【ライセン大迷宮】を攻略し、新たな神代魔法を手に入れたあの日から二日が経った。あの後、【ライセン大狭谷】に住み着いている魔物の下へと"瞬間移動"し、急に現れたオレ達に驚いた様子の魔物達を軽く消し飛ばしてからブルックの町へ戻った。
それからは、休息の意味も込めてオレと清水はその日より数日の間、ブルックの町に滞在することにした。
そして現在、オレは何故かブルックのとある店に連れてこられていた。
オレをこんなとこまで連れて来た相手は清水だ。どういうわけか、半べソをかきながら「頼むから一緒に来てくれっ!」と必死の形相で頼まれ、仕方なくついてきてやった。
辿り着いた場所は、冒険者や旅人がよく訪れるという衣服等の専門店だった。話を聞くと、どうやらこの店の店主に清水が弟子入りして、戦い方を教えてもらっていたらしい。
確かに、知らない内に魔物相手との戦闘がそこそこ上手くなっていたし、身体強化とか当たり前のように使ってたから変だなー、とは思っていたのだが、それはこの店に店主が教えてくれたとのことだ。
ただ、その話をしている最中、清水が黒歴史を思い出して苦しんだような表情を見せていたことに関しては少し気になった。というか気になるを通り越してもう嫌な予感がする。そんな不穏な気配を感じつつも、オレはその店に恐る恐る入店する。
次の瞬間、オレは清水を恨んだ。
「あら~ん、いらっしゃい♥ って幸利ちゃんじゃない! 来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」
なんかヤバいのがいたのだ。
身長は二メートルを越え、エリセンにいたハイツに負けず劣らずの分厚い筋肉。いつの時代の漫画かと思うほどの濃い顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており、三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏められている。
一挙手一投足の度に全身の筋肉が意思があるかのようにピクピクと動き、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。服装は……うん、触れない方がいいだろう。少なくとも、腕と足、腹が丸見えの直視すらしたくない服装とだけは言っておこう。
「あら、あらあらぁ~ん? 幸利ちゃんどうしちゃったの~。こんな可愛い子連れてきて~。もしかしてコレなの? コレなのね!?」
この男? はオレの姿に気づくと、世話焼きなオバちゃんのように鼻息を荒くしながら、グイッと近づいてきて小指を立ててくる。
もはや新種の魔物のようにも思えるその姿にオレは今まで感じたことのある恐怖とは別種の恐ろしさを味わう。これまで色んな系統の化け物と戦ってきたが、このパターンは初だ。
どうしていいのか分からず、清水を睨みつけて助けを求める。視線の意味を悟った清水は苦笑いを浮かべながら口を挟んできた。
「待ってくれ、師匠。そいつは俺の友人なんだ。前に言ったことあるだろ。女みたいな男がいるって。こいつのことだよ」
「え~! この子男の子なの~。すっごい可愛いじゃなぁい。男の子……いや、これはもう男の
清水の話を聞いた途端、先程よりも更に興奮して顔を赤らめる変態。オレは本能的な危険を瞬時に感じ、すぐさま距離を取る。
「ああも~ん、逃げなくていいのよ。ちょっとちょ~っと抱き締めさせてくれるだけでいいから。ほらっ……ね? お姉さんのところにいらっしゃ~い♥」
「ッ……!!」
更に強烈な寒気を肌で感じ取り、再度距離を取る。
何故だろう。こいつは戦闘力的にはオレより弱いと分かるのに、本能的な部分が逃げろと警告音を鳴らすのを止めない。
「おい清水、なんとかしろ! 出来なきゃ殺すぞ!!」
多分、今オレは人生で最大の身の危険を感じている。焦りのあまり清水を脅すように頼ると、ガチでオレが殺す気だと察したらしく、顔を青くして師匠と呼ぶ変態を止めに入った。
それからしばらくして、冷静になった……と思うこのオカマ改め店長のクリスタベルは清水と出会った経緯をたっぷりと感情を込めて説明してくれた。
話の半分以上が美容テクとか悪い男の見定め方とか関係のないことだったため、大分省略するとして……
