ピンクの魔人と共に   作:クー(無課金勢)

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大分苦戦しました。戦闘シーンはやっぱり大変ですね。

そして遂にジャネンバ戦もラスト! もう少しで樹海での大迷宮攻略も終わります!
ちなみに、この先ジャネンバを超える敵は出て来ません。一応そこそこのボスは出す予定ですが、振り返ればジャネンバの方が強かったな……となるはずなので。


決着

「おぉおおおおおおお!!」

「ガァアアアアアアア!!」

 

 仁とジャネンバが正面から掌を掴み合い、力比べの姿勢へと入る。

 

 ハジメのおかげで逆転の光明が生まれたからといって、仁本人が強くなったわけではない。当然のように押され始めるも、それは想定内。意表を突いて後ろに倒れながら腕を引き、ジャネンバの体勢を崩しながら両足を合わせて腹に蹴りを突き入れる。

 

 ジャネンバはその攻撃をシンプルなフィジカルのみで耐え、怯むことなく拳を繰り出した。しかしその時、ジャネンバは見た。回避不可能な距離で攻撃が迫っているというのに、焦った様子もなく薄い笑みを浮かべる仁を。

 

 それに気づいた時にはもう遅い。仁の背後に潜んでいた雫が一閃を放ち、味方である仁越しにジャネンバの胸を横一文字に斬りつけた。

 

 仁もジャネンバ同様、本質的には悪であるため、聖なる力"には弱い。だが例え弱体化していたとしても魔人ブウの再生能力があればその程度のダメージなどあってないようなもの。対してジャネンバは『分解』『構築』という工程を挟むことで表面的には五体満足でいられても、確実にダメージは蓄積していく。

 

 すなわち、この仁犠牲アタックによって生じる不利益のほとんどはジャネンバのものでしかないというわけだ。

 

「ウガァアア!」

 

 まさに今自身の肉体を傷つけた刀の性質から、一刻も早く雫を殺すべきだと判断したのだろう。ジャネンバは傷ついた肉体を再構築することすら忘れて雫に強襲する。しかしそれは、同時に厄介な仁をノーマークにするということでもある。

 

 雫に攻撃することなど許さないとでも言うかのように仁が間に割り込み、ジャネンバの顎を打ち抜く。続けて懐に潜り込むと、腹にエネルギー弾を2発。雑に振り回された腕をバク転で回避しつつ距離を取り、入れ替わるように死角から迫った雫がジャネンバの胴を斬り上げた。

 

 再び切り裂かれたにも関わらず、ジャネンバは構わずストレートパンチで反撃してくるが、雫は刀の腹でそれをいなすことで拳の軌道を逸らし、柄を両手で握って突きを放った。

 

 いかに頑丈なジャネンバとはいえ、流石に回避するべく後ろに飛んだが、そこを狙った仁の蹴りが後頭部に突き刺さる。完全に不意の突いた一撃にジャネンバは吹き飛び、地面にゴロゴロと転がっていく。

 

 そこへ立ち上がる隙すら与えず雫が追撃。ジャネンバもエネルギー弾を投げて迎撃を試みたが、仁が肉壁となって一方的に雫の攻撃だけが命中する。

 

 雫の攻撃によってジャネンバが怯んだ隙を見て、仁が腹を蹴り上げて空中に飛ばし、自身も跳躍。身体をボールのように丸めて突進する。だがジャネンバはあっさりと仁を両手で受け止め、至近距離から口砲を放とうとする。

 

 しかしそれが放たれることはなかった。口からエネルギーの塊が解放されるよりも早く雫が地上から放った斬撃が仁を両断し、ジャネンバの顔面を斬りつけ、それを妨害する。

 

 顔を抑え、痛みに苦しむジャネンバとは対照的に仁は一切痛みを感じた様子もなくプラナリアのように2つに分裂し、左右からジャネンバの顔を挟み込むように同時に殴る。そして頭上で再び1人に戻ると、オーバーヘッドキックでジャネンバを地面に叩き落とした。

 

「畳みかけるぞ!」

「ええ!」

 

 着地した仁が雫の隣に並び立ち、2人は同時にジャネンバへと向けて突撃する。

 

 仁の打撃と雫の斬撃。2つの()が怒涛のようにジャネンバを襲う。声を交わさずとも、視線を合わせずとも、完璧な連携を見せる2人の攻めは回避も反撃も許さない。

 

 ジャネンバも反撃を試みようとするも、絶え間なく降りかかる猛攻を捌くことで手一杯。攻撃に手を回す余裕すらない状態となり、いつの間にか押していたのは仁達の方だった。

 

 激しい攻撃の嵐。だが防御を捨てればまだ攻撃に手を回せる。そう判断したジャネンバの捨て身の拳が仁の腹部に突き刺さる。それだけで腹部に大きな風穴を開けられた仁だったが、逃げるどころか拳が体を貫いた状態のまま再生することで、その拳を体に埋め込ませた。

 

 ジャネンバは仁の体に埋まった拳を抜き出そうとするも、その隙を狙って放たれた雫の一突きが胸へと突き刺さる。人間であれば心臓を貫いているであろうその一撃だが、ジャネンバにそのような臓器はなく、血すら流さない。

 

 それでも痛み自体はあるのだろう。己を貫く刃から逃れるため肉体の分解を試みようとしたジャネンバだったが、なにも敵は仁と雫だけではない。

 

