ピンクの魔人と共に   作:クー(無課金勢)

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お、お願いジャネンバ……セリフを増やして……。バリエーションが少ないからあんま喋らせられない……。
あと仁君もたまには純粋ブウみたいに「ウギャギャギャオーーッ!!!」とか叫ばせたい。


VSジャネンバ(3)

 初めてだ。ああ、本当に初めての経験だ。

 

 オレは今、魔人ブウになってから初めて……圧倒的格上と対峙していた。

 

 復活したジャネンバの姿は先程までとは見違えるように変わり、より戦闘に特化した引き締まった肉体へと変身した。凶悪な鬼のような恐ろしい見た目をしているが、真の恐るべきはその強さ。今のジャネンバから発せられる気は、オレを圧倒していたのだ。

 

 勝ち目はない。逃げることもできない。あまりの実力差に生存本能が怯えだし、ガタガタと全身を震わせる。それは今までにない体験だった。オレが……魔人ブウの肉体を持つこのオレが……戦わずして敗北を受け入れていた。

 

 だがどうしてだろう。

 

 怖いのに、辛いのに、逃げたいのに……今、オレはそれ以上にどうしようもなく、

 

 ――戦いたかった。

 

 戦えばどうなってしまうかなんて分かりきってる。そんな簡単なこと、気さえ感じられればオレでなくたって分かるはずだ。なのに今、オレは心の底からジャネンバと戦いたくて仕方がなかった。あれだけの強敵に全力をぶつけ、勝ちたがっていた。

 

 この感情はブウに吸収された影響で生まれた心の故障(エラー)だ。死を前にして、強敵との戦いに心が躍るだなんて間違っている。それは絶対に以前までの風磨仁(オレ)が持ち合わせていたものじゃない。

 

 異常だ。異質だ。分かってる。だがそれでも、この感情(コレ)はオレのものだ。例えどれだけ変貌しようとも、拒絶するつもりも、否定するつもりもない。

 

 それどころか、今のオレはこの衝動に身を任せるつもりだった。この胸の内から湧き上がる、"戦え!"という感情に。

 

「ははッ……」

「この状況でよく笑ってられるな、仁。もしかして、ついにおかしくなったか?」

「前からそんな感じはしてた……みたいに言うなよ」

 

 横で顔を青くしつつも、冷静に宝物庫から新たな武器を取り出そうとするハジメを手で制すと、オレは一歩前に出る。

 

「悪いがハジメ。ちょっとの間、オレにあいつとタイマンやらせてくれ」

「……それは、俺達が邪魔だからか?」

「うん? ……ああいや、そういうことじゃない。どうにもオレは心まで魔人ブウになりかけてるみたいでな。あんな強い奴を前にしたら、体が戦いたいって疼いちまった。だから頼む。今はオレ1人でやらせてくれ」

「……正気か」

「正気じゃなし、絶対精神的に問題起きてるだろうが……まあ今はいいだろ。魔人ブウとして生きるって決めた時点でこの程度は覚悟してるよ」

 

 ハジメは分かってるはずだ。今のジャネンバはさっきまでとはまるで違う。全力のオレを凌駕する強さを持つと。気を感知できなくても、ハジメならそれくらい分かる。そして同時に、理解してるはずだ。

 

 オレの意図とは少し違うが、今オレがジャネンバとサシで戦うことこそが、現状の最善であると。

 

 今、オレ達に必要なのは"時間"だ。ハジメがユエ達と合流し、新たな作戦を練り出し、それを実行に移すための準備を整える。それまでの時間を誰かが稼がなきゃならない。そしてそれができるのは、オレ以外にはいない。

 

 だからこの無謀な戦いを挑もうとするオレを、ハジメは止めることができない。それも分かっていて、オレはハジメに頼んだ。ずるい、と言われれば確かにそうなんだろうな。

 

「あー……でも多分勝てないからよ。悪いけど、出来るだけ早く助けてくれ」

「仁……。ああ、任せとけ。すぐに奴を殺す算段をつけてきてやる。……それまで死ぬなよ」

「馬鹿言うな。彼女作る前に死ねるかってんだ」

「だったらさっさと告れよ……」

「……それとこれとは話が別」

 

 短く言葉を交わすと、ハジメは地面を強く蹴り、後方へ消えていく。どうせ今頃、ユエ達は復活したジャネンバに混乱してるだろうから、それを落ち着かせる時間も含めると……希望的観測も含めて3分ってところか。キッツいな。

 

「よし、行くか!」

 

 無言で気を高めながら佇むジャネンバの様子を窺いながら、オレは気を解放する。だがジャネンバには遠く及ばない。どうやら、思った以上にヤバそうだ。オレの内にこれまでほとんど感じることのなかった恐怖が湧き上がる。だが同時に、そこには確かな高揚もあった。

 

「ハアッ……!」

 

 先に動いたのはオレの方。ジャネンバに飛び掛かるように突撃する。

 

「ガァア!!」

「キッ……!?」

 

 だが甘かった。反撃に口から放たれたエネルギー波を受け、下半身が消滅させられてしまう。体は一瞬の内に再生したものの気づいた時には背後を取られ、後頭部に回し蹴りを受ける。

 

