ピンクの魔人と共に   作:クー(無課金勢)

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お久しぶりです!
一応、この作品ではあけおめってことになります!(もう二月)
少し先まで書き溜めを作っていたというのと、別作品に浮気してたこと、あとシンプルに忙しかったということもあって、中々投稿できませんでした。ごめんなさい。
相変わらずの亀更新ですが、今日からまったり更新していこうと思います!

……敢えて誰がとは言いませんが、やっぱ推しキャラの声優がいなくなるのは辛いですね。


第八章
氷雪洞窟


「……次が最後か」

 

 雲海を走る飛空艇フェルニルの内側から、窓越しに雲海を眺めていたオレは一人呟いた。

 

 ジャネンバとの戦いで追ったダメージから、しばらく寝ていたオレが目を覚ましてから五日が経った現在。オレはハジメ達と共にこの飛空艇で次の目的地を目指して空を進んでいた。

 

 【シュネー雪原】。そしてその深部にあると言われる【氷雪洞窟】。最後の大迷宮であるそこが、今回の目的地となる。

 

 【シュネー雪原】とは【ライセン大峡谷】によって真っ2つに分けられた大陸の南側、その東の方にある大雪原の呼称だ。雪原という名の通り、そこは年中曇天に覆われていて、雪が降らない日が極まれにある程度で、晴れることはまずない。ただ広大に雪と氷で覆われた大地が続いているだけの一帯らしい。

 

 東にある【ハルツィナ樹海】と南大陸中央に位置する魔人族の国【ガーランド魔王国】のちょうど真ん中にそこはあり、どういうわけかその境目には壁でもあるかのようにピタリと雲も氷雪も突然区切れているという不思議な場所となっている。おかげで、樹海にも魔国にも氷雪被害は一切ないとのことだ。

 

 【氷雪洞窟】に関してはその雪原の奥地にある氷と雪で出来た峡谷の奥にある……と、言われてはいるが、普通はそこまで辿り着くことすら困難だ。もしハジメがフェルニルを作っていなかったとしたら、オレにはここら一帯の雪を雲ごと吹き飛ばすくらいしか思いつかなかっただろう。

 

「もうすぐで神代魔法が全部揃う。それが終わればついに神殺しの旅が始まりだ。……ハハッ、楽しみだなあ。やっとだ……やっと、()()()()の願いが叶えられる。この恩を返せる時が来る」

 

 今回の大迷宮でようやく全ての神代魔法が揃う。そこから"概念魔法"を作るかどうかは今のところ置いておくとして、今回の大迷宮攻略を終えたらオレは本格的に神殺しのために動くつもりだ。オスカー・オルクスの意志を受け継いだ者として、魔人ブウの後継機として。そして、オレ個人の怒りのためにも。それだけは絶対に譲れない。

 

 あり得ないとは思うが、もしハジメ達が止めたとしてもオレは行くつもりだ。これだけは曲げるつもりはない。

 

 幸い、神の居場所に関してはある程度見当がついてる。それに、もし間違っていたとしても、こっちには"望んだ場所を指し示す"という概念魔法が込められた羅針盤があるんだ。最悪ハジメからそれをぶん取ればいい。

 

「そうだな……寄り道ついでに魔王とか魔人族側の神とか殺しておくか。どうせあのクズの手下かなんかだろ」

 

 前提として、今回の大迷宮をクリアできるのかという課題はあるが、まあ問題はない。試練に関してはあの魔人族のリーダー……フリード・バグアー程度でも突破できたんだ。ぶっちゃけ余裕だろう。

 

 唯一の懸念点である魔人ブウアンチシステムに関しても、ジャネンバとかいう頭のおかしい敵を乗り越えた今のオレに恐怖はない。

 

 だったら今度は『神に勝てるのか?』当然そっち側の疑問も浮かんでくるだろう。だがオレは断言できる。絶対に勝てる、と。

 

 オレはこれまで、魔人ブウが封印される以前の全盛期の神と戦うことを前提に考えていた。だが以前に神が差し向けてきた使徒の弱さ。直接的に干渉してこない積極性のなさ。その他諸々の理由から考えてみた結果、

 

 神は弱体化している。その結論に至った。

 

 あくまで推測に過ぎないが、確信を得るには十分な根拠がある。別に全盛期の奴でも今のオレなら余裕で勝てるが、弱ってるのならもう敵ですらない。間違いなく、勝てるだろう。

 

 そんな感じで、オレが今後の予定に思考を巡らせていると、突然後ろの扉がスライド式に開く音がした。

 

「……やっと見つけた」

「ん?」

 

 思わず振り向くと、そこにいたのは八重樫だった。確か八重樫は天之河達と一緒にハジメの作った新装備で試し斬りをしてるはずだったが、もしかしてもう終わったのか? 

 

 何かは知らないが大きめな布のようなものを持った八重樫はオレを探していたらしい。皆で旅をしてるというのにすぐに単独行動したがるオレに呆れたのか大きなため息を吐くと、そのまま近づいてくる。

 

「おや。修行はもういいのか? それとも寂しくて会いに来ちゃった感じ?」

「馬鹿なこと言わないで。……南雲君から伝言よ『そろそろ降りるから戻ってこい』って。ここから先は歩いて進むみたい」

「……なるほど。楽しい楽しい空の旅もこれでおしまいか。意外と短かったな。わかった。それじゃあ、行こうか?」

 

 八重樫から告げられたハジメの伝言に、オレは『思ったより早かったな』と少し意外に感じていた。目的地が洞窟である以上、このままフェルニルでの突入が無理だってことくらいわかっている。多分、進んでる峡谷の幅が狭くなってこれ以上はフェルニルのサイズ感じゃあ進めないとか、そんな理由だろう。もう少し快適な空旅というのを味わいたかったが、仕方がない。

 

 オレは窓から視線を外し、八重樫のと共にハジメ達のいるブリッジまで向かおうとする。しかしその時、八重樫から「ちょっと待って」とストップがかかった。不思議に思い振り向くと、八重樫が先程から持っていた大きめの布をオレに手渡してくる。

 

「はい。これ」

「え、なに…………コート?」

「そう、ハジメ君が貴方にって」

 

 八重樫から渡されたのは、防寒用のコートだった。

 

 左胸の部分にデフォルメされたオレのイラストが描かれた紫色のロングコートであり、丈は膝下まで覆うほどで、ボタンで前部分の開閉が可能な着やすく、脱ぎやすいタイプの服となっている。

 

 八重樫から話を聞くと、どうやら気でアーティファクトをすぐにぶっ壊してしまうオレのために、ハジメがわざわざ魔法を込めないで作ってくれた防寒装備らしい。ユエ達や八重樫達にはちゃんとした防寒用アーティファクトを用意していたが、どうやらオレが全力で戦えるようにと、ハジメも考えてくれたみたいだ。

 

 本音を言うと、すっごい助かる。あの極寒の中を薄着で進むのだと覚悟は決めていたから、個人的には超嬉しいプレゼントだ。唯一残念なのは、これが男からの贈り物ってとこぐらい。うん、まあそれは仕方ないな。

 