「その転移もいい加減見飽きましたよ!」

 

 "天啓視"によっていつどこでジャネンバが肉体の分解を行うかを視たシアが、まだ完全に分解しきれていないジャネンバをドリュッケンで殴りつける。

 

 "昇華魔法"で遥かに強化された一撃であるとはいえ、まだシアの力ではダメージに繋がりはしない。だが肉体の分解中に攻撃を受けるという状況そのものがジャネンバにとってはマズかった。

 

 先程仁が証明してみせたように肉体を再構築中であったとしても、攻撃を当てること自体は可能。そしてその影響は再構築後の肉体に表れる。シアの攻撃による衝撃と共に、中途半端に肉体の再構築を終えたジャネンバが仁と雫の近くに姿を現した。

 

 咄嗟にジャネンバは仁達を掴みかかろうと腕を伸ばすも、仁と雫は左右に散って回避。2人がいたことで死角となっていた背後からハジメの放った白銀の弾丸がジャネンバの脇腹に突き刺さる。

 

「ウ、ウ、ウガァァァ!」

「痛いか? そいつはいい。せっかく作ったお前用の特別製だ。存分に味わえよ」

 

 弾丸が命中した脇腹を起点に白銀に輝く罅がジャネンバの身体全体へと広がり、その肉体を崩壊させていく。それはただの弾丸ではない。光輝の聖剣より作られた『悪を滅ぼす銃弾』。敢えて貫通力を抑え、肉体に弾が埋め込まれるように作られたそれは、敵の体内にて内包する"聖なる力"を爆発させる。

 

 再び肉体を再構築させまいと、ハジメは"宝物庫"からオルカンを取り出し、咆哮を上げ続けるジャネンバへありったけのロケットランチャーを浴びせた。それでもやはり雀の涙程度のダメージにしかならなかったが、爆煙で視界を塞ぐくらいならばできる。

 

 そこへ仁の蹴りと雫の刀が挟み込むように突き刺さる。"聖なる力"により崩壊していく身体の耐久力は著しく低下し、仁と雫の攻撃がダイレクトにダメージとして蓄積していく。しかしジャネンバは2人の攻撃が危険であると認めた上で、敢えて捨て身の攻勢に移った。

 

「……ウゥゥゥアアアアアア!!」

 

 凶暴性に満ちた咆哮と共に、無造作に振り回されたジャネンバの腕が仁と雫に直撃する。仁は兎も角、雫はギリギリで威力を殺すことに成功したにも関わらず、その余波だけで吹き飛ばされた。

 

 そしてジャネンバは仁と雫に追撃を仕掛けることもなく、先程の厄介な攻撃を放ったハジメへ突進。確実に当てられる保証がない以上、残り1発しか残っていない聖なる力が込められた弾丸を使うわけにもいかない。ハジメはドンナーとシュラークで迎撃を試みるが、真正面から突破され、至近距離までの接近を許してしまう。

 

 反射的に技能と義手をフル活用した拳撃を放ったが、軽く腕を払われただけで義手は容易く破壊され、尻尾で殴り飛ばされる。その一撃で全身が砕けたかのような錯覚を味わったハジメだが、その口元には笑みが浮かんでいた。

 

 その理由は、ジャネンバに圧倒されるハジメの背後に潜んでいた……黄金の髪を靡かせる彼女にある。

 

「今だ、ユエ!」

「――"破壊"」

 

 その小柄な体型と、邪魔者を1人排除したことによる油断から、ジャネンバはハジメの背に隠れていたユエに気づくことができなかった。だが腹に掌を触れられ、呟かれたその言葉でようやく思い出す。

 

 変身する前の己に決定打を与えた女の存在を。

 

「ギッ……ガァアア!」

 

 ゼロ距離から発動されたユエの"破壊魔法"はもはや回避不可能。ジャネンバの肉体は"聖"と"破壊"、相反する2つの力を受け、これまで以上に崩壊を加速させていく。

 

 この崩壊はもはや、体を再構築しようとも止まらない。本能的にそれを察したジャネンバは自身の生存よりも、仁や雫、ハジメ、ユエ、シアに対する憎悪を優先し、怒りの感情に身を任せ、牙を剥き出しにしてユエに突撃する。

 

 獣のような最後の足掻き。だがその拳はユエの顔に触れる直前、白銀に輝く刀によって斬り落とされた。遠くに吹き飛ばされながらも、仁に投げられることで距離を一気に詰めた雫だ。

 

 ならばもう1本の腕でと、ジャネンバは構うことなく切断されていない方の腕を振り下ろそうとしたが、背後から追って飛翔してきた仁が足払いをかけて体勢を崩し、仁に背に乗ってきたシアがなんとか踏みとどまったジャネンバの顔面にハジメから渡されていた"閃光手榴弾"を押し当てる。

 

 直後、眩いばかりの閃光が周囲を包み込み、ジャネンバの視界を奪う。当然、仁達は咄嗟に目を庇っていたため視界を奪われることはない。

 

「仁、"限界突破"を使え!」

 

 全身が崩壊を始め、視界を潰されたジャネンバに全員が攻撃を仕掛けようとしたその瞬間、先程吹き飛ばされていったハジメから仁へ指示が入る。ハジメは確信していたのだ。今全員で叩くよりも、仁1人に任せた方が確実にジャネンバを倒せると。

 

