ピンクの魔人と共に   作:クー(無課金勢)

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ミレディ戦ラスト。
多分今までで一番長期戦してたと思う。


VSミレディ・ライセン 後編

 ミレディ・ライセンは恐怖した。目の前の魔人の理不尽さに。

 

(ああ……みんなはこうやって殺されてきたんだ……)

 

 相手がそう簡単に勝つことのできない強敵だということは最初から理解していた。存在としての格が違うことも遥か昔から嫌という程思い知らされてきた。それでも、勝つために全力を尽くした。何千年という時間を自己の強化に費やし、少しでも勝利の可能性を引き上げた。

 

 しかし、届かなかった。

 

 ブウが自分の大迷宮にやって来たことを知り、ミレディはすぐさま対魔人ブウ専用兵器『人造人間(ミレディ)』に自身の魂を移した。ハジメ達の時のような試練用のゴーレムではなく、相手を殺すための兵器、それがこの体の役割だった。

 

 『人造人間(ミレディ)

 ミレディ・ライセンのクローンをベースとして作られた人造兵器。その腕には、ミレディの奥義とも言える魔法、"黒天窮"をグレードダウンさせることで簡易化させた魔法の魔法陣が刻まれ、体には常時"身体強化"を施す魔法陣が刻まれている。さらに、【グリューエン大火山】で仁と戦ったマグマの巨人が核として所有していた純魔力結晶が埋め込まれ、大迷宮の貯蔵魔力と直接回路を繋げることによって半永久的に魔力を使用し続けられる。その他にも、多くの機能が備え付けられているが、その全てが現在のトータスでは革命的となる技術を使用していた。

 

 まさに、神代の時代でさえ完成しなかったミレディ・ライセンの最高傑作とも言っていいだろう。完成された肉体と解放者として多くの経験を積んだミレディの魂。この二つが揃って、勝てない相手などいるはずがない。

 

 そう本気で信じていたのだが、ミレディにはブウに勝てる未来が思い浮かばなかった。

 

 直接相対したことはない。それでも、ブウという存在を情報としてミレディはよく知っていた。何度も何度も仲間の死を知り、その度に仲間であった死体から『魔人ブウ』に関する記憶を抜き取って自身に移植した。だからこそ、知っている。ブウの理不尽さは他の誰よりもミレディが知っていた。

 

 しかし、最初にブウの力量を計るために敢えて手の内を隠して戦っていた最中、ミレディは知った。ブウが弱体化していることを。

 

 その事実にミレディは歓喜した。実際に、彼女の眼球に内蔵されたエネルギーを計る機械も計測した数値が本気を出した自分よりも僅かに低いことを示していた。そして同時に決意した。今ここで、魔人ブウを倒すことを。

 

 彼女に敗因があったとすれば、それはたった一つ。

 

 油断してしまったことだ。

 

 超高性能生体エネルギー感知装置(ミレディアイ)が叩き出した数値は決して間違いではない。その時の仁の実力は確かにミレディを下回っていた。ただ、その数値の変動までを読み切れなかっただけだ。

 

 この世界に暮らす普通の人間は、自分の生体エネルギーを操作することなど出来ない。ましてや、仁のように0~100まで自在に変化させることなど不可能だ。それはミレディも例外ではない。戦闘力が大きく変動するなど、考えもしなかったのだろう。その結果、ミレディは視界に映る数値を信じ、余裕で勝てると思い込んだ。

 

 別に仁が手加減していたという話ではない。通常モードか戦闘モードかの違いだけだ。

 

 分かりやすく説明するならば、普通に生活してる状態と力んで体に力を入れた状態だったら後者の方が強いよね。といった感じだ。つまり、ミレディは通常モードの仁になら勝てるが、ちょっと力を入れた仁には勝てないくらいの実力だったのだ。

 

 それを理解できなかったことで、ミレディは今の状況に至った。

 