「サンキュー。後でハジメにも礼言っとかないとな」

「ええ、ちゃんと言っておきなさい。一応皆にもコートを用意してくれたみたいだけど、仁のは特別性みたいだから」

「へぇ、そいつはありがたい」

 

 オレはコートを羽織り、着心地を確かめる。驚くことに、この温かい艦内でも暑すぎなく、寒くもない。魔法ではない。恐らく使われた素材自体がそういう性質を持つ素材なんだろう。気温変化の激しい地帯に済む魔物はそういう性質の皮膚を持つと本で読んだことがある。

 

 オレは軽くストレッチしてから、そこまでの窮屈さを感じないことを確認すると、今度こそ八重樫と共にハジメ達の元へ向かうのだった。

 

 

~~~

 

 

 数分後。

 

 雫と共にハジメの元へ合流した仁はフェルニルから降りて氷雪の峡谷を進んでいた。

 

 初手で調子に乗ったシアが崖から落下し、ハジメが呆れ、仁に腹を抱えて笑われるなんて事態もありはしたが、彼女はその程度で死ぬほど脆くはない。気がかりだった吹雪も、鈴が障壁で逸らしたことで妨害されることはなく、その道行はまさに順調そのもの。

 

 それでも道中、一行の中で唯一防寒用アーティファクトを所持していなかった仁だけはその凍えるような寒さの影響をモロに受け、ヘンゼルとグレーテルがパンを落としていたかのように、腕や足をポロポロ落としながら歩いていたが……まあ問題はないだろう。周囲にドン引きされた程度のものだ。

 

 そんなこんなで、歩き続けること数時間。彼らはようやく到着した。行き止まりの先にあった2等辺3角形のような綺麗な形の縦割れ――【氷雪洞窟】の入口に。

 

「あれか?」

 

 先頭を進むハジメが立ち止まり、スっと目を細めながら前方を注視する。

 

「着いたみたいですね。……でも」

「おお、流石大迷宮だ。お出迎えが早い。数は……五つかな?」

「わかってる。何か来るぞ。全員、備えろ!」

 

 シアと仁が洞窟の奥から近づく気配に気づき、同時にそれを感知していたハジメが全員に警告を飛ばす。この程度の奇襲、仁やハジメ達にとってはもう慣れたもので自然体を崩すことはないが、まだ二度目の大迷宮攻略である光輝達の間には緊張が駆け抜けた。

 

 直後、

 

「「「「「ギギギギギィ!!」」」」」

 

 奇怪な雄叫びを上げながら、五体の魔物が洞窟より猛然と飛び出してきた。

 

 白い体毛に全身を覆われたゴリラのような姿。しかし、体長は優に3メートルはあり、ゴリラよりも2足歩行に向いていそうな体型をしている。

 

 敢えて例えるなら、少し有名なUMA……ビックフッドだろう。仁を含めた異世界召喚組が引き攣った笑みを浮かべる。だが道を遮るならば戦わなくてはならないと、ハジメがドンナーを抜きかけたその時、横にいる香織がそれを手で制した。

 

「ハジメ君。ここは私に任せてもらってもいい?」

「香織? ……フッ、そういうことか。好きにしろ」

「なっ、香織! 君だけじゃ危険だ!」

 

 一言感謝の言葉を告げてから、香織が一歩前に出る。その表情からは強い覚悟と自信、そして確かな余裕が見て取れた。

 

 彼女はユエに並び立ち、そして超え、ハジメの隣に立つ相応しい女になるためこの旅についてきた。しかし現実はそう簡単にはいかない。ユエどころかシアにも届かず、実力的には自分より後から加わった雫にさえ劣ってしまう始末。

 

 故にその行動は、香織がハジメに対して『私も貴方の隣に立つ資格がある』と証明するための第一歩でもあったのだ。

 

 ただ、それだけが理由というわけでもない。

 

 ビックフット達を前にしていながらも、香織は一度深呼吸をする。そして、小さく呟きながら虚空から何かを取り出す。

 

「――施術を始めるよ」

 

 1メートル以上もある薙刀のような刀……分かりやすく例えるならば、巨大な医療用メスといった所だろう。恐らくハジメが与えた小規模な宝物庫に収納していたであろうそれを、香織は迫りくるビッグフット達へと向け、構える。

 

 光輝や雫達と同じく、香織もハジメから新たなアーティファクトを与えられていた。それを実戦で使い、経験を積んでおきたい。だからこそ今回は自分一人で戦わせて欲しい。それが香織が前へ出たもう一つの理由だった。

 

 ハジメ達と仁はその香織の意図を理解し、一歩後ろに下がる。雫、鈴、龍太郎も香織を心配しつつも、一切動揺した様子もなく、敵を見据える頼もしい彼女の姿を目にし、はらはらした様子で静観に入った。そして唯一、納得できなかった光輝だけは仁が伸ばした腕でグルグル巻きにして拘束している。香織の邪魔をする者はいない。

 

「"天恵よ"」

 

 静かに詠唱を始めながら、香織はゆっくりと歩きだす。すると、詠唱に反応したように、その手に握られてた大きなメスが白銀の光を纏い始めた。

 

 一見隙だらけな香織へ向けて、ビッグフット達は跳躍し、飛び掛かるように襲い掛かった。もし以前までの彼女であればここで顔を青褪め、身体を震わせていたことだろう。しかし今の香織はそんな情けない姿をハジメに見せるつもりはない。

 

 襲い来るビッグフット達に焦った鈴が思わず声を上げようとしたが、それよりも早く、そして速く、香織が動く。

 

「"彼の者に慈悲を"」

 

 まるで踊るかのようなステップでビッグフット達の間を通り抜けた香織は、すれ違いざまに更に輝きを増したメスで切りつける。その流れるような動作に、ハジメは思わず感嘆するような声を上げた。

 

 だがしかし、ビッグフット達の肉体には傷一つついていない。防がれたのではない。確かにメスは彼らの身体に届き、実際に切り裂かれるような感覚を彼らは味わったことだろう。あくまで、()()()()。それだけに過ぎない。

 

 まるで意味が分からず、続けて襲い掛かるわけでもなく、己の無事を確かめるかのように身体をペタペタと触るビッグフット達。しかしそれから数秒も経たずして、ビッグフット達は一人、また一人と倒れていき、やがて五体全てが地に伏せた。

 

 僅か数秒程度の戦闘。その結果を恐る恐るした香織は、満面の笑みを浮かべた。

 

「やった……やった! やったよハジメ君!」

「おう、()ったな香織。アーティファクトも上手く使いこなしてるし、一体どこで剣術なんて習ったんだ?」

「えへへ、雫ちゃんに教えてもらったんだ~」

 

 自分1人の実力による初勝利に跳ねて喜ぶ香織を、ハジメは称賛する。

 

 ハジメ作の香織専用アーティファクト――"メッサ―"。

 

 医療用メスのような形状をしたそれは、治癒魔法を攻撃的な力へと変換し、相手の魂……もしくは心を切る。

 

 今の戦闘では香織は文字通り、ビッグフットの魂を破壊したのだ。まるで肉体を傷つけずに、腫瘍を破壊するかのように。"魂魄魔法"が付与された武器だからこそできる芸当である。そして魂のない彼らの肉体はもはやただの抜け殻に過ぎない。ただ生きているだけの肉塊だ。

 

 誰かを傷つけることに強い嫌悪感を感じる香織の希望に合わせてハジメが作った武器だったのだが、それは製作者のハジメの想定以上に恐ろしいものだった。肉体を無視して魂に直接危害を加えるという性能上、基本当てれば勝ちの反則武器。いくつか回避手段があるにはあるが、それはこの大迷宮でも十分効果を発揮することだろう。

 

 ちなみに、治癒魔法を変換する肯定については、ハジメに頼まれたユエと雫に頼まれた仁が嫌々協力して作り上げた大作でもある。

 

「さて、それじゃあ最後の大迷宮攻略といこうか」

 

 ハジメの言葉が氷雪の峡谷に木霊する。

 

 香織を褒め、頭を撫でるハジメを先頭に、一行は気を引き締め直し、最後の七大迷宮【シュネー雪原の氷雪洞窟】へと踏み込んだ。

 

 

