「避けたか。完全に不意をついたはずだがな。流石はアレを倒しただけはある。だが、その姿ではもう私と戦うことなど不可能だろう」
背後から不意打ちでオレの腕を切り飛ばしやがった野郎はニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべながらオレを見下す。黒色の肌に尖った耳、紫色の瞳に赤髪のショートヘアーの男。人間に近い姿でありつつも人間とは異なる特徴を持つその種族にオレは心当たりがあった。
「魔人族……」
ビィズが怯えたようにそう呟く。
ビィズの言った通り、奴は魔人族だ。直接目にしたことはないが、ブウとオスカーの記憶からどんな姿なのかぐらいは理解している。そして魔人族の厄介な所はその強さにある。人間という種族の強みが数の多さだというならば、魔人族の強みとは間違いなく個体での強さだろう。
人間ほどの数はなく、亜人族のように獣の特性を所持しているわけでもない。しかし、単体での戦闘能力の高さでいえば魔人族は人間や亜人とは比べ物にならない。魔人族の子供でも人間の大人を倒せると言えばその力の差を理解できるだろう。
「ビィズ……オレが時間を稼ぐ。逃げろ」
「なっ!? いったい何を!」
「もう一度言うぞ。死にたくなければさっさと逃げろ!」
気を感じてすぐに分かったが、ビィズ達程度の強さではこの魔人族には到底及ばない。戦うにしろ、逃げるにしろ、戦力にはならない。むしろ足を引っ張る可能性すらある。そうならないために、遠ざけることが一番であると考えたのだが、オレの想定以上にビィズは石頭だった。
「断る! 領主の息子として侵入者を前に尻尾を巻いて逃げるなどというまねはできない。それに、領主以前に男としてこの場を引くことなど出来るはずがない! いくぞっ!」
「「おぉー!!」」
「ちょ、おまえら待て!」
オレの警告を無視してなんか変なテンションで武器を構え、魔人族の男に突っ込んでいくビィズと非戦闘員である医者を除いた部下二人。
その結果は、
「ぐわぁ!」
「おごぉぉ!」
「ぎゅへん!」
予想通りの返り討ち。
「いやよっわ! おまえらよくその程度の実力でかっこつけられたな!」
あまりにも弱すぎたその実力にオレも思わず心の声がそのまま出てくる。勝てるわけがないとは思っていたが、それにしても弱すぎる。魔人族の男が殺す価値すらないと判断して軽くあしらっただけなのが唯一の救いだ
「もういいから、おまえら引っ込んでろ。その程度の実力じゃあむしろ足手まといだ。おまえらが束になったところでオレの腕一本分の強さにも届かねぇよ。それにおまえは国民を守る立場だろうが。さっさとこの事態を伝えて守るべき民とやらを避難させろ」
「くっ……分かり、ました。どうか、ご無事で」
実力の差をはっきりと分からされたビィズ達であるが、体に鞭を撃ってなんとか立ち上がると、オレの言葉に納得して歯を食いしばりながらもこの場を去っていく。……いや、ちょっと待て、そこで気絶してる医者も持ってけ。なんでおまえらだけで逃げてんだよ。
オレの視線に気づいたビィズ達は思いだしたかのように「あっ!」と声を上げると、兵士が医者を肩に担いで持って行った。
「……さて、待たせて悪かったな。それにしても律儀に待ってくれるとは……もしかして見た目に似合わずお約束は守るタイプか?」
やっとビィズ達がここから去っていったことにオレは安堵し、オレ達が話し合っている間も、ビィズが逃げている時もわざわざ待ってくれた魔人族と向き合う。
「ふっ、謝罪はいらん。元よりあんな雑魚はどうでもいい。私の目的は貴様だ」
「へぇ、そんなにオレを殺したいのか?」
「いいや、そんな勿体ないことを私がするはずなかろう」
「勿体ない……ね」
すると、魔人族の男は手を大きく広げ大袈裟な動作でオレに言った。
「貴様、我々の仲間となれ!」
「……正気か? さっき思いっきり殺そうとした相手に言うセリフとは思えないな」
「ふっ、あの程度で死ぬようならば誘う価値すらない。先ほどの戦闘能力、そしてあの女を治した治癒魔法、どれも素晴らしいものだ。貴様は人間側に置いておくには惜しい。もう一度言おう。我々の仲間となれ!」
