ピンクの魔人と共に   作:クー(無課金勢)

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今回、話自体は大して進みません。出来れば雫を口説く皇帝を早くボコボコにしたいのですが、原作と大差ないとはいえスルーできない場面なので。

ドラゴンボールDAIMAで魔人ブウを作ったのがビビディじゃなかったと知った時の作者。
「え、魔人ブウ作ったのビビディじゃないの? じゃあもしかしたらエヒトも無理? ……よし、考えないようにしよう♪」


弱き者達の決意

 ハウリア達を救出し、"瞬間移動"で他のハウリア達やティオを加えた天之河達が待機している岩石地帯に戻ってきたオレ達は、ハウリア族特有の熱狂的な再会の儀式を見せられていた。

 

 お互いに肩を叩き合い、鳩尾を殴り合い、クロスカウンターを決め合って、罵り合いながら無事を喜び合うハウリア達。確信を持ってオレは言おう。やっぱこいつら頭おかしいわ。絶対に仲間の生存を喜び合う描写じゃない。あのハジメですら引いてる。

 

「ボス、宜しいですか?」

 

 そんなこっちにとって頭を抱えてしまう状況がしばらく続き、ド突き合いを終えたハウリア達はこちら側に歩み寄ってハジメに声をかけてきた。その表情は先程仲間と殴り合っていたイカレた奴らとは思えないほど真剣そのもので、唯の再会の挨拶だけでないことはすぐに分かった。

 

 補足説明すると、たった今ハジメに声をかけた族長のカムは、深淵蠢動の闇狩鬼、カームバンティス・エルファライト・ローデリア・ハウリアと名乗っていた。うん、あの年齢でこのレベルの厨二はあまりにもキツ過ぎる。

 

「まず、何があったのかということですが、簡単に言えば、我々は少々やり過ぎたようです……」

 

 そうして始まったカムの話を要約すると、こういう事だ。

 

 事前に聞いていたようにハウリア達は亜人奴隷補充の目的で樹海にやって来た帝国兵を狩りまくった。しかしその被害はあまりに大きく、亜人であるからと油断していた帝国兵達ですら警戒を余儀なくされた。

 

 そう、"警戒された"のだ。そしてそれがハウリアを敗北へと繋げることとなる。

 

 帝国という国もただ力自慢の馬鹿ばかりではない。正体不明の暗殺特化集団の正体を確かめるため、奴らは一計を案じた。

 

 それは帝都内での包囲網。つまり、ハウリア達は帝都の侵入に成功したのではなく、敵が待ち構える罠に誘い込まれたのだ。まさにここに来る前、パル達が帝国兵を刈っていた時のように。

 

 その結果、

 

「我等は生け捕りにされ、連日、取り調べを受けていたわけです。あちらさんの興味は主に、ハウリア族が豹変した原因と所持していた装備の出所、そして、フェアベルゲンの意図ってところです。どうやら、我等をフェアベルゲンの隠し玉か何かと勘違いしているようで……実は、危うく一族郎党処刑されかけた上、追放処分を受けた関係だとは思いもしないでしょうなぁ」

 

 どれだけ拷問しようとも、帝国側が望む答えと真実は異なる。それでは、ハウリア達が何を言おうとも変な勘違いをされ、国のために命を捨てる忠誠心を持った誇りある種族と面倒な思い違いをされても仕方ない。

 

「で? 捕虜になった言い訳がしたいわけじゃねぇんだろ? さっさと本題を言え」

「失礼しました、ボス。では、本題ですが、我々ハウリア族と新たに家族として向かえ入れた者を合わせた新生ハウリア族は……帝国に戦争を仕掛けます」

 

 その鋭い眼差しでなされた宣言に、その場の空気が固まる。それはオレも例外ではなく、カムの言葉に驚きと同時に感嘆を感じていた。

 