 勢いよく吹き飛ばされたオレは凧のように体を薄く広げ、風を受けることで勢いを殺して着地するも、既に目と鼻の先まで迫ってきていたジャネンバが顔を狙い蹴りを放っていた。それを上体を逸らすようにして躱し、蹴り返したがあっさりと腕で防がれる。

 

 続けて殴打するように振るわれた尻尾を横向きに倒れるように躱し、地面に着けた両手で体を支え、両足でジャネンバの顔を突くように蹴る。だがダメージが入った様子はない。それどころか、オレの足を掴み、投げ飛ばそうとしてきた。

 

 咄嗟に掴まれた方の足を切り離し、自爆させるも、驚きはすれ余裕の表情は崩れない。咄嗟にオレはエネルギー弾を投げて距離を取ろうと試みるも、放ったエネルギー弾はジャネンバの顔の前に展開されたゲートに吸い込まれるという形で無効化された。

 

「後ろかッ!」

 

 当然、ゲートには入口だけではなく出口も存在する。オレは背後の空間が歪んだことを瞬時に察し、その場を飛び除いて背後から飛んできた己のエネルギー弾を回避した。その隙にジャネンバは突進してくるが、予測していたオレは地面に足を突き刺し、地中で伸ばした足をジャネンバの真下から生やして顎を打ち抜く。

 

 想定外の方向からの攻撃に一瞬ジャネンバは怯んだ様子を見せたが、続けて地面からの何度も奇襲をしかけても2撃目以降はバク転しながら回避されてしまう。だが回避という動作は隙にも繋がる。オレは地面からの奇襲を続けつつ回避中のジャネンバへとエネルギー波を放つ。

 

「なに?」

 

 回避不可能に思えたエネルギー波。しかしジャネンバは身体をパズルのピースのように分解して回避する。同時に気も霧散するように消え、居場所の特定ができないオレは首を振って辺りを見渡す。

 

 そして再びジャネンバが姿を見せた……オレの背後から。まるで先程の逆再生かのように腕から順に身体を再構築したジャネンバにエネルギー弾を胸に押し付けられる。回避はできない。オレは敢えて自分から吹き飛び、ダメージを軽減させる。

 

「クソッ、瞬間移動とは違う。そういう構造か?」

 

 無理に踏みとどまれば更なる追撃が襲う。それを避けるべく、オレは飛ばされた先の地面を両手両足で殴りつけ、その勢いを利用して元の場所まで戻り、勢いそのままにエルボーをジャネンバの腹にめり込ませた。

 

 多少顔を歪めた所を見るに多少は効いたようだがまだ浅い。追撃しようと下から振り上げたオレの拳と振り下ろされたジャネンバの拳が衝突する。押しも押されもしない互角。しかしそれは、オレとジャネンバのパワーが互角というわけではなく、オレの全力とジャネンバの通常パワーが同じであることを意味していた。

 

 そして至近距離による打撃戦が始まった。

 

 腕と腕、脚と脚、膝と膝、肘と肘。格闘に使える全ての部位を総動員してオレ達はぶつけ合い、激しい攻防を繰り返した。その最中にオレは腕を4本に増やしてエネルギー波を放つも、上体を大きく反らすことで回避され、さらにそのままバク転したジャネンバの尻尾に顎を打たれる。

 

「チッ……!」

 

 衝撃を堪え、腕を伸ばして反撃に出るも、ジャネンバにとってそれでも遅かったのか、手刀であっさりと腕を切断された。だがオレはそれを利用し、切断された腕をスライム状に変化させ、ジャネンバをグルグル巻きにして拘束する。

 

「はあッ!」

 

 すぐに腕を千切って再生させ、ほんの僅かであるとはいえ動きを止めたジャネンバに至近距離からエネルギー弾を叩き込み、更に額に頭突きを打ち付ける。ダメージは浅いが、それでも痛みはあったのだろう。怒りのままにジャネンバは吠えてあっさりと拘束を振り解く。そして今度はオレが顎を蹴り上げられ、再び打撃戦による攻防が続いた。

 

「がぁああああ!」

「ウゥゥアアアア!」

 

 互いに雄叫びを上げながら、ゼロ距離で殴り合う。攻防の最中、オレはついジャネンバの腕に噛みつくも、お返しとばかりに頭に噛みつかれ、そのまま振り回されて投げ飛ばされる。

 

 飛ばされたオレを追って迫ってきたジャネンバが両腕を組んで振り下ろしてきたが、自分で飛ぶ速度を上げて回避。エネルギー波で反撃を試みるものの、口から飛び出たエネルギー波で相殺される。

 

「ヌゥアアアアッ!」

 

 奇妙な叫びを上げながらジャネンバは指先を空中に走らせる。すると無数の光の破片が空中に生み出され、それら全てがオレへと向けて放たれた。咄嗟に腕をクロスさせて防御を試みるも、それらは刃のように鋭く、あっという間にオレの身体をバラバラにする。

 

「ヒャヒャヒャヒャッ!」

「ご機嫌だなぁおい!」

 

 とはいえすぐに再生して元通りになり、次はこちらが巨大な黄色いエネルギー弾(イノセンスキャノン)を高笑いしていたジャネンバにぶつける。

 

「……うっわ、全然効いてない」

「グォオ……」

 

 流石にコレは効いたのか、ジャネンバの身体には所々浅い傷が付き、顔には明確な怒りと殺意を浮かべたが、所詮その程度。さっきまでのジャネンバならこれでワンパンできたんだが、やはり厳しいな。

