俺がオレで、オレが俺で   作:よくかんさん

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東映版リョウと新ゲ竜馬の精神入れ替えネタ。
最初は真面目っぽいけど内容はコメディ、の予定……はいやっぱりいつもの似非シリアス。
ネタバレ:入れ替えの原因は安倍晴明



俺がオレで、オレが俺で・1

 リョウ、ハヤト、ベンケイのゲッターチームは新たな百鬼百人衆に苦戦を強いられていた。

 

「リョウ!意識を百鬼メカに向けろ!そのままじゃあお前の意識が消えちまうぜ!」

「無茶言うなよハヤト!リョウはゲットマシンに乗るのもやっとだったんだ。俺たちがあの百鬼メカをやらねえと……」

「ベンケイッ!リョウの意識が飛んでいっちまったらな、リョウもゲッターも、俺たちだって終わりなんだ。ここでリョウが死ぬ気で踏みとどまらねえと何もかも終わりなんだ!リョウ!聞こえているな!リョウ!リョウッ!!」

 

 ハヤトの叫びにリョウは目前のメカへ意識を集中する。霞む思考をありったけ集め、リョウは『流竜馬』としての意識をなんとかして保たせていた。

 

―俺は……負けられない。百鬼帝国の世界征服を、絶対に、許してはならないんだ……。

 

 

 その新たな刺客の百鬼百人衆は摩訶不思議な妖術を使い、サッカー部のキャプテンとして行動していたリョウに強力無比の催眠攻撃を仕掛けた。

 ゲッターロボで戦う戦士としてではなく、一高校生として生活をしていたリョウを狙い、サッカー部員たちを見送って一人部室で気を落ち着かせていたリョウに広範囲睡眠波で催眠を掛け、意識を消そうとしたのだ。

 無防備な状態で催眠波を一身に受けたリョウは身体の自由を失い、思考の自由も徐々に効かなくなっていった。

 ハヤトも、ベンケイも、ここにはいない。声を上げられずぴくりととも動かないリョウに百鬼は勝ちを確信し、百鬼メカを起動させるためその場を一時撤退した。

 死亡確認するまでもない百鬼の絶対的な勝利がそこにはあった。一人部室で倒れ、声も出せず、腕時計型の通信機を使おうにもリョウの身体はもう指一つ動かせない。

 まさに風前の灯、最悪の危機的状況だった。

 ものの数分でリョウの意識はなくなり、精神の死を迎える。じわじわと、自身の受け入れがたい死を実感しながら死んでいく。それは、どんな拷問よりも恐ろしい死だ。

 

―ここで俺が死んでしまったらゲッターは、日本は……世界は……百鬼帝国、に……。-

 

 リョウは何もできない自分に悔しくなり、両の目から涙を流した。どうか、俺がいなくなっても誰かが代わりに、俺の代わりをしてくれれば……と、その無念すら手放す瀬戸際の一瞬だった。

 

『泣くんじゃない、リョウ。お前は戦うんだ。平和のために、オレの代わりに……』

 

 リョウはその声を知っていた。

 耳から聞こえたものではない、直接リョウの脳へと響いたその声は、一人九州から長野の浅間山へやってきた高校生の自分に一流のサッカーコーチングをしてくれた恩師の、宇宙開発ロボであるゲッターロボのメインパイロットになるはずだった早乙女博士の息子、早乙女達人の声だった。

 

―た、達人コーチ……?コーチが生きて、いた?コーチ!達人コーチ!!生きていたのですか?!コーチ!―

 

 心の内でその声に問いかけたつもりだったが、もう達人の声は聞こえなかった。幻覚だと思いたくないリョウは無我夢中で達人の声の正体を確認しようとした。

 肺いっぱいに空気を入れて渾身の力を込め、声を張り上げ叫んだ。

 

「コーチーッ!……はっ!?身体が……動く!少しだけど、これならば……!」

 

 まるで呪を跳ね返したような感覚だった。

 指の一本すら動かせなかった身体が自由を、少しではあるが取り戻したのだ。

 自力で百鬼の催眠を跳ね除けたのか、それとも亡くなった達人の守護霊的なものなのか……、思案したいのは山々だったがこのままでは撤退した百鬼が戻ってきた時に間に合わなくなってしまう。リョウは急ぎ通信機で早乙女研究所の早乙女博士へと繋ぎ、自分に起きた事の詳細を話した。

 

 

「……はい、そう言うことなんです。きっと百鬼は今俺が出れないと油断し研究所へとやってくるはずです。博士、俺はやれます。どうかゲッターに乗らせて下さい。博士!」

 

