訂正前 天之川光輝
訂正後 天之河光輝
指摘してくださった方、ありがとうございます。また、一応全話確認しましたが、修正ミスはあると思いますので、お手数ですが誤字報告をしてくださるとありがたいです。
おや? これは……なるほど、こうなったか。
私の記憶を取り込んだ"記憶再現球"に付属品としてではあるが私が入り込んだことで記憶と人格の同期が発生した……といった感じか。不思議なこともあるものだ。
ああ、すまない。挨拶が遅れてしまったね。許して欲しい。まさかこのタイミングで私と君がこうして顔を合わせて話が出来るとは思わなかったんだ。
では改めて自己紹介をしよう。初めまして、風磨仁。私の名はオスカー・オルクス、かつて解放者として神に反逆し、魔人ブウに敗れ、命を落としたはずの男だ。
〇
そうだな。何から話すべきか……実のところ、あまりに突然の状況で何も考えていなかったんだ。うん。無難に今の状況を説明するところから始めよう。
まずこの空間……というかこの世界についてだが、君が起動した"記憶再現球"の内側に展開された仮想空間とでも思ってくれればいい。本来ならば、ここで出迎える者は
君は今、何故オスカー・オルクスが生きているのか? と考えていることだろう。勿論、その疑問についても答えなくてはいけない。でも、君もある程度は想定していたんじゃないか? オスカー・オルクスが今も生きているという可能性を。
……あの日、私は死ぬことを作戦に入れてブウに挑んだ。そして敗北し、ルゲマートに変えられて食べられてしまった。勝てる見込みがないことは最初から分かっていたとしても、屈辱的な敗北だったよ。しかし、作戦自体は無事に成功した。
肉体をアーティファクトとして改造した私を取り込んだブウはその精神を反転させて善に……どちらかといえば善に近い存在へと生まれ変わった。ここまでは、私の記憶を完全でなくとも引き継いでいる君もよく理解しているはずだ。
私にとっての想定外はここからだった。
"吸収”とは異なり、お菓子にされて食べられた私は本来ならば養分として消化されるはずだった。だが驚くことに消化されきる前に肉体は復元され、私はブウの体内で生かされたんだ。
そんなことを出来る者など、私を食らった張本人である魔人ブウしかいない。
善性を与えた私に恩を感じたのか? それとも多くの人の命を奪った罪悪感から人間を助けたのか? または、ただただそういう気分だったのか? それは今も分かっていない。本人に聞いても『忘れた!』の一点張りだ。彼のことだから本当に覚えていないのだろう。
要するに、私は仲間の仇であり、自分を殺そうとした敵に命を救われたことで、その体内で今も生かされ続けているということだ。今となっては、ブウの肉体は君の肉体でもあるから、君の身体の中で生き続けているとも言えるがね?
ちなみに、私が自身の生存を自覚した時には既にブウは封印された後だった。まったく、そのせいで余計に驚いてしまったよ。
ただ、これまでヒントはいくつかあったはずだ。【グリューエン大火山】や【ライセン大迷宮】で私は体の内から君に声を届かせた。それに一部とはいえ、君の力の制限も解放させただろう。十分納得できる根拠はあると思う。
おっと、『どうやって声をかけたのか?』とか『何故魔人ブウの力を解放できるのか?』といった質問は遠慮して欲しい。私自身も出来るから出来たとしか言えないんだ。君だって自分の体をどうやって動かすのか詳細な説明を求められても困るだろう? つまりはそういうことさ。
こんな説明で失礼だとは思うが、どうか納得してもらいたい。うん? 気になることは山程あるけど、今は置いておく……だって。ありがとう、そうしてくれると助かるよ。ひとまず、私は君の内側で生きていて、君を影ながら応援しているとだけ理解しておいてくれ。
これでも、私は君に期待してるんだ。明らかに善いものではないブウを助けただけじゃなく、私達の強制力があったからとはいえブウに助ける価値があると判断され、あのブウの人格を押しのけて肉体の主導権を強奪した。君がブウを助けてからは驚きの連続だよ。
さて、それじゃあ私の紹介もこれくらいにして、そろそろ本題に入ろうか。
本題とは何かって? そんなもの決まっているだろう。君は一体何のために"記憶再現球"を起動させた。私が生涯かけて調べ上げた魔人ブウの研究記録。それを求めてだろう?