ビィズを見逃した時点でそんな提案がくることは予測していた。アンカジに来た時からどこからか監視されているような気はしていたが、あれはこの魔人族だったのだろう。仲間といいつつ、使い勝手のいい捨て駒にされる未来しかみえない。
「……はぁ、誘うと言っておきながら、オレに拒否権は与えるつもりはないんだろ。腕のないオレじゃあおまえには勝てない。だからオレの選択は実質二択。おまえ達の仲間になるか、それとも今ここで死ぬか……違うか?」
「よく分かっているではないか。ならばどうするべきが賢い選択か……理解しているのだろう?」
「あぁ、そうだな。……だが、その前におまえ達の目的を聞かせろ。最低限それぐらいは教えてくれてもいいはずだ」
「ふむ……まあ、いいだろう」
片腕が無くなり、もうオレが戦えるわけがないと思い込んでるのだろう。完全に油断しきっている魔人族の男は、自慢げに自分達の目的を語り始める。
「我らの目的は……全ての神代魔法を手に入れることだ」
「神代魔法……だと」
あまりにも想定外の単語に少し驚く。しかし、そんなオレのことなど気にもしていない様子の魔人族は話を続ける。
「神に選ばれた
「……なるほどな。大事な大事な迷宮攻略を人間ごときに邪魔されたくないから、【グリューエン大火山】に一番近いアンカジを滅ぼすために、オアシスに魔物を放って汚染させた。そういうことだな」
「やはり物分かりがいいな。その通りだ。脆弱な人間がいくら集まろうとも、あの方の障害にすら成り得ないが、その程度のことであの方の手を煩わせるのも不愉快だ」
まさか、神代魔法が目的だとは思わなかったが、これでアンカジを狙った理由については分かった。確か人間が戦争に押されている理由は魔人族が魔物を使役し始めたからだと聞いた記憶がある。神代魔法の存在を知っている以上、おそらくこの男が言う『あの方』とやらは、魔物の使役に関する神代魔法でも手に入れたのだろう。
「しかし、オアシスに魔物を放つというアイデアは良かったと思うのだが……汚染に時間がかかるのだけが欠点だな。事実、そのせいで貴様のような者に邪魔された」
「そりゃあ、悪い事をしたな」
「何、謝ることはない。この国の人間の寿命が少し伸びただけだ。それよりも、貴様のような優秀な人材が手に入ったことの方が、あの方はお喜びになるだろう」
オレの行動によってこいつの計画は狂ったようだが、アンカジを滅ぼす予定に変更はないようだ。どうせ今度は単純な力によって殺すつもりなんだろう。
「ポポロを砂漠に行かせたのは何故だ。おまえならばそんな回りくどいことしなくてもすぐに殺せただろ」
ポポロの話によると、怪しい人物から万病に効く砂漠の薔薇の情報を与えられたと言っていた。その怪しい人物というのが多分この魔人族だ。見た目が人間ではないオレですら信じたポポロが怪しいと言ったんだ。それほどまでに体中から胡散臭い雰囲気を出す奴など今のアンカジにはこの男以外にいない。
「ポポロ? ああ、あのガキか。そうだな、あの女から症状が出たことは私も想定外だった。流石に焦ったよ。万が一、女の症状を突き止められ、オアシスが汚染されるよりも早く対策されていたらと。だからあのガキには砂漠の薔薇を探してもらうことにした」
「……? どうしてそこで砂漠の薔薇が出てくる?」
話の流れが掴めきれないオレは困惑するしかない。そんなオレにニヤニヤとした気持ち悪い笑みを浮かべながら魔人族の男は言った。
「知らないのか? 砂漠の薔薇はな……人間にとって猛毒なんだよ」
「……なんだと?」
その言葉を聞いた瞬間、オレの背筋は凍った。もしポポロが運悪くオレに会わないまま砂漠の薔薇を見つけていたら、それを母親に与えていたら。あいつは今頃『親殺し』のレッテルを貼られていた。それにたとえ、ポポロが砂漠の中で命を落としたとしても、息子を失い精神的に不安定となった母親の命は短い。
どちらに転んでもこの男にはメリットしかない状況だ。