 ヘルシャー帝国は、単純な戦力だけならばこの世界でもトップクラスの軍事国家であり、ハイリヒ王国が壊滅の危機に瀕している現況では世界最強の国家と呼んでも過言ではない。そんな国に、亜人族の中でも戦闘向きな肉体をしていない兎人族が戦争を仕掛けて勝てるはずがない。

 

 例えそこにハジメが鍛えたというアドバンテージがあったとしてもだ。ハウリア族が帝国と真正面から戦争して勝利する未来はありえない。それに、もしこの戦力差で勝てるのだとしたら、帝国兵に捕まるなどという失態は犯していないだろう。

 

 だからこそ、皆同様に一切の動きを止めて硬直していた。

 

 その静寂を破ったのは……シアだった。

 

 父親と仲間達が再び血迷ったと"宝物庫"からドリュッケンを取り出し、物理的圧力をもって威圧し始めた。その威圧感によって辺りには緊迫した空気が流れ始めるも、飼い主であるハジメによってそれはあっさりと終息することとなる。

 

 ハジメのシッポモフモフ攻撃によって嬌声を上げながら崩れ落ちていくシア。その姿はなんともこう……不健全だった。

 

 一応、この場には女子もいるため、そういうことは2人きりの時にやってほしいんだが……ハーレム作ってる奴にこういう気遣いを期待するのは間違いだったか。それとも、もうハジメから羞恥心という感情は消えているのか。

 

 どちらにせよ、再び空気が変な感じになった。

 

 そんなこんなで、ハジメによって興奮を落ち着かせた(意味深)シアは素直にカム達へと謝罪する。だが案の定、先程の不健全行為について揶揄われ、顔を真っ赤に染め上げてしまった。そんなシアの助けを求める視線を無視し、ハジメは話の続きを促す。

 

 カムの話によると、どうやら帝国の皇帝は相当兎人族のことを気に入ってしまったようで、本気で全ての兎人族を奴隷にするつもりらしい。勿論、ハウリア族だけならば帝国兵から逃げ延びることは容易い。だが他の兎人族は違う。本当に非力な彼ら彼女らは再び樹海に攻め込まれでもすれば、今度こそ逃げ延びることは叶わないだろう。

 

 それが、ハウリア達には耐えられなかったという。

 

 こうして目的は判明した。ならば次に気になるものは手段。弱者である兎人族が武力国家である帝国に挑む。まさに下克上ともいえる展開にオレは当初、ワクワクしていた。いつだってジャイアントキリングは盛り上がる。

 

 だがカムの手段を聞き……オレははっきり言って落胆した。

 

 いくらハジメに鍛えられたハウリアとはいえ、100人と少しで帝国軍に挑んでも勝ち目がないことは分かりきっている。だからこそ、カムは"暗殺"という手段をもって帝国に敵対すると口にした。別にそれ自体に驚きはない。むしろ気配の扱いに長けた兎人族ならば、それが最善だろう。

 

 しかし気に入らない。

 

 それが最善であることなど分かっている。確実な勝利を得るためには必要なことだということも理解してる。それでも、オレはその作戦に共感できなかった。

 

 暗殺自体は間違ってない。そこを卑怯だと責め立てる程オレの正義感も熱くなかったからだ。だが、そのターゲットがあからさまに敵対している皇帝やその臣下ではなく、皇帝と関わりがあるものの守りが薄い第三者に絞っていたのが納得いかなかった。

 

 分かっている。皇帝一族の守りは厳重であり暗殺の成功率は低い。だから親しい人間を1人1人消し、兎人族が帝国側にとっての脅威だと感じさせることで、最終的に兎人族に対する不干渉の方針を取らせる。その作戦には一切の狂気も見られない。純粋に仲間の無事を優先したものだった。

 

 膨大な時間がかかる。賭けの要素も強い。それでも馬鹿正直に戦争するよりは十分に可能性があった。それが分からないはずがない。だがそれでも、オレはハウリア族のやり方を認めるわけにはいかなかった。

 

「――つまらないな」

 