本当なら、私がブウの体内に取り込まれた後の知識も君に伝えるべきなんだろうが、悪いけどこれは口止めされていてね。表の人格として出ている君がうっかり口を滑らせて神に知られてしまう可能性を考慮すれば、伝えない方がいいとのことだ。
確かに、
おや、話が逸れてしまったね。そんなことよりも私の研究結果について語ってしまおう。まずは分かりやすく、目的からだ。
ブウについての研究、その最終目標は魔人ブウ製造方法の解明だ。
世間一般的に、ブウは神の魔法によって偶然生まれたと考えられている。私の時代ではそう当たり前のように考えられていたし、きっと今の時代でも根気よく探せばそう書かれている歴史書を見つけることもできるだろう。
現代の人々はブウの恐ろしさを忘れているようだが、歴史とはそう簡単に葬り去れるものじゃない。きっとどこかに残っているはずだ。
他にも、私達が反逆者と呼ばれるようになってから姿を見せたため、『魔人ブウは反逆者を殺す為に生まれた』とも噂されていたようだが、それは大きな誤解だ。ブウが目覚めたきっかけは私達にあるようだが、"魔人ブウ"という単語自体はそれよりも昔からあった。それは過去の私が調べた文献にも載っているから間違いない。
ここで重要なのは、ブウが
魔法を発動するにあたって、鮮明なイメージが重要だということは君もよく知っているだろう。イメージさえできればどんな魔法でも発動できるというわけでもないが、少なくとも正式な魔法発動にイメージとは必要な手順だ。
それを前提として考えるならば、神が己の意思でブウを創り出した可能性は低い。
考えてもみてくれ。傲慢にして強欲、己が世界の頂点であり支配者だと信じて疑わないあの神が、自分よりも強い魔人の存在などイメージできるだろうか? いいや、出来るわけがない。それに出来たとしても絶対に認めるはずがない。
ならば、神が意図的にブウを作ったとは考えずらい。魔法が暴走した結果、偶然ブウが生まれてしまった。そう考える方が自然だと、あの時代の人類や解放者達は結論付けた。
だが私は違った。
何故なら、ブウはあまりにも神に従順過ぎたからだ。ああ、君の視点からみればまったく従順ではないのかもしれない。だが当時の私からしてみれば、あれほどわがままな生物が神の命令にしぶしぶながらも従うこと自体が驚きだったのだよ。
神すら超える強大な力と理不尽なまでの身勝手さを持ち合わせていながら、封印される直前まで自分よりも弱い神に逆らう素振りすら見せなかった。それでいて、ブウは別に神に対して信愛や忠誠心を抱いているようにも思えない。むしろ、命令されるたびに不機嫌を顕にしていた。
そんな神とブウの関係性に違和感を拭いきれなかった私は、とある推測を立てた。
それが、ブウの肉体には無意識的に神に従ってしまうシステムが組み込まれているというもの。
証拠も根拠も何もないただの推測だ。もはや妄想に等しい。だが、私はその可能性を否定しきれなかった。そこには、一人の魔法研究者としてブウの秘密を解き明かしたいという興味もあったがね。
もし、仮に、万が一、ブウにそんなシステムが組み込まれていたとしよう。それは逆説的に、そうでもしなければ制御できる自信がないと言っているようなものだ。その考え方は……どちらかといえば
そしてそれを組み込んだタイミングはほぼ間違いなくブウが作り出されるよりも前だと以前の私は推測した。あのブウを相手に、後付けでそんな強制力のある魔法をかけられるはずがない。可能性があるとすれば、それこそ最初……生まれる前くらい無抵抗の状態じゃないと説明がつかないからだ。
つまり、当時の私の考えはこうだ。
魔人ブウは偶然により生まれたのではなく、神が己の意思でこの世界に誕生させた。そして誕生させた時には既にブウの肉体には神に逆らえなくする魔法がかけられていた。これならば、ブウが神に従っている理由にも頷ける。
この推測で一番のポイントは、神が意図的にブウを作り出したことでも、ブウが無理矢理神に従わされていたということでもない。魔人ブウが
神代の時代、私達にとってブウは神よりも恐ろしい怪物だった。単純なフィジカルとパワーに加えて不死身に等しい再生能力。シンプルに強くて速くてタフで疲れ知らず、それがブウの強さだ。単純明快であるが故に弱点らしい弱点がない。