オレは目の前の魔人族を今すぐにでも殺したい感情を抑え、最後の質問をする。
「……おまえがさっきから言ってるあの方とは、誰のことだ」
「ほぉ、あの方の事を知りたいか? いいだろう。これから仲間となるのだ。それくらいは教えてやる」
どこにそんな要素があったのかは分からないが、少し上機嫌になった魔人族は高らかに宣言するようにその名を口にする。
「我らが魔人族のリーダーにして神に選ばれた英雄! それがあの方、フリード・バグアー様だ!」
『フリード・バグアー』神代魔法を手に入れた魔人族の名。オレはその名を忘れぬように心のメモ帳に記載する。そして今この瞬間、オレにとって目の前の魔人族の存在価値は無くなった。
生かしておく理由はもうない。
「そうか。ペラペラと喋ってくれて感謝する。お前が馬鹿で本当に助かった。……じゃあ、もう死んでいいぞ」
「は? 何を……」
「そういえばまださっきの勧誘に対しての返答をしてなかったな」
オレは敢えて抑えていた右腕の再生を行う。
「答えは、勿論ノーだ」
「なっ!? き、貴様、はかったな!」
「悪いな。これでも頭は回る方なんだ。パワーしかないおまえ達と違ってな」
ようやくオレの手のひらで転がされていたことを自覚した魔人族は怒りに体を震わせる。
「許さん……許さん!……許さんぞ!! 今度は二度と再生できぬよう念入りに殺してやる!!」
怨嗟の声を上げながら、魔人族の男はその手に持つ剣でオレに斬りかかろうとする。先程は不意打ちだからこそ腕を持ってかれたが、多く見積もってもオレの半分以下の気にも満たない奴の攻撃など真正面から当たるわけがない。
振り下ろされる剣をスレスレでかわし、剣を握っている魔人族の右腕を掴み、腕の根本からおもいっきり引きちぎる。
「がああぁぁぁぁ!!」
「どうした、どうした? さっきおまえがオレにやったことじゃないか。そのくらいで悲鳴なんか上げるなよ」
腕の切断面を抑えながら、魔人族は地面にみっともなく蹲る。その姿は先ほどまで自分達が人間の上位種だと自惚れていた男には到底見えない。
地面に倒れながら情けない悲鳴を上げている魔人族の腹をオレは蹴り飛ばす。
「がはっ!」
ざっと十メートルくらい吹っ飛び、地面をごろごろと転がっていく。
「おいおい、その程度か? 立てよ。自称最強種族の魔人族様がこの程度で倒れてどうする。ほら、頑張れ頑張れ!」
「ひぃ……こ、この、化け物が!」
「それは、お互い様だろっ!」
今度は顎を蹴り上げる。
もう既に男の目からは先程のような自信は見えない。今はオレという強者に怯えるただの弱者だ。その姿はイジメの被害者のようにも見えるが、許すつもりはない。この男は痛めつけるだけ痛めつけてから殺す。ポポロが感じた以上の苦しみをこの男にも味合わせてやらないと気が済まない。自分から殺してくれっと言うぐらいになれば殺してやってもいいだろう。
それから先も、地面に倒れる魔人族の顔や腹など体中を何度も何度も蹴り飛ばす。流石に金的はオレにも精神的なダメージがあるから蹴らないが、それ以外の場所はほとんど蹴った。
そして、ついには魔人族の体はボロボロになり、立ち上がるどころか、まともに動けなくなるまでにダメージを負わせた。しかし、その時、オレは背後から轟音と共に迫る存在に気づいた。それが人間の気ではないことはすぐに分かった。魔物の気、それもかなり強力な魔物だ。
すぐさま右側に転がるようにして回避する。直後、先程までオレがいた場所を一体の魔物が地面を抉りながら通り抜ける。良く見れば、その際に魔物は倒れていた魔人族を口で咥えて飛んで行った。
「ドラゴン……いや、ワイバーンに近いな」
その魔物は体長は四メートル程。緑色の鱗に全身を覆われ、長い前足には五本の鋭い爪がある。背中からは大きな翼が生えており、薄らと輝いて見えることから魔力で纏われているようだ。加えて爬虫類のような縦に割れた黄金の瞳。その姿はまさに、ゲームやアニメでよく見るワイバーンの姿だった。
このタイミング、この場所で、野生の魔物がオレを襲うわけがない。ほぼ確定ではあるが、ワイバーンの主人はあの死にぞこないなのだろう。