~~~

 

 

 七大迷宮の1つ【氷雪洞窟】。まるでミラーハウスのような高い反射率を持つ氷で作られたその迷宮では現在、数多の足音が地響きのように鳴り響いていた。

 

「あははははははっ!! ほらほら急げっ、もっと気合い入れて走らないとおまえらも奴らの仲間入りだぞ~!」

「余裕あんなら戦え、馬鹿野郎!!」

 

 そこには全力疾走するハジメ一行の姿。

 

 何故か仁が後ろ向きで高速飛行しながら他のメンバーを煽り、そんな仁に怒鳴り、ドンナー放ちながら駆けるハジメ。その2人に続いて走るユエ達と光輝達。そしてその更に後ろには……まさかの走れるタイプの生き生きしたゾンビ軍団が……。

 

 どうしてこうなったのか? それを説明するには、【氷雪洞窟】へ入ってすぐに遡る必要がある。

 

 序盤はまだ順調だった。異常なまでの寒さに触れただけで凍傷を引き起こす雪。そしてかつて大迷宮挑戦者であっただろう魔人族達の死体。精神衛生上は決して無害というわけにはいかなかったが、少なくともハジメどころか光輝達だけであっても問題なく進める程度の難易度ではあった。

 

 勿論それだけで終わってくれるほど甘くないと確信していたハジメだったが、変化はすぐに訪れる。

 

 瞳を赤黒い色で爛々と輝かせ、だらりと下げた両腕を揺らしながら呻き声を上げ続ける人型の化け物。全身を凍てつかせた、走って死ななくて再生もするホラーゲームにもいてはいけないタイプのチートゾンビ達が現れたのだ。魔人族の死体を元に生まれたそれらの数はまさかの三桁越え。

 

 魔石は持たず、再生能力は無限。殺しようがないゾンビ相手にそのからくりが遠く離れた魔石にあると見抜いたハジメ達はフロストゾンビの包囲網を突破し、こうして鬼ごっこを始めていたというわけである。

 

 仁に関しては……別に危機的状況でもないため、一人だけ武空術で楽できる優越感を全力で楽しんでいるのだと思ってくれればいい。

 

「煽ってる暇があるんだったらせめてあのゾンビ共なんとかしろ!」

「おいおい、あいつらバラバラにしても再生するんだぜ? 無茶な頼みはやめてくれよ」

「……出来ないなら出来ないって正直に言えばいい。仁は所詮その程度」

「ほぉ、言ってくれるな」

 

 ハジメが怒鳴りつけようとも仁の態度は変わらないが、そこへ痺れを切らしたユエが敢えて挑発する。それが非常にあからさまで安い挑発であることは、仁も気づいていた。だが彼は気に入らなかった。他の誰でもないユエにそれを言われたことが。

 

 【ハルツィナ大迷宮】におけるジャネンバとの戦いで仁は多少であれユエの評価を改善した。しかしそれは、ユエの強くなるための努力を認めただけであって、その強者的思考回路は未だ受け入れてはいない。

 

 ちょっとカチンときた仁は武空術を解除し、ハジメ達の最後方へ降り立つ。

 

「別に……おまえの挑発に乗ったわけじゃないけど……。一応教えといてやるよ」

 

 仁は力むような動作も見せず、軽く地面を蹴る。そして先頭を走っていたフロストゾンビの知覚できない速度で目の前まで到達し、その胸板へ両手をあてがうと……そのままエネルギー波で上半身を消し飛ばした。

 

 下半身のみとなったが、その程度ではフロストゾンビは死なない。この程度ハジメ達はいくらでも試している。当たり前のように頭のない状態から再生を始めようとするフロストゾンビ。だが仁は、その残った下半身をもエネルギー弾で消し飛ばしていく。そうしてそのゾンビの肉体は燃えカスすら残さずこの世から消滅した。

 

「この世界に不死身の奴なんかいない。魔石がなくても、バラバラにしても復活する再生能力があっても……細胞1つ残さずに消し飛ばせば、どうやっても再生なんかできないだろ?」

 

 不死身に思えたフロストゾンビを一瞬で消し去り、笑みを浮かべた仁は後ろにいるであろうハジメ達へ向けて振り向く。そして目にした。

 

 ――洞窟の奥へ向けてダッシュしていくハジメ達の姿を。

 

「……」

 

 ただ無言で、青筋を浮かべる仁。その間も絶え間なくフロストゾンビ達は襲い掛かってくるが、相手になるはずがない。一瞬で半数以上が消し飛ばされた。きっと仁がその気になれば、ニ秒でこの戦いは終わっていただろう。

 

 そうして仁は大きく息を吸うと、

 

「テメェらもうちょっと興味持てやゴラァ!!」

 

 鬼の形相で、ハジメ達を追って飛び出したのだった。

 

 ……

 ……

 ……

 

 それからハジメ達が走り続けること約五分。先頭を進んでいたハジメは広いドーム状の空間に辿り着き、そこでついにフロストゾンビ達を動かしている魔石を視界に収めた。

 

「見つけたぞ。ここまでくれば俺にも――」

「ガブガブガブガブ!」

「っ~!?!? 痛いっつってんだろ止めろ馬鹿!!」

 

 文字通り頭に嚙みついた仁をくっつけて。

 

 ユエの挑発に乗ったもののガンスルーされてキレた仁はまず主犯であるユエの頭部に齧り付いた。そこそこ本気で噛みついたのだろう。頭から血を流して悲鳴を上げるユエだったが、続いてそんなユエを助けようと手を出したシアのウサミミが噛みつかれた。

 

 元はと言えば悪いのは先に煽った仁であり、あのハジメが自分の女に手を出されて許せるはずもない。だがそこで仁を引きはがしにかかったのが間違いだった。今度はハジメが噛みつき魔人の被害者となったのだ。

 

 そして今に至る。

 

 頭部からダラダラと血を流し、口喧嘩を繰り広げながらも冷静さを失ってはいないハジメは"宝物庫"からシュラーゲンを取り出す。そして氷壁の奥に見えた魔石に狙いを定めた。

 

 それは激しく放電し鮮やかな紅を撒き散らす貫通特化のアンチマテリアルライフル。脇にはさみながら片手でシュラーゲンを構えたハジメがいざ引き金を引こうとした、その瞬間、