 

「アアアアアアア!!」

 

 牙を剥き出しにし、獣染みた雄叫びを上げながら、ジャネンバは突撃してくる。オレがそれに迎え撃とうとしたその次の瞬間、

 

 ――背後から飛んできた黒炎がジャネンバの体を纏わりつくように拘束し、続いてやってきた雷の龍がジャネンバに噛みつき、そのまま遥か先まで連れ去っていった。

 

「っ……今のは……」

 

 その攻撃に、オレは見覚えがあった。

 

 ティオのブレスとユエの魔法。どちらも以前王国でオレが戦った時に実際に受けた攻撃だ。しかし、だからこそ分かる。あの戦い以降成長して強くなったと仮定したとしても、あの威力は明らかにおかしい。当然"強すぎて"……という意味でだ。

 

 オレの攻撃を真正面から受けて余裕で耐えてくるのがジャネンバという怪物だ。そんな怪物相手に、ユエやティオ程度の攻撃が通じるはずがなかった。例え2人がかりであってもその事実は覆しようがない。

 

 しかしどういうわけか、今ジャネンバへ放たれた攻撃は、少なくともオレのフルパワーエネルギー波くらいの威力はあった。これはいくらなんでもあり得ないだろう。

 

 一度息を整えるべき状況にも関わらず、拭いきれない違和感に思考を支配されかけていたその時、ついさっき下がったハジメとたった今援護をくれたであろうティオがオレの両隣に降り立った。

 

「仁、生きてるな!」

「ほぉ、無傷とは。どうやら心配はいらなかったようじゃのぉ」

「いや全然無傷じゃないが?」

 

 援護射撃が届いた時点でなんとなく察していたが、どうやら楽しい時間(タイマン)はお終いらしい。少しばかり名残惜しいが、それは後だ。

 

「オレのことはいい。それよりもおまえらの方だ。この短時間でどうやってそこまで強くなりやがった」

 

 理屈こそ分からないが、さっきの攻撃と同様、何故かハジメとティオから感じられる気も比べ物にならないほど格段に高まっていた。それこそ、これならオレとの戦いが成立するレベルで。

 

 加えて、ハジメ達から感じられる気はどこか人間からズレたような異質な気だった。この数分の間に、ハジメ達に何かがあったと断定してしまうには十分な証拠だろう。だがしかし、オレの望む答えが返ってくることはない。

 

「話は後だ。詳しい作戦についてはユエに伝えてある。仁は一旦下がってろ。次の時間稼ぎはオレ達がやる」

「……は? ちょ、おい待っ――ってもう行きやがった!? ああクソッ、ああいうろくな説明もなしに勝手に行動するのは相変わらずだな!」

 

 必要最低限の情報だけ伝えて、ハジメとティオは風を裂くように吹き飛んでいったジャネンバへ追撃に向かった。謎に強化した今の2人を足せばオレ1人分くらいにはなりそうだが、ハジメ達はオレと違って無限に等しい体力も不死身に近い再生能力も持ってない。時間稼ぎとはいえ、そう長く期待は持てない。

 

 連続した爆撃と共に、耳を劈くような轟音が響き渡る。時間はない。オレは"瞬間移動"で後方で待つユエ達の元へと向かった。

 

 だがその先にユエ達と共にいたのは、この場にいるはずのない……いてはならないはずの人間だった。

 

「おい……なんでおまえがこっちにいる。()()()()()()()()()()()()()

「さっきぶりね。魔人ブウ」

 

 ジャネンバの生みの親であり、現在ジャネンバに肉体を奪われているはずの解放者――リューティリス・ハルツィナがそこにはいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさに奇跡。そうとしか説明しようがない。

 

 肉体の制御権をジャネンバに明け渡したリューティリスは奪われた肉体の内から仁達の戦いを見続けていた。そしてハジメと仁によるとどめの一撃を受け、死を確信した。

 

 想定外は、ジャネンバがまだ余力を残していたこと。

 

 肉体を変形させ、パワーアップしようとしていたジャネンバを彼女は内側から必死に抑え込もうとしていた。ただ所詮肉体に宿る魂の1つでしかないリューティリスに出来ることは少ない。あまりの力の差にあっさりと返り討ちに遭い、それどころかリューティリスは本来自身のものであった肉体にすら弾き出された。

 

 そんな経緯から今、ジャネンバとリューティリスの2人が同時に存在するという起こるはずのない異常事態が発生したのだ。

 

 片や善、片や悪である2人が再び別つことができたのは喜ぶべきことなのだろう。だが事態はそう単純な話ではない。

 

 己の意志で体を動かせることに気づいたリューティリスは、今の自身が魂のみで構成された存在であるとすぐに気づく。見た目だけは取り繕えているものの、それは魔力で(かたど)った表面だけの張りぼてであり、そこに血の通った肉はない。外への物理的干渉が不可能である上、生きているだけでも魔力を消耗する。時間経過での消滅は免れなかった。もってあと3日。それが彼女に残された最期の時間。 

 

 自分自身の体であるからこそ、リューティリスはその状況を瞬時に把握した。そして自分が今すげき最善を反射的な速度で導き出し、行動を開始する。

 

「――その作戦、わたくしも混ぜてはもらえないかしら?」

 

