「……は……はぁ?」
「ちょっと~、なんか感想とかないの? 具体的にはこのちょ~かっこいい名前とか、このイカしたポーズについてとかさぁ」
清楚美人の外見で謎の決めポーズをし、『人造人間
一応、今この状況は客観的な目線で見ると、解放者唯一の生き残りとその解放者を殺しまくった魔人との宿命の戦い的な感じになるんだろう。しかし、オレはここで敢えて問いたい。何故この状況でその戦隊モノポーズと名乗りを選んだ。
「これは……ギャグとして捉えるべきか? それともシリアスか?」
残念ながら、オレは瞬時にギャグかシリアスか判断する能力を持ち合わせていない。故に、先程まで嫌悪感マシマシに向けて来た相手が急にノリノリでポーズを決めてきたとしても、どう反応するのが正解かなんて分かるわけがない。
「あのねぇ~、コミュニケーションも取れないの? まったく、これだからあのクソ野郎の下っ端は……美的センスの欠片もない……」
いつまで経っても望んだ反応が返ってこないからか、オレを小馬鹿にするようにミレディは肩をすくめて「やれやれ」と言いたげな反応を見せる。……それでも目だけが笑っていないのはちょっとホラーだ。どうやら、ミレディの瞳に輝きが戻るのはあのポーズを決めている間限定らしい。謎過ぎるだろ。
今更この程度のことで心を乱す程やわでもないが、オスカーの記憶からよく知っているあの顔でやられるとどうしても複雑な気分になってしまう。あくまで記憶を持っているだけで感情まで共有してるわけじゃないから、別にオレ自身がどうこうとかではないんだが、なんとなく記憶と異なる雰囲気に戸惑いを避けられない。
オレは取り合えずギャグかシリアスか考えることを一旦止め、話題を変更させる。
「悪かった、驚きのあまり言葉も出なかったってことで許してくれ。こういう状況には慣れてないんだよ。それよりも、人造人間……だったか? 文字通りで考えれば人の手で作った人間ってことになるが……今のおまえはどこからどう見ても血肉のある人間にしか見えない。どこが『人造』なんだ?」
「んん~、さっきから気になってたけど、どうしてお前が私のこと知ってるのかなぁ? 私は人間だった頃に直接会ったことはないはずなんだけどぉ~」
人造人間という割には全然メカメカしくないミレディにそんな当たり前の疑問を述べるも、ミレディは質問を質問で返すように不快そうな表情でそんな事を聞いてきた。確かに、封印される前のブウとミレディには多分接点がない。
ブウ自身、解放者のことは壊してもいいおもちゃ程度にしか認識していなかったため、忘れてる可能性も大いにあるが、少なくともオレが受け継いだブウの記憶の中にはミレディらしき人物との関わりはなかった。
ただ、オレが所持している記憶はブウのものだけではない。そう、解放者の一人、オスカー・オルクスの記憶だ。こちらは『記憶』というよりは『記録』に近いが、ミレディのことを知ったのはそっちの方だ。ブウとオスカーの関係性を知らない人物からしてみれば、疑問に感じるのも仕方ない。
「んん~、知りたい? そんなに知りたいかなぁ?」
「うわぁ、気持ち悪っ……」
「……いや、おまえそれは違うだろ」
別に普通に答えてやってもよかったのだが、嫌がらせの意味も込めてミレディの口調を真似て二ヤついた表情と声音で話してやったら、まさかのガチトーンで嫌悪感満載な言葉が返ってきた。かなり完成度高くできたと思うから、同族嫌悪でも発症したのだろう。
「本当にめんどくさい奴だな、おまえ。まあいい、教えてやる。でも、相手のことを知りたいなら、礼儀としてまずは自分の方から話すべきだろ。オレですら分かる最低限の礼儀を人間モドキであるおまえが理解できないのか?」
「はぁ……なにこいつぅ、ちょう偉そうなんだけどぉ。そもそも~、ちょっと気になっただけで、私は別に知らなくても問題ないしぃ。でも~、君が頭を下げてどうしてもって言うなら考えてあげなくもないよ~」