 リョウは早乙女博士に出撃の懇願をするが、いつ意識が消え飛んでしまうかもわからない非常に危うい状態に、早乙女博士はリョウの搭乗に難色を示した。

 

「リョウくん、今君がその危うい状態で乗ってもゲッターロボを100%の状態で制御できるかね?今回は代わりの者を選出する。100%ではないが、今の君よりは制御可能だろう。直ちにそちらへ所員を派遣するから、リョウくん、君は研究所に着き次第医療ルームに行きなさい。検査をして、回復を図るんだ。いいかね、これは命令だ」

 

 早乙女博士の指示は冷静かつ的確だった。今リョウがゲッターに乗ったとしてもリスクしかないのだ。いつもならリョウも自身の意見を控えて博士の指示に従っていただろう。しかし、リョウは引き下がらずゲッターロボGに乗る事を選んだ。

 今自分がいかなければならないと、強い使命を感じていたからだ。

 

「博士、俺は聞いたんです。泣くな、戦えと……達人コーチの声を聞いたんです。きっとあの人は自分を奮起させる為に、力をくれた……そう思わずにはいられないのです。博士、俺はゲッターロボに乗ります。俺に代わりはない……俺が達人さんの代わりなんです!だから博士!どうか!お願いですっ!」

「リョウくん……」

 

 中立で、公平で、正しい冷静な視点で的確な指示をだし、未来を担う若人の命を必ず無事に家族のもとへ返す。それが息子、達人を亡くした早乙女博士の一番大事にしていた信条だった。先の恐竜帝国との戦いでゲッター3パイロット『巴武蔵』を亡くしてしまったこともあり、早乙女博士は慎重に判断をしたかった。

 だが、今このリョウからの通信で早乙女博士は己の信条から外れた答えを出した。出してしまった。

 

「……分かった。リョウくん、行きたまえ。君が感じ取った達人の励ましを……絶対に、忘れないでくれ」

「はい!ありがとうございます、博士!」

 

 冷静第一の早乙女博士もリョウの熱意と情と、何より死の淵より帰ったリョウが亡くなった達人の声を聞いたのだと言われてしまっては、己の信条を曲げるほかがなかった。

 

 

 まだらに掠れていくリョウの思考は、ハヤトの喉を嗄らした叱咤でギリギリのところを引き留めていた。

 しかし目前の百鬼メカはゲッタードラゴンの行動を待つはずがなく、催眠波を再び掛けようと待機状態に入りエネルギーを充填していた。

 今リョウが百鬼メカの催眠波の一撃を受けてしまったら、リョウの思考はバラバラになり、一切の希望なく意識は永遠に回復することはないだろう。

 

―倒すんだ……倒さなくては……達人コーチの……ううっ!?―

 

 この時、消えかかるリョウの思考に大きなブレが生じた。地続きのようで、大きく隔たりのある意識のブレが物理的なショックを受けたのようにリョウの脳を揺らす。

 自分自身であるはずなのに、別人のような激しい感情が脳を、精神を司る器官を塗りつぶしていった。

 

―コーチ、達人コーチ……達人、の………地獄で待っているアイツの代わり……いや、仇をよ!!!―

「……ぉぉおおお!!!あンのガラクタ余裕ブッこきやがって、ふざけんじゃねえ!ゲッタァァア!ウイィーッング!!」

「え、おい、リョウ?あ、あわわ!うわあ〜〜〜〜っ!?」「ぐうっ!?」

 

『流竜馬』は唸り声を上げ、ガン!と力いっぱいにペダルを踏み込んだ。ゲッタードラゴンはウイングを展開し空へと高く飛んだ次の瞬間、宙を翻り肩から百鬼メカへと突進する。

 

「おぅりゃあ!」

 

 鋭い突起のついたゲッタードラゴンのいかり肩に激しく体当りされた百鬼メカは火花を散らし、轟音を立てながらながら遠くへとふっ飛ばされた。

 

「へっ、オレ様を舐めるとこうなるんだ!」

 

 ゲッタードラゴンは油断していた百鬼メカに大ダメージを与えたのは確かだった。がしかし、ダメージを受けたのは敵だけではなかった。

 リョウの体調を心配していたベンケイはドラゴンが百鬼メカへ体当たりをした際に発生した衝撃により、座席から振り飛ばされそうになるくらいの大きな横揺れにガクンガクンと頭を打ち、ハヤトは突如豹変したリョウに驚きショックを緩和する姿勢を満足に取れず、背中を座席の背もたれに強く打ち付けてしまったのだ。

 二人は痛みに呻き声を上げ、急にワンマンプレーで力を合わせようとしないリョウに抗議しようとリョウのコクピットにモニタを繋げる。

 そこには今まで意識が朦朧としていたはずの『流竜馬』が元気そうに、そしてあっけらかんとしていた。

 