 ハジメや光輝とは違い、仁は技能としての"限界突破"を習得していない。だが既に彼はハジメの"限界突破"を、そしてその派生を、直に目にしている。ならば、模倣(コピー)できないはずがない。それをハジメは把握していたし、仁自身も可能だという確信を持っていた。

 

 魔力を消費し、一時的に基礎ステータスの3倍の力を得る"限界突破"であるが、そこには致命的な弱点も存在する。それは使用後の反動。

 

 通常であれば、酷い倦怠感と本来の力の半分程度しか発揮できないくらいのもので済むが、それはあくまで光輝やハジメといった普通の人間基準での話。2人とは違い仁は……()()()()()()()()

 

 同じ3倍であっても、10を30にするのと100を300にするのではその強化幅が違い過ぎる。そして魔法や技能に限らずそういうドーピング系統の技は、強化の幅が大きければ大きいほどその代償も増していくものだ。

 

 加えて運の悪いことに、その代償だけは魔人ブウの肉体をもってしてもどうしようもなかった。これは仁自身にもよく分からない原理ではあるが、何故か魔人ブウの肉体にも()()()()だけはダイレクトにダメージが通ってしまうのだ。当然、"限界突破"の反動も自傷攻撃に判定される。

 

 つまりは仁自身にも、"限界突破"を使用した後、己の身に何が起こるのかが分からなかった。

 

 だからこその奥の手。だからこその切り札。何度も危機的な状況に追い込まれておきながら、仁がその切り札を切らなかった理由がそこにある。だがそれももう必要ない。

 

 ここぞという時……"それは今"。加えてハジメからの指示も得た。仁は己の勘と親友の頭脳を信じ、"限界突破"を発動する。

 

「はぁああああ!!」

 

 仁が一度目を閉じ、見開く。すると体をどす黒い魔力の奔流が包み込み、力が爆発的に膨れ上がる。それだけでもジャネンバを上回る圧倒的な強さであるが、変化はそれだけに収まらない。直後、噴火したかのような漆黒の魔力が噴き上がった。

 

 螺旋を描きながら天を衝く黒き魔力の奔流――"限界突破"の最終派生"覇潰"だ。

 

 本来、『敵が己よりも強く』『命の危機に瀕し』『激しい怒りに目覚める』その3つの条件を満たさなければそれは開花しない。だが彼は技術と才能で条件不十分のまま無理矢理その領域に至って見せた。

 

 勿論その分、副作用も比べ物にはならないだろうが、そんなこと仁はもう気にしてすらいない。どうせ、ここで決めきれなければ自分達は死ぬのだからと、今ここに全てを注いだ。

 

 圧倒的な気の余波によって発生した威圧に、気を感じられる雫は当然として、他の仲間達も気圧される。

 

「……行くぞ」

 

 静かな宣言と同時に仁がどす黒い靄を纏ってジャネンバへ飛ぶ。対して視力の復活したジャネンバもすぐに応戦するが、仁の拳が先に辺り、遥か後方へと吹き飛ばされた。

 

「ガァッ?!」

 

 たった一撃。それでジャネンバは理解する。これまでのようなお遊びとはまるで違う。身体の芯まで届く重い拳。今目の前にいる()が、明確な格上であるとジャネンバは嫌でも思い知らされた。

 

「アアアアアアアア!!」

 

 ジャネンバの顔が憤怒に染まり、エネルギー弾を放り投げる。だが仁はそれを軽々と蹴り返すと、ジャネンバの顔面に直撃。怯んだ隙にすかさず渾身の蹴りをを叩き込み、弾き飛ばす。

 

 飛んでいくジャネンバへ一瞬で追いついて幾度となく拳と蹴りを放ち、反撃することも許さない超連撃を浴びせ続ける。もはやハジメ達からはその戦いを目で追う事すらできない。時折2人の姿が現れては消えるのをただ見ているだけだった。

 

「ウ、ウガァァアアアア!!」

「だあああああ!!」

 

 絶え間なく続く打撃に恐れることなく、ジャネンバは拳を振るう。だがそれも完璧なタイミングでカウンターを合わされ、一方的に仁の拳だけが届く。

 

 よろめきながらも反撃の蹴りを放つジャネンバだが、仁はそれを両腕で受け止め急上昇、十分に振り回してから真下に投げ飛ばす。急速落下するジャネンバ……だが仁はそれよりも早く降下。地面に墜落する前に蹴り上げ、再び上部へと飛ばす。

 

 まだ終わらない。飛んでいくジャネンバを追って飛翔し、追い越してからの"イノセンスキャノン"。その大きさこそ、これまでのものと然程違いはないものの、込められた気は以前のものを遥かに凌駕する。だが膨大な気を詰め込まれた巨大な光球でさえ、ジャネンバは素手で受け止めてみせた。

 

 "限界突破"を使った仁の気に、"外界世界"の崩壊が今まで以上に加速したのだ。本来の力を取り戻しつつあるジャネンバの気が桁違いに上昇していく。それでもまだ仁の方が上回っているものの、所詮"限界突破"は時間制限付きの強化。長引けば長引く程、戦況は悪化する。

 

「ほらよ、ダメ押しだ」

 

 しかしそれをハジメが許さない。

 

 義手を破壊されたことで片腕のみによる射撃であるが、その精度に劣化はない。むしろ、これまでの戦いでハジメのボルテージは最高潮にまで達していた。シュラーゲンから放たれたもう1発の白銀の弾丸はイノセンスキャノンを押しとどめようとするジャネンバの側頭部へ吸い込まれるように着弾する。