「自分の秘密を話すから貴女の秘密も教えて?」という提案を快く受けた上で、なんの罪悪感もなく相手の秘密を知った途端にとんずらするのがミレディという女だ。絶対にこちらから情報を開示してはいけない。
もししてしまえば、お互いに好きな女の子の名前を教え合ったものの、自分だけがガチだった時の男子小学生のようになる。それだけはオレのプライドが許さない。
だからこそ、オレはミレディが必ず食いついてくるであろう餌をぶら下げる。
「いいのか、知らなくて? この話には一応、おまえのお仲間も関わってるんだぞ」
「……なに?」
「おお……怖い怖い。そう睨むなって、もっと穏便にいこうぜ」
仲間――つまりは解放者。それが関係しているとなれば、ミレディにとって喉から手が出る程とまではいかなくとも、絶対に知りたい情報ではあるはずだ。それを知った上でちらつかせると、ミレディは完全に感情の消えた顔でオレを睨む。
「いいから言いなよ。これ以上私を怒らせない方がいいよ……」
「おいおい、順序が違うぜ。最初がおまえ次にオレだ」
これ以上と言うように、既に頭にはきてるのだろう。多分、オレがこの迷宮に来た時から怒りは沸々と溜まっていたはずだ。解放者のリーダーともあろう者が殺気を隠しきれていないのだから、その怒りは相当のものに思える。
それでも、故人とはいえ仲間の情報はどうしても知りたかったのだろう。ミレディは不機嫌なことを隠しもせず、オレに聞こえるように舌打ちをしてから、苛立ちげに話し始めた。
「さっきも言ったけど……この体はミレディ・ライセンだった人間の細胞から複製して生み出したものだよ。それを"神代魔法"と単純な科学力で無理矢理改造して、人間のままじゃ耐えられないちょ~すごい魔法とか身体能力とかを与えて、色々パワーアップさせたの。姿が変わってないのは私が天才だからだね! 後は魂をこの体に定着させれば、はい解決って感じ。どう、馬鹿なお前でも納得できたんじゃない?」
「なるほどな。要約すると自分のクローン改造して乗り移ったって感じか。中々面白いことを考える。この時代の人間じゃまず思いつかないアイデアだ」
ミレディは自分を天才と称しているが、きっとその自己判定は間違っていない。
いくら魔法があるこの世界とはいえ、人の手で人を作るなんてことは不可能に等しい。それこそ、神ですらできるか危うい高等技術だ。これが、科学の発展した日本ならば、まだ可能性があったかもしれないが、こっちの世界ではその考えに至る者すらいない。
それを魔法と科学を重ね合わせるという方法で実現したのだから、ミレディの才能は本物と言っていい。
この話を信じるならば、目の前の存在は魂だけとはいえミレディ・ライセン本人だと考えて問題ないだろう。ほぼ自分と同一の存在を作って改造するという発想については驚きを隠せないが、それならば神代の時代から生き続けていてもおかしくない。
気を感じないことに関しては完全に推測でしかないが、そもそも人工物であるため、気そのものが存在しない。そう考えれば納得もいく。
どれだけ気の操作が上手くとも、この世界にはオレのように気の大きさを完全にゼロに出来る者はいない。しかし、元から気なんてものがなければ、オレの探知に引っかかるわけがない。
そんな思考の海にオレが沈んでいると、ミレディは先程までとは変わり不思議そうに問いかけてきた。その瞳に光がないのは相変わらずであるけれど。
「ねぇ……お前ってそんな理性的だったっけ? ほら、もっとこう……「とりあえず死ねー!」とか「よく分かんないけどぶっ壊す!」的な脳筋キャラだったような気がするんだけど」
「……否定はしない」
今更になって、ミレディはオレが本来のブウと比べて理性がはっきりしていることに疑問を感じたのだろう。
ブウからしてみればミレディはコソコソ隠れる解放者の一人という認識でしかなかったが、ミレディの方は違う。自分達の命を圧倒的な強さを持った化け物が狙っているのだから、戦ったことはなくともその情報くらいは持っているはずだ。