 地べたに胡坐をかいて座っていたオレは空気を読んで黙っていたが、つい我慢できずに口を開く。それから勢いよくジャンプし、空中で2回程縦回転してから軽やかに着地すると、ハジメの前に出てハウリア達と向かい合う。

 

「つまらない……それは一体どういった意味ですかな? 仁殿。例え貴方がボスのご友人であろうとも、我等の覚悟を貶すようであれば、容赦は致しませぬぞ」

「兎人族が皇帝一族にとって脅威だと思わせる。帝国に不干渉の方針を取らせる。ああ、確かに可能性のある策だ。種族としての戦闘力が低いおまえらでもそれならなんとかなるかもしれない」

「ならば、何が不満なのですか? 我等と仁殿との関係は薄い。だが一度拳を交わし、貴方が意味もなく我等の想いを嘲笑う相手でないことは分かりました。話していただきたい」

 

 帝国の地下牢で、オレは案の定オレの悪の気に刺激されたハウリア達からの襲撃を受けた。その際に全員纏めて叩き潰したからか、それとも他の理由があるかは知らないが、謎にハウリア達からオレへの信頼度は高い。

 

 だからこそ、こんな喧嘩を売るようなことを言ってもそれほど怒りを顕にしていない。もし先程の戦闘がなければ、今頃オレはハウリア族から罵詈雑言の嵐を受けていただろう。

 

「理由なんて大したもんじゃない。ほぼほぼオレの個人的感情だ。でも、おまえらだって分かってるだろ? その作戦は万が一成功したとしても相当の時間がかかる。それに帝国側が脅威に感じてくれるよりも早く大規模な報復が来てもおかしくない」

「無論、多くの犠牲が生まれ、必要のない血が流れます。ですが、それでも我等はやらなくてはならない。ただ怯えて逃げるだけなら簡単な事。だがどれだけ力を持とうとも、ここで引けば、結局我等は以前と同じ弱者となってしまう。それだけは断じて許容できませぬ」

「兎人族としてのプライドか……そういう燃える展開は嫌いじゃない。でもな、おまえ達の戦いに悲劇以外の結末はない」

「それは……我等が力不足と言いたいのですかな?」

「いいや、そういう意味じゃない。おまえ達が勝とうが負けようが、帝国は大きなダメージを受けて国としての機能は著しく落ちる。そして当然、もう既に壊滅しかけてるフェアベルゲンもノーダメージとはいかないだろうな」

 

 もし本当にカム達がその作戦を実行すれば、味方側にも敵側にも大勢の死人が出るだろう。そうなってしまえば、帝国は勿論、戦力をハウリアに頼り切っているフェアベルゲンも国としての戦力を保てなくなってしまう。そんな状況に陥って、喜ぶ種族をオレ達は既に知っている。

 

「そんなあからさまな弱みを見せれば、()()()は嬉々としてもう一度攻め込んでくるだろうな。人間族最強の国家を潰せて、忌々しい亜人族も滅ぼせるんだ。奴らにとって得しかない。いや、もしかしたら内部から反乱が起きてぶっ壊れるって可能性もあるな。まあ、どちらにせよ最後には2つの国が滅んでバッドエンド。まさにオレやハジメが敵に回してる神が大好物なシナリオだな」

 

 ハウリア達の作戦は非道であるが現実的だ。流石はハジメの部下といったところだろう。しかしそれでも味方側の損失なしというわけにはいかない。むしろ、仲間の犠牲も許容した上でこれが一番だと判断したんだろう。とても正気とは思えない。

 

 それにそもそもの問題として、この戦争は人間族にとっても亜人族にとってもデメリットが大きすぎる。勝っても負けてもその隙を魔人族に狙い撃ちされるだけ。最悪の場合、帝国の壊滅をきっかけに本格的な種族戦争が始まってもおかしくない。

 

「さて、その結末でおまえ達は心の底から『勝てた』と言えるか? 勝利の喜びを仲間と分かち合えるのか?」

「っ……」

 

