「雫はハジメの嫁だ! それ以外はあり得ねえ!」という人はブラウザバックを推奨します。
俺達がこのトータスと呼ばれる異世界に召喚された次の日、早速訓練と座学が始まった。
集まった俺達に、手のひら大の銀色のプレートが配られる。不思議そうに配られたプレートを眺めていると、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。やはり世界を救う勇者というのはかなり重要なポジションであり、騎士団長自らが指導をしてくれるらしい。
そんな重要な人物を俺達の指導係にして国は大丈夫なのか? とも思ったが、メルド団長本人はむしろ面倒な雑事を部下に押し付ける理由ができて助かったと豪快に笑っていた。それでいいのか騎士団長。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方でメルド団長は説明を続ける。このプレートに血を垂らすことで所有者登録を行うこと。所持者のステータスをゲームのように表示してくれる便利なアーティファクトというものであるが、原理は不明であることなど。
説明はほどほどに各自、ステータスプレートに血を擦り付け表示されるステータスを確認していった。どうでもいいかもしれないが、血を出すためとはいえいきなりナイフを手渡すのはどうかと思う。
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風磨仁 17歳 男 レベル:1
天職:武闘家
筋力:100
体力:300
耐性:5
敏捷:80
魔力:30
魔耐:5
技能:体内エネルギー操作・舞空術・言語理解
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「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に"レベル"があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
どうやら某RPGみたいに敵を倒すと自動でレベルが上がるシステムではないようだ。レベルに伴ってステータスが上がるんじゃなくて、ステータスが上がると高いレベルという称号が貰える程度の認識でいいだろう。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前達用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」
その例でいくと戦士よりも魔法使いの方が成長速度が早いのだろうか。なんとなく魔法使いは大器晩成型だと思ってたから少し予想外だった。
「次に"天職"ってのがあるだろう? それは言うなれば"才能"だ。末尾にある"技能"と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
天職……武闘家。
なるほどつまり俺は異世界に来たにも関わらず、素手で戦えと。魔法使いたかった。
「後はそうだな、各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! 後ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
平均が10か。そう考えるとこのステータスはめちゃくちゃ尖ってる。平均の半分しかないのもあれば、30倍はあるのもある。長所と短所がはっきりしてるタイプだな。まあ、万能キャラより一点特化のキャラの方が強いこともあるし大丈夫だろ。
そんなことを考えながら周りを見渡すと、クラスメイト達はお互いのプレートを交換して見せ合っている。そんな中でただ1人、ハジメだけが冷や汗をかきながら周囲を見渡していた。察するに俺とは違い、悪い意味でステータスがヤバかったんだろう。
そんなハジメに憐れみの視線を向けていると、自分のステータスを確認した八重樫が声をかけてきた。
「ねえ、仁。貴方のステータスはどんな感じだったの? 私のも見せるから見せてくれない?」
渡されたプレートを見ると、天職は戦闘系天職である剣士と書かれており、他と比較して敏捷の値が抜けて高い。八重樫らしいといえばらしいステータスだった。
「……やっぱり日本での経験が影響してるみたいだな。俺のもこんな感じだし」
「武闘家……そういえば習ってたわね」
「一週間だけお試しでな。あの程度で習ってた判定されたらガチ勢がキレるぞ?」
確かに親に強制的に武道を習わされたことはあったが、本当に触る程度にしか習ってない。それに昔過ぎて今ではほとんど忘れている。正直、武闘家と自信をもって名乗れるほどのものではない。
俺と八重樫がそんな風に互いのプレートを交換していると、メルド団長がとある人物のステータスをみて大きな反応をみせた。その人物は、視線を向ける前からなんとなく予想は出来てはいたが、やっぱり天之川だった。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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それはまさにお手本のようなチートだった。
「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に3桁か……技能も普通は2つ3つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
異世界であっても天之河の主人公体質は相変わらずらしい。例を出すならば、メルド団長のレベルは62で、ステータス平均は300前後だ。この様子じゃレベルの上昇次第ですぐに追い抜く。
その後もクラスメイト達は様々な戦闘織についており、天之河ほどではないにしろこの世界では十分強力な戦力になるとメルド団長もウキウキしていた。
そうこうしている内に俺の順番がやって来た。とりあえずステータスプレートをメルド団長に渡す。
「なるほど、武闘家か。その割には耐久が低いが……しかしこのステータスは凄いぞ。体力だけなら光輝よりも上だ。これは期待できるな」
かなり尖ってはいたが、やはり俺のステータスは良い方だったようだ。技能に関してはメルド団長も知らなかったが、騎士団の人が調査してくれるらしい。
そしてハジメの番になった時、強力な戦力の誕生に喜んでいたメルド団長の笑顔が固まった。そして見間違えたと言わんばかりにプレートを軽く叩いたり光に翳していたが、最終的に微妙そうな顔をしながらハジメへ返却する。
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
良くはないとは思っていたが、ハジメはまさかの非戦闘職だった。この戦闘職軍団の中で非戦闘職というのもある意味珍しいが、ハジメからしてみれば不幸としかいいようがない。
なぜならこんな絶好のいじれる機会を檜山達が見逃さないわけがない。案の定ニヤニヤと笑いながらハジメに近づいていく姿が見える。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦闘系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組む。見渡せば、周りの生徒達……特に男子はニヤニヤと嗤っている。
「……嫌な空気ね」
「そうだな。メルド団長も少しくらいフォローしてくれてもいいものを」
「……私の方から止めるように言った方がいいかしら?」
「八重樫が行ったら余計酷くなるからやめておけ。それに今この状況なら俺達よりも適任な相手がいる」
八重樫はおそらく善意で提案しているのであろうが、ここで白崎だけじゃなく八重樫までハジメ側にいるなんてことになったら男女含めた全てのクラスメイトからハジメはヘイトを向けられる。それはハジメも本意ではない。それに俺達が動くまでもなくこの問題は解決する。
何故なら……
「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」
生徒同士のいじめをあの畑山先生が見て見ぬふりをするはずがない。小さい体で精一杯怒りを表現する畑山先生に檜山も毒気が抜かれたのかプレートをハジメに返す。異世界に来る前でさえも、他の教師がハジメに対するいじめを黙認していたにも関わらず畑山先生だけはハジメを気にかけていてくれていた。当の被害者側であるハジメは一度も相談することはなかったが。
「見た目はあれでも先生だしな」
「ふふ、確かにそうね。でも……どうやら南雲くんは止めを刺されちゃったみたいよ」
檜山がプレートを返したまでは良かったが、畑山先生はハジメを励ますために同じ非戦闘職である自分のステータスを見せた。戦えない人間が一人ではないと教えることで安心させようとしたのだろう。畑山先生の言葉を聞き、ハジメも自分一人ではないことを安心したような顔へと変わった。……魔力だけなら勇者に匹敵したステータスと今までで一番多い技能数を見るまでは。
上げてから落とすとはまさにこのことで、期待を見事に裏切られたハジメのダメージが大きい。焦点のあっていない目で虚空ひたすら見つめながら乾いた笑みを浮かべている。そんなハジメに畑山先生はあたふたとした様子で声をかけている。
「あー……うん。これは予想外だ」
次回から少しづつドラゴンボール要素は出していくつもりです。