だからこそ、知っているのだろう。魔人ブウの悪い意味で純粋な性格を、どれだけの被害を出したのかも含めて。
オスカーによって善性を手に入れる前のブウは神に言われたことをそのまま信じて破壊と殺戮を遊びの一環として楽しんでいた。そして余計な知識を与えられなかったため、ブウは悪行を悪行として認識しないまま生きて続けていた。
それをよく知っているミレディからしてみれば、普通の人間と遜色ないレベルの知性と価値観を持っている今のオレの姿はさぞ異常に映るだろう。
「今のオレは昔とは少し違ってな。理性を手に入れたんだ。まあ、おまえが違和感を抱いてもそれは仕方ない。事実、姿も前とは変わってるしな」
「理性を……一体どうやって?」
「いいぜ、教えてやろう。きっと、さっきの疑問の答えにもなるだろうからな」
相手の情報が知れたのなら、オレもこれ以上隠し事をするつもりはない。オレはゆっくりとミレディに話した。
「魔人ブウとしてのこの体には"吸収"と呼ばれる能力がある。効果は名前の通り、生物を体ごと自分の体内に取り込み、その力、能力、知識を全て奪うことだ。これだけ説明すれば……賢いおまえならオレがどうやって理性を手に入れたか、理解できるんじゃないか?」
「……誰から、奪った」
"吸収"の説明を聞いたミレディはすぐに察したのだろう。誰かから知識を奪った結果、今のオレが生まれたということを。そして、その奪われた誰かは『ミレディ・ライセンを良く知る人物』であるということを。
「さあ、誰だろうな。オレも昔のことはよく覚えてない。ただ、神に封印される少し前、無謀にもブウに挑んできた哀れな解放者が一人いたな。確かあいつの名前は……」
そうして、敢えてもったいつけてから言った。
「――オスカー・オルクス」
「っ……死ね!」
その瞬間、ミレディは掌をこちらに向けてくると、先程オレの腕を奪ったミニブラックホールをまるでオレが使うエネルギー弾のように放ってきた。
周囲のあらゆるものを吸い込み、粉砕する黒く渦巻く球体が迫る。しかし、不意打ちでもなければこの程度の攻撃を躱すのはそう難しいことではない。余裕を持って回避することでその吸い込み範囲から逃れ、ミレディから大きく距離を取る。
「いきなりやってくれたな。意外に仲間想いなところもあるじゃないか。まあいい、どうせ平和的な解決は無理なんだ。思う存分殺し合おう!」
オレは距離を取った状態を維持し、挨拶代わりに右手に生み出したエネルギー弾を放り投げる。それを驚くことにミレディは腕を横に振るうことで素手で弾いた。身体能力とか色々パワーアップしたと言っていたが、どうやらオレのエネルギー弾を軽々と弾けるくらいはあるらしい。
「……へぇ、やるな」
「そっちは意外とたいしたことないんだね~?」
そんなオレ達の言葉がきっかけとなり、戦いの火蓋は切られた。
先に動きだしたのは、ミレディだった。詠唱もなしにミニブラックホールを両手から大量に連射する。その速さと連射速度はまるでマシンガンかのようだ。範囲、量共に規格外なミニブラックホールをオレは広大な空間を活かし、高速で飛び回ることで、ミレディからさらに距離を取りながら回避する。
逃げ回るオレを追いながら、ミレディはミニブラックホールを放ち続けてくる。どうやら、このミニブラックホールにはちょっとした追尾機能があるようで、ミレディの手元から離れているにも関わらず、僅かに軌道を変えて襲い掛かってくる。
それでも、直角に曲がってきたりといった不規則な動きはしていない。せいぜい、オレが真横に避けたら十五度ほど角度を変えてくる程度のものだ。余裕をもって回避していれば当たることはない。
しかし、どれだけ逃げようとも、攻撃は一向に緩む気配がない。まるで無尽蔵の魔力があるかのように、視界中から黒い球体が迫ってくる。