 

「……ハジメ!」

「チッ! 新手か」

「ん?」

 

 ユエの警告と同時に、頭上から翼を大きく広げた大鷲が強襲を仕掛けてきた。

 

 もっとも、ただの大鷲ではない。全てが透き通った氷で出来た大鷲――フロストイーグルだ。それが、天井の氷壁から次々と生み出されるように出現し、豪雨となって落下してきたのである。

 

 すぐさまフロストイーグルを撃ち落とそうとしたハジメだが、それより早くこれまで噛みついていた仁がハジメの頭を蹴って跳躍し、左腕を大きく横に払う。

 

「――オールクリア」

 

 その瞬間、同時に仁の手から強力な衝撃波が放たれ、雨のように落下してきたフロストイーグルはその全てが潰されたかのように圧死していく。

 

「ほらよ、邪魔者は消したぜ。さっさと撃て」

「助かった……が、後で絶対に殴る!」

 

 もう妨害の心配はない。ハジメは動じることなく魔石へと狙いを定めてシュラーゲンの引き金を引いた。ピタリと照準された銃口は狙い違わず一直線に魔石へと紅い軌跡を走らせる。

 

 だが、

 

「なっ、躱しやがった……」

「外したな」

「避けたんだよ!」

 

 何と、氷壁の中の魔石が突如動き出して、シュラーゲンの射線から外れたのである。

 

「どうやら、あの氷壁そのものが奴の体と一体化してるようじゃな。だとすれば、周囲の氷の全ては相手の攻撃手段と見た方がいいじゃろう。皆、注意するのじゃ」

 

 いち早く、事態を理解したティオが通路から広場に溢れ出てきたフロストゾンビに対応しているメンバーに忠告を発した。いくら仁が半分近く消し飛ばしたとはいえ、その数は膨大。光輝達だけで捌ききれるものではなかった。

 

 そして、その忠告が正しいことは直ぐに証明される。

 

 先程に続いてフロストイーグルが追加投入されていくのに加えて、今度は二足歩行の狼までもが大量に生み出されたのだ。フロストイーグルと同じく全身が氷で出来ており、その眼だけが赤黒い光を放っている。体長はニメートルほどで鋭い爪牙を持ち、獣らしい唸り声を上げていた。フロストワーウルフといったところだ。

 

 東京ドームと変わらない広さの空間が、直ぐに三種の魔物に埋め尽くされていく。空にはフロストイーグルが軽く三桁を越えて飛び交い、仁によって潰された個体も直ぐに再生して戦列に加わっている。

 

 後方の入口からは百体以上はいそうなフロストゾンビが、呻き声を上げながらもハジメ達を喰らわんと大口を開けて溢れ出てくる。

 

 周囲の壁からは、既に数えるのも馬鹿らしいほどのフロストワーウルフが出現し、仁達への包囲を徐々に狭めてきていた。

 

 まだ終わらない。

 

 何かが罅割れるような音が響くと共に、魔石があった氷壁が凄まじい勢いでせり出した。そして魔石を呑み込み、巨大な魔物が姿を現した。

 

 かつて光輝達が魔人族と交戦した際に出くわしたアブソドと呼ばれた六足亀によく似た魔物。ただし、言わずもがな、その体は全て氷で構成されており、背中の甲羅には剣山の如き氷柱が突き立っていて、その体長は優に二十メートルを超えている。

 

「どうやら、野郎の装甲をぶち抜いて魔石を破壊するのが先か、魔物の群れに呑まれるのが先か、そういう試練らしいな」

「ふーん……楽勝だな」

「まあな」

 

 通常、極寒というのもおこがましい極低温の中で、長時間彷徨った後、これだけの群れと戦わねばならないことに絶望するところなのだろうが、生憎ハジメと仁にとってこの程度の魔物はもはや敵にすらなりえない。

 

 仁が余裕の笑みでハジメの隣に降り立ち、ハジメも自然体のまま静かにフロストタートルを見定める。

 

「そうだな……仁、こいつを天之河達にぶつけてみるのはどうだ?」

「いいんじゃね。今のあいつらならなんとかなるだろ」

 

 もはや、彼らに目にはフロストタートルは敵とすら見られていなかった。『人間如きに侮辱された』。ハジメと仁の反応からそう判断したフロストタートルが咆哮をあげると、同時に、周囲を取り囲んでいた魔物達も動き出す。

 

「……というわけだ。取り敢えず、逝ってこい。天之河」

 

 それを見たハジメはくるりと振り返り、にこやかに光輝を指名する。当然返ってきた反応は「え?」だ。光輝は間の抜けた表情を見せながら唖然とするしかできない。

 

「『え?』 じゃねぇよ。さっさと突貫して、あの亀、粉砕してこいって言ってんだ」

「な、何で、俺?」

 

 思わず問い返した光輝に、ハジメは呆れたような眼差しを向ける。光輝はてっきりハジメか仁。もしくは二人がフロストタートルと戦うものだとばっかり思っていた。あんなあからさまなボスが相手ならば、その勘違いも仕方ないだろう。

 

 呆れ気味のハジメの肩に手を置き、「オレが言うよ」とまだハジメより光輝の扱いに慣れた仁が面倒ながらも話を受け継ぐ。

 

「よ~く思い出せ天之河。おまえなんでわざわざこんなとこまで来た? 強くなるためだろ。強くなって、八重樫や白崎を守って、他のクラスメイト達も守って、それどころか敵も助けて、最終的には世界すらも救って……自分が正しかったんだって、オレとハジメを見返したいんだろ。だったら、ここをオレ達に任せてどうする? 前回みたいな失敗を繰り返して、また見苦しい言い訳に逃げる気か?」

「っ……そんなことは――!」

「だったら戦え。白崎、八重樫、谷口、坂上……おまえ達四人がサポートして、天之河がデカいのを一発ぶつける。あの程度の雑魚ならそれでどうにかなるはずだ。安心しろよ、その他の雑魚処理はオレ達がやってやる」

 

 フロストタートルを指差しながらそう言った仁に、光輝は瞳に決意の炎を宿して力強く頷いた。

 

「大丈夫だ。俺だってやれる! 絶対に倒して見せる! 皆! 行くぞ!」

「おお、ぶっ飛ばしてやろうぜ!」

「援護するわ。背中の氷柱に気を付けて。きっと、何かあると思うから」

「私も今度は一緒に戦うよ。もう皆を後ろで見守ってるだけじゃないからね!」

「防御は任せて! 全部、防いでみせるよ!」

 

 光輝の号令に雫達が威勢良く応える。直後、赤黒い極太のレーザーがフロストタートル目掛けて駆け抜け、その射線上の魔物達を一瞬で消し飛ばした。思わず全員がそれを放った者の方へと視線を向ける。

 

「制限時間は三分だ。さあ行け、一秒でも過ぎたらその瞬間にオレがトドメを刺す」

「風磨……ああっ!」

 

 仁のエネルギー波により、光輝達とフロストタートルを一直線に結ぶ進撃ルートが出来上がった。指を三本立てて、タイムリミットを設定した仁から光輝は目を背けて返事をし、その道を駆け抜ける。