 ただ、最初からなりふり構わず、命を削るつもりで戦っていれば勝てる可能性が十分にあったのも事実だ。その場合、ミレディは確実に命を落とすだろうがまだ勝機はあった。

 

 それぐらいのポテンシャルが今のミレディには確かにある。残念ながら、その可能性を潰したのも、他でもないミレディ自身であるけれど。

 

 二度目の衝突時、まだミレディと仁の戦いは互角だった。いや、ミレディの方が僅かに押していたと言ってもいい。それは単に、仁が不慣れな重力に対応しきれていなかったというのと、劣化版黒天窮を危険視し過ぎ、そしてミレディの"身体強化"が想定以上に強力だったからだろう。

 

 しかし、ミレディが油断して出し惜しみしている間に、仁は百五十倍の重力に慣れ、劣化版黒天窮への脅威度も完全に把握し、ミレディの癖や戦い方も完全ではないが見抜いてしまった。

 

 そして、最も最悪だった事こそ……

 

 神代魔法である"重力魔法"を仁が学習したこと。

 

「化け物め……」

 

 それ以外の感想が出てこなかった。

 

 大迷宮を攻略して与えられたわけでもなく、ただ観察しただけで習得する。そんなこと、魔法のスペシャリストであるミレディでも出来ない。もしかしたら、彼女が最も嫌う神でさえも不可能かもしれない。

 

 もはや、ミレディが本気で戦うには大分手遅れの状態だった。相手に負荷をかけた先程までの状態でさえ押され始めていたというのに、その負荷を無効化されてしまえばもうどうしようもない。

 

「これで勝負ありだな。さて、降伏でもするか?」

「……するわけないでしょ」

「だろうな。そうでなくちゃあ面白くない」

 

 降伏することはすなわち『死』を意味する。そう判断したミレディは当然拒絶する。実のところ、そんなことはないのだが、仁とブウの関係性を知らないミレディがそう考えるのは歩くためには右足と左足を交互に出すくらいには当たり前のことだった。

 

「私はまだ……負けてない」

「そうだな。だが勝つのはオレだ。それともなんだ、まだ奥の手でも隠してるのか? だったら早めに出しておけ。……死ぬ前にな」

 

 奥の手は……()()

 

 しかしそれは本当の本当に最後の手段。まだミレディが五体満足でいるこの状況で使っていい程安く使える手ではない。

 

「……それなら私は、命を賭ける」

 

 だからこそ、ミレディは全てを出し切ることにした。

 

 己の胸に手を当て、身体の内側に刻まれる魔法陣を今この場で書きかえる。

 

 『人造人間(ミレディ)」の体に刻まれる"身体強化"を施す魔法陣。普段は体と魂に支障を与えない範囲で最大限の強化を施しているが、たった今ミレディが魔法陣を書き換えたことで、その制限を取り払った。

 

 すなわち、ミレディの体が魂がどれだけ悲鳴を上げようが、崩れようが、壊れようが確実に目の前の敵を倒せるレベルにまで身体能力を無理矢理引き上げる。これこそが、ミレディの切り札。

 

 名付けて、"オーバーエンハンス"

 

 通常、これほどのレベルの身体強化となれば、肉体の限界を迎えるよりも先に魔力が尽きる。しかし、今のミレディには大迷宮に貯蓄された無尽蔵とも言える程の魔力がある。そう簡単に尽きることはない。

 

「あ……あぁああああああ!!」

 

 ただそんな無理をすれば、当然身体の方に負担が圧し掛かってくる。仮初の体、そして魂の方にも大きなダメージが襲い掛かり、ミレディには痛みを感じにくくしたにも関わらず、体を内側から少しづつ削られていくような強烈な痛みが走る。このままではミレディはそうかからない内に心身共に崩壊するだろう。

 

 故に彼女に残された時間は……

 

「六十秒……それで終わらせる!」

 