 そうして彼女は声をかけた。神に抗い、魔人ブウと共に戦い、今もジャネンバを倒すため策を巡らせる若い希望達へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仁に時間稼ぎを任せ、ジャネンバを倒すための作戦会議を進めていたハジメは、突然声をかけてきた女――リューティリスへ反射的にドンナーの銃口を向けた。

 

 疑わしきは撃つ。随分と極端な考え方をするハジメだが、今回に関しては多くがそれに同意していた。ユエやシア、ティオ。更には雫でさえ、突如現れた彼女を警戒し、各々がいつでも戦闘に移れるように構えていたのだ。

 

 この空間――"外界世界"についてハジメ達が持つ知識は少ない。それでも、この場が普通の空間でないことぐらいはなんとなく分かっていた。そんな世界に突然現れた人間がただの通りすがりの一般人……なんてはずがない。警戒してくれと言っているようなものだ。

 

 逆にいうと、そこまで頭が回らなかったお人好しの香織や、驚きに動けなかった鈴と龍太郎、何も警戒していなかった光輝は危機感が足りなかったとも言える。

 

 更には、目の前の女の身体には血肉が通っておらず、人の型をとっただけの魔力の塊であるとハジメの魔眼石は見抜いていた。自然とハジメの警戒度は高まっていく。

 

「へえ……当然の反応ね。ちゃんと警戒できるのは素晴らしいことよ。ただ今はお互い時間がないでしょ。先にわたくしの話を聞いてくれないかしら? ああ、勿論武器(ソレ)はそのままで構わないわよ」

「……お前は誰で、何しに来た。5秒で答えろ」

「えっと……それ答えさせる気ないわよね」

「いいからさっさと答えろ」

 

 普段であれば、こんな怪しい人物との対話に応えるほどハジメは優しくない。容赦なくリューティリスが死んでも銃弾を撃ち込み続けていたことだろう。だが今はジャネンバという桁違いな強さを誇る怪物との戦闘中であり、時間を稼いでいる仁がいつ限界を迎えてもおかしくない。

 

 余計な戦いをしてる時間も余力もないし、もし利用価値があるのならなんであっても使いたい。この短い時間の中でハジメはそれが最善であると判断した。幸いにも、リューティリスは動きを見る限り隙だらけ。いつでも殺すことができる。ハジメにはそんな余裕もあった。

 

 だがそれでも、ハジメにだって予想外はある。

 

「わたくしの名はリューティリス・ハルツィナ。大迷宮を攻略したことのある貴方達には解放者……もしくは反逆者って呼び名の方が分かりやすいかしら?」

「……は?」

「目的は……まあ貴方達と同じよ。わたくしは奴を――ジャネンバを倒したい。あれはわたくしが生み出してしまった罪の具現。奴だけはこの命に代えてでも倒さないといけないの……」

 

 オスカー・オルクスの手記を所持している以上、ハジメはリューティリス・ハルツィナの名前も勿論知っている。ただ情報にある彼女は人間である上に、既に故人だ。この場にいていいはずがない。

 

 ……と考えたあたりで脳裏にウザい顔をしたミニゴーレムが『イエーイ♪』とダブルピースしていたのでハジメはそこらへんについて考えることを止めた。

 

「解放者? ……なんだそりゃあ?」

「龍太郎君、前に南雲君達が話してた昔神様と戦ったって人達だよ。大迷宮を作った人もその1人だって言ってたじゃん」

「そういや、んなこと言ってたような……うん、でもそれってめっちゃ昔の話だよな? なんで生きてんだ?」

「鈴に聞かれても分からないよ!?」

「2人とも静かに。今は黙って聞くべきよ」

「うっ、わりぃ」

「な、なんで鈴まで……」

 

 ただどうやらハジメ達がこれまで旅してきた理由を理解できる脳を持っていなかった龍太郎だけは、まったく話についていけてない。香織に治してもらっても、ジャネンバのビンタを受けても、その馬鹿さ加減だけは治らなかったようだ。

 

 それはそれとして、目の前の女が本当にあの解放者、リューティリスである確証もない。ハジメは銃口の狙いを定めたまま、問いかけを続ける。

 

「お前が本当に解放者だっていう証拠はどこにある。それと、あの怪物を作ったって言ったな。何のためだ」

「わたくしが本物であるかどうかはあの魔人にでも聞けば分かることだわ。どういうわけか、彼はわたくしの顔と名前を知っているようだし。それとジャネンバを作った理由なら、わたくし達が戦ってきた理由を知っているのなら分かるでしょう? "魔人ブウを倒す"……それだけ。でも、今の奴は完全に制御から外れ、好き勝手に暴れようとしているわ。わたくしはあのような悪を生み出してしまった者として、責任を取らなくてはならないの……」

 

 言い分は正しい。整合性もある。しかしそれでも、ハジメは目の前の女を信用しきれずにいた。それは【オルクス大迷宮】の深層でハジメが失ったものの1つだろう。今の彼は、他者をそう簡単に信用することができない。きっと目の前の女が本当にリューティリス・ハルツィナだと分かっていても、ハジメから警戒の色が消えることはないだろう。

 

「……ハジメさん、大丈夫です」

 

 それでも、ハジメは自分が信じた女の言葉なら信用することができる。

 