 

 直後、フロストタートルの赤黒い双眸がギラギラと輝き始めた。すると、光輝達の通った後の道を埋めていくように、魔物達が再生し始める。

 

「させるか! お前の相手は俺だ! "天翔閃・震"!!」

 

 足元に駆け寄ってくる光輝達など歯牙にもかけないと言わんばかりに、その視線をハジメと仁に固定しているフロストタートルへ、光輝は強力なアーティファクトによってパワーアップした十八番の技を放った。

 

 曲線を描く光の斬撃が、凄絶な衝撃波を撒き散らしながら砲撃のように飛び、不気味な輝きを見せるフロストタートルの眼に直撃する。斬撃はフロストタートルの片目を切り裂き、その傷口を抉るように衝撃波が頭部の一部を粉砕した。

 

 光輝の聖剣は、ジャネンバとの戦いで一度分解され、"聖なる力"こそ弱体化したものの、その破壊力は以前までのものを大きく上回っている。如何に大迷宮の魔物であろうとも、無傷ではいられない。

 

「クワァアアンッ!!」

 

 目論見通り、怒りの矛先を光輝達へと変えたフロストタートルは咆哮を上げると、ギロリと片目で眼下を駆けてくる光輝達に射殺すような視線を向けた。

 

 そして、その口をガパッ! と開けると氷雪のブレスを吐き出した。

 

 螺旋を描き、細かい氷片を紛らせた竜巻のような砲撃。呑み込まれれば、一瞬にして凍てつくか、寒さに耐えたとしても氷片に切り刻まれることになるだろう。

 

 だが、そんな未来は頼れる結界師が許さない。

 

「流れる水の如く、廻る風の如く――"聖絶・散"!!」

 

 詠唱をしてイメージと魔力を補強し、エネルギーを散らす性質を持った聖絶を展開する鈴。輝く障壁が全面に展開され、直後、衝撃と共に氷雪の砲撃が衝突した。ゴゥ!! と凄まじい衝撃を奔らせる砲撃だったが、波紋を広げる聖絶を前に、そのエネルギーを分散させられてしまい突破することは叶わない。

 

「魔石がある限り無限に再生できるなら時間は掛けられない。一撃で決める必要があるわ」

「俺の"神威"だな。最大威力で三十秒かかる」

「ならその間、光輝に手を出させなきゃいいんだな」

 

 鈴が障壁で防いでいる間に、雫が光輝に視線をやりながら言う。仁が言ったように、フロストタートルの巨体を砕いて、その内にある魔石を破壊するには相当な火力が必要であり、それには光輝が一番適していた。

 

 可能ならば1人でフロストタートルを倒したかった光輝だが、それが不可能であるとは流石に分かっている。そのため、冷静に発動時間を伝えた。以前までは、最大威力で撃とうとすれば1分近くかかっていたのでかなり短縮されている。最大威力も数倍に跳ね上がっていることを考えれば、ハジメ作の"聖剣改"の恩恵はかなりのものと言えるだろう。

 

「皆、砲撃が弱まって来たよ!」

「よし、砲撃が途切れた瞬間、散開するぞ。鈴は俺の傍にいてくれ」

「了解! 特大の期待してるね!」

 

 鈴の言葉とほぼ同時に、砲撃が終わりを告げた。周辺に舞い散る雪煙に視界が閉ざされる中、光輝の号令で雫達は一斉に散開した。

 

 雫は軽く刀に手をかけて構えると、その場から掻き消えたかのように一瞬で移動する。その速さは仁の最高速には届かなくとも、ハジメ達にすら十分匹敵する速さであった。

 

「私は仁みたいに遊ぶ趣味はないから、最初から本気でいかせてもらう!」

 

 次の瞬間、いつの間にかフロストタートルの背後に立っていた雫がチンッ! と小気味いい納刀音を響かせると、フロストタートルの6本ある足の内4本が斜めにずり落ち、残った眼球が切り裂かれ、背中の甲羅に突き立った剣山の如き氷柱に大きな罅が入った。

 

 まさに見事な、目にも止まらぬ早業である。

 

 斬られたことにすら気づけなかったフロストタートルは悲鳴と共に、その巨体を傾ける。だがバランスを崩してなお、フロストタートルの戦意が揺らぐことはなく、長く首を伸ばし、背後に眼光と共に強烈な殺気を放った。

 

「っ!?」

 

 背筋が粟立った雫は、直感に従ってその場から跳躍する。その直後、雫が今の今までいた場所の地面からおびただしい数の氷柱が突き出してきた。平坦な地面が一瞬にして死をもたらす氷の華に埋め尽くされる。ランスのように鋭い先端の氷柱が、雫を追うようにして咲き乱れる。

 

「ユエさんの魔法に比べたら、また随分と脆そうな氷ね」

 

 この速度で氷柱を展開され続ければ雫は逃げ場を失うだろうが、彼女に焦りはない。それに似た上位互換の魔法を一度間近で見ているのだから、対策は既に考えてある。

 

 避けられないのならば、壊してしまえばいい。

 

「二振りで十分!」

 

 虚空へと向けて雫は縦と横、十字に刀を振るう。すると、刀から十字型の斬撃が発生し、そのまま氷柱の華を砕いた。

 

 しかし、その時、絶妙なタイミングでフロストイーグルが3体、それぞれ別方向から雫に襲いかかった。雫は氷柱に対処している段階でそれに気づいていたが、撃墜する様子はない。正確には、その必要がなかった。

 

「てぇや!」

 

 可愛らしい叫び声と共に、香織が雫に襲い掛かろうとしたフロストイーグルを"メッサ―"で切りつける。

 

 勿論、物理的攻撃が不可能という性能を持つメッサ―ではその強靭な氷の身体を切り裂くことはできないが、いかに魔石のないフロストイーグルとはいえ、心は、魂は存在する。

 

 フロストイーグル達はそれっきり息を途絶えたかのようにその身体を保ったまま地面へと墜落した。

 

 どれだけ身体を破壊しようとも無限に再生するフロストイーグルと心を殺す香織の攻撃は非常に相性がよかった。どれだけの不死性を持っていようとも、心が壊されてしまえば意味がないのだから。

 

 この場で唯一、氷の魔獣達に対して"無力化"する手段を持つ者。それが香織だった。

 

「助かったわ、香織!」

「うん! 後ろは任せて!」

 

 雫は香織に一言礼を述べると、メッサ―を両手で握る香織と背中合わせに刀を引き抜く。そして追討ちを掛けようと瞳を輝かせたフロストタートルを迎え撃とうとしたところ、上空より聞こえた幼馴染の雄叫びに顔を上げる。

 

「調子に乗ってんじゃねぇ! "重墜"!!」

 

 直後、上空より落下してきた龍太郎が、アーティファクトの籠手に包まれた拳を、隕石の如き猛烈な勢いで、その頭部に叩きつけた。

 

 轟音と共に、籠手本来の能力である衝撃波と重力魔法によって加重された拳撃により、フロストタートルの頭部が爆ぜる。己の上げた成果にニヤリと笑う龍太郎だったが、"してやった"と考えるには早計すぎた。