遥か先の未来であれば、神を打倒する者が現れる可能性もあった。だがブウの強さは次元が違う。これは大袈裟に言っているのではなく、ブウと比べてしまえば私達は世界基準で弱いんだ。この世界でいくら強くなろうとも、人類に勝機はない。まさに世界最強だ。
勿論、ブウを避けて神殺しを成し遂げようとする案も私達にはあった。しかし、神という枷がなくなり、自由となったブウが世界に解き放たれてしまうデメリットを考慮すれば、解放者達はその作戦を実行できなかった。
だからこそ私は考えた。私の手で新たな(善)なる魔人ブウを創りだし、(悪)の魔人ブウを倒す計画を。
もし本当にブウが偶然生まれたのであれば、その再現は不可能に等しい。だが私の推測した通り、神が意図的にブウを創り出せたのなら話は変わってくる。私達の扱う魔法はその能力こそ下回るとはいえ、神が扱う魔法と同様のもの。ならば、神と同じようにブウを創り出すことができてもおかしくはないはず。
その考えを
それでも、私はこの計画を止めるつもりはなかった。全てを失う覚悟で挑まなければ、ブウを打倒することなど夢のまた夢。私は仲間達に内緒で、大迷宮内でコッソリと研究を始めた。
まあ結果から言ってしまえば、失敗したけどね。
おや、驚いているのかい? 別に不思議なことでもないだろう。今や本人である君でもブウの肉体について分からないことの方が多いんだ。結局のところ、部外者である私に知れることなどたかが知れていた。
それに成功していれば、とっくにこの世界にはもう一体のブウが生まれているはずだろう。だが無意味に失敗したわけでもないから安心してくれ。得られるものはあったとも。
研究を始めた私がまず行ったことはブウの細胞の入手だった。そのために、何千体という
傷一つつけられずにあっさりと
初手からかなり苦戦してしまったが、こうしてブウの細胞を手に入れた私はそれをひとまず練成師としての観点から分析した。
どんな素材なのか? どのような魔法や技能が付与されているのか? 加工は可能なのか? 無から作り出せるか? 私の持つ知識と経験の全てを投入して調べ上げた。その結果は……残念ながらあまり喜ばしいものではない。
現状この世界に存在している全ての物質や生物と照らし合わせても一致するものはなし。扱える魔法や技能についても判明はしたが再現は不可能。加工もできなければ、情報不足で無からの生成も勿論出来ない。
これでは一見、何も得たものがないようにも思えるが、『分からないことが分かった』それは大きな進歩だ。
私は自分で言うのも恥ずかしいが、魔法知識には自信があってね。再現不可能と言われる神の魔法であっても、時間と設備さえ十分に揃えば解明できると本気で思っていた。しかし、ブウの肉体的構造についてはほとんど分からなかった。
それはすなわち、ブウの肉体には私の理解を超える『何か』が関わっているためだとその時の私は考えた。
そこで、今度はブウの細胞を別角度から再分析してみることにした。今まではブウを兵器という視点から研究していたが、今度は生物という視点に切り替えて研究を始めたと認識してくれればいい。
ただこちらに関しては少し苦戦してしまったよ。そちら側に関してはラウスやヴァンドゥルの方が専門だからね。私にとっては苦手分野だ。とはいえ、ブウに関する研究は解放者の皆には内緒にしていたから、迂闊に助力を求めるわけにもいかない。
そうして悪戦苦闘しながらも研究を続けてから数年の時が経った頃、ようやく私の研究は一段落ついた。
得られた結果に、私はかなり驚かされた。
まずブウの肉片についてだが、驚くことに生きていたのだ。脳がなく、心臓もなく、臓器などもない。本体から分離されて数年以上の時が経過しているというのに、未だにその細胞は生命活動を続けていた。
これには私も相当焦ってしまった。生きているということは、次の瞬間には目の前の肉片が暴れ出し、殺されてしまう可能性もある。実際、仲間の一人には切断されたブウの腕一本に消し炭にされた奴もいた。驚愕の事実は私に驚きと同時に恐怖を与えてきた。
しかし、その心配も杞憂に終わる。
そこに意思はなくただ生きているだけなのか? それとも切り離された肉片を本体であるブウが放置していたのか? その真実は分からない。どんな理由があったにせよ、ブウの肉片が私に危害を加えることは最後までなかった。