「彼女は嘘を言ってません。なんとなく……分かるんです。ハジメさん、私を信じてくれませんか?」

「シア……」

 

 亜人族同士、何か通じるものがあったのかもしれない。シアはドンナーの銃口を掌で優しく包み、下へと降ろす。そしてハジメの瞳をまっすぐと見つめ、リューティリスが敵ではないと確信したように告げた。

 

 他人を信じられないハジメも、愛してくれる女からの頼みであれば悩まざるを得ない。彼は瞼を閉じ、思考の整理を始めた。

 

 現状、シアはハジメにとってユエの次に"大切"な存在だ。彼女の言葉を疑うということは、同時に彼女を愛する自分の心にも嘘を吐くという事にもなる。それは男として認めるわけにはいかない。惚れた女に恥じない男であるため、ハジメも覚悟を決めて瞼を開き、目の前にいるリューティリスをもう1度見つめた。

 

「分かった。一旦お前が本物だって信じてやる。でもそれ以前に……お前に何が出来る。混ぜて欲しいって言うからにはあの化け物を殺す案くらいはあるんだろ? 俺達が信用してやるだけの価値を証明してみせろ」

 

 信じる……とは言ったが、信用するのと頼りにできるではまるで話が違う。今必要なのは数ではない。戦況をひっくり返すことのできる切り札だ。ハジメはリューティリスに戦力的価値について問いかけた。

 

「今ここで神代魔法でもくれるのか? それとも奴の弱点でも知ってんのか? 自信満々に俺達の会話に割り込んできたってことはそれなりの根拠がある。違うか?」

「わたくしの価値……そうね。まず、今この場で貴方達に神代魔法を渡すことは出来ないわ。あれには特製の魔法陣が必要だし、貴方達ではまだ使いこなせない。それにジャネンバはわたくしの最高傑作。弱点なんてあるはずないわ。あとこれだけは間違えないで欲しいけど、今のわたくしには人としての肉体はないから戦力としては期待しないでくれるかしら」

 

 悉くと返ってくる否定の言葉に『だったらテメェは何しに来たんだ』とハジメが額に青筋を浮かべていたが、「でも……」とリューティリスが言葉を続けようとしたことでそれを口から出すことはなく、呑み込まれる。

 

「貴方達をわたくしの魔法で支援するくらいならできるわ。例えばそう……こんな風にね」

 

 リューティリスは短文の詠唱を唱え、ハジメの胸に掌を置いてからある魔法を発動する。

 

「は……な、なんだこれ……力が……!」

 

 リューティリスの緑色の魔力にハジメが包まれる。ユエ達はリューティリスの突然の行動に驚愕するも、ハジメはそれ以上の衝撃に襲われていた。

 

 地獄のような日々を過ごし、多くの魔物と戦い、神代魔法すら手に入れた。ハジメは今の自分の肉体が人間としての限界をとっくに超えているものだという自覚があった。しかしリューティリスの魔法を受け、その常識が崩れ去る。

 

 驚くことに、ハジメの肉体的スペックや魔力を含めたありとあらゆる"力"が一気に膨れ上がったのだ。それは、"極破"すら大きく上回る強化率であり、再現なく溢れ出す自身の力にやり場のない全能感が襲いかかる。

 

「貴方という"()()"を1段階上に引き上げました。これがわたくしの魔法――"昇華魔法"の最高到達点よ。といっても、この魔法の真価は別のところにあるけど……」

 

 リューティリスの神代魔法――"昇華魔法"は文字通り全ての"力"を昇華させる。汎用性が高いことに加え、凄まじい効果を誇るその魔法は、あらゆる神代魔法の中でも特に重要視されてきた。当然、使いこなすのにも相当の苦労を必要とする。

 

 その昇華魔法を、極めた者こそがリューティリスだ。彼女は魔法の才能だけで比べるならば、ミレディすら上回る。魔法の天才である彼女が、昇華魔法の研鑽を積み重ねた上に辿り着いた極地。それこそが今ハジメに使ったもの。

 

 "存在そのものの昇華"。

 

 猿が人間に進化するかのように、リューティリスは"生物の本質"という事象そのものを進化させたのだ。今はまだ1段階しか進化させられないものの、それが2段階3段階と増えていけば、いずれは生物的な神にすら至るであろう奇跡の力。それを彼女は単体で行使して見せた。

 

 人間に限らず、生物は進化すれば自然とその強さも増す。それが肉体的なものなのか、それとも脳構造的なものなのかは進化の方向性にもよるが、間違いなく桁違いなパワーアップを遂げることになるだろう。

 

「力も速さも魔力も気も、貴方達には今何もかもが足りていない。でもわたくしならば、それを補うことができるわ。いくらなんでも、あの魔人やジャネンバのように異次元な強さまで引き上げろというのは無理な話だけど、さっきよりは幾分かマシでしょう。この力は、貴方のお眼鏡にかなったかしら?」

 

 当初、ハジメ達が考えていた作戦は全員で隙を作ってユエの破壊でとどめを刺すという、内容自体は先程やった事とそう大差ないものだった。だがそれを実行するにしても、今のハジメ達とジャネンバではあまりに力の差が大きすぎる。

 

 その内容を盗み聞いていたからこそ、リューティリスは自身の魔法が役立つと確信したのだ。そしてハジメにとって、この魔法はまさに今求めていた力そのもの。

 