 

 頭部が粉砕された直後には、その根元に新たな頭部が出現していたのだ。

 

「ゲッ!? しまっ――」

 

 甲羅の奥から覗く赤黒い眼光に、思わずそんな声を漏らす龍太郎。そんな彼に、次の瞬間、氷雪のブレスが襲いかかった。咄嗟に両腕をクロスさせながら"金剛"を発動しようとする。

 

 だがそこで、龍太郎の眼前に光り輝く六角形の障壁が滑り込んで来た。氷雪の砲撃は、その障壁に阻まれ凄絶な余波を撒き散らす。その絶大な威力故に、ビキビキッと障壁にヒビが入っていくが、次の瞬間には、全く同じ障壁が更に割って入り2重3重と重なっていく。

 

「鈴の"天絶"か?」

 

 龍太郎が驚いたように、上空で詠唱する光輝の前に陣取る小さな結界師に視線を向けた。

 

 その視線を受けた鈴が笑みを返す。

 

 龍太郎の予測は半分正解だ。

 

 "聖絶・界"――複数枚の障壁を同時に幾枚も出す中級防御魔法"天絶"の性質を"聖絶"に組み合わせた防御魔法である。元々、鈴には複合魔法の技能がなかったのだが、今鈴が使う一対の鉄扇は、それぞれに登録された魔法を組み合わせることの出来る機能が備わっているので、両魔法の複合技が実現したのである。

 

 と、その時、正面からのブレスとその余波によって障壁の後ろから出ることの出来ない龍太郎に向かってフロストイーグルが強襲を仕掛けた。鈴が、少し焦ったように"聖絶・界"の障壁を回そうとする。

 

 だが、結局それは無用の心配だった。龍太郎の背後から強襲した五体のフロストイーグルは、龍太郎に到達する寸前で、真横から現れた強大な雷の龍に喰い殺されたからだ。

 

「うぉおおおっ!? び、びっくりするじゃねぇか!」

 

 背中を掠めるようにスパークを放ちながら通り過ぎた大迫力の"雷龍"に、思わず文句を垂れる龍太郎。

 

 それが聞こえたわけではないのだろうが、細くしなやかな指をタクトのように振るい七体の雷龍を操っていたユエが、チラリと龍太郎に視線を向けると、直後、クイッと顎をしゃくった。

 

 それは、自分達が魔物共を引き受けると言った以上、龍太郎達に危害が及ぶことなど有り得ないという自信と、一々反応してないで目標に集中しろ、というお叱りの意味が込められた仕草。ゴリラ(龍太郎)でも、何となく察したらしい。

 

「ったく、南雲の女はどいつもこいつもとんでもねぇぜ。あの南雲が、あんないい女連中をこぞって惚れさせるなんて想像も出来なかったなっと!!」

 

 日本にいた頃は想像すら出来なかったハジメのモテっぷりに苦笑いを浮かべた龍太郎は、氷雪の砲撃が弱まったのを見て、"金剛"を発動しながら突貫を開始した。先程より、微妙にやる気に溢れているのはユエに意識を向けられたからだとは断じて言えない。

 

 実は、【オルクス大迷宮】で魔人族からハジメ達に守ってもらった際、"蒼龍"を操りながら自分達を守ってくれたユエの余りの美貌と神々しさに、心奪われていた者の1人だった何てもっと言えない。一目惚れの直後に、ハジメとの間に桃色空間を作り出されて即行で失恋したなんて、たとえ親友の光輝にだって言えないことだ。

 

 まして、ハジメとの吐きそうなくらい甘い関係を何度も見せつけられて、もう気持ちの整理はついていたが、それでもユエに視線を向けられただけで、ちょっと嬉しくなってしまうなんてもっと言えないことである。

 

「俺も大概だな」

 

 自嘲する龍太郎の拳が、再度、フロストタートルの頭部を粉砕する。同時に、下方では雫が再生の追い付かない速度で切り刻み、絶えずその巨体が悲鳴を上げている。

 

 当然、再生能力を持つフロストタートルには大したダメージにもならないが、一歩的に攻撃を浴びせられ、反撃に移ることもできない。そして、それは戦闘が始まって、ちょうど三十秒後のことだった。

 

 それはつまり、

 

「雫! 龍太郎! 香織! 下がれ! 行くぞ、化け物! ――"神威"!!」

 

 そう、光輝の"神威"が、最大威力で発動するのに必要な時間。それを証明するように、聖剣は、螺旋を描いて集束する恒星の如き莫大な光を纏っていた。

 

 燦然と輝く光そのものと表現すべき聖剣をググッと突きの形で後方へ引き絞った光輝は、最後の詠唱と同時に、"空力"で踏みしめた空中の足場を粉砕する勢いで踏み込み、眼下のフロストタートルを討滅せんと光の剣を突き出した。

 

 大気がうねり、軋みを上げる。太陽がそのまま落ちて来たのではないかと錯覚しそうな光量が大広間を純白一色に染め上げた。

 

 フロストタートルが、その落ちてくる絶大な威力の光の砲撃に危機感を覚えたかのように、眼をクワッと見開きながら背中の甲羅を円錐状に変形させる。威力を分散させようというのだろう。

 

「ごめんなさい、隙だらけよ」

 

 しかしそこに雫の妨害が入る。完全に意識を外されたことを認識した雫は、"神威"の巻き添えを食らわぬよう遠く離れた位置で剣先をフロストタートルへと向ける。そしてその先端に気を集中させると、一筋の光線を放った。

 

 仁ほどの高火力ではなくとも、フロストタートルの甲羅の変形を妨害するには十分な威力がそこには込められている。

 

「クワァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!」

 

 直後、直径五メートルはありそうな、輝く螺旋の砲撃がフロストタートルの背中に着弾する。

 

 空間全体を鳴動し、凄まじい衝撃音が響き渡る。同時に、どこか焦燥感の滲んだフロストタートルの絶叫が響き渡った。雫の妨害で変形が遅れた背中の装甲はフルパワーかつ、ハジメの魔改造で飛躍的に底上げされた光輝の切り札を余すことなく受け入れる。

 

 光に呑み込まれて見えないが、その奔流の中では甲羅を模した氷の装甲がジュワァアア!! と盛大に白煙を上げて消失していた。

 

「このまま消えてくれぇ!! 俺は、俺にはっ! 力が必要なんだぁああああ!!!」

 

 壮絶な光の奔流が荒れ狂う中、赤黒い眼を輝かせて周囲の氷を凄まじい勢いで吸収して再生し続けるフロストタートルに、光輝が必死の形相で雄叫びを上げる。持ち得る全魔力を費やした正真正銘最大の攻撃なのだ。耐え切られたら、それは光輝の全力が今尚、大迷宮の魔物には及ばない証となってしまう。

 

 ハジメ、そして仁との再会から、少しずつ溜まりゆく黒くドロドロとした嫌なものを、これ以上溢れさせないために、()()()()()()()()()()()を押し通せるように……何が何でも()()()()で消滅させたかった。

 

「……光輝くん」

 

 傍らの鈴が光輝の表情を見て僅かに怯えたような表情になったが、光輝は当然それには気がつかなかった。

 