ブルックの町に来た当日。偶然か運命か、クリスタベルと遭遇してしまった清水はみっともなく悲鳴を上げて逃げ出したものの、速攻で捕まりこの店に連行された。その後強制的に女装させられ、なんやかんやあって弟子入りを果たしたとのことだ。
その『なんやかんや』の部分は凄く気になりはしたものの、清水が顔を青褪めて自分の身体を抱えて震えだしたため、それ以上の追求はやめておいた。分かるのは、その時の記憶が清水にとってトラウマになっているということだけ。
「それにしても驚いたわ~。幸利ちゃんのお友達がこんなに可愛い子だったなんて。癒されるわ~。持つべきものは師匠想いの弟子ねぇ」
相変わらずくねくねと気持ち悪い動きをするクリスタベルはオレの体をペタペタと触りながら、恍惚とした表情を浮かべる。気分的にはすぐにでも逃げ出したいが、何故か逃げられない気がするためオレは凄い嫌な顔をしながらも心を殺して我慢する。
すると、突然クリスタベルは何か思いついたかのように「あっ」と声を上げた。
相変わらず嫌な予感しかしないが、黙ってクリスタベルの言葉を待つ。
「仁ちゃん、お着替えしましょう!!」
「はあ?」
「任せてぇ~ん! おねぇさんが全部選んであげるからねぇ!」
「いや、おいちょっ! 待てよ。待てってば!」
そしてそのまま、オレはクリスタベルによって腕を掴まれ、店の奥に連行されていった。そんなオレの姿を手を合わせて見送る清水を見てオレは心に誓った。
後で絶対後悔させてやる……と。
「はぁ……はぁ……酷い目に遭った……」
あれから、オレはまるで着せ替え人形のように色んな服を試着させられた。そのほとんどが女物の衣服だったのが更に辛かった。唯一の救いはちゃんと更衣室を貸してくれたことだろう。着替えるために一時的にマントを外したため本当の姿は見られずに済んだ。
絶妙に悔しかったのは、意外にもクリスタベルに服選びの才能があったことだ。着せ替え人形にされているオレの様子を見て、少しづつオレの好みを把握していくと、ギリギリ男物にも見えそうな女物の服で普通にセンスが良い物を選んできたのだ。
最終的には着る予定もないのに、数着購入してしまった。何故だろう。なんか負けた気がする。
「……意外に人は見た目によらないんだな。あの見た目とあの性格でまさかの常識人とか……どうなってんだよこの町は……変人の巣窟かなんかか?」
「まあ、師匠も悪気はなかったんだし。最後はお前も少し楽しんでたからいいじゃねぇか」
「よくねえよ。元はといえばおまえがこんなとこに連れてこなければよかったんだよ。喜べ、半殺しコース決定だ」
「え、嘘だろ……嘘だよな!?」
クリスタベルの満面の笑みに見送られ、店を出たオレ達はそんな雑談をしながら町の大通りを歩く。この先は大して予定はないため、適当に買い物でもするか、宿に戻って休むかの二択だ。
「はぁ、疲れた。オレは先に宿屋に戻ってるから清水は適当に町の散策でもしてろ。ああ、金は貸さんぞ。自分の物は自分で買え」
「いや、流石にお前にこれ以上金を出させるわけにはいかねぇだろ。俺も先生達と一緒に行動してた時の金が少ないけどまだ残ってる。数日ここで暮らすぐらいだったらなんの問題もない。その後はちょっと分からねぇけど…………ん?」
「あぁ? なんだこいつら……」
そんな話をしながら、オレが宿屋に戻ろうとすれば、気づけば数十人の男達にオレ達は取り囲まれていた。その大半が冒険者風の男であるが、中にはエプロンを着けてる主婦っぽい男までいる。
集団の中から一人の男が前に進み出てくる。記憶にない男だ。オレが忘れてるわけじゃなく、ただ単に話したこともなければ名前も知らない。ただ、こうしてオレに近づいてくるということは、相手の方はそうでもないのだろう。
「仁ちゃん……で名前合ってるよな?」
「ちゃんを付けるな三下。それで、オレが仁かだって? ああそうだ。だからどうした? 今のオレは機嫌が悪い。用なら手短に済ませろ」
この男共の目的を大体察してしまい、本気でイラつくオレはその男に睨みを効かせて告げる。するとそいつは、一度後ろを振り返り、他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でオレを見つめる。その男の行動に続くように他の男連中もオレの前に出てくる。
そして……
「「「「「「仁ちゃん、俺と付き合ってください」」」」」」
