とある将来の通行禁止   作:るなうるむ

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600万円の咆哮

便利になった。

そう言われても、不便だった頃自体を知らないため“便利”は当たり前と言い換えてもよいだろう。

 

学園都市の歩道の全てがエスカレーターになっていることも、プロペラとジェットを付けた円柱型の警備ロボがそこら中を漂っていることも、レーザーで轢かれた線路の上を列車が走っていることも、見慣れた光景であり、当たり前の景色だ。

 

 

 

 

「ハァ......あの博士、地図だけ押し付けて自分は用事があるからーって消えちゃうんだから...」

 

 

家の近くの公園で、行方はベンチに腰をかけて地図を眺めていた。電車で行くならば1時間はかかるだろう

 

 

 

「オイオイ、どうしたんですかぁ?昼間っからため息なんてついちゃって?」

 

 

「ん?」

 

 

聞きなれた声。

 

 

「あぁ、おじさんか。いつも御苦労様。」

 

 

よくホウキとチリトリを持って公園や道の掃除をしている清掃員のおじさんだ。黒く伸びたツンツン頭ですぐに分かった。

 

 

「どっか出かけるのか?」

 

 

「うん...ちょっと...ね。」

 

 

 

「そうか。またビル倒壊とかあるかもしれないから気をつけろよ?」

 

 

ギクッ!

 

 

「あ......う、うん。」

 

 

白々しく返事する。張本人はもうここには居ないが...

 

 

「昔はビル倒壊なんて毎日のようにあったんだ...壊れたり、再生したり、元に戻ったり...な。」

 

 

「戻ったり?」

 

 

「いや、何でもない。悪いな、引き止めちまった。」

 

 

「いえいえ。急ぐ用事でもないですし。それじゃ」

 

 

 

ツンツン頭の清掃員は、去ってゆく行方を遠目で見、少し痒そうに頭をポリポリ掻いた

 

 

 

 

「がんばりな、最強。」

 

 

 

 

 

 

「ここかぁ。」

 

 

渡された地図の住所へ行ってみると、10階建てほどあり、一面ガラス張りの巨大な研究施設郡が点在している。

 

 

 

“スズシナ ユクエ サマ デ ヨロシイデスネ?”

 

 

玄関を探そうとキョロキョロしていると、一機の警備ロボが近づいてきた。

「あー、うん。そう。」

 

 

“コチラデス ツイテキテ”

 

警備ロボが向きを変えて施設の方へゆっくりと浮遊してゆく。

 

 

 

 

「最後はクダサイ付けなよ...」

 

 

 

いくつかの廊下を通り、ドアをくぐると四角く拓けた巨大な体育館のような場所に行き着いた。

 

 

「なにこれ?」

 

 

そして目の前には高さ、幅ともに20mはあるのではないかというほどの人型の大きなロボットが立っていた。

 

“ようこそ!鈴科くん!”

 

 

スピーカーから、あの胡散臭い博士の声が聞こえた。

 

 

“ほれ、ここじゃよ、ここ。”

 

 

 

右上の方をみると、一部ガラス張りのようになっており、博士と何人か白衣を着た人がそこから覗いていた。

 

「で?私はコイツと戦えばいいわけ?」

 

 

“そのとおーり!これは今度アンチスキルへ売り込もうとしている新型のロボでな。相手の戦闘を見て自分の戦術に取り込むことが出来るのだ。これによってパターン化された犯罪を防ぐ効果が期待されている。”

 

 

「ふぅーん。」

 

“ではさっそく起動させるぞ!ちなみに、勝たなければ約束の600万は無しじゃからな?”

 

 

 

「あのモジャモジャ...だんだん態度がでかくなってきてるな。勝たなければ?ハハッ♪.........面白い冗談だ」

 

ニタァ...

 

 

 

 

ヴウゥゥン!

 

 

ロボット全体に薄い緑のラインが浮かび上がる

 

 

、、、、

 

「いいのですか?教授?あのような子供と戦わせてしまって...勝っても宣伝になりませんし、一歩間違えれば大変な事になりますよ?」

 

 

「大変な事?なんじゃそれは?」

 

「例えば、彼女が無抵抗のまま攻撃を受けてしまったりしたら...ほら!あれ!!」

 

 

新人研究員が指を差した方向には、巨大な拳を少女に向けて振りおろしているロボットと、何もせずにただその場で立っているだけの少女が写っている

 

 

「い!!今から停止させても間に合いませんよ?!」

 

 

 

ロボットの拳が思い切り彼女にぶち当てられる

 

 

 

 

 

 

 

グワアアァァァァーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁー!どうするんですかぁ?!」

 

「...お前さん、アヤツが何者なのか分かって言っているのか?」

 

 

 

「え?!」

 

視界が晴れる。

 

そこには、拳を突き出したまま彼女の手前で停止しているロボットの姿があった。

 

「バ、バカな?!確かに彼女に当たったハズ...?一体どんな能力で!」

 

 

「確かに“当たりはした”ぞ?次からはちゃんと実験の予習はしておく事じゃな。」

 

 

、、、

 

「方向真逆。えーと、500%くらい増幅。」

 

 

メキメキメキメキッ!!

 

突き出されたロボの腕が、まるで缶を縦に潰したかのようにぐしゃぐしゃになる。

、、、

 

 

「あ、あれは一体??」

 

 

「...能力はベクトル操作。自分に触れた物質の解析やベクトルの変更を自由自在にできると言われておる。」

 

 

「で...では...」

 

 

「そう。攻撃を防いだのではなく、受けた衝撃を全て無力化したのじゃろう。」

 

 

「そして...」

 

 

、、、

 

「必殺!ろっ☆ぴゃく☆まん!!」

 

 

一気に巨大なベクトルの矢印が行方の反対方向へかかる

 

 

ズババガガガガガアアアアァァァァーーーーーン!!!!

 

 

、、、

 

「無力化だけでなく、ベクトルを自由に作り出すことも出来る...」

 

 

 

「そ...そんな、我々の警備ロボが一瞬で...」

 

 

 

ロボットは後ろの壁を突き抜け、全壊してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「これが学園都市最強のlevel5、通行禁止(アクセラレーテッド)の力じゃ。」

 

 

 

 

 

 

 

 




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