「ははっ、最高だ。これなら……この力があれば……」

 

 そしてハジメは宣言する。

 

「――勝てる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなるほど……そういうわけか……」

 

 原理こそよく分からないが、ジャネンバの肉体から魂だけ追い出されたらしいリューティリスから手短に何があったかを教えられたオレは、ハジメ達の急激なパワーアップに納得していた。

 

 ハジメやティオだけじゃなく、ユエやシア、白崎、八重樫や挙句の果てには天之河達まで異常なレベルのパワーアップを遂げている。話を聞く限り、その理由はリューティリスの神代魔法に関係してるというのだ。『存在を1段階引き上げた』だとか訳の分からないことを言っていたが、要するに魔法で凄いバフ持って強くなったって認識でいいだろう。

 

「それなら最初っからオレを強くしてくれれば良かったじゃん。ハジメであそこまで強くなるんだったら、オレが強くなれば楽勝だろ?」

「無理ね。貴方とわたくしでは力の差がありすぎて、反動でわたくしの方が消滅してしまうわ。どんな相手でも無条件に進化できるほど、昇華魔法も便利じゃないのよ」

「あー……まあ、そう都合よくもいかないか。期待はしてなかったが、現実ってのはやっぱ厳しいな。……っというわけで、やっぱりおまえらの作戦に賭けるしかないわけなんだが、そろそろ教えてくれよ、ユエ。おまえらのとびっきりでデンジャラスな作戦をよ」

「……話を逸らしたのはそっち」

 

 例え誰かの力を借りようとも、オレ1人で戦って勝てればそれが一番安心なんだが、やっぱそう簡単にはいかなかった。オレは話題をリューティリスの件からずらし、ハジメが考えたという作戦についてユエに問いかけた。

 

 案の定、ユエが睨んできたが、初手にリューティリスがここにいることにびっくりしてユエ達をガン無視してしまったオレも悪い。とはいえなんと声をかければいいのか分からず、ただ無意味に睨み合って無駄な時間を浪費するオレとユエにいい加減痺れを切らしたのだろう。シアが割り込んできた。

 

「2人ともそこまでにしてください! ハジメさんとティオさんが命懸けで時間を稼いでるんですよ。もう少し危機感をもったらどうですか!」

「おう、悪い……」

「……私は悪くない」

 

 何一つ間違っていない正論にオレもユエも反論はできない、オレ達は取り合えず互いに形だけの謝罪を交わし、今するべき会話に話を移した。

 

「……いい。まず私とリューティリスでシアと仁の視覚と魔力を繋げる」

「視覚と魔力? はぁ、そんなことして何の意味が…………いやそうか、"未来視"」

「はい。私の視た未来を仁さんと共有します。私の"未来視"もリューティリスさんのおかげで強化されましたが、あの怪物の攻撃を全部捌くのはちょっと無理です。でも、貴方が未来を視れたなら、それもできますよね」

「勿論いける。って断言したいんだが……そう上手くいくもんか? 魔法に関してはおまえらの方が詳しいだろうけど、そんな簡単なもんじゃないだろ?」

「ええ、当然欠点もあるわ。五感を繋げるという性質上、お互いの距離が離れれば離れるほど、共有された視覚にも時間差(ラグ)が生じてしまうわ。だから貴方と兎人族の彼女には常に一緒に行動してもらう必要がある。その意味が……分かるわね」

「あー……つまりこいつをおぶって戦えと。……これ1発も受けちゃダメなやつじゃん」

「……そう」

 

 シアの持つ"未来を視る力"。それをオレと共有し、ジャネンバの攻撃を事前に知る。それはきっと大きなアドバンテージとなるだろう。ジャネンバの先読み能力は恐ろしいが、未来視はその先をいく。

 

 オレが以前ハジメ達の中でシアを最も警戒していたように、先を知れるというのはやられる側からしてみたら相当に厄介な力だ。だがどんなに優れた能力であっても、メリットだけを受け取ることなんてできない。

 

 オレとシアが常に一緒に行動する。それだけならまだ簡単だが、あのジャネンバの攻撃を掻い潜った上でという前提となると話は変わる。要するに、オレの戦いについてこれるようシアをおんぶした状態で戦い、かつシアが死なないように攻撃を1撃も食らっちゃいけないわけだ。これはちょっと難易度が高い。

 

「魔力も繋げるのはシアの魔力不足を補うため……ってことでいいか?」

「……そう、シアは魔力が少ない。だから仁の無駄に有り余ってる魔力を使わせてもらう」

「言い方もうちょいなんとかならないか? せめて温存してるとか……」

 

 詳しい魔力消費量は知らないが、前に戦った感じからして、シアの未来視は相当燃費が悪い。そして残念なことに、シア自身の魔力量はユエほど膨大じゃない。それを補うために、主に気とフィジカルでしか戦ってないオレの余らせてる魔力を使う。まあ合理的だ。そこに異論はない。

 

「……視覚と魔力を繋げたら、仁には奴ともう一度戦ってもらう。その後はさっきと同じ。全員で隙を作って、私が"破壊魔法"を使う。……でも多分、それだけじゃあ殺しきれない」

「だろうな」

 