案の定、そんなふざけたことを言ってきやがった。
ただでさえ、先程のクリスタベルの件でオレのストレスが溜まっているにも関わらず、連続でこれだ。相変わらず欲望に正直過ぎるこの町の人間にもはや呆れてしまう。やっぱり、この町は本気で滅ぼした方がいいかもしれない。
オレが男であるということは初日に宿屋にいた者ならば知っているはずだが、この様子を見るにあの時宿屋にいた奴らとは別人か、単純に信じてない馬鹿か、それでもいいと言える変態のどれかだろう。本当に厄介だ。
「道を開けろ。邪魔だ」
もう対応することすら面倒になったオレは殺意をぶつけてそう命じる。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 返事は!? 返事を聞かせてく「断る」……ぐぅ……」
多少怯えつつも、オレに答えを求める男共にきっぱりと現実を突き付けてやる。むしろ何故成功するという希望を抱いた。普通ないだろ。オレに告ってきた馬鹿共は四つん這いになって崩れ落ちた。
だが次の瞬間には、もうフラれ慣れてるじゃないかと思ってしまうくらいの素早さで立ち上がった。ここまで来たら一種のコントだ。そして、中でも一際復活が早かった男が「なら力ずくにでも!」と無駄に気合いを入れた声で襲いかかってきた。そんな男の行動に続くように、他の男達もオレにジリジリと迫りくるように近づいてくる。
男達の行動に背後にいた清水は前に出ようとしてくるが、それをオレは手で制する。今まではこういう厄介な輩は清水に任せていたけれど、ちょっとした実験の意味も込めてオレはとある魔法を発動させた。
「――跪け」
直後、オレを襲ってきた男達は全員見えない何かに押しつぶされたかのように、地面へと四つん這いにへばりつく。
この魔法は、つい先日ミレディからパクった"重力魔法"だ。まだ、完全に使いこなせているという程ではないが、このクズ共に使ってちょっと練習してみた。人を殺さない程度の重圧を掛ける。見事成功だ。
まさか、ミレディもこんなくだらない目的で使われるとは思ってもいなかっただろう。そんなオレの思考を知りもしない地面にへばりつく男達の表情は困惑と驚愕で染まる。まあ、詠唱も魔法陣もなしで魔法が発動されたらそりゃビビるだろう。
困惑が伝播する中、オレは最初に襲い掛かってきた男に近づき、その後頭部を踏みつける。
「知ってるか? 人間には肉体的な性別と精神的な性別が異なる奴が稀にいる。それは生まれつきの奴もいれば、ふとしたきっかけで心の内側に異なる性別が生まれる奴も少なくない」
「あ、あの仁ちゃん……?」
「じゃあここで一つ質問だ。精神的な性別がそのままで、肉体的な性別が変わった人間はどうなると思う? ずっと外と内の性別が異なったまま生きていくのか。それとも、精神が肉体に引っ張られて肉体の方と同じ性別に適応するのか。知りたいよな?」
突然語り始めたオレの意図を理解できていないのだろう。頭に疑問符を浮かべながらオレに頭を踏みつけられている男は「はぁはぁ……」と興奮して荒い息遣いしはじめる。あまりにも気持ち悪かったため、オレはつい足をどけた。
そして、地面に倒れ伏す男に向かって、手を銃のような形にして指先を向ける。
「……女になれ!」
指先から"変化ビーム"が放たれる。ギザギザとした軌道を描く桜色の光線はそのまま地面に伏せる男に直撃し、その体を桜色の光が包み込む。
「……ぇ……はっ……あああ!? ま、まさか!!」
すぐに身体の異常に気がついたのだろう。男は顔を真っ青にして、オレを信じられないようなものを見る目で見上げる。
「や、やめてくれ、なくなっちまう!」
「これから先、おまえの人生は百八十度変わる。まあ、頑張れ」
「いや……嫌だ。やめてくれ。頼むっ!!」
男の体はみるみるうちに変化していく。鍛え上げられた胸板は柔らかい膨らみへと変わり、六つに割れた腹筋は余計な筋肉が脂肪へと変わって細く引き締まる。腰は少しづつ膨らみと丸みを増していき、その顔もだんだんと小さくなりって丸みを帯びていく。
「恨むなら、オレに告った過去の自分を恨むんだな。オレはノーマルだから、女しか愛せないんだよ」
「やめてくれー!!」
そして、最後に野太かった声が高めのものに変わると、変化は終える。先程までのそこにいた冒険者風の男はもういない。今オレの前にいるのは男っぽい恰好をした長身の