「……埒があかないな」
回避にそう苦労はしないが、このまま逃げ続けても戦況は一向に変わらない。とはいえ、このミニブラックホールを無視するわけにもいかない。いくらでも再生できるため、肉体的な防御力がそう高くないオレと、吸い込み、塵一つ残らないレベルで分解するという性質を持つこの魔法ははっきり言って相性が悪い。
オレはエネルギー波を放ち、それを横薙ぎ振るうことで迫りくるミニブラックホールを全て破壊する。
当たるわけにはいかない。ならば、当たる前に壊せばいい。簡単な話だ。
近くにある全てを吸い込むこの黒球だが、込められた魔力を超える程のエネルギーの塊を直接ぶつけてしまえば消滅する。所詮魔力から作られた魔法であるため、より強いエネルギーには勝てるわけがない。
迫りくる攻撃を破壊することに成功し、笑みを浮かべたオレだったが、安心するのはまだ早かった。
「そう来ると思ってたよ!」
気づけば背後に回っていたミレディのオーバーヘッドキックを脳天に受け、真下に蹴り飛ばされた。ミニブラックホールだけに意識がいっていた分、ミレディ本人の警戒が疎かになったのだ。忘れそうになっていたが、今のミレディからは気を感じられない。もっと警戒心を引き上げた方がいい。
「ッ……! ハハッ、オレに近接戦で挑むか!」
「うっ……ごはっ!」
しかし、この距離での戦いとなればオレの戦場だ。
すぐさま空中で体勢を立て直し、蹴りを入れてきたミレディにボディブローを浴びせる。女の腹を殴ることに抵抗感はあったものの、どう考えても女――というより人間にしては硬すぎる。鉄なんかより全然硬い。それでも、オレの拳はミレディの腹にめり込み、口から吐血する。
続いて額に頭突きを叩き込んでから、ダブルスレッジハンマーで叩き落す。しかし、真下に吹き飛んでいくミレディは体勢が変わっていないのに空中で急停止すると、オレに向かって
それから、剣と魔法のファンタジー世界にしては相応しくない打撃戦が始まった。
「はぁああああああっ!!」
「やぁああああああっ!!」
どれだけ拳を繰り出そうとも、まるで反発する磁石のようにオレの拳がミレディから離れようとし、攻撃が鈍り、防御または回避される。対照的にミレディの方の攻撃はパンチも蹴りも想定より速く、そして重い。今のところは何とか凌げているが、だんだんと余裕がなくなってきた。
パワーもスピードもオレの方が上であることは間違いない。それでも、ミレディが使う何かによって得意な近接戦闘にも関わらず、互角の勝負に持ち込まれていた。
そして、先に有効打を与えたのはミレディの方だった。
「あがっ!?」
隙をついて放たれた膝蹴りがオレの顎に直撃し、硬直した所を狙われて頬を打ちぬかれた。更にミレディはオレに両手を向け、至近距離からミニブラックホールを連射する。
「くっ……あぶねぇ!?」
流石にこれだけは受けてはいけない。オレは自分の前方に縦二メートル横一メートルの長方形の気のバリアを張ることでミニブラックホールを防ぎ、バリアの横から回り込むようにして伸ばした左腕でミレディの頬を打った。
顔を殴られたことで魔法の発動を中断させられたミレディは再度ミニブラックホールを放とうとするも、この距離ならばオレの方が早い。伸ばした腕でミレディの右腕をグルグル巻きにする。
そのままのミレディの腕を拘束した状態で伸びた腕を鞭のように振るって、近くに浮遊しているブロックに何度も叩きつけてから、上から振り下ろしてミレディを真下に投げ飛ばした。
「っ…………」
凄まじい音を立てて落ちていくミレディだったが、まるで意思があるかのように近づいてきたブロックの上にクルンと膝を抱えて一回転してから着地した。その表情は大分歪んでいるように思えるが、ほとんどダメージは入っていないだろう。オレは両手を虚空に掲げて気を溜めると、振り下ろすような動作でエネルギー波を流星群のようにミレディに放つ。
ズゥガガガガガガガ!!