 

「ガァ……アアアアアアア!?!?」

 

 ユエの破壊に先程ハジメが放った白銀の弾丸。加えて"限界突破"によって激しい強化を遂げた仁の攻撃。既に滅びゆく体となっていたジャネンバへ更なる追撃。肉体の内で暴れる聖なる力に、ジャネンバの身体から力が一気に抜け、巨大な光球に呑み込まれた。

 

 世界を震わす程の大爆発が発生する。だがその中心にいながら、未だ原型を留めているジャネンバは正真正銘の怪物であると言う他にない。

 

「グォオオオオ!」

 

 もはや悲鳴なのか怒声なのかすら分からない咆哮を上げ、ジャネンバは爆炎から飛び出して仁へ向けてエネルギー波を放つ。だが仁は掻き消えるように姿を消し、気づけばジャネンバの背後に立っていた。

 

 直後、ジャネンバの胸や腹がまるで殴られたかのように窪み、幾度もの衝撃と共に拳打の跡が何度も刻み込まれる。

 

 視認すら許さない速度で、ジャネンバの身体を滅多打ちにしたのだ。そのまま跳躍した仁はジャネンバの後頭部に膝蹴りを叩き込み、よろめいた所にもう一撃。その反動を利用して後方宙返りをしながら更にサマーソルトキックを決め、顎を蹴り上げた。

 

 満身創痍なジャネンバでは、もうその動きについていくことはできない。苦悶に崩れるジャネンバを前に、仁はゆっくりと体を浮かび上がらせながら片腕を上へ掲げる。

 

 掌の上に生まれたのは、赤黒く輝く巨大なエネルギー弾。仁の最大火力――"バニシングボール"だ。

 

 そこから感じられる圧倒的な力を前にジャネンバは無意識の内に後退る。そこで初めてジャネンバは知った。己が"恐怖"しているという事実を。

 

 その事実にジャネンバの心を支配した感情は"怒"ただ1つ。自分を長年封印し続けたリューティリスへの怒り。姑息な手段を使って痛めつけてきたハジメ達への怒り。最強の己を一時的にとはいえ上回った仁への怒り。そして、敵に恐怖する自分自身に対する怒り。

 

「ウガァァアア!!」

 

 獣のように吠え、ジャネンバは突撃する。それに合わせて仁もバニシングボールを放った。

 

 避けようとも、防御しようともせず、ジャネンバは正面からバニシングボールを両手で受け止める。このまま押し返してやると言わんばかりに両腕に力を注ぎ、全力で床を踏みしめるその姿からはどこか必死さすら感じさせた。

 

「こいつで終わりだ!」

 

 己の奥の手を特殊な能力などなしに単なる身体能力で押し返そうとするジャネンバを見て、仁は両手の付け根を合わせる。そして半身を捻りながら、手を腰の横にまで持っていき、そこに全身の気を集中させた。

 

 その構えは、仁とは一切関りの無いかつての老師が50年かけて生み出した"かめはめ波"と呼ばれる技の構えに酷似していた。勿論そんなこと仁は一切知る由もないが、それは善なる者が使う技。本質的に悪である仁が使えば、その性質も大きく変わる。

 

 "勝利"のための力は"殺す"ための力へと。その色も本家とは異なり、鮮やかな紅へと変質していく。

 

「――"ミスティックバースト"!!」

 

 限りなく凝縮した赤き極光を両手の内に生み出し、未だバニシングボールを抑え続けるジャネンバへ向けて解放する。解き放たれた深紅のエネルギー波は仁の放った赤黒い光球ごと驚愕に顔を染めるジャネンバを呑みこんだ。

 

「ウ、ガァ、ァァァァアアアアアアアアーーーッ!!」

 

 ジャネンバが絶叫し、その身体が破壊され、消滅させられていく。いかにジャネンバが強く、頑丈であったとしても無敵ではない。殺されれば、死ぬのだ。生物としてそこを避けることはできない。

 

 やがて、断末魔と共にジャネンバの身体は細胞1つ残さずに完全にこの世から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 ジャネンバの消滅を確認した仁は、ギリギリで効果時間を終えた"限界突破"の副作用に体を蝕まれていた。

 

 全身から力が抜け、酷い倦怠感と共に肉体が内側から張り裂けるような痛みが襲い来る。身体が悲鳴を上げ、指の1本すら動かせない。にも関わらず、その顔は安堵しきったような笑みを浮かべていた。

 

「……は、ははは。オレの――いや、オレ達の勝ちだコノヤロー……」

 

 そしてついに、仁は悲鳴を上げる肉体に逆らえず意識を手放した。勝利の味を噛みしめて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、本当に勝つだなんて……」

 

 戦いは終わった。

 

 かつて、幸運と偶然が重なり、奇跡的に作り出せた"外界世界"はもう半壊してしまっているが、ジャネンバ討伐という目標を達した以上、もうこの世界も役割を終えた。痛手にすらなっていない。

 

 意識を失い、地に落ちた仁を案じて集まるハジメ達を遠目で見ながら、リューティリスはそんな内心を吐き出していた。

 

「魔人ブウと人間が共に手を取り合って戦う。そんな未来があるだなんて……皆に言っても信じないわね」

 