性別が変わった元男も周囲で重力に抑えつけられている男達も騒ぎに集まってきたブルックの住人達も背後にいる清水でさえ、顎が外れるんじゃないかというぐらいに口を大きく開けて驚愕を隠せないでいる。
目の前で先程まで男だった奴が女になったんだ。その反応は妥当ともいえる。オレも日本にいた頃だったら同じような反応をしていたはずだ。
「おまえの精神をそのままに肉体だけを女にした。さあて、ここから先どうなるか見ものだな?」
オレはそう言って地面に伏す男……いや、女に向かって笑顔を向ける。きっと、こいつからは素晴らしいスマイルが見えているはずだ。周りから刺さる引くような視線は気にしないようにしよう。
たった今、オレのやったことは"変化ビーム"による性転換だ。人間をお菓子に変えることができるなら、男を女に変えることもいけるんじゃないかとも思い、ダメ元でやってみたのだが、実験は成功だ。もしかしたら、種族すら変えられるかもしれない。
「さっきの話の続きだが……心が男のまま体だけが女になった人間はどうなると思う。価値観は男のまま女として別の男に抱かれるのか、それとも精神が体に引っ張られて心まで女に染まっていくのか。さて、おまえはどっちだろうな?」
オレの言葉を聞き、目の前の元男の女は顔を青いどころか白くして恐怖を隠しきれていない。だがオレは救いの手を差し伸べるつもりはない。この先こいつがどうなろうと、全て自業自得だ。
「頼む……戻して、くれ……」
「え~……どうしよっかな~? 戻してあげてもいいけど~、おまえはそれ相応の誠意を見せられるのかなぁ?」
当然、変わった性別を戻して欲しいと懇願される。オレはそれに対してミレディを見て学んだ煽りスキルを使って精一杯に煽る。すると、元男の女はすぐさまそれっぽい謝罪の言葉をつらつらと並べ始める。その言葉をオレは全て聞いた上で満足そうに頷き、
「バーカ、許すわけねぇだろ」
そう切り捨てた。
無常な現実に性別を変えられた男は更に絶望したように顔色を悪くする。そんな姿を見て、オレを取り囲んでいた男達が同情したような視線を向けてくる。しかし、何か勘違いしているようだ。
「さて、次はおまえらの番だな……」
「「「「「「えぇ!?」」」」」」
もしかして、自分達は許されるとでも思っていたのだろうか。最初にオレを襲おうとしてきたのはこいつだが、オレの容姿に釣られてこんなアホみたいなことをしてきたのは他の奴らも同じだ。同罪だ。見逃すはずがない。
あくまでこの男は見せしめなのだ。これからおまえらもこうなるぞという。
「ゆ、許してくれ!」
「悪かった。俺はまだ男でいたいんだ!」
「俺には妻も娘もいるんだ! 見逃してくれ!」
男達はみな逃げようとするも、"重力魔法"で抑えつけられているためそんなことすら許されない。そんな男共にオレはゆっくりと歩いて近づく。一歩進む度に顔が絶望に染まっていくその様子はなかなかに面白いものだ。
「ふむ……」
しかし、このままこいつらを全員TSさせていいものだろうか。勿論許すつもりはまったくないが、このままただ男を女にしたらこの先ウルでは色々問題が生じるかもしれない。流石にそこまでは面倒をみきれない。
そんな時、オレの脳裏に素晴らしいアイデアが浮かんだ。この場にいる全員に制裁を下し、なおかつ先程のクリスタベルの件で清水に罰を与えることもできる一石二鳥の方法を。
「よし。それじゃあおまえらに一つだけ助かる道をやろう」
パンッと手を叩いてからオレは地面に伏せる男達にかけた"重力魔法"を解除する。すぐに立ち上がって逃げようとする奴が出て来るも、そういう奴は再度伏せさせて"変化ビーム"で性転換させる。
そんな被害者を見てしまえば、もう逃げる者は現れない。誰もが恐怖に顔を歪めながら、オレの言葉を待つ。
「今から、おまえらにはオレの後ろにいるこいつと喧嘩してもらう。それで勝てたなら、特別に許してやらんでもない。どうだ、素晴らしい提案だろう?」
「……は?」
背後にいる清水を親指でさしながらそう言うと、清水から驚愕の声が上がる。まさかここで、自分が巻き込まれるなどとは思ってもいなかったという顔だ。「嘘だろっ」という心の声が口から漏れ出ている。
「「「「「「うぉおおおお! やってやらぁ!」」」」」」
