れきったポポロは目の前まで迫っていたその存在に気づくことが出来なかった。

 

 下ばかり見て歩いていたポポロがいきなり地面に現れた大きな影に気づく。不思議に思い顔を上げると。

 

「ぁ……」

 

 そこには、魔物がいた。それも一匹だけじゃない。三匹の巨大なミミズのような魔物、サンドワームがポポロを囲んでいた。その大きさと恐ろしさに思わず尻もちをつく。

 

「逃げな……きゃ…………」

 

 今すぐこの場を離れなければ死ぬ。それをすぐに理解したポポロは逃げようとするも、腰が抜けて立ち上がることすらできない。

 

 恐怖のあまり動くことすらできないポポロに向かって魔物の内の一体が大きく口を開けて襲い掛かる。

 

「ひっ! うわああぁぁぁぁ!!」

 

 もう駄目だ。自分の最期を察したポポロは襲い掛かる痛みに耐えるために目を閉じた。

 

 その直後、

 

 

 

「やらせねぇよ!」

 

 

 

 透き通ったような綺麗な女性(?)の声と共に何かの爆発音のような音が魔物の叫び声と同時に砂漠に響き渡った。そして、いつまで経ってもポポロに痛みは襲ってこない。

 

「だ、誰……」

 

 音だけではあるが、それでも誰かが自分を助けてくれたことをポポロは理解し、ゆっくりと瞼を開く。

 

 そこには……

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫だ。オレが来た以上、おまえの安全は保証する」

 

 

 

 

 

 

 どこをどう見ても女性にしか見えないのに、どこか男らしさを感じられる頼もしい背中を見せるピンク色の肌をした誰かが魔物からポポロを庇うように立っていた。




はい。ということでハジメとの再会はまだ先です。

個人的に離れ離れになった二人が強くなって再会というストーリーが気に入ってるので二人の再会を伸ばしました。

特に深い理由とかはありません。
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