 魔人ブウは何故か姿が変わり弱体化していたにも関わらず、ジャネンバはリューティリスが想定していた以上の実力を隠し持っていた。どうあっても勝てるはずがない。正直リューティリスはハジメに助力を申し出た時点で既に、勝利を諦めていた。

 

 それでも手を貸すことに躊躇いがなかったのは、ジャネンバという怪物を生み出してしまった罪悪感からだろう。勝てないと分かっていても、戦わずにただ見ているわけにはいかなかった。

 

 しかし結末はどうだ。本当にギリギリの戦いではあったものの、勝利を収めたのはこちら側。しかもそれは、神以上に厄介な魔人と現代の人間達が協力して戦うといった神代の時代では絶対に見ることができないであろう共闘によって。彼女が受けた衝撃は相当なものだった。

 

「っ……あらら……」

 

 突如、リューティリスは全身から酷い脱力感を感じると共に、自身の肉体が僅かに透け始めているのを目にする。

 

「そう、わたくしも時間切れ……ということね」

 

 今のリューティリスは肉体を持たず、所詮は魔力で仮の肉体を生成しただけの精神体。生きているだけで魔力を消耗するような儚い命でありながら、絶えずハジメ達に"昇華魔法"を付与し続けていたのだ。魂が擦り減っていくのも当然。

 

 元より、彼女が今この瞬間を目撃できていること自体が奇跡に等しいのだ。ジャネンバという本来の肉体が滅んだ以上、行き場のない魂は終わりを迎えるしかない。

 

 もしこれが神エヒトであったならば、意地汚く世に留まり続けようとしたのだろう。だが今のリューティリスにそんな魔法を使える魔力と時間はなく、そもそもとして既に現世に未練はない。彼女は大人しく、その終わりを受け入れるつもりでいた。

 

「あ、あの……大丈夫ですか……?」

「貴方は……」

 

 最期の言葉すら告げずに去ろうとするリューティリスに誰よりも早く気づいた香織が駆け寄る。焦ったようにどこか怪我でもしているのかと"治癒魔法"を施そうとするも、そもそも何が悪いのかすら分からずどうしようもない。

 

 どうすればいいのか分からず、あたふたする香織。その様子に気づいた龍太郎と鈴も何事かと近づき、体を透けさせていくリューティリスを目にして香織と同様に慌てふためいた。実に役に立たない勇者パーティーだ。

 

 そんな緊張感のない彼女達の様子を見て、思わずリューティリスの口元からも笑みが零れる。

 

「ふふっ。そう慌てなくても大したことじゃないわ。ただの寿命よ」

「お、おう。そうか、なら大丈夫……なのか?」

「いや全然大丈夫じゃないからね! すっごい大したことだよ!」

 

 少し揶揄えば、面白い反応を返す龍太郎と鈴にリューティリスからは再び小さく溢すような笑い声が零れる。そして透明度の増していくリューティリスの体。

 

 もはやリューティリスの体を通して後ろの光景がはっきりと見えてしまうくらいには透け始めていた。その状況に龍太郎と鈴はどうしていいのか分からない様子だったが、ハジメ達との旅をちょっとだけ長くして、非常識に慣れた香織だけはどうにか落ち着きを取り戻す。

 

 香織はこれまで、治癒師としてクラスメイト達だけじゃなく多くの人を診てきた。その中には勿論、助けることのできなかった人達だっている。それはそもそも手遅れであったり、香織の力不足であったりと理由は様々だが、優しい香織はその全てを覚えていた。だから、分かってしまう。

 

 ()()()()()()()()()()()を、彼女はよく知っている

 

「……いいんですか、それで」

「へぇ……貴女、優しいのね。でも、これでいいの。所詮わたくしは過去の亡霊。ジャネンバ()という未練が滅びたならば、これ以上世界に留まる理由もないわ」

「それは……凄い、ですね」

 

 遠くを見つめ、まるで曇りが晴れたかのような、満足げな様子を見せるリューティリスに香織は神妙な顔をする。香織は彼女のことを知らない。せいぜい、大迷宮を作った昔の凄い人程度の認識だ。それでも、リューティリスが長い年月をたった今仁達が倒した怪物を討伐するためだけに生きてきたことは分かる。

 

 きっとそれは香織には出来ない生き方だ。優しい彼女は、例え敵であったとしても生涯殺意を向け続けることなんて出来ない。だからこそ香織は尊敬する。これまで長い間、ジャネンバという強大な怪物と戦ってきたリューティリスに。

 

「いいえ、わたくしはそんな褒められる人間じゃないわ。あんな怪物を生み出して、一歩間違えれば世界を滅ぼしていた極悪人。それがわたくしよ。それに、わたくしからしてみれば貴女の方がずっと凄いわ」

「ええ?! いやいやいや私なんてハジメ君達に比べて全然弱いし! 役に立てないし……臆病だし…………」

「あまりそう自分を卑下するものじゃないわ。確かに貴女は"強さ"の面で見れば彼らに劣るでしょうね。でも、さっき見させてもらった"再生魔法"……あれには驚いたわ。まだ若いというのに、才能だけなら"再生魔法"を極めたメイル(あの子)以上かもしれないわね」

「そんなこと……」

 

 いつしか、リューティリスの体は燐光のような青白い光に包まれていた。その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。死した魂が天へと召されていくようで、とても神秘的でいて、かつ悲しい光景に香織は思えた。