 強烈な痛みに耐え、秒読みで迫る死を実感しながら、ミレディは仁へと向かって飛翔した。

 

「はぁああああ!」

「甘い……たあっ!」

「う……ぐっ!?」

 

 ミレディが振りかぶった拳を仁は受け止めるように掴むと。ミレディを引き寄せミレディの横腹に膝蹴りを入れる。先程のように超重力がかかっていないため、明らかにパワーもスピードも増しているが、それでもミレディは強化された肉体で防御もせずに堪えて自身に蹴りを入れる仁の足を掴んだ。

 

「う、そ……だろ!」

 

 これには仁も驚きを隠せなかった。先程まで防御の上からでも通った攻撃がフィジカルで耐えられたのだ。ミレディはそのまま周囲に"重力魔法"でブロックを呼び寄せ、仁を叩きつける。

 

「やぁあああ!」

「ぐっ……まだだ!」

 

 叩きつけられた仁が掴まれた足をちぎり、ミレディから距離をとってエネルギー波を放つ。それをミレディはあろうことか防御も回避もせずにそのまま突っ込み、赤黒い閃光を真正面から裂くようにして飛んできた。

 

「マジかよ!?」

「ぎがぁあああ!」

 

 こうして戦っている間も、崩壊していく体に悲鳴を上げながら、仁の懐に潜り込んだミレディは首を掴んで力任せに投げ飛ばす。

 

 それだけでは終わらない。進行途中にあったブロックをも砕いて吹き飛ぶ仁にミレディは今まで以上の速度で加速して追いついてからのもう一撃。

 

 更に吹き飛んだ仁は無理矢理体勢を戻し、飛び込んできたミレディに"サクラブレード"を腕に纏わせて斬りかかった。だがミレディはそれを寸前で躱し、ボディーブローを浴びせてから顔面を殴りつける。

 

「あたたたたたぁ!」

 

 そして、流れるような連撃が仁を襲う。顎を蹴り上げ、腹部を下から拳で貫き、振り上げた腕を肘打ちで弾き、回転蹴りを後頭部に叩き込み、顔面に拳を沈め、何度も何度も打撃を与えた。

 

「潰れてっ!」

 

 流石にここまでの連撃、仁もダメージがまったくないということはない。しかし、このままいくら打撃戦を続けても殺すまでには至らない。確実に仁を殺すためには、細胞一つ残らないレベルで消滅させなければならないのだ。

 

 それを分かっていて、それを出来る方法を所持しているミレディはこの空間内にある全てのブロックを全方位から仁に向かって落とし、身動きを封じようとする。

 

「甘いんだよ!」

 

 だが、今更この程度の攻撃がブウの肉体を持つ仁に届くわけがない。全方位にエネルギー弾を放つことによってあっさりと破壊される。

 

「うん、知ってる」

 

 しかし、ここまでがミレディにとっては想定内。

 

「この距離なら……外さない!」

 

 仁が落下してくるブロックを対処している間に目と鼻の先というほどの至近距離まで近づいてきたミレディは仁の胸に手を当てて、劣化版"黒天窮"を発動する。その大きさこそバスケットボール程のサイズだが、野球ボール程のサイズで仁の片腕を持っていったのだから大きさはこれで十分。

 

 さらに、ミレディが魔法を発動していない方の手で仁の腕を掴み"重力魔法"を使うことで、磁石のN極とS極のように引き付け合い、ピタリとくっつく。

 

 流石にこの距離、この状態であれば回避は不可能。

 

 勿論、この距離で劣化版"黒天窮"が発動すればミレディもただではすまないだろうが、それは今更だ。限界を超えた"身体強化"を使った時点で、もうミレディに未来はない。

 

 どうせ死ぬのなら道ずれにしてやる。

 

 そんなミレディの覚悟がよく分かる一撃だった。

 

「ああ……確かにそうだ。でもそれはおまえもだろ」

 

 しかし、こんなところで諦める程仁も潔くはない。

 

