戦闘描写を書くのはまだ下手くそですが、どうかお付き合いください。
「AAAAAaaaaaaaaaa!!」
魔法陣から突如目の前に出現したマグマの巨人は、不思議と頭の中に響く咆哮を上げながら、オレに目掛けてその手に握る巨大な斧を振り下ろしてきた。それはまるで、巨大な壁が落ちてきたのでは、と勘違いしてしまいそうになる程の規模だ。直撃すればだだでは済まないことは誰の目から見ても明らかである。
だが、幸いにもその巨体故か、攻撃速度はそこまで速くない。あの巨体からでるスピードにしては速すぎると思うが、今のオレならば余裕を持って回避ができる。
そう瞬時に判断したオレは、迫りくる斧の左側へと避けて躱す。オレが回避したことで、空を切った斧はそのままの勢いで落下し、マグマの海を切り裂いた。そして、斧に裂かれた衝撃でマグマの飛沫があがる。
しかし、ここでオレの想定を超える事態が起こった。
飛沫となって空中へと飛び散ったマグマが、まるで意思が宿ったかのように重力に逆って空中へと留ると、その形状を西洋剣のように変化させた。その数約千本。サイズこそ通常の剣と大差ないくらいではあるが、あまりにも数が多すぎる。
「お、おい……嘘だろ」
すると、空中を浮遊する大量のマグマ剣は一斉にオレへと剣先を向ける。そう、まさに照準を合わせるかのように。この時点で、オレの脳裏には嫌な予感が浮かんでいた。そして、嬉しくないことにその予感は的中することとなる。
「っ……マジかよ」
宙を浮かぶ大量のマグマ剣がオレに向かって、一斉に射出された。
「回避は……無理か、それなら!」
その数と範囲から避けることは不可能だと判断したオレは、すぐさまエネルギー波を放ちそれを橫薙ぎに振るうことで、あたかも巨大な赤紫色に輝くブレードのようにして迫りくるマグマ剣を消滅させる。
しかし、数が数であるため全てを防ぎきれたわけではない。数本ではあるが、破壊し損ねたマグマ剣がオレの体へと突き刺さる。
「うっ……クソ!」
体の内側から焼けるような痛みを感じる。ダメージはそれほどでもないが、痛みが酷い。しかも、いやらしいことに傷口が焼かれて再生が遅れている。すぐさま、オレはマグマ剣を引き抜いて傷を再生させる。
だが、その工程は確実に隙となった。一瞬ではあるものの、動きを止めたオレにマグマの巨人は再度斧を振り下ろす。ほんの僅かな一瞬ではあるけれど、反応が遅れたオレはその攻撃を避けることができずに、咄嗟に真剣白刃取りの構えで受け取めようとする。
「くっ……はああああぁぁぁ!!」
しかし、大きさもパワーも桁違いなその攻撃は、今のオレでは到底受け止めきることなどできなかった。何とか切断されることだけは避けたが、その衝撃をとてつもなく、オレは背後の壁にまで吹き飛ばされた。
そこに追撃として、オレを吹き飛ばした後に斧がマグマの海に接したことで生成されたマグマ剣が先程のように大量に射出される。壁に体を打ちつけた直後のオレにその攻撃を対処できるはずもなく、避ける動作すらできずに背後の壁に縫い付けられるかのようにして、マグマ剣が突き刺ささった。
「それ、なら……うっ!」
僅かに動きを止めるだけでも、大きな隙となる。それを、たった今身をもって理解したオレは、体のいたるところに突き刺さったマグマ剣を抜かずに体の中へと取り込んでから無理矢理消化する。これならわざわざマグマ剣を引き抜く必要もない。もちろん体力の消耗が激しいが、それは承知の上だ。
そして、壁を勢いよく蹴り、今度は斧が振り下ろされるよりも速く、オレはマグマの巨人へと接敵する。
振り上げられた斧から攻撃範囲を予測し、振り下ろされると同時に最小の移動で回避し、さらに接近する。だが、この斧の面倒なところはこれからだということは既に学んだ。
実際に食らって理解できたが、あのマグマ剣は斧自体に付与された魔法によって作られたものだ。
斧が触れたマグマは剣の形をとり、自動的に周囲の生命体に標準を定めて射出する。これは斧の力であって、そこにマグマの巨人の意思はない。あの斧がマグマに触れれば、マグマの巨人がどんな状態であろうとも、強制的に魔力を吸い取り魔法を発動させる。
だからこそ、マグマさえなければあれはただのデカい斧でしかないのだが、マグマだらけであるこの【グリューエン大火山】とは、文句を言いたくなるほどに相性がいい。まあ、だからこそ、ラスボスなんてやってるんだろうけどさ。
それでも、対処法がないわけではない。
マグマ剣は直線的な移動しかできず、標準を一度定めたら変更は不可能。つまり、一度標準を定めた以上、何かに直撃するまで真っすぐ飛び続けるってことだ。この仕組みさえ分かっていれば、対応策は簡単に思いつく。