 

「……そろそろ時間ね」

 

 リューティリスは香織の頭に手を置き、その髪を優しく撫でると聖母のような微笑みを見せる。やがてリューティリスは穏やかな声音で最期の言葉を告げた。

 

「あの魔人に感謝……は別に言わなくてもいいわね。ただ彼らには一言『ありがとう』とわたくしが言っていたって伝えてくれる? それと貴女達のこれからが……」

 

 自身の最期にはこの言葉が相応しいと、他の解放者が残したものと同じ言葉をリューティリスは贈ろうと、

 

「――そんなのダメだ!」

 

 ――した所で邪魔が入った。

 

 厳かな雰囲気を台無しにした乱入者に消えかかっていたリューティリスも香織も非常に曖昧な表情で振り返り、龍太郎や鈴も『いや、それはちょっと……』と言わんばかりの苦笑いを浮かべながらその男を見つめる。

 

「死ぬなんてダメだ。そんなの可哀想じゃないか! 何かきっと助かる方法だって見つかるはずさ。大丈夫、俺を信じてくれ!」

 

 はい。いつもの(光輝)だ。

 

 先程ハジメにノックアウトされた光輝だが、どうやら仁がジャネンバに放った"ミスティックバースト"の余波で目を覚ましたらしい。相変わらず、なんともタイミングの悪い。

 

 光輝は香織達の中心へと入り、リューティリスの死を見届けるのではなく、助ける手段を考えるべきだと熱弁する。誰もが彼女と初対面であるとはいえ、勿論死んで欲しいなどと思う非情な者はこの場にはいない。だが同時に全員が理解していた。光輝の言っていることがどれだけ自分本位なことなのかを。

 

 詳しい原因については分からずとも、リューティリスがそう時間もない内に消滅することは見て明らかだった。助けたい気持ちはあるし、過去の人間だからといえ死んでいいわけがない。だが他でもない本人がそれを望み、あんな満足そうな顔を見せられてしまえば、誰もその想いを拒絶することなんてできなかった。

 

 そんなリューティリスの想いを踏みにじり助けようとする行為は、もはやただのエゴでしかない。

 

「光輝、お前の気持ちも分かるけどよ、今は大人しくしとこうぜ。きっと、俺達には分からねぇ事情があるんだ」

「な、何を言ってるんだ龍太郎……」

 

 光輝の肩にポンッと手を置き、何一つ状況を理解していないもののここでリューティリスを助けようとするのは間違っていると、野生の勘で判断した龍太郎は男らしく胸を張って告げる。その言葉を、光輝は理解できない。

 

「そうだよ光輝君。鈴も目の前で人が死ぬのを見るなんて嫌だけど、今は……ちゃんと向き合わなきゃいけないって思うんだ」

「鈴も……一体どうしたんだ……」

 

 弱い心を奮い立たせ、鈴は長い年月を生きた解放者に敬意を払うべく、顔を上げた。そんな鈴に、リューティリスはただ一言「ごめんなさいね……」と小さく告げる。その覚悟を、光輝は理解できない。

 

「光輝君が皆幸せになって欲しいっていつも考えてるのは分かってるよ。でも、今は見届けてあげよ、ね?」

「香織までどうして……」

 

 香織は光輝のその歪な精神性を理解した上で、共にリューティリスの最期を見送ろうと優しく語り掛ける。その優しさを、光輝は理解できない。

 

「皆一体どうしたんだ! 目の前で人が死にそうなんだぞ。可哀想だとは思わないのか! 君だって死にたくなんてないだろ!」

「貴方は……」

 

 助けようと口にしているというのにまるで助けを求めているかのような目線で見つめてくる光輝に、リューティリスはついにその精神的危うさを理解する。だが今の彼女ではそれを矯正することなんてできない。ただ憐れみの視線を光輝に返していた。

 

「おい、こいつは一体どういう状況だ?」

「っ……南雲、そうだお前なら! なあ、彼女が消えそうなんだ。助けてやってくれ。お前なら出来るんだろ?」

「……」

 

 そこに戦闘を終えたばかりのハジメ達も合流する。義手は破壊され、全身がボロボロの状態でありながらも、彼は自身の足で立ち、歩いていた。両隣でユエとシアが支えているものの、それでも自力で歩くのは流石ハジメだ。そしてその後ろには、意識を失った仁を背負った雫もついてきている。

 

 合流するなり死にかけのリューティリスを見つけ、自身に助けを求める光輝の様子に、ハジメは状況を全て理解した。そして思う。『ああ、またこいつの暴走か』と呆れながら。

 

「……体の代わりがゴーレムとかでいいなら、"魂魄魔法"使って生かすことはできるな。実際それでミレディの野郎もしぶとく生きてやがるし」

「本当かっ、なら!」

「黙ってろ天之河。……こっちにも手を貸してもらった借りがある。もし本当にお前が生き続けたいってんなら、助けてやってもいいぞ」

 

 "魂魄魔法"によって死した魂を"固定"し、別の肉体に"定着"させることで再び生を得る。それはユエやティオレベルの技量があれば容易なことだ。実際、別の世界ではハジメ達はそうやって命を落とした香織を蘇らせている。

 

 その言葉の意味自体を光輝は理解できずとも助かるということだけを理解し、喜色の笑みを浮かべる。だがハジメが問うように、これはそれ以前の問題だ。

 