 劣化版"黒天窮"に体を少しづつ吸い込まれながらも、仁は悪趣味な笑みを浮かべて、とある技能を発動した。仁の体が他者から見ても分かる程に大きく脈を打ち、増幅して溢れだした気が体外にスパークとして漏れ出す。

 

「なっ!? 正気なの!」

 

 仁が一体何をしたのかをミレディは分かっていない。それでも、これから何が起こるかは異常なまでに膨れ上がった生体エネルギーを目にし、長年の経験と勘から理解した。追い詰められた敵が取る最後の手段。

 

 それはつまり……自爆。

 

「ッ……イカれてる!?」

「あははは、それは褒め言葉か!」

 

 回避することを封じられ、絶体絶命なこの状況で仁はミレディごと巻き込んで自爆しようとしたのだ。

 

 もう既に命を捨てる覚悟を決めたミレディはその行動に驚きはするも、内心では笑みを浮かべていた。自爆するということは、仁は間違いなく死ぬ。それでミレディ自身も死ぬことになるだろうが、それは命が尽きるのが早いか遅いかだけの違いに過ぎない。

 

 たった一人の解放者の命で魔人ブウを道ずれに出来る。それは、今のミレディにとって完璧なまでの勝利だった。

 

 そんなミレディの思考など知らないまま、仁は"自爆"を発動させる。体が内部から黄金に光り輝いた次の瞬間、広範囲に広がる大爆発が発生した。その爆発はミレディだけでなく二人がいる空間全体に広がり、あと少し範囲が広ければ大迷宮そのものを破壊してしまう程の広範囲高威力の大爆発であった。

 

 大迷宮そのものを崩壊させる可能性すらあった爆発。至近距離で食らったミレディはただでは済まない。体が塵一つ残らないレベルで吹き飛んでもおかしくないほどだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 それでも、ミレディは生き残った。

 

 その理由を述べるとするならば、『運が良かった』としか言いようがない。爆発の威力を先に展開していた劣化版"黒天窮"が大きく減少させ、通常の何百何千倍までも強化した身体機能のおかげで防御力が大きく増したことが、ミレディの生存率を上げた。

 

 とはいっても、ゼロパーセントの確率が五パーセントに上がった程度でしかない。彼女にしてみれば嬉しくないかもしれないが、神が微笑んだのはミレディの方だった。

 

「相変わらず……滅茶苦茶だ……。でも、これで……やっと…………」

 

 服は大事なところを隠す程度に残っているとはいえ至る所が破け散り、その体は外側内側共にボロボロの状態で、左腕と右足に加えて顔が一部消し飛んでいる。体中に刻まれた魔法陣は修復不可能なくらいに損傷し、もはやまともな機能は期待できない。

 

 そんな今までにない負傷を負っているにも関わらず、ミレディは笑顔を浮かべていた。

 

 もうすぐ死ぬと分かっていながらも、仲間達を大勢殺した魔人ブウを倒せたからだ。今まで、イメージすることすら出来なかったそれをついに成し遂げた。今までの努力は無駄ではなかった。それを実感し、ミレディは勝利の味を噛みしめる。

 

「皆……やったよ。やっと皆の仇を取れた……」

 

 もはや、ミレディの体は限界ギリギリでいつ崩壊してもおかしくない上、魂の方もそう長くはもたない。それでも隠し切れない喜びに涙を流しながら笑みを浮かべ、俯いていた顔を上げる。

 

 

 

 そして、絶望した。

 

 

 

「よく戦ったな。でも、もう終わりだ」

「……う、そ」

 

 前方には片手を掲げ、掌の上に凝縮された巨大な赤黒いエネルギー弾を出現させた仁がいた。あまりにも信じられない光景にミレディの口から乾いた声が漏れる。

 