ただブウの性格を知った今なら分かる。きっとブウは自身の肉体が部分的にとはいえ奪われたことに気がついていたのだろう。そしてその上で、『まあいいや』と見逃した。まあ、随分と間の抜ける結末だったというわけさ。
他にも、肉片に残されたブウの魂の欠片を調べて分かったことがある。それはあの時代のブウの精神が完全に(悪)のものへと染まりきっていなかったということだ。善か悪かでいえば、間違いなく悪に寄っているだろう。しかし、神に従って多くの人類を殺しているというのに、ブウには悪としての意識が明らかに薄かったんだ。
その原因をブウの精神性に関係していると私は推測した。
君も知っているように、かつて世界中を荒らしまわっていたブウは破壊や殺戮を悪い事であると認識していなかった。一つの遊びとして純粋に楽しんでいたんだ。それこそ、(善)も(悪)もまだ何も分かっていない……(無邪気)な子供のように。
更に詳しく調べていく内に、"吸収"という能力のことも知った。君もよく知っているはずだ。対象者を自らの身体に取り込み、その力と知識を奪い己を強化する能力を。
その能力を知って私が思いついた作戦こそ、アーティファクトに改造した私自身をブウに"吸収"させ、善なる魔人ブウを作りあげること。まあ、結果としては吸収ではなくお菓子にされて食べられてしまったのだけど。
とはいえ、私も死にたくはなかった。死ぬ覚悟があるのと、死んでもいいはまったく意味が違う。これはあくまで最終手段、この時はまだ私の手で善なるブウを創り出すことがメインプランであることに変更はなかった。結局、その最終手段に頼らざるを得なかったとはいえ、その時はまだ行動に移すつもりはなかったんだよ。
それから先も……研究は続いた。一筋縄ではいかないことも多く、時間こそかかったが、研究自体は順調だった。不明な点は多く、謎ばかりが増えていった。それでも、ゆっくりとだが確実に、ブウの真実には近づいていた。
しかし、突如として私の研究は行き詰まってしまう。
ブウの能力や精神性などといった表面上の情報については少しづつだが判明していた。だがそれよりも奥――一体どうやって生まれたのか? そこまで手を伸ばそうとすると、大きな壁に立ち塞がれたかのように理解不能の『何か』が私を拒んでいた。
当時、私は時間さえかければこの壁も乗り越えられると浅く考えていた。これでも解放者の一人だ。当然自信もあった。しかしどれだけ時を費やそうとも、角度を変えて研究しようにも、望んだ成果は得られることはなかった。まさに手詰まりというやつだよ。
そんな時、私の脳裏をある神学者が唱えた説が過った。あまりにも馬鹿馬鹿しく、そして非現実的。それ故に、そんなことはありえないと切り捨てたはずの可能性……
『魔人ブウには
外の世界。つまりは異世界だ。君の出身だという日本もそこに含まれるのだろう。その学者は、ブウには魔法とは別に異世界の異能が宿っていると突如世界中に発表したのだよ。
現在、トータスに存在している全ての魔法は、我々の扱う"神代魔法"を含めて神が扱う魔法を劣化させたものだ。それはつまり、この世界の全魔法はどれも起源を辿れば最終的に神に辿り着くということでもある。
この解釈を広げれば、神はこの世界に存在している全ての魔法が使えると言っても過言ではない。
故に、神は頂点であり最強なんだ。
ならば、そんな神すら上回るブウは本当に我々と同じ世界に縛られた存在なのか? それはかつての私や他の解放者達も同様の疑問を抱いていた。
そんな頃だった。そんな馬鹿げた仮説が発表されたのは。
当然、そんな説を信じる者などいない。それらしい証拠や根拠があるならばまだしも、こちら側を納得させる物証をまったく用意せずに説だけを提言したんだ。受け入れられるはずがない。そしてそれは
しかし、これまでブウについて調べ続け、その異常さを再確認してきた私は『もしかしたら……』と考えを改めた。そうして、半ば賭けに近い形で私はその証拠も根拠もない妄想を頼りにしてみることにしたんだ。
元々、この計画自体が私の妄想から始まったもの。今更、他人の妄想を取り入れたところで困ることはない。幸い、時間は十分過ぎるくらいにはあった。
そうして、私はブウの肉片から魔法とは別の異能を探しだすことへ、研究方針をシフトさせた。