広範囲に放つことで、回避する隙間も与えないエネルギー波はミレディの体に炸裂した。放たれた赤黒い閃光はミレディだけでなく、足場にしているブロックをも破壊する。
「あぁあああっ!」
そんな唸るような悲鳴がオレの耳に届くのと同時に、ミレディのいる位置から直径五メートルくらいの中サイズブラックホールがオレの放ったエネルギー波を呑み込みながら迫ってきた。
「ちっ……引力が強いな!」
中サイズブラックホールはオレが放ったエネルギー波だけでなく、離れた位置にいるオレまで吸い込もうとしてくる。このまま攻撃し続けても無効化されるだけ、それをすぐに察したオレはまだ距離がある内にその場を離れようとしたのだが、どうやらその行動は読まれていたらしい。
「逃がさない!」
「なっ……!? いつの間に!」
空間魔法でも使ったのか、頭上にワープゲートのようなものと共に現れたミレディが急降下しながらオレの背を踏みつけてきた。真下から迫ってくるミニブラックホールに向かって落とされ、焦ったオレは咄嗟に空中で体勢を立て直し、両手を突き出す。
「消し飛べ!」
引力を放ち続ける中サイズブラックホールに"イノセンスキャノン"を放つことで破壊する。これだけのサイズとなれば込められた魔力も相当なものだろう。通常のエネルギー波で相殺できるか怪しかった。まあ、手札を一つ見せる程のものでもなかったかもしれないが、オレが無事ならばそれでいい。
しかし、その隙を突かれた。
「お返しだよ!」
「おいおい、マジかよ……」
ミレディの方を向けば、気づけばオレの頭上には視界を埋め尽くす程のミニブラックホールが降り注いできていた。この一瞬の隙に用意したのだとすれば、とんでもない魔力精度だ。
逃げ場はないし、この量を一撃で破壊できる技を放てば、その隙をまた狙われる。ミレディの方もそれが分かっているらしく、オレがどんな行動を取ろうとも、即座に対応できるようこちらを観察し続けている。
ミニブラックホールに直撃せず、迎撃もせず、その上でミレディにとっての想定を裏切る動きをする。
その手段がオレには――ある。
「――転移できるのはおまえだけじゃないんだよ!」
「ぇ……うっそでしょ!」
額に指を当てて、"瞬間移動"を発動させたオレはミレディの背後に転移すると、驚愕した様子のミレディに至近距離からエネルギー波を放った。この距離での不意の一撃。ミレディは躱せるわけもなく直撃し、吹き飛んでいった。
さらに、飛んでいったミレディを追って回り込み、今度は"サクラブレード"――桜色の気の刃を纏わせた手刀で斬りつける。しかし、気の刃がその慎ましい胸を切断しようとした次の瞬間、ミレディの体は急停止し不規則な動きをして回避した。
そして、体勢を立て直したミレディはオレの顎に足を引っかけ、サマーソルトキックで蹴り上げると、無駄に長い髪を掴まれ、ハンマー投げの要領でグルグルと振り回されてから投げ飛ばされた。
「ほら、避けないと死んじゃうよ!」
「ははっ! いいぜ、受けて立つ!」
近くのブロックを足場にして着地したオレが何かに引き込まれるような感覚を感じ、ミレディの方に視線を向けると、先程のような五メートル程の中サイズブラックホールが迫ってきていた。
距離は近い。引力に捕まり回避も不可能。すぐにそれを理解したオレは胸の前で両手を重ね、掌を外側に向けると先程放った倍以上の気を込めたエネルギー波を両手で放った。
「はああっ!」
スパークを走らせた黒球と赤黒い閃光がぶつかり合う。その影響で、周囲に激しい衝撃波が発生し、迷宮内の壁全体に罅が入る。そして、気と魔法のぶつかり合いは数秒もの間続き、やがて広大な爆発を引き起こすという形で終わりを告げた。