 悔しそうにカムは奥歯を噛みしめる。ハジメに鍛えられたハウリアが分かっていないはずがない。この戦いがどれだけ絶望的なもので、勝利しても得られるものは僅かな平穏でしかないと。

 

「……仁殿の言い分も分かります。この戦い、結果がどうあれ我等に本当の意味での勝利は訪れない。ですが、それでも我等は挑まなければならないのです。生きるためではなく、ハウリアとしての矜持を守るために」

「……そうか」

 

 覚悟の決まった男の顔だ。誰一人の例外なく、ハウリア達は既に命を捨てる覚悟が出来ている。そんな顔を見せられてしまえば、オレもこれ以上彼らの意思を否定することはできなかった。

 

 ここまで色々回りくどく語ったが、結局のところオレがハウリアの作戦に口を出したのは"本命の敵と関係があるだけで他人を傷つける"というそのやり方がオレの黒歴史とよく似ていて気に入らなかったからだ。それを実行し、間違っていたと学んだからこそ、オレはハウリア達の作戦を否定したかった。

 

 だが、この様子ではオレがどれだけ言おうとも止まることはないだろう。短いやり取りだったが、その強い覚悟は十分に伝わった。だったら、もう何を言っても無駄だ。ハウリアと帝国の戦争は確実に起こる。避ける手段はない。

 

「じゃ、そんな迷える子兎のおまえらに一つ提案だ」

 

 とはいえ、ここで関わってしまった以上、特攻覚悟のハウリアを見捨てるわけにもいかない。帝国に対する罪悪感がないわけじゃないが、親友の部下と亜人を奴隷扱いするクズ共ならどちらに肩入れするかなど悩むまでもない。

 

 先程は色々と否定したが、実際のところハウリア達が本当の意味で"勝てる"手段は()()

 

 要するに、最小限の犠牲で勝てればいいのだ。ならば求められるものは完膚なきまでの圧倒的勝利。今のハウリアにそれが不可能であるならば、こちら側がそれに必要な材料()を提供してやればいい。

 

 つまり何が言いたいのかといえば、

 

「オレの手を借りるつもりはないか?」

 

 戦力を貸してやればいい。それも極大の。

 

 その瞬間、ハウリア達は一切の動きを止めて硬直した。理解が追いついていないのか、あるいは驚愕の余り思考停止にでも陥ったか。周囲に再び静寂が満ちる。しかしハジメに非常識を学ばされ続けたハウリア族は復帰も早かった。

 

「仁殿、それは一体どういう……」

「言葉のままだ。オレが皇帝をぶっ潰すのに手を貸してやる。とはいえ、オレが戦ったら秒でケリがつくからそこまではしない。あくまで主役(メイン)はおまえらだ。オレはおまえ達のサポート、もしくは援護ってところだな。それぐらいなら構わないだろ? ハジメ」

「ああ、いいぞ」

「「「「「「「「「いいんですかボス?!」」」」」」」」」

 

 首を文字通りグルリと180度回転させてハジメから許可を得ると、復帰したハウリア達が揃って驚愕の声を上げる。

 

 ハウリア達はハジメがこの提案を許可するとは思わなかったんだろう。他人とは言えない仲とはいえ、ハウリア達が始めた戦争に部外者がそう簡単に手を出していいものじゃないと分かってるし、そんな情けない真似をハウリアにさせるはずがない。ハジメがそういう冷酷だが他人の覚悟を無下にもしない男だってことは彼らだってよく分かってる。

 

 しかしそれはハウリアから見たハジメだ。オレからしてみれば、南雲ハジメは一度情の湧いた人間には相当甘い。どうせオレが何も言わなくても、色んな面からハウリア達の戦争をサポートしていたはずだ。

 

「仁にお節介を焼くなって方が無理だ。諦めろ。それに、そこの馬鹿はやり過ぎなところはあるが引き際は弁えてる。絶対に作戦通りにはいかないだろうがなんとかなるだろ……たぶん