「おぉおおおおおおお!!!」

「クワァアアアアアアアン!!!」

 

 光輝とフロストタートルの絶叫がぶつかり合う刹那、

 

ビキッ

 

 そんな音が、やけに明瞭に響いた。直後、フロストタートル全体に無数の亀裂が奔っていき、細かな氷片がパラパラと地面に散らばっていく。

 

 そして、遂に、"神威"の光がフロストタートルの装甲を貫き、その巨体を背中から真っ2つに粉砕した。それだけに留まらず、周囲の地面ごと消滅させ再生の暇を与えず、螺旋を描く光がフロストタートルの前部と後部をも引き寄せて呑み込んでいく。

 

 それの光景はまるで、船体を真っ2つに折られて両端を天に向けながら沈んでいく豪華客船のようだった。

 

「クァアア……」

 

 フロストタートルの断末魔の声が響く。ガラガラと氷塊をばら撒きながら、引きずり込まれていく巨体。その眼から赤黒い輝きがフッと消えた。

 

 一拍後。フロストタートルの全てを呑み込んだ"神威"は、その光の奔流を徐々に小さくしていき、やがて虚空に溶け込むようにその姿を消していった。

 

「や、やった…はぁはぁ……倒した…俺が……」

 

 光輝が激しく肩で息をしながら、ふらつく。アーティファクトによって使えていた"空力"が効力を失い、その体が落下しそうになり、隣の鈴に支えられる。

 

「光輝くん、だいじょ……」

 

 鈴が光輝に肩を貸しながら、先程感じたものを奥底に封じ込めて心配そうに口を開きかけた、その時、

 

 ボバッ! という音を立てて、一体のフロストイーグルが、その鋭い爪の生えた両足に何かを掴んでフロストタートルの残骸が散らばるクレーターから飛び出して来た。

 

「なっ、何で、まだ動いてっ」

「光輝くん、あれ見て!」

 

 光輝が疲労の滲む双眸を大きく見開いて驚愕をあらわにすると、鈴が張り詰めた声音で指を指した。その先には、フロストイーグルの爪に掴まれた赤黒い結晶体が……

 

「くそっ、破壊しきれなかったのかっ! だが、逃がしは…ぐっ」

「光輝くん!」

 

 歯噛みする光輝。全力を出したにもかかわらず、破壊したと思った魔石が残っていたのだから無理もない。フロストタートルは、光輝の"神威"に勝てないと判断した瞬間、足元に生み出したフロストイーグルの元へ魔石を動かしていたようだ。

 

 光輝が、今度こそ止めだと再び聖剣を振りかぶろうとするが、聖剣を持つ手が魔力枯渇からくる虚脱感で震えてしまい思うようにいかない。光輝の纏う聖なる鎧にはハジメによって"魔素吸収"効果も付加されているので、十数秒もあれば虚脱感を感じない程度には回復できるのだが……

 

 魔石を持つフロストイーグルは、既にその形をビキッベキッと音を立てて変え始めており魔石を取り込み始めている。どうやら、十数秒も猶予はないようだ。鈴が魔力枯渇にもかかわらず、攻撃を強行しようとする光輝を必死に押し留めるが、光輝はまるで意に介さず、憑かれたように呟きを繰り返した。

 

「俺だってやれる……俺がやるんだ……風磨なんかより、俺が……正しいのは……俺で……」

 

 意志は強烈でも、聖剣に集まる光は弱々しい。それを見て、光輝は"限界突破"を使おうと口を開きかけた。

 

「限界と……」

「光輝くんってば!」

 

 鈴が怒声を上げる。単なる魔力枯渇ならそう時間をかけずに元通りになれるが、"限界突破"を使った後の疲労は体の芯に残る深いものだ。回復魔法でも回復しづらい。もちろん再生魔法なら全快できるだろうが、それはハジメ達に大きな魔力消費を強いることになる。今のハジメ達ならそれくらいどうということもないだろうが、それでも必要もないのに切っていい手札ではない。

 

 光輝から逃げるように飛ぶフロストイーグルは嗤う。結局お前はトドメを刺すことができなかったな、と。だがその余裕もすぐに消えた。

 

逃げるのか?

 

 もはや動けるようには見えない光輝を見定めていたフロストイーグルは突如前方から聞こえた声に反応し、反射にも近い速度で襲い掛かかった。

 

「――!」

「どうした? かかってこいよ」

 

 しかし、既のところで氷の獣は静止する。愉悦に浸っていた思考は急速に冷え、冷静になった瞳で目の前に腕を組みながら立ち塞がるピンク色の魔人――仁を観察した。

 

 フロストイーグルは動けない。対面し、本能でその力の差を理解してしまったからだ。すなわち、『コイツには勝てない』と。逃げることすら不可能。使い捨ての肉体でしかないフロストイーグルは戦わずして"死"を覚悟した。

 

 そしてその隙を、彼女は見逃さなかった。

 

「貫け!」

 

 地を勢いよく蹴って跳んだ雫が、フロストイーグルの背後から迫り、魔石に狙いを定めて突きを放つ。まだ完全の魔石を取り込んではいなかったからだろう。露出した魔石に雫の刀が突き刺さり、一瞬の抵抗も許さずに貫いた。

 

 中心に空いた穴を起点に、魔石はビキビキッと音を立てて亀裂を大きくしていき、遂に、

 

「はあっ!」

 

 至近距離から放たれた雫のエネルギー弾によって完全に粉砕されるに至った。キラキラと赤黒い結晶の細かな破片が地に落ちていく。

 

 同時に、この広い空間を満たしていたおびただしい数の魔物達が一斉にその姿を崩していった。部屋全体に、ガラガラと唯の氷塊となった魔物達の崩壊する音が響き渡る。

 

「はい、キャッチ」

「ひゃわっ!」

「ナイスガッツだったぜ、八重樫」

「あ、ありがと……」

 

 高い跳躍力でここまで跳んで来た雫だったが、彼女はハジメから"空力"の付与されたアーティファクトを与えられてはおらず、仁のように武空術は使えない。そのためこのまま落ちるはずだったのだが、そこで仁がキャッチ。

 

 当たり前のように抱き抱えられた羞恥心から顔を真っ赤に染めるも、暴れるわけにもいかず、雫はそのまま大人しく地上へと降ろされていく。

 

「……」

 

 その光景を呆然と眺める光輝。肩を支える鈴が不安そうに見つめているが、それにも気が付いていないようだ。

 

 と、そこへ豪快で上機嫌な声がかかった。

 

「はっはっはっはっ! やったなぁ、光輝! 俺達の勝ちだぜ!」

「え? あ、龍太郎……」

「おう、なに湿気た面してんだよ。勝ったんだからもっと喜べって! いやぁ、にしても、やっぱ光輝の"神威"はやべぇな。見ろよ。すげぇクレーターが出来てるぜ」

 

 光輝の背をバンバンッと叩きながらニカッと笑う親友の姿に、思い詰めたような表情だった光輝の表情も徐々に柔らかさを取り戻していった。逆に、龍太郎に叩かれて激しく揺れる光輝の体を支えていた鈴は盛大に翻弄されてあわあわしていたが。

 