「お断りさせてもらうわ」

「なっ……」

 

 即断するリューティリスに、光輝は驚きを隠せない。そう、そもそも彼女にはこれ以上生きるつもりがないのだ。それは助かる手段の見つかった今でも変わらない。

 

「責任感が強くて真面目なミレディ(あの子)なら、その提案も受け入れたんでしょうけど。わたくしはそこまでして生にしがみつくつもりもないわ」

「……」

 

 救いを拒絶したことよりも、あのミレディが責任感強くて真面目というリューティリスのイメージにハジメは思いっきり顔を歪める。ユエとシアも同様の反応で、余程その事実を受け入れがたいのだろう。流石に言葉にはしなかったが。

 

「どうしてなんだ! せっかく助かるっていうのに……」

「もう終わったからよ。わたくし達の時代は、わたくし達の戦いは終わった。まだあの(ゴミ)は倒せていないけれど、だからといえ過去であるわたくし達がいつまでも世界に残っているようでは、時代は進まないわ。それに……今は貴方達の時代よ。わたくしのような遺物はもう必要ないの」

「そ、んなこと……」

 

 言い返そうと思えば、幾らだって言い返せる。だが光輝はやっとリューティリスの諦めの雰囲気に気づき、反論できずに膝をついた。強情な光輝がようやく納得したと、リューティリスは安堵のため息を吐く。

 

「それにわたくしはジャネンバ(あのような怪物)を生み出してしまった。せめてもの償いとして、あの世で詫びる必要があるわ」

 

 淡い光を放ちながら、今度こそリューティリスは消滅を迎えようとする……その時だった。

 

「いいや、それは違う。私達は常に全力で戦った。あれは(ジャネンバ)はただ、その結末の1つに過ぎない。君が罪の意識を感じる必要はないとも」

 

 リューティリスへ向けて、ある()()()()()()()()が響く。

 

「ぇ……」

「仁? いえ、違う……誰ッ!?」

 

 それは雫が背負った仁から放たれた()()()()()()()()()()()()()。咄嗟に雫は背負う仁を背負い投げで投げ飛ばすも、仁の姿をした何者かは器用に受け身をとってから立ち上がり、その顔を……姿を変えていく。

 

 ユエよりも少し大きい程度の低めの身長はハジメと同じくらいにまで高く。腰にまで届く白く長い髪は黒く変色し短く纏められ。服装は全体的に黒い貴族のような豪勢な衣装となり、その顔も女性のような仁とは異なる眼鏡をかけた知性的な男性のものに。何よりもその肌の色がピンクではなく普通の人間のような肌色へと変わっていた。

 

 そこに現れたのは明らかに仁ではなかった。

 

「嘘……」

 

 その()()()()()姿()にリューティリスは呆然とする。

 

 勿論光輝や雫達もその仁であった人物の登場に驚いていたものの、ハジメとユエだけは他とは異なる反応を見せた。何故なら、2人だけは過去の映像記録ではあるものの彼という存在に出会ったことがあるのだから。

 

「お前は……」

「……オスカー・オルクス」

「やあ、すまないね。仲間の最期だ。少しだけ、仁と替わってもらったよ」

 

 ポカンと口を開ける光輝達を置いて、仁であった者――オスカー・オルクスはリューティリスに近づいていく。そして、2人の解放者は至近距離で向かい合った。

 

「貴方は……なぜ生きてるの?」

「色々あって今私は魔人ブウの体内で暮らしていてね。どうやらあそこでは成長することも、老いることもないらしい。おかげでまだまだ現役だよ。とはいえ、私は()のように強固な精神性を持っていないから、人格を乗っ取ることまではできなかったけどね」

 

 旧友との再会に喜ぶように、笑みを浮かべて話すオスカーにリューティリスは困惑を隠しきれない。その内容についてもそうだが、現代で解放者と再会するという状況そのものに理解が追いついていないのだ。

 

「さて、それじゃあ時間もないようだし簡潔に告げようか……」

 

 しかしあと数分……もしくは数秒もしない内にリューティリスは消滅する。それを分かっていたオスカーは真面目な雰囲気に切り替えると、心のままの言葉を彼女へ告げた。

 

「あまり自分を攻めないでやってくれ。確かにジャネンバが生まれてしまったことで、多くの国が滅び、数えきれない人達が死んでしまった。でもそれは、君だからそうなったわけじゃない。誰だって……私やミレディだって一歩間違えれば神を倒すために禁忌に手を出す可能性はあったんだ。実際、私もかなり危ない橋を渡っていたしね」

「相変わらず、貴方は優しいわね。でも悪いけど、わたくしはこの罪を背負い続けるわ。それこそ、死んだ後もね」

「君の方こそ相変わらず強情だな。だけど、君のことだからそう言うと思ったよ。だったら――」

 

 昔から変わらないリューティリスの覚悟の固さに、オスカーは大きなため息を吐きながらも、どこか楽し気な様子を見せる。彼とて、長らく会う事の出来なかった仲間との語らいに、内心盛り上がっていた。

 

 だから、リューティリスがその意思を曲げることがないこともオスカーは分かっていた。そして熟年夫婦と同様、解放者も例外なく男は女には勝てない。彼はいつものように自分の方から折れる。

 

「私達も君の罪を背負うとしよう」

「……は?」

 

 呆然とするリューティリス。だがそんな彼女に構うことなく、オスカーは話を続ける。

 