マグマの巨人の数メートル前にまで近づいたオレは、その頭を高く飛び越え、既に新しく形成されたマグマ剣との射線上にマグマの巨人がくるよう背中側へと移動する。その直後、オレに狙いを定めたマグマ剣が高速で迫る。
しかし、それがオレに届くことはない。こちらに迫るマグマ剣は全て、射線上にいたマグマの巨人へと突き刺さる。対処法といってもこの通り、射線上に障害物を用意する程度のことではあるが、今のところはこれが最善手に違いない。
「それにしても……やっぱりダメージはなしか……」
こうなるとは思っていたが、案の定、体中にマグマ剣が突き刺さったマグマ巨人にダメージが入った様子はない。元から体にマグマを纏っているから今更少しくらいマグマが体に刺さったとしても、そう問題はないのだろうが、もう少し痛がってくれてもいいだろ。
全く顔色を変えないマグマの巨人は背後にいるオレに向かって振り返りざまに斧を横薙ぎに振るう。
相変わらずバカでかい攻撃範囲ではあるが、回避は振り下ろされる時よりも簡単だ。高度を少し上げて回避し、斧の上に着地する。そして、斧を踏み台にすることでさらに勢いをつけてマグマの巨人へとさらに近づく。
火力は確実にマグマの巨人の方が上、だがスピードにおいてはオレが上回っている。それを利用して、オレはマグマの巨人が次の動作に移るよりも速くその顔前にまでオレは接近して、光のない目に向かって両手で全力のエネルギー波を放つ。
目は全生物にとっての弱点。少なくともそう考えているオレは、武道家的には卑怯だが躊躇うことなくその攻撃を選んだ。
「……は?」
しかし、放たれたエネルギー波は目玉を破壊することはなく、そのままマグマの巨人の目に吸い込まれていった。いや違う。吸い込まれていったんじゃない。当たらなかったんだ。まるでそこに
「こいつ……目がないのか!?」
マグマの巨人の顔をオレは最初に『埴輪のような』と表現したが、その目は本当に埴輪のように空洞だった。光のない瞳だと思っていたそれは、マグマの巨人の体の内部そのものだということだ。
「っ……今度は何をするつもりだ」
エネルギー波をまるでなんでもないかのようにその目で呑み込んだマグマの巨人は、何故か目の前にいるオレを攻撃するわけでもなく、武器の持っていない左手でマグマを掬いはじめた。
何をしているのか分からないが、ここにきて無意味な行動をするはずもない。何が来ようとも、いつでも対応できるように、オレはマグマの巨人から距離を取る。
その直後、
「はぁ!? おいおい、嘘だろ。これは一体どういう原理だ」
マグマの巨人の大きな手によって掬いあげられたマグマは一瞬ピカッと光ったかと思うと、オレが先程まで戦っていたマグマ蛇となって襲い掛かってきた。
その数三体。強い魔物ではないし、数も多くない。それに、どうやら先程戦ったマグマ蛇よりも弱い個体だったからこそエネルギー弾で瞬殺できたが、まさかの生物を作り出すとかいう想定外過ぎる能力にオレは思わず動揺する。
「っ……やばっ!?」
想定外の事態にオレが思考を停止していると、いつの間にか目の前にまで巨大な斧が近づいてきていた。そこでようやく脳が再起動する。このタイミングでは舞空術による回避は不可能だと察したオレは、自分に向かってエネルギー弾を当て、体を吹き飛ばすことでなんとか回避に成功する。
正直言って、今のはかなりやばかった。0.1秒反応に遅れていれば直撃は避けられなかっただろう。
しかし、ここで天井近くにいたことが悪く働いた。空中を川のように流れるマグマに斧が直撃し、新たに作られたマグマ剣がオレへと襲い掛かる。といっても、マグマの海の時と比べればまだマシだ。数が数百本程度しかない。オレは一瞬の内に全てのマグマ剣の軌道を予測し、回避する。
「ああもう、少しは休憩させろ!」
だが、攻撃の手が緩む様子はない。今度はいつの間にか新しく作られていた三体のマグマ蛇とその背後から斧を振り下ろそうとするマグマの巨人が襲い掛かる。恐らく、どちらかの対処を優先すれば、もう一方への対応が遅れるだろう。
ならば、方法は一つ。
「まとめて吹っ飛べ、デカブツがぁ!」
マグマ蛇三体とマグマの巨人、その両方に当たる位置を狙ってイノセンスキャノンを放つ。両手から放たれた巨大な光球はマグマ蛇達を容易く消し去り、その背後から振り下ろされた斧と衝突する。
強力な攻撃同士のぶつかり合い。それは数秒間もの間拮抗したものの、すぐにその決着はついた。
「なっ!?」