「は、いや待て……このクソ野郎がぁああああああ!!」
しかし、状況についていけない清水を置いて男達は立ち上がり、ヤケになったかのように清水へ次々と襲い掛かる。その姿はまさに狂乱という言葉が相応しい。誰もが男としてのプライドを守るため、あるいは家族や恋人といった愛する者の元へ帰るため、死に物狂いで突貫する。
男達の中には冒険者も混じっているが、清水は腐ってもチート持ちの元勇者パーティーの一人だ。こんな有象無象に敗北するはずがない。それに加えて、適正が高くはないとはいえ神代魔法も使えるのだ。多対一であっても男達を殺さずに無力化することは可能だろう。
そこで、オレはさらなる燃料を投下することにした。
「あ、ちなみに清水も負けたらTSコースだからな。がんばれがんばれ」
「はあ!? なんで俺までっ!」
「え、だってそうしないとフェアじゃないだろ。片方だけデメリットがある喧嘩なんてなんも面白くない。条件は一緒にしないとな」
「そんなところでフェア精神をみせるなっ! ああクソッ鬱陶しい!」
大勢の男達に襲われながら(変な意味ではない)も、オレと会話できるぐらいの余裕はあるのだろう。キレながら、だが冷静にクリスタベルに教わった多対一の正攻法を律儀に守り、戦いを有利に進めている。
そしてやがて、清水の方も精神的に限界を迎えた。
「分かったよ。やってやるよ! かかってこいやぁ!!」
ついに陰キャのキャラが崩れるほどにマジギレして、闇魔法も躊躇なく使い始めた。
ただのくだらない喧嘩ではすまなくなった大乱闘。たった一人で数十人の男を圧倒する清水の姿を見ながらオレは……
「よし、帰るか」
何事もなかったことにして宿屋に戻った。
観戦していたウルの住人達からは『あいつ嘘だろ』という視線が嫌というほど刺さってきたがそれを無視し、町の中を堂々と歩いて行く。その道中に声をかけてくる者もナンパをしてくる者もおらず、何事も起こることなく順調に帰ることができた。
こうして、今日もオレは一日を終えた。
その日の夜、なんとか大乱闘に勝利した清水がブチギレして宿屋のオレの部屋につっこんできたり、性転換ビームの噂を聞いたクリスタベルとその他数名のオネェさんが想定外の頼みごとをしてきたりしてくるのは……また、別の話である。
クリスタベル
ウルの町で服屋を営んでいるオネェさん。
偶然見つけた清水に何故か惹かれて弟子にして半強制的に戦い方を教えた。こんな見た目と性格だがウルでは常識人寄りの方であり、師匠としての才能は普通にある。そうでもなければ凡人の清水が短期間で身体強化を習得できるわけがない。
ハジメハーレムにいるユエとシアに加えて仁という着せ替え人形を見つけたことでウッキウキ。この後に仁に性転換してもらって正真正銘の女となる。ただ、男性ホルモンが強すぎて三日で戻ってしまうという制限付き。
実は仁が人間ではないことに初見で気づいていた。
TSビーム
変化ビームを利用した性転換。
魔人ブウのビームはお菓子以外の物も変化させることが可能であるため、それならワンチャン性別も変えられるんじゃないかというアホな考えから生まれた謎光線。
当然、こんなことができるなどという設定はドラゴンボールにはない。
ユエが金的破壊をするなら、こっちはそもそもの性別を変えちゃおう。という別になくてもよかった対抗心から考えたシーン。
TSビーム初被害者の男
軽い気持ちで仁に告った結果、取り返しのつかない結末に至ってしまった不憫な男。
実はこの後、訳あってクリスタベルに弟子入りして、男に戻ろうと頑張るのだが、最終的にはクリスタベルにメス堕ちする。誰得だよこのカップリング。
清水
ハイツといいクリスタベルといい筋肉に縁のある男。
あまりに暴れ過ぎたことで一時的にウルにいた兵士に捕まる。事情を説明したら同情の視線を向けられて釈放された。
今回の件から、仁に困ったら性転換させるぞという脅しを受けるようになる。本人的にはマジで怖いからやめて欲しいと切に願っている。
ナンパ軍団
ユエとシアにも告った失敗を学ばない男達。男性の象徴を消されるのと男性でなくなる。果たしてどちらが彼らにとって幸福だったのか。
ちなみに、全員が全員TSさせられたわけではなく、仁が女にしたら笑えそうな見た目の奴だけ性別を変えられた。
この事件はのちに『ウルの町性転換事件』として語られることとなる。