「ミレディもナイズもメイルもラウスもヴァンドゥルも……そして他の解放者達もきっと同じことを言うだろう。君の罪を君だけに背負わせることなんてしない。その罪、嫌と言っても背負ってみせるさ」

「貴方は……ふふっ、自分が滅茶苦茶なことを言ってる自覚があるのかしら?」

「当然だろう。むしろ仲間1人に罪を擦り付けて満足して死ぬ者が解放者を名乗れるはずがない。違うかな?」

 

 リューティリスのジャネンバ()を生み出してしまったという罪を、解放者全員の罪として背負う。オスカーはそれを告げるためだけに、仁から肉体の制御権を替わり表れたのだ。

 

 あまりに無茶苦茶な宣言に『何を馬鹿なことを……』とリューティリスは唖然としたが、彼女自身、仲間が同じような状況に陥っていたらそうしてしまうだろうとすぐに察し、思わず笑みが零れる。そして頼りになり、楽しく辛い時代を生き抜いてきた優しい仲間達との思い出が脳裏を過り、目尻から自然と涙が零れる。

 

 咄嗟に上を向いて目元を覆うも、もう全員に見られてしまった。最後に情けないところを見せてしまったとリューティリスは呆れ笑いを浮かべる。だがそうしている間にも体からはとめどなく光が溢れ出していく。

 

 もう終わる。誰もがそれに気づいた。

 

「……ああ、それなら……安心して……逝けるわ」

「なら良かった。私もミレディもそう遠くない内にそちらへ逝くつもりだと、先に皆へ伝えておいてくれ」

「ええ……必ず――」

 

 彼女の言葉が最後まで続くことはなかった。言葉の途中で完全にリューティリスという存在は淡い光となって天へと消えていく。オスカーはリューティリスであった光に対して、優し気な笑みを向けた。

 

「……君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

 胸に手を当て、慣れ親しんだその言葉に万感の思いを込めて彼はリューティリスを見送った。仲間の死を見届けることはオスカーにとって初めてではない。これまで、それこそ神によって多くの仲間達が目の前で命を奪われてきた。

 

 何度も何度も経験した。だがどれだけ経験しようとも慣れるようなものではない。心が締め付けられたかのように痛み、抑えようのない喪失感に襲われる。しかしその苦しみを拒絶するのではなく受け入れ、オスカー・オルクスは覚悟を決める。

 

 ――次は自分の番であると。




仁の限界突破
効果はハジメや光輝のものと変わらないが、あまりに仁が強すぎるためそのデメリットだけ大幅強化。
光輝やハジメであれば弱体化&酷い倦怠感ぐらいで済むが、仁の場合は普通に体をぶっ壊す。その上、現界突破の副作用は自傷判定に入るため、自分の攻撃ではダメージを負う仁とは相性最悪。
強ければ強い程使いずらくなるという面倒なドーピング技。
今回は仁2日くらい寝込む予定。
この作品では『敵が己よりも強く』『命の危機に瀕し』『激しい怒りに目覚める』ことで"覇潰"に到達する……としたが、実際のところ作者はよく分かっていない。
原作読んでいても「スーパーサイヤ人みたいなものかな?」くらいにしか思えなかったので、ただの自己解釈だと思って頂ければ。

仁の強化倍率
限界突破使う前までがSS2のベジータくらいだとすると、限界突破使った後がSS3の悟空にギリ勝てるかどうかという強さ。つまり弱体化なしジャネンバには負ける。これはジャネンバが強すぎるだろ。

Q. 雫がジャネンバごと仁を斬ってたけどあれって実際どうなの?
A. 仁「いや……うん。分かってた上で言うけど……あれはない」

ハジメの義手
義手君(二代目)「おいおい、また俺壊されたんだけど? なんか俺の扱い雑じゃね? 原作だと俺ぶっ壊してるのあのクソ神くらいだぜ?」

ジャネンバセリフ集
「ジャネンバ、ジャネンバ♪」
「ンバッ!」
「パパパパァ!!」
「カァーーッ!」
「ウガァァア!」
「ウゥゥアアアア!」
「ヌゥアアアアッ!」
「アアアアアアア!!」
「ギィエへへ……」
「キィィヤァアッ!」
 ……etc
頼む喋ってくれ。パターンがなさ過ぎてセリフが使い辛い。

ミスティックバースト
またの名を『瞬間移動かめはめ波』
元ネタはドラゴンボールZ3の魔人ブウ(純粋)の究極技
敵を打ち上げ、飛んでいった敵を叩き落とし、そこから地面に墜落する直前で蹴りとばしてからの特大バニシングボール。ゲージ勝負に勝利した場合そこから更に追撃。バニシングボールを必死で抑える敵へと容赦なくかめはめ波を放つ。
※瞬間移動要素はない。
ちなみに、ゲージ勝負で負けたらかめはめ波すら撃たない。それでも名前は『瞬間移動かめはめ波』
この作品内では、仁君が『かめはめ波』の存在を知らないため、『ミスティックバースト』というそれっぽい名前に変更している。

祝! オスカー・オルクス登場!!
オスカー「ふっ、ついに満を持して私の出番か。さあ、私の活躍をその目に焼き付けるといい!」
作者「ごめんだけど、次の話には仁君の中にもっかい引きこもってもらうよ」
オスカー「ちくしょう……!! ちくしょおおおーーっ!!!」
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