オレの放った光球が切断されるという形で。
イノセンスキャノンによって多少勢いが収まったとはいえ、未だ十分過ぎるほどの威力を保ったままの斧が、切り裂いた光球の背後にいたオレへと襲い掛かる。まさか押し負けるとは思いもよらなかったオレは、振り下ろされた斧に真正面から直撃し、その衝撃によって地面へと叩きつけられた。
「クソッ……はぁはぁ、馬鹿力が」
叩きつけられた場所が最初に降りてきた階段付近の場所であったのは幸運だっただろう。もしも他の場所であったなら、足場ごとオレはマグマの海に落とされていたに違いない。死ぬことはないだろうが、どれだけ再生しようとも永遠に焼かれ続ければ、それはもう死んでいるのと変わらない。
「この技も通らないのかよ……接近戦はどう考えても不利、かといって遠距離で戦ってもあのマグマ剣を対処できる自信はない、これは思った以上にまずい状況だな。どうしよう、勝てないかも……」
できれば弱音を吐きたくなかったが、本当に勝てるイメージが湧かない。勿論負けるつもりなどさらさらないが、実際勝てるかどうかは別の話だ。認めたくはないが、今この場においては、マグマの巨人はオレよりも強い。
それを理解したからこそ、オレが勝てる方法は限られてくる。
「……内側からぶっ壊すか」
以前、【オルクス大迷宮】のラスボスであるヒュドラを倒した時にも行った体内自爆戦法。それをやるしかない。あの時と比べれば気の総量もかなり増えているが、それでもあの巨体を粉々にするくらいに吹き飛ばすには、体の半分くらいは犠牲にする必要がある。
唯一の懸念点は、この迷宮ごとぶっ壊しかねないことだが、そこに関してはやっちまったらやっちまったで仕方ない。後から考えよう。
一応選択肢には、この方法以外にも迷宮に被害がなく、楽に勝てる方法があるにはあるのだが、アレを使って勝つのはオレのプライドが許さない。本当に最後の手段だ。だからこそ、迷宮破壊の危険性があってもオレはこの選択を選んだ。
「そうと決まれば……狙いは一つ!」
覚悟を決めたオレは、すぐさま起き上がってマグマの巨人に向かって舞空術を使って接近する。目標は目か口、マグマの巨人の体内へと入れるならばどちらでもいい。オレはさらに加速する。
しかし、当然オレが立て直している間、敵がおとなしく待ってくれていたはずもない。目の前には三体のマグマ蛇に視界を埋め尽くすほど大量のマグマ剣。きっちりと準備を整えて待っていやがった。埴輪のような顔の癖にオレを嘲笑っているのが、なんとなく理解できてしまう。
まず、視界中に広がるマグマ剣がオレに射出される。
それをオレはエネルギー弾の弾幕を張ることで防ぎ、マグマの巨人へと向かって全速力で飛ぶ。それでも全てを対処できるわけではないが、そこは潔く受け入れるしかない。再生のゴリ押しで十分カバーできる範囲ならば許容範囲内だ。今は最短距離でマグマの巨人に辿り着けさえすればそれでいい。
しかし、それを妨害するかのようにオレの前をマグマ蛇達が遮る。
「邪魔だ! おまえらに用はない!」
一秒でも早くマグマの巨人まで辿り着くため、今までで一番気を込めたイノセンスキャノンを放つ。直径十メートル程もあるその巨大な光球は目の前のマグマ蛇だけでなく、その背後から迫っていたマグマ剣をも巻き込んで大爆発を引き起こす。
その瞬間、一瞬ではあるものの、オレとマグマの巨人との間に道ができた。数秒もすれば今もなお増え続けているマグマ剣やマグマ蛇達によって塞がれてしまうであろうが、このチャンスを逃してはならない。オレはさらに速度を上昇させる。
四方八方から飛んでくるマグマ剣に体中を貫かれ、体中に激痛が走るが、その痛みを無視して、オレは全くスピードを下げずに飛び続けた。
そして、
「オレの体半分とおまえの命、交換させてもらう!」
ついに、マグマの巨人の顔前にまで辿り着いた。
あとは体の中に入ってオレが死なない程度で自爆すればいい。そうして、オレが口の中へと飛び込もうとしたその瞬間……それは起きた。
「ぇ……」
マグマの巨人の口の中が、わずかに光ったような気がした時にはもう手遅れだった。回避の動作を移ろうとするも間に合わず、オレはマグマの巨人の口内から放たれた極太の赤く輝く光線に包まれ、そのまま真下にあるマグマの海へと撃ち落とされた。
マグマの巨人のイメージは『Fate/Grand Order』に登場する雑魚エネミーである黒巨人を赤くして、デカい斧を持たせて、埴輪みたいな顔を付けた感じです。
かなり分かりづらいと思いますが、本文で全くイメージが湧かなかった方は少し調べてみてください。