正直に言うと、かなり大変だった。影も形もない。今まで見たことも感じたこともない。そもそも実在するのかすら分からない。そんなものを見つけるなど雲を掴むような話だ。分かりやすく例えるならそうだな。君が元々いた世界で魔法の存在を証明するようなものだ。空想の存在を現実で見つけだすというのは、それほどまで厳しいことなんだよ。
それでも、私は成し遂げた。
私はこの結果に辿り着いた自分を自分で褒めてやりたい。そう思えてしまうくらいには、私が見つけた功績は素晴らしいものだと思っている。
もう少し私の苦労についても話したいところだが、君にとっては利のない長話になってしまう。それは面倒だろう? 構わないとも、結論から先に告げよう。
ブウには、確かにこの世界のものとは異なる力が宿っていた。
それは魔法ではないし、優れた武道家が扱うという"気"とも違う。もっと別の、根本からしてこの世界とはズレている異質の力。そんなものが、ブウの中には確かにあった。以前はあの仮説を発表した神学者に呆れていたが、今は頭を下げて謝りたい気分だよ。
その力を私は……"魔術"と名付けた。
"魔術"とは、我々の扱う魔法とは異なる動力源と法則から発動される異能力だ。神がこの世界に広めた魔法と似て非なるそれは、魔法の上位互換の異能というわけではない。別世界で広まっている魔法と言った方が感覚としては近いだろう。
ブウの誕生には、どうやらこの"魔術"と私達が扱う"魔法"の両方が関わっていたらしい。例えば、元々ブウの能力であり今は君も使える"変化ビーム"や"念力"。それも魔術の枠組みに入る。使っていて不思議に感じたことはないかい? 君は普通に魔法を発動するよりも、そちらの方が魔力の消費量は少なく、扱いやすい。その理由は恐らく、ブウの肉体が魔法よりも魔術を扱うことに長けていたからだろう。
この魔術という概念に初めて触れた時、私は魔術という未知の存在に研究者として多大な興味を抱き、使いたいという衝動に駆られたよ。不思議かい? 私自身そうは思わない。魔法の存在しない世界で生まれた君が初めて魔法に触れた時の高揚感を思い出してほしい。あの時の私も似たような気分だったんだ。
しかし、現実はそう優しくない。魔術の研究を進めるにつれて、私は君の扱う"変化ビーム"を完璧ではないとはいえ解析できた。それに魔術の動力源となる魔力のようなもの……ここでは敢えて"魔術力"と呼ぼう。その魔術力へ魔力を変換させる魔法も新たに生み出した。
理論上、私にも魔術を扱うことは可能……だった。
魔力を魔術力に変換し、いざ魔術を発動しようとした次の瞬間、私の身体は
失敗した理由? それはすぐに分かったとも。単に、私の肉体が魔術という異質の力を拒絶しただけさ。
我々の肉体は神が広めた魔法を負荷なく扱えるよう適応した作りとなっている。それはつまり、言い換えれば魔法を発動することに特化した肉体とも言えるだろう。そんな肉体で、使用を想定されていない魔術を扱おうとしたんだ。拒絶反応が起こったとしてもおかしくはない。
イメージはそうだな……人間の肉体に魔物の機能を埋め込むような感じだ。肉体構造的に合わないのだから、上手くいくわけがない。君の友人のような例外もいるが、アレは本当に例外だ。普通、"神水"があったとしても魔物の肉を口にして無事でいられるはずがない。きっと彼は、"ステータスプレート"にすら反映されない独自の技能でも持っていたんだろう。
そこで、その事実を身をもって理解した私は魔術に関してこう定めた。魔法を扱う者は魔術を扱えず、その逆として魔術を扱う者も魔法を扱うことはできない。つまり、魔法と魔術は相容れぬものということだ。これは勿論神にも当てはまる。唯一の例外があるとすれば、ブウと君くらいだろう。
さて、ここまでの説明を聞いて、君は一つの疑問に辿り着いたはずだ。
分かるとも。『ブウは神によって作られた』『ブウは魔法と魔術によって誕生した』『神は魔術を使うことができない』この三つの研究結果には明らかな矛盾点がある。君はそれを見逃す程愚かではないはずだ。
そんな疑問に対して、私が出した結論はこうだ。
神では……
前編……とありますが、続けて中編、後編と出るわけではありません。とりあえず今回は前編だけです。いい感じにフラグを回収してもいい時期になったら中編と後編も出てきます。それまでは謎を謎のまま残しておきます。
ストーリーの重要な部分に関わるけど、今は別に気にしなくてもいい的な感じで軽く読んでください。