 元より仁は死ぬつもりなど毛頭なかった。あの自爆攻撃は劣化版"黒天窮"から逃れるため、自爆して己の肉片を吹き飛ばしたに過ぎない。体がブウのものである以上、細胞一つ残らず消滅しない限り死亡することはない。その性質を利用して、仁は躊躇いなく自爆を行ったのだ。

 

 そして、すぐに肉片同士がくっついて復活した仁はすぐさまミレディに対して攻撃の準備を始めた。

 

「はは……は……ほんともう……少しくらい希望……持たせてくれたっていいじゃん」

 

 残酷過ぎる現実を知って、ミレディはもう自嘲気味に笑うことしかできない。理不尽そのものを体現したかのような目の前のふざけた存在相手に再度挑む勇気すら湧いてこない。体は崩壊寸前で魂もすぐに消滅する。それに加えて心も折れた。もうミレディには指先一つ動かすことすらできない。

 

「じゃあな、ミレディ・ライセン。おまえとの戦いは今までにないくらいに楽しかった」

 

 そう告げてから、仁は赤黒く輝く巨大なエネルギーの塊をミレディに向かって放った。

 

 バニシングボール――仁の切り札の一つでもあるそれは、通常のエネルギー弾とは異なり、相手を殺すという性質が特別強い。町や国どころか星一つ破壊できるエネルギーが込められたその赤黒い球体は、以前【メルジーネ海底遺跡】のオケノスに放とうとして日の目を見る機会のなかった技である。

 

 それを仁は容赦なく満身創痍の相手に放ったのだ。迫ってくる『死』に久しぶりの恐怖を感じ、ミレディの脳内には走馬灯のような光景が流れ始めた。

 

 世界の真実を知らずに過ごしていた愚かな若かりし頃。そんな自分を解き放ってくれた師との出会い。多くの恵まれた仲間と共に過ごした人生最高の日々。そんな仲間達が次々と失われていく地獄のような日々。そして、永久に続くかとも思われた孤独の毎日。

 

(ああ……結局こうなるんだ)

 

 ミレディは元々、ブウに勝てるなどとは考えていなかった。勝てる可能性はあっても限りなく低い。だから、覚悟はしていた。命を捨てることに恐怖はなかった。それでも、この結末を変えられなかったという事実に悔しさを隠し切れない。

 

「分かってた……こうなることは分かってた。だから!」

 

 でもまだ終わっていない。

 

 これはルールのある試合ではなく命を賭けた勝負なのだ。たとえ自分が死んでも最後に相手が死んでいればそれでいい。

 

 例え、それで無関係な大勢の人々が命を散らしたとしても。

 

 ミレディにはまだ奥の手が残されていた。もはや、限界を超えた"身体強化"で体はボロボロで、至る所に罅が入り、体の機能はもうすぐ完全に停止する。ミレディの機能が停止するのが先か仁の攻撃によって消滅するのが先か。どちらにしても、終わりは避けられない。

 

 だが、残された時間に一度魔法を発動させることぐらいならできる。

 

 ミレディ・ライセンの本当の奥の手。それは、この大迷宮そのものだ。

 

 【ライセン大迷宮】はミレディの居住区であり、神代魔法を与える試練の場であり、そして、ただの巨大な爆弾でもある。

 

 迷宮丸ごと爆弾に改造し、起爆装置を作動させれば地上にあるいくつかの国や町を破壊してしまう程の広範囲高火力の大爆発を引き起こす。そして、その起動装置は現在『人造人間(ミレディ)』の体に組み込んである。それこそが、ミレディの持つ対魔人ブウ最後の切り札。

 

 これを作動させれば、必然的に多くの人の命を奪うことになるだろう。だが、魔人ブウを地上に解き放ったことで生まれる犠牲と天秤にかければ、どちらの方が被害が少なく済むかなど火をみるよりも明らかだ。

 

 だからこそ、ミレディは少数の犠牲を許容する選択を選んだ。

 

「皆……ごめんね。私のことを恨んでもいいよ……」

 