「……そうだな。俺、いや、俺達が勝ったんだな。大迷宮の化け物に」

「おうよ! 今までやられっぱなしだったからな。スカッとしたぜ」

「ははっ、確かに、ちょっとスッキリしたな」

「だろ? こりゃあ南雲に追いつく日も近そうだぜ」

「……だといいけどな」

 

 肩を借りていた鈴に礼を言って、自力で立ちながら光輝が苦笑いを浮かべる。龍太郎の明るさに、鬱屈した心が少し晴れた。しかし、やはり、自分の切り札で仕留めきれなかったことは心残りのようで……

 

「雫……」

「? お疲れ様、光輝」

 

 そこへ若干頬を赤らめた雫が戻ってくるも、光輝は思わず鋭い視線を向けそうになり慌てて取り繕うことになってしまった。光輝の様子に若干の違和感を覚えた雫だったが、折角の戦勝に水を差すこともないかと考え微笑みと共に労いの言葉を送る。

 

「ああ、お疲れ様、雫。最後のフォローは見事だったよ」

「そう? それより光輝の"神威"の方が見事だったわ。強化された聖剣での全力は初めて見たけど……想像以上だったわね」

「だよね! だよね! すごい一撃だったよね!」

「うんうん! まさかあんなに凄いなんて驚いたよ!」

「ま、まぁ、あれくらいは、な……」

 

 自分の功績はあっさり流し、眼下のクレーターを見ながら光輝の"神威"を称賛する雫に、どこか必死感の漂う鈴と純粋に驚いている香織が便乗してベタ褒めする。

 

 流石に、女の子三人から手放しで称賛されて照れ臭さを感じた光輝は、頬をポリポリと掻きながら言葉を濁した。

 

 そんな光輝達に声がかかる。

 

「お~い、余韻に浸るのはいいが、そろそろ出発するぞぉ!」

 

 ハジメである。見れば、魔物の成れの果てと思われる氷塊の山の上で、千体近い魔物を相手取ったとは思えないほど涼しげな様子でドンナーで方をトントンしていた。その横には、恐らく元魔物であろう焼きマシュマロを頬張っている仁の姿も見える。

 

 ハジメが片手で指さしていた場所に光輝達は視線を送ると、いつの間にか、最初にフロストタートルが出現した氷壁に大きなアーチを描く穴が空いていた。どうやら奥に進むための通路が出現したようだ。

 

 光輝達は一つ頷き合うと、ハジメ達のいる場所の傍らに降り立った。

 

「おめでとさん。どうやら問題なく大迷宮の魔物とも戦えるようだな」

「……お、おいハジメ、なんか変なものでも食ったか? おまえが天之河を褒めるなんて明日は兎でも降ってくるんじゃ……」

「どんな異常気象だ。そこはせめて豚にしておけ。それに、俺はただ正当な評価をくれてやっただけだ」

 

 意外にも祝福の言葉を贈ったハジメに、仁を含めた光輝達が珍獣でも見るような眼差しを向ける。そんな視線にイラっと来たのか、目を眇め始めたハジメに慌てて雫が話題を変える。

 

「ええ、ありがとう。それと仁、さっきは助かったわ。貴方が魔物を抑えてくれたおかげでトドメを刺せたから」

「オレはなんもしてないだろ。あれは勝手にあっちがビビっただけだ」

「まったく、大迷宮の魔物が怖気ずくなんて、今度は魔王でも目指してるのかしら?」

「八重樫がそうして欲しいんだったら魔王から玉座を奪いに行ってもいいが?」

 

 冗談で言ったのにも関わらず、実際にできそうな返答が返ってきたことに、雫は引き気味に苦笑いを見せる。

 

「そう言えば、風磨、南雲。俺達に倒させて良かったのか?」

 

 雫と仁の会話に苛立ちでも感じたのか光輝が話題を転換するように仁に質問をする。

 

「それは、攻略認定を貰えなくなるんじゃないか? ってことでいいか?」

「ああ」

「だったら大丈夫だろ。大迷宮ってのは神代魔法を与えるための試練の場だ。そんな試練がこれだけで終わるわけがない。この先にはもっと面白い試練が待ってるはずだぜ」

「妾もそれには同意見じゃ。凍死しかねん寒さと無限に再生する魔物の群れ、そして要塞のような主級の魔物は確かに厄介じゃったがの。ただ強力な魔物と戦うだけなら、オルクスで経験できるじゃろ?」

「そうだな。ただ倒すだけなら大して難しくはないから、それほど重要視される試練じゃないと踏んだ」

「仁さんに賛同するわけじゃないですけど、一応、私達も皆、三桁以上は倒しましたしね」

「……ん、(ピンク)の言う通り、問題ない」

 

 それぞれ問題ないと口にするハジメ一行。余裕綽々である。単に実力があるということだけでなく、大迷宮の探索・攻略というものに対して有する経験が光輝達とは段違いなのだ。

 

 そんな"差"を見せつけられた気がして、感心する鈴達を尻目に光輝の心に再び暗く嫌なものが湧き出した。が、それを表に出すことはなく、奥底に沈殿させたまま、納得顔を見せる。

 

 雫は、何となく光輝の様子に胸のざわつきを感じたが、ハジメ達が先を促したので取り敢えず保留として後を付いていった。

 

 再び、大きな氷壁で囲まれた通路を行く。

 

 三十分ほど歩いて、ようやく通路の先に光が見えた。長い通路から出たハジメ達を待ち受けていたのは……

 

 眼下に広がる、冗談のように広大な迷路だった。




・天之河光輝ヘイト数
ハジメ 60/100
仁   85/100
MAXまで行ったら暴走して斬りかかってきます。

【メッサ―】
香織の新たな武器。
一メートル以上もある巨大な医療用メスのような形状をしており、魂魄魔法が付与されているため、魂に直接攻撃を与えることができる。
逆に、物理的攻撃は不可能であるため、魂のない完全機械のような相手が敵となるとただの長いだけのメスとなる。(今回のフロスト系の魔物は魔石はなくとも、魂はあるという設定とする)
誰かを傷つけたくはないが、ハジメと共に戦いたいという香織の希望からハジメが制作した武器。実際のところ、殺すより酷いことしてる武器になっていることには気づいてない。
回復魔法を燃料としているため、ハジメや仁とは非情に相性が悪い。というより、香織以外が使っても大した効果は発揮されない。
一応、精神治療にも使えるとか。

Q. もしかして仁ってまだユエのこと嫌い?
A. 嫌いではありません。気に食わないだけです。いざとなれば普通に助けますし、助けを求めたりもします。最低限の仲間意識はありますが、あんま仲良くしたくない相手といった感じです。
ちなみにユエからも同じような感情を向けられています。

【オールクリア】
仁の新技。
気を纏わせた手を横に大きく払うと同時に衝撃波を放ち、広範囲を破壊する技。
【ドラゴンボール】人造人間編で完全体セルが王立防衛軍を全滅させるために使ってたアレのパクリ。

Q. フロストタートルってワンチャン雫だけでも勝てたんじゃない?
A. はい。勝てます。というか香織でもタイマンで勝てます。今回は光輝君達を気遣って加減してくれただけです。
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