「ふははは! 勝負は一旦預けておいてやる! 貴様がどれだけ強くとも、我が翼竜のスピードには勝てまい! 一生かけても追いつけんぞ!」
「アホか。逃がすわけねえだろ……」
あれだけ痛めつけたにも関わらず、高笑いをする魔人族の男。たしかにあのワイバーンは速い。数秒しか経っていないにも関わらず、もう目では豆粒にしか見えないほど、遠くまで離れてしまっている。普通の相手なら追いつけるわけがない。
そう、普通の相手なら。
「よぉ、久しぶりだな」
「ば、馬鹿な……」
かかった時間は約二秒。舞空術を使ってワイバーンを追い抜いたオレは一人と一匹の目の前で停止する。きっと魔人族の男の目にはいきなり目の前にオレが現れたように見えただろう。信じられないという驚きに、ワイバーンに指示を出すことすら忘れて呆然としている。
そんなみえみえの隙を見逃してやるほどオレは甘くない。今度は逃がさないようにエネルギー弾を使ってワイバーンの片翼に大きな穴を開ける。
「これで、おまえの翼はなくなった。さて、次はどうする?」
「クソッ! ………っ、あれは!」
「おいおい、また鬼ごっこか?」
悔し気な顔をした魔人族の男は何かを発見したのか、片翼が無くなり、不安定なワイバーンを操り、地上へと向かう。一体何を見つけたのかと思い、オレがワイバーンの飛んでいった方向に視線を向けると、そこには、多くのアンカジの住人がいた。
「っ……そういうことかあのクソ野郎。ふざけんな!」
その時点であの男が何を企んでいるのか分かった。アンカジの住人を人質にするつもりだ。オレがポポロの母親を助けたことを知っているあいつならば、オレに対して人間の人質が有効であることぐらい予測してるに決まってる。
当然、そんなことをさせるわけにはいかない。オレは全速力でワイバーンに向かって飛ぶ。しかし、油断していたせいもあり、行動に移すまでに数秒手間取ってしまった。たかが数秒されど数秒、このままではオレが追いつくよりも魔人族の男が人質を取る方が速い。
そして遂に、その時は訪れた。
「動くな! それ以上こっちに来てみろ! このガキを殺すぞ!」
「ぁ……」
「クソッ! よりによっておまえか……」
人質にされた相手は……なんとポポロだった。ポポロの首元には魔人族が懐に忍ばせていたナイフが押し付けられている。利き手ではないとはいえ、少しでもその手に力を入れれば、ナイフは容易くポポロの首の皮膚を突き破るだろう。
「な、なんだ、魔人族!」
「そんな! 本当に魔人族がいるなんて!」
「お、おい、もう一人の方も人間じゃないぞ! いや、あれはもしかしてビィズ様が言っていた
まさに魔人族の情報を受け、避難している最中だったのだろう。周囲にいたアンカジの国民達はいきなり空から現れたオレ達に慌てふためいている。少々聞き捨てならない言葉を聞いた気もするが、とりあえず後でビィズを殴ることは決定した。
今はそんなことよりも、ポポロを救う方が先決だ。
「……最悪だな」
どうする。どうやればポポロを無傷で助けられる。いや、この際無傷でなくともいい。死んでさえいなければ助けられる。たとえどれほどのダメージを負っても、オレならば治せる。だが、死んでしまったらもうどうしようもない。いくら魔人ブウの力をもっていたとしても、死者を生き返らせることはまだできない。
ならば、多少傷を負ってもいい。魔人族の男がポポロにナイフを突き刺すよりも早く、オレが殺してみせる。奴の視界に映らない程の速度で、奴が知覚するよりも早く……確実に殺す。もうそれしか方法はない。
オレは魔人族の男にばれないように足に力を込める。そして隙をついて飛び出そうとしたその瞬間、
「うおおぉぉぉぉ!!」
「ぐっ…………貴様ぁ!?」
「うわっ!」
魔人族の男を腕のない右側から何者かがぶつかった。
「今だ、早く!」
