ザクリ。群がってくる村人の首すじにナイフを突き立てながら前に進む。
「はぁ・・・」
深いため息をこぼす。全く、厄介なことに巻き込まれたものね。
頭に響くような音がしてから、人たちが襲ってきたり、能力が使えなくなったり、真っ赤な雨が降り注いだり。お嬢様なら喜びそうだけど。
それにいくら襲ってくるとはいえ、人の姿を保っている生物を殺めていくのは一応気が引けるというもの。一人、二人と襲いかかる村人を切りながら進むと、道のど真ん中に真っ白い建造物があった。横にうっすらとだが「宮田病院」と掘られているところを見るに、昨日今日作られた建物でないと分かった。
「おかしいわね、こんな建物前にはなかったはず」
これじゃあ遠回りしないと行けないじゃない。そう思って回ろうとした矢先だった。
「ッつ」
パーンという音と共に肩から血が滴る。後ろの真っ白い建物のドアには、小さな凹みが生まれていた。銃。確かにその武器なら遠距離からでもこれくらいできる。しかし、この幻想郷には実用可能な銃はまだほとんど存在していなかったはずだけど。
とにかくここから離れなくちゃいけない。突っ立っていればそれこそ格好の的なのだから。障害物に隠れるのを最優先に・・・。
「・・・この中に入るしかないかしらね」
中の状態ははっきりいってさっぱりわからないと言ってもいい。もしかしたら、さっきの村人みたいなのが他にもうじゃうじゃしているかもしれない。
ただ、考えている時間はもう無い。長距離を撃てる銃は総じてリロードの時間が長いものだが、それも数秒程度の話だ。
「まったく、早くお嬢様のところにお戻りしなくちゃいけないのに」
瀟洒なメイドとして、お嬢様を待たせてしまうのはあるまじき失態だ。そうと決まれば行動しないと。銃の衝撃で少し半開きになっていたドアに手をかけ、自分が入り込めるだけのスキマを作り、滑り込んで閉じる。その動作の直後に再度ドアに凹みが生まれていた。戻ることは考えなくてもいい。どうせドアが無くても窓から出ればいい。
カツ・・カツ・・。
周りを警戒しながら前方へと向かっていく。まだ乾ききってない血が周囲に飛び散っている。多分、正気の人が私よりも前にこの建物の中に入っているのだろう。
その人が今どうなっているかはともかく、結局のところこの中にも人モドキの奴らはいるのだろう。
奥の方からうめき声がする。それは紛れもなく、人でない何かだ。
少し血に濡れて赤く光るナイフを構える。
「ゾンビ退治ってあんまり好きじゃないのよね」