壮絶な爆音が空間全体を振動させながら響き、爆煙がもうもうとたつ。オレはブロックに足をつけて煙が消えるのを待つ。そして、煙が晴れた奥からは、服に多少の汚れは見られるものの目立った傷はなく、腕を組んで余裕の表情を見せるミレディがオレと同じように近くのブロックの上に立っていた。
「ふふん、やってくれるね~。やっぱり、魔人ブウ相手は厳しいねぇ。これでも、昔と比べてかなり強くなったんだけどなぁ。まったく、努力が報われなくて悲しくなっちゃうよ。でもさあ……お前、まだ本気じゃないでしょ?」
「それはお互いさまだろ。準備運動はこれぐらいでいいんじゃないのか?」
ミレディが本気で戦っていないことは、初手の殴り合いで理解していた。恐らく、今のオレの戦い方を見て情報を集め、対策を練るつもりだったのだろう。戦う者というよりは研究者としての気質が強い回りくどい人間の戦い方だ。
それが分かっていたからこそ、オレの方も敢えて本気は見せずに戦っていた。
ただ本気ではないといっても、【グリューエン大火山】で戦ったマグマの巨人や【メルジーネ海底遺跡】で戦ったオケノスくらいなら余裕で倒せるくらい実力は出している。
それに、手の内を隠しているというのに、"イノセンスキャノン"と"瞬間移動"という二つも手札を使ってしまった。この時点でもう、ミレディが今まで戦った相手の中で最も強敵であるということは疑いようもない。
「う~ん……でも、ミレディちゃんが本気だしちゃっていいのかなぁ~」
「……へぇ、どういうことだ」
先程同様、瞳に光がともっていないものの、ミレディはまるで心の底から嬉しく思っているように口元を三日月に歪ませる。今の戦いでオレの弱点でも把握したのかと思い問うと、ミレディは先程よりも少し高めの声で言った。
「だってお前……弱くなってるじゃん」
オスカー・オルクスは食べられたけど吸収はしてなくない?
仁は一度もオスカーを吸収したとは言ってない。吸収という能力があって、それでブウには理性が生まれた(これは仁を吸収したこと)。オスカーが神に封印される前に挑んできた(挑んだと言ったが吸収はしてない)。つまり、ミレディはオスカーがブウに吸収されたと勘違いしているだけ。
仁「嘘は吐いてないぜ」
ミレディが連射してるミニブラックホールって何?
あれは原作ラストでミレディが使ってたであろう黒天窮の劣化版。一応、ミレディの奥義に当てはまるが、今の彼女は劣化させたとはいえそれを当たり前のように連射している。
サイズを大きくすればその分引力は強まるのが、その分魔力の溜め時間が増え、発射速度も遅くなる。それに、あまり大きくし過ぎると自分も吸い込まれて死ぬため使用には注意が必要。
ミレディが空間魔法使える理由
ハジメや仁が神代魔法を手に入れたように、解放者は自身の神代魔法を他人に与えられることができる。それなら、解放者同士が他の解放者の神代魔法使えても不思議じゃなくない? 適正なかったとしても、使えたら便利だろうし。
そんな考えからミレディに使わせた。
なんでファンタジー世界でこんな殴り合いしてるの?
色々小賢しいこと考えて負けるよりも、正面から挑んだ方がいいとミレディが判断したから。
魔法はほとんど無効化されるし、再生するし、体力は実質無限ともいえるから、これが一番正しい魔人ブウ攻略法。結局筋肉が全て解決する。
作者の思惑的には、この作品は一応ドラゴンボールとのクロス作品だから、人間型の相手くらいは熱い殴り合いをさせたかった。魔物と殴り合ってもそんなワクワクしないし。
ミレディちゃん煽り口調忘れてない?
魔人ブウと同化した仁と戦いながら煽れたら流石に余裕すぎます。
ミレディの呼び方
ハジメやその他→君 仁(魔人ブウ)→お前 エヒト→クソ野郎
殺意の差ですね。