「今たぶんって言いましたよね!?」

 

 うん。ハジメは本当にオレの性格をよく理解してる。褒めてるのか馬鹿にしてるのかちょっと気になるが、ハジメの評価に気をよくしたオレは腰に手を当てて胸を張る。しっかり鼻を伸ばすことも忘れない。

 

 だがそんなオレに怒気を孕んだ視線を向けて来る女が1人――シアだ。

 

「っ……分かりません。私達は少し前まで敵対してたはずです。それに、貴方が私達を助けてもなんの得もありません。一体何が目的ですか!」

「いや警戒し過ぎじゃね? そうか、目的……目的ねぇ。面倒なこと気にするな。自分の知る誰かが困ってて、自分には助ける力と余裕がある。だったら助けるのがオレだ。それ以外の理由を求められても困るんだが。そうだな、敢えて言うなら……感謝の言葉とでもしておこうか。善いことをして感謝されるのは気分が良い」

「なんですか、それ……」

 

 意味が分からないといった感じでシアは困惑した様子を見せた。シア――というかこの世界の住民からしてみればこの考え方は共感が難しいんだろう。この感覚は、平和な世界で暮らしてきた人間にしか分からない。

 

 いつ命を奪おうとする敵が現れてもおかしくないトータスの住人と普通の暮らしをしていれば命の危険など来るはずがない日本人では心の余裕がまるで違う。

 

 例えるなら、暇な時に重い荷物を持って階段を上がろうとするお年寄りを見かけた時のようなものだろう。別に手を貸す必要はない。でも、余程のひねくれものでなければ日本人(オレ達)はきっと助けようとするはずだ。何か対価があるわけでもないのに。単にそれが善い事だから、という考えが頭に染みついているから。

 

 命の危険が側にないからこそ、自分の余分な時間を誰かのために使うことに躊躇いがない。しかし、それはこの世界では異常な感性だ。だからこそシアには理解できない。そしてシアだけじゃなく、カム達もオレ達のやり取りには困惑した表情で顔を見合わせていた。

 

 加えてシア達は敵対していたと言うが、あれはオレ的には悪役ムーブをして遊んでただけだ。敵対というには少し違う。

 

「やめておけ、シア。こいつは度を超えたお人好しだ。理屈や理由を求める方が間違ってる。あんまり気にすると疲れるぞ。勝手にやらせておけばいい」

「いや、えぇ……まあ、ハジメさんがそう言うなら」

「それでいい。さて――」

 

 余程理解しがたかったのか、狼狽えるシアの後ろからポンッと肩を叩いて前に出て来たハジメは困惑を深めているカム達にニヤッと笑みを浮かべて宣言する。

 

「カム、そしてハウリア族。感謝しろ。仁だけじゃなく俺も手を貸してやる。その代わり、シアを悲しませるようなチンケな作戦なんぞ全て却下だ。お前等は直接、皇帝の首にその刃を突きつけろ。髪を掴んで引きずり倒し、親族、友人、部下の全てを奴の前で組み伏せろ。帝城を制圧し、助けなど来ないと、一夜で帝国は終わったのだと知らしめてやれ! ハウリア族にはそれが出来るのだと骨の髄に刻み込んでやれ! この世のどこにも、安全な場所などないのだと、ハウリア族を敵に回せば、首刈りの蹂躙劇が始まるのだと、帝国の歴史にその証を立ててやれ!」

 

 いや、そこまでやる気なかったんだが……

 

 ハジメの気勢に呑まれ辺りに緊迫した空気が走る中、オレは心の中で1人呟く。なんか帝国に亜人族との不干渉を取らせるはずが何故か帝国を潰す方針に変わってるが、ここで疑問を問いかける程オレも空気が読めない男ではない。

 

 ハジメがこう宣言したんだ。もうこの先の未来は確定した。何故かって? 兵士は教官に従うものだろう。

 