 覚悟を決めたミレディはこれから自分が命を奪うであろう名も知らぬ人々に謝罪を述べ、起爆の魔法を発動させた。

 

「……ぇ」

 

 しかし、爆破は起きなかった。

 

 完全に想定していなかった事態に流石のミレディも困惑する。魔法はなんの問題もなく発動した。それは発動者である彼女が一番分かっている。なのに、爆破が起きない。それは、大迷宮を爆弾に変える本体の魔法陣が破壊または無効化されたとしか考えられない。

 

(いつのまに……)

 

 戦いを始める前にミレディが確認した時はなんの問題もなかった。つまり、この戦闘中にその魔法陣が破壊されたということ。そんなことができる規格外な存在など目の前にいる魔人しか思い当たらない。

 

 全てが読まれていた。その真実に気づき、ミレディは苦悶の表情を見せる。

 

「ごめんね。私じゃ勝てなかったよ……後は、お願い」

 

 そして、最後にこの場にはいない自分達の意思を継ぐはずの彼らにそう言葉を告げると、ミレディは瞼を閉じ巨大なエネルギーの塊に呑み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 こうして、最後の解放者の戦いは終わった。

 

 『敗北』という形で。




通常モードと戦闘モードの違い
実際のところ気合いの入れ方が違うだけ。少年期悟空が言っていた試合用と戦闘用のパワーの違いみたいなもの。

オーバーエンハンス
限界超えた身体強化。
使用者の体の限界を無視して、相手に勝てるレベルまで身体能力を引き上げる。一度発動したら解除は不可能。魔力が切れるか死ぬまで発動し続ける。まさに諸刃の剣。
『相手に勝てるレベルまで』とあるように戦う相手によって強化の倍率が変わってくる。格下にはそもそも発動しないし、本家ブウくらいの格上となれば勝てるレベルに達する前にミレディの体が崩壊する。

大迷宮爆弾
大迷宮そのものを爆弾に変えて敵を吹き飛ばす。
その威力は凄まじく、発動すれば大迷宮の周囲数十キロメートルに及び爆発が発生する。当然、そんなことをすれば地上に暮らす人間が大勢死ぬことになるため、本当にミレディの奥の手。
『大迷宮を爆弾に変える魔法陣』と『その魔法陣を起動する魔法陣』の二つがあり、そのどちらかが破壊、もしくは無効化されればその魔法は発動しない。今回は爆弾に変える方の魔法陣が破壊された。
ミレディは仁がなんかやったと思っているが、これは大きな勘違い。実際に壊したのは別人。具体的に言えばSから始まる名前の人物。

バニシングボール
仁が扱う魔人ブウ最強の技。
『ドラゴンボール』では純粋ブウが初手地球破壊に使用したデカいエネルギー弾。作者的には普通のデカいエネルギー弾と色の違いくらいしか分からなかったため、この小説では殺傷能力を高めた技ということにしておいた。それでも普通よりデカいエネルギー弾と言えなくはないけど。
何故、純粋ブウの技を無邪気ブウの記憶しか持ってない仁が使えるのかはまだ不明。ちなみに、ミレディ殺した後すぐに消滅させたから星へのダメージは軽い。

ミレディが仁に勝つ方法
1. 初手大迷宮爆破
一応大迷宮爆弾は仁を殺せるだけの威力はあったため、まだ魔法陣が破壊されていない段階で使っていれば勝てた。その場合のミレディ含めた死傷者数に関しては目をつむることにする。

2. 初手オーバーエンハンス&超重力&劣化版黒天窮による短期決戦
身体能力を限界まで強化した状態でさえ、大分圧倒していたためそこに百五十倍の重力を仁に掛けて弱体化させていれば、自爆される前に殺せる可能性は十分にあった。余計な様子見して学習されたから負けた。

結論 やっぱり油断してなければミレディは勝てる可能性あった。
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