「何だ隼人、弁慶!そろいもそろってだらしねえな。いつもの威勢はどこに行きやがったんだ?」

 

 独特の青みがかった目をキッと釣り上げて口角を引き、ニヤリと挑発するように笑うリョウ。言葉遣いは荒んでおり、その言葉が本当にリョウから発せられたなど二人は一瞬疑ってしまった。

 いや、それは『リョウの顔をした誰か』だと言いたくなるような普段の『流竜馬』がするような表情でも口調でもなかった。

 勇敢と言うには乱暴な操縦、蛮勇的で我の強い言動。ヤンキーやチンピラめいたその態度にハヤトとベンケイはまるで狐につままれたかようにポカンと言葉を失った。

 

「ンだよオレの顔見てボケっとしやがって。うんとかすんとか言ったらどうなんだ」

「う、うん?」

「ケンカ売ってんのか弁慶!」

「ええ〜〜〜……?な、なあハヤト、リョウどうしちまったんだ?」

「俺も何が何だか……リョウ、そうガキっぽくカッカするのは百鬼の催眠波の名残ってやつか?」

 

 流石のハヤトも普段なら軽口の一つ挟むところだが今の常軌を逸しているリョウに皮肉は通じないと踏んで、いつもの口に針がある言葉を大人しめにして聞きただしてみた。

 だが、やはりと言うべきか今の『流竜馬』は喧嘩っ早く、『ガキ』という言葉が痛く気に入らないようでハヤトに噛み付くような勢いで言い返してきた。

 

「誰がガキだ誰が!オレはもうハタチ……ってヒャッキ?隼人何言って……っておいおい嘘だろ!?」

 

『流竜馬』は自身に降りかかる情報を整理するのがやっとのように憤り、驚き、また思い出したかのように憤り、反射的にその怒りのまま反応をする。だが、その感情的なやり取りをしつつ『流竜馬』は場に気の張りつめ、前方のほぼ半壊になったはずの百鬼メカが再び起動するのを気づいた。

 異常なほどの察知力だった。

 

「あのガラクタまだ動けるのかよ!?だったらどぎついイッパツお見舞してやるぜ!ゲッタァアアー!ビィイイイーッム!……なあっ!?」

 

 ゲッタードラゴンが放つ高出力のゲッタービームは百鬼メカを素通りし、ビームはそのまま直線に野山へと照射され木々を焼き薙いだ。

 ゲッタービームが百鬼メカを素通りしたのはリョウがたまにやらかす絶妙なノーコンだから、ではない。百鬼メカはその黄金の巨体を瞬時に4つのパーツに分離させ、まるでゲッターロボがオープンゲットし分離状態で攻撃を回避するようにゲッタービームを回避したからだ。

 分離した百鬼メカのパーツは宙を浮き、それぞれがまるで意志を持つように漂っていた。

 

「マジかよ!あいつあんな図体で飛べんのか!」

「だから今まで空を飛べるゲッタードラゴンで戦ってたろ?!ポセイドンやライガーも飛ぶことはできても自在には……っておいリョウよお!ちゃんと聞いてるか!?」

 

 ベンケイの状況説明に『流竜馬』は耳を傾けなかった。いや、『聞いたことのない言葉』が次から次へと出てくるに状況に言葉を飲むことができないでいた。

 

「ドラゴン?ポセイドン?ライガー?なんだそりゃ……ってよそ事考えてる場合じゃねえ!」

 

 まさにその思考の空白が敵にチャンスを与えた。

 黄金色の百鬼メカはかく乱するように4つのパーツを縦横無尽に宙を高速で泳がせると、そのままゲッタードラゴンの虚を突き逃げるように去っていった。

 

「チィッ!ったく、おまえらがもたもたしてっから鬼が逃げちまったじゃねえかよお!」

 

 鬼。確かに『流竜馬』はそう言った。今までは敵を百鬼と呼んでいたはずなのがはっきりと鬼と呼んだのだ。

 果たして、今の『流竜馬』はハヤトやベンケイが知っているリョウではなさそうだ。ベンケイは『流竜馬』の異常な変化を深刻に受け止めて、やや泣きそうな口調でハヤトに真情を吐露した。

 いろいろ不安があるが、何よりも正直、今のリョウはちょっと怖かった。

 

「……ハヤトお。こりゃあ早乙女博士に報告しなきゃ、だよな。もしかしたら入院モノかもしれないし」

「そうだな……。一体如何しちまったんだ、リョウ」

 

 珍しくハヤトもベンケイの泣き言に自身の嘆きを重ねたのだった。

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