 次の瞬間、以前ウルで聞いたようなハジメの馬鹿デカい声が辺りに響き渡る。

 

「返事はどうしたぁ! この"ピー"共がぁ!」

「「「「「「「「「ッ!? サッ、Sir,Yes,Sir!!」」」」」」」」」

「聞こえねぇぞ! 貴様等それでよく戦争なんぞとほざけたなぁ! 所詮は"ピー"の集まりかぁ!?」

「「「「「「「「「「Sir,No,Sir!!!」」」」」」」」」」

「違うと言うなら、証明しろ! 雑魚ではなく、キングをやれ!!」

「「「「「「「「「「ガンホー! ガンホー! ガンホー!」」」」」」」」」」

「貴様等の研ぎ澄ました復讐と意地の刃で、邪魔する者の尽くを斬り伏せろ!」

「「「「「「「「「「ビヘッド! ビヘッド! ビヘッド!」」」」」」」」」」

「膳立てはするが、主役は貴様等だ! 半端は許さん! わかってるな!」

「「「「「「「「「「Aye,aye,Sir!!!」」」」」」」」」」

「宜しい! 気合を入れろ! 新生ハウリア族、122名で……」

「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」

「帝城を落とすぞ!」

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」」」」」」」

 

 ごめん。やっぱさっきの提案無かったことにしてもらっていいかな?

 

 ハウリアが頭のおかしい連中だというのは分かっていたが、想定を余裕で越えてきた。もう奴らの頭の中から冷静な思考は完全に抜けている。全員が全員、ハジメに忠実な殺戮兎(バーサーカー)に成り果てやがった。

 

 帝都から離れた岩石地帯に、闘志と殺意の雄叫びが響き渡る。そんなハジメとハウリア達の様子に八重樫達がそれぞれ唖然とし、ユエ達は1人の変態を除いて、蕩けた表情で語り合っていた。

 

 その後の展開はもう語る必要はないだろう。オレ達は帝城落としの詳細を詰めると、その時に備えて各々休むことにしたのだった。




風磨仁
ハウリア計画全否定マン。
ハウリアが帝国と戦争するという時点までは内心ウッキウキに聞いていたのだが、そのやり方が自身が子供の頃にやったイジメっ子報復方法とどこか似ていたので結構必死になって拒絶していた。
この後、ちょっとあくどい事する。
本来の予定ではこの話は省略するつもりだったのだが、原作を読み直していて最初の計画が「あれ? なんか仁が過去にやったことと似てね?」と思ったので書きたくなってしまった。

ハウリア族
原作通り、帝城を制圧することとなった反逆系兎人族。
地下牢で仁に救出を受けた際、うっかり気を抑え忘れていた仁に襲いかかり返り討ちにあった。それ以降は仁の強さを認め、ハジメ程ではないが信頼を置くようになった。色んな意味で普通ではない。
一応ハジメ本人の口から仁がハジメよりも強いことは聞いているが、ハウリア族は忠誠心の高さから未だに世界最強は自分達のボスであると信じて疑っていない。

シア
今回それほど活躍していないヒロイン序列2位。
本来、ここはシアの感動シーンのはずなのだが、どこからかやってきた魔人によって出番を大分奪われてしまった憐れな子。この後、原作同様ハジメへの好感度が極大アップのイベントはあるものの語られることはないだろう。
内心、家族が自分を殺しかけた仁を信頼していることに不機嫌となっている。
最近の悩みは、仁に「あ、負けヒロイン」と揶揄われること。

未だ現れぬ皇帝 ガハルド
圧制者、つまりは反逆される。スパルタクスもそう言ってたから間違いない。
ハジメがバックについただけのハウリア族にも負けるのにそこに魔人ブウの力持った化け物も参戦! 泣いていいよ。まあ、雫を妻にするとか言い出したのが悪いよね。NTRは絶対許さない。あ、君の息子は原作よりも丁寧に殺すよ。
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