それは……ビィズだった。オレばかりを警戒していた魔人族の男の隙を突いてタックルを決めやがった。先程の戦闘から分かるようにビィズと魔人族の男とでは強さに大分差があるが、今の奴はオレにボコボコされた上、ちぎられた右腕の切断面から衝撃を与えられた。いくら魔人族とはいえ、痛覚がないわけではない。あまりの痛みに魔人族の男はポポロを手に持ったナイフごと落とす。
「よくやった、ビィズ! 後は任せろ!」
そんな千載一遇のチャンスを逃してなるものか。地面を勢いよく蹴ったオレは一瞬にして魔人族の目の前まで接敵し、先ほどまでポポロの首元に押し付けられていたナイフを拾い、その頸を切断する。
「ぁ……」
胴体と頭を分断された魔人族の男は声を上げる間もなく絶命した。しかし、まだ終わりではない。主人を殺されたことで怒りに震えるワイバーンが体を引きずりながらもオレへと襲い掛かる。
「おまえには罪はないが、悪いな……」
大口を開け、今にも食らいつこうとするワイバーン。変則的な動きで襲いかかってくるならまだしも、ここまで直線的に突っ込んでこられては対応は難しくない。大きく開いた口にエネルギー弾を投げ入れ、体の内側から破裂させる。
辺りにワイバーンの肉片が飛び散り、周囲が赤く染め上げられる。
「……終わった、か」
周囲が静寂に包まれる。周りの人間達は目の前で何が起こったのかすら理解できていないのだろう。魔人族の登場に悲鳴を上げていた人物でさえも今は黙り込んでいる。
そして、オレも初めて人を殺したという現実を自身の手に握られているナイフを見ながら再認識していた。覚悟はできていたし、恐怖もなかった。それでも、こうして実際に行動に移してみるとあまり気持ちの良いものではない。
これに慣れなければいけないと思うと、少し嫌な気分になる。
そんなオレの内心を知らずに、ポツリと誰かが呟いた。
「すげぇ……魔人族を、倒しやがった」
その一言がきっかけとなったのか、オレの戦闘を見ていたアンカジの国民たちは次々と歓声の声をあげる。
「すげー! あんなでかい竜を倒しちまったぞ!」
「なんなんだ、なんなんだあの人は!」
「ビィズ様が言っていただろ! アンカジのために魔人族と戦ってくれる女神様がいるって! きっとこの方のことだ!」
「ええ、きっとそうよ! 薄紅色の肌にあの美しいお顔……きっと女神様に違いないわ!」
「おお、女神よ。我らを救っていただき、感謝いたします」
何もわかっていない者、単純にオレの強さに驚く者、やはりビィズが何か言っていたようでオレを女神扱いする者、挙句の果てにはオレに跪く者まで現れ始めた。そこに多少の違いはあろうとも、その言葉はすべて、オレを賞賛するものだった。
そんな人生最大の誉め言葉を浴びせられ続けたオレは、
「えっ……なに、これ……どうしよう……」
とてつもなく焦っていた。
それはもう先ほどの暗い気持ちなど吹き飛ばしてしまう程にはオレは焦りまくっていた。そりゃそうだ。明らかに人間じゃないこの姿でここまで賞賛されるというのは予想外過ぎる。ビィズが何か言ったのは確定だが、普通それだけでここまでなるはずがない。
そんな感じでオレがかなり混乱している中、だんだんと近づいて来る人の山に見覚えのある……というかさっき魔人族に体当たりを食らわせた男の顔が目に入った。
「お、おい、ビィズ。おまえ一体何した! というか助けろ! おまえ、オレに恩があるだろ!」
恩を返すなら今の内だぞ、っとビィズに救援を求めるがその返答は、
「……すまない」
ポポロにしたものと同じような謝罪だった。
「おまえはそれしかできねぇのか!?」
それを聞いたオレがそんな絶叫をアンカジ中に響き渡らせてしまったのは悪くないと思う。
風磨仁……悪口には耐性あるが、褒められると弱い系男子であることが発覚。
ビィズの流した噂
「聞け! アンカジの民よ! オアシス周辺に魔人族が現れた! されど恐怖する必要はない! 我らを救うため、"美"と"戦い"の女神がこの地に舞い降りた! 薄紅色の肌と美しい美貌を持った彼女ならば魔人族など敵ではない! だが、その戦いは激しいものになるだろう! すぐに宮殿に避難してくれ! あそこなら大丈夫だ!」
なぜだろう……どこかの"豊穣の女神"を思い出す。