 オレやハジメ達が戦ってジャネンバの隙を作り、ユエがとどめを刺す。そこまではさっきと同じ流れだ。でもそれでジャネンバを倒せないことは、既に証明されてしまった。例えリューティリスの魔法で強くなったとしても、ジャネンバの方も桁違いに強くなってる。ユエの魔法に全てを任せるには、あまりに賭けの要素が強すぎた。

 

 しかし続いて告げられたユエの言葉にオレは「なるほど……」と納得する。

 

「そう、殺せない。……でも、弱らせることはできる」

 

 変身する前のジャネンバはユエの魔法を正面から受けて耐えて見せた。だからそれで倒せるとは思えない。ただ効いてないわけでもなかった。

 

 目に見えてダメージを受け、かつ万全の状態であれば無傷で耐えられたであろう後に放たれたハジメの攻撃すら通った。それはつまり、ユエの魔法によって少なくとも防御力を著しく引き下げるくらいには、影響が出てたってことでもある。

 

 だったらハジメの考えた作戦というのは、

 

「ユエの魔法で弱体化させた所をフルボッコ。そういうわけか」

「んっ……その通り」

 

 随分と単純な作戦だが、この短時間で考えた割には悪くない。確かにそれならあのジャネンバを倒せる可能性もある。しかしまだ不安要素は残る。オレは白崎を含めた天之河達に視線を向ける。

 

「じゃあ、こいつらの役目はどうなる。さっきみたいに白崎の護衛に回すか? 別にいいが、はっきり言って邪魔だぞ」

「「「「っ……」」」」

「大丈夫。役立たず組には悪口要因になってもらう」

「……なにそれ?」

「ユエ~! その役立たず組って呼び方まずやめようかなぁ!」

 

 悪口要因……と意味の分からないことを言いだしたユエだったが、そこには一応ちゃんとした理由があった。

 

 先程の戦闘中、谷口が"悪口"を言った途端、ジャネンバは何故かダメージを受けた。表面上の浅いものでしかなかったが、あのジャネンバがダメージを受けたのだ。その理由をハジメは、ジャネンバが"悪口"に弱いと考えたらしい。

 

 それ以外に理由も思い至らないから、なんとなくは分かってたが、やはりあのジャネンバが悪口言われてダメージを受ける豆腐メンタルだとはとてもじゃないが思えない。元の肉体の持ち主であるリューティリスだってそんな確証はないと言ってたから真相は本当に謎だ。

 

 だがそれでも、やらないよりはやった方がマシということで、後方待機組は遠くからジャネンバを罵倒するというなんとも可哀想な役割を任せられていた。どうでもいいが、天之河が例え敵であったとしても悪口を言ってる姿を想像できない。オレやハジメに向けてボロクソに言ってくる方が容易にイメージできる。

 

「んん~……ま、いっか。分かった。作戦については大体把握したぜ。これ以上オレからは聞かん。……準備が出来たんならさっさと始めてくれ」

「……んっ。シア、こっち来て」

「はいっ!」

 

 ハジメが考えた作戦について、大体の概要は聞き終えた。他にも細かな詳細はあるだろうが、オレのやることは変わらない。全力でジャネンバを倒しにいく、それだけだ。

 

 シアがオレの横に並び立ち、ユエがシアの目元を、リューティリスがオレの目元を両手で覆った。それから数秒後、ユエの「……終わった」という言葉に合わせて覆われた手が離れていく。

 

「……うわぁ、気持ち悪っ! これ絶対に酔うわ……」

「ううっ……本当、そうですね。未来視の時とはまた違った感じで異物感がありますぅ。早く終わらせましょう」

 

 暗闇から解き放たれた先の光景に、オレとシアは仲良く吐き気を催す。自分の瞳に移る光景に重なるように、シアの見ている光景がそこには映し出されていたのだ。しかも、それが勝手に動くものだから、異質な気持ち悪さがじわじわと湧き上がってくる。

 

「準備は出来たわね。それじゃあ行きましょう」

「おお……って八重樫も行くのかよ!?」

「当たり前よ。私でも攪乱くらいならできるわ。それに、皆が命懸けで戦ってるのに私だけ安全な場所でのうのうと待たせるつもり? そんなの死んでもごめんよ」

「っ~……おまえは相変わらず聞き分けが……。ああクソ、分かったよ。でもヤバいと思ったらすぐに逃げろ。それぐらいの時間は稼いでやる」

「ええ、その時は頼らせてもらうわ」

 

 当たり前のように隣に立ち、『さあ行くぞ!』みたいな雰囲気を醸し出していた八重樫にオレは普通に驚愕した。ただ八重樫にも理由があり意思があり立場がある。ここでオレがその行動を個人的感情で止めてしまえば、八重樫の覚悟を否定することになる。それでは、"女だから"と守るべき対象と定めてしまう天之河と一緒だ。

 

 本音を言えば凄い複雑だが、仕方なく八重樫の前衛参戦を許容したオレがジャネンバの元へ飛ぼうとすると、後ろからシアに頭をはたかれる。

 

「何1人で勝手に行こうとしてるんですか! さっき話しましたよね? 一緒に行動しないと意味ないんですよ!」

「あー……うん、そうだったな。悪い」

 

 シアと一緒に行動しなければいけないことを完全に忘れて、雰囲気に任せて突っ込もうとしていたオレに呆れたシアが大きなため息を吐いた。そして、本当に嫌々という雰囲気を醸し出しながら、シアはオレの首に腕を回して背負われるように抱き着いた。

 

 何がとは言わないが背中に当たるデカくて柔らかい感触に「お、おおぅ……」と声を出してしまった。そして八重樫に黒刀で頭を貫かれる。これはどうしようもないと思う。ハジメがシアの告白を断りきれなかった理由がなんとなく分かった。

 

「……私も出来るだけ援護はする。でも期待はしないで」

「わたくしも手を貸したいところだけど、流石にこの人数に"昇華魔法"をかけたままでは厳しいわ。悪いけど、自力で頑張りなさい」

 

 ユエとリューティリスから遠回しに『助けは期待するな』と告げられながら、オレは今度こそハジメ達が今も戦っているジャネンバへ挑むため、気を解放させて戦闘態勢を整える。そして、

 

「始めからトップギアで行くぞ。押しつぶされんなよ、シア!」

「当ったり前です! 私を気遣って負けたりなんてしたらぶっ殺しますよ!」

「じゃあ行くぞッ!」

 

 ダンッ!! と破裂したかのような音と共に地面に大きなクレーターを作るほど踏み込んで、オレは飛んだ。

 

 きっと八重樫はオレのスピードについてこれないだろう。オレのスピードに驚き、慌てて走り出す姿を視界の端に捉えた。だがオレは止まることなく、突き進む。そして遥か先でハジメ達と戦うジャネンバを視界に収めた。

 

 事態は悪い方に傾いていた。まさに今、ジャネンバが尾でティオの首を絞め、背に拳を叩き込もうとしていたのだ。咄嗟にオレはそれを阻止すべく、ジャネンバの顔面に蹴りをめり込ませる。

 

 ティオを手放し、蹴り飛ばされていくジャネンバ。警戒を解かずに、踏ん張りが効かずに吹き飛んで行ったジャネンバから目を逸らさないまま、ハジメとティオに声をかける。

 

「待たせたな」

「お待たせしました、ハジメさん、ティオさん! これからは私達も戦います」

「ああ、本当だ。待たせすぎなんだよお前らは」

「そうじゃのぉ。今のは妾も死ぬかと思ったぞ……」

 

 ハジメもティオも、全身に打撲痕を作り、衣服もかなり破れてしまってる。このまま下がって貰ってもいいが、戦力差を覆すためには2人の力がまだ必要だ。オレは"回復の術"でハジメとティオのダメージを回復させる。

 

 復活した2人は立ち上がると、シアを背負ったオレの両隣に並び構えた。

 

「仁、お前から見て勝機はあるか?」

「さあな。でも…………ッ!!」

 

 瞬間、オレの視界に映るシアの視界が未来を映し出した。

 

 咄嗟に振り向き、背後から身体を再構築しながら奇襲を仕掛けてきたジャネンバの腕を左手で掴む。そしてこちらに引き寄せながら右手で腹に2発拳を叩き込み、エネルギー弾を直接顔面に押し当ててから胸を蹴り上げ、空へと打ち上げる。

 

「――この力は悪くないな」

 

 こうして、2度目となる進化したジャネンバとの衝突が始まった。




スーパージャネンバ
今回、ずっと足止めしかされてなかった現状最強キャラ。基本雄叫びしか上げない。
強さ的には仁を余裕で上回っているが、仁1人に約2分耐久され、ハジメとティオ相手にも数分耐久されてしまう。
これはジャネンバが弱いのではなく、仁の無限再生がチート過ぎであり、ハジメとティオには舐めプしていたから。
これでも弱体化している。本当に登場する時期と世界を間違えたキャラ。エヒトが相手をしたら舐めプされたとしても3分持たない。
魔人ブウVSジャネンバ。夢の対決ではあるが残念、どっちも弱体化してます。

リューティリス
なんか魂だけの状態でジャネンバに追い出された解放者。
内側からちまちま妨害していたことがジャネンバにバレ、変身するついでに弾きだされた。ただあくまで魂だけの状態であるため、他者への物理的干渉が不可能かつ、魔力が切れれば消滅してしまう。
ちなみに肉体の方はまだジャネンバが手に入れたまんま。
"存在"という概念にすら昇華魔法を付与できる才能を持ち、多分昇華魔法だけならばきっと今後のユエをも上回る。
仁には協力的な姿勢を見せているものの、内心『ジャネンバと相打ちしないかな~』と密かに思っていたりとか。ミレディもそうだが解放者はやはりブウヘイトが強い。

リューティリスの昇華魔法
原作において根源魔法の踏み台みたいな扱い方をされてる昇華魔法だが、実際のとこ効果内容自体はかなり反則技。
『どんな力も最低でも一段階進化させる』というのはそれほどの強さに思えないかもしれないが、誰にでも使える界王拳と考えたら多分作中一番やばい神代魔法。
"存在を昇華させる"という文だけではよく分からない領域にまでリューティリスは至ったが、現代の人間では再現は不可能。その強化倍率は個人差もあるが、ざっと10~100倍以上。
ジャネンバに勝つ為だけに生み出された魔法。
今後登場予定はなし。

ジャネンバに効く! 悪口ランキング!
(リューティリスが素体なので効き目が原作とは変わります)
1位 この、むっつりスケベ!
2位 やーい、行き遅れ~
3位 え、ごめん。今日の飲み会誘ってなかったんだけどなんでいるの?
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