ヴァンパイア・ガヴァン   作:レイサン

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今回グロ注意です


【五話】忘れていた記憶

「はいはーい!族長からも許可もらったわけなんで、早速作業内容をまとめようか!」

 

村の復興作業を始めるため、技術者と村人で話し合う事になった。

 

その日は夜まで会議を行い、まずは予定通りトロルやドレイクの住む場所を作り、その後エルフ達の家を改築する方向性で決定した。

 

明日からの厳しい作業に備えて今夜はぐっすり眠るように伝え、ガヴァンは会議室を出ようとした。

 

「そんじゃ皆、今夜は良く寝て明日はガンガン働くぞ〜。」

 

バンッ!

 

 

「大変ですガヴァン様エレフィア様!緊急事態が…ってガヴァン様どうされたのですか!」

 

 

 

「お前が勢い良くドア開けたから鼻の骨が折れた…。」

 

 

 

「申し訳ありません!ですが今は緊急事態なのです!」

 

 

 

「緊急事態とはどういう……まさか!」

 

 

 

エルフの族長エレフィアには何が起こっているのか大凡見当がついた。

 

現在の時刻は昼の生物が眠りに着く時間だが、今は丁度夜の生物も目覚めていない時間帯である。

 

そして"奴ら"はいつも決まってこの時間に攻め込んで来ていた。

 

 

 

「奴らが!人間が襲撃してきました!」

 

 

 

「よりにもよって今夜攻めてくるとは…総員迎撃体制!敵の攻撃に備えてください!」

 

 

 

「敵の数はどの程度なの?」

 

 

 

「正確な数は特定できませんが、これまでと同じなら魔法使い9人に剣士が20人以上。魔法使いは攻撃系、援護系、妨害系の魔法を扱います。」

 

 

 

「なんだその程度か。まぁ個体の強さにもよるだろうけどどうにもならない数じゃない。」

 

 

 

「いくらトロルやいるからと言って油断はできません!それにドレイクはこの時間帯は眠ってしまって言うことを聞きません!」

 

 

 

「私一人で十分だ。でもまぁ念の為戦闘員は集めといてよ。言っとくけど私死んだらこの村終わりだからね?」

 

 

 

「は、はい!」

 

 

 

ガヴァンは陽の光がない夜間こそ実力を発揮する。

 

150年の眠りによって鈍った体も少しづつだが感を取り戻している。

 

 

 

「見つけたぞ!ここが最後のエルフ族の集落だ!一匹も逃がすな!」

 

 

 

「エルフどもがよく使う光と風の魔法は後衛が魔法で妨害している!怪我をしても回復魔法で治せる!負傷を気にせず突き進め!」

 

 

 

進軍する武装した人間たち。

 

明らかに個人が用意したチームでは無く、大規模な組織が絡んでいることは間違いない。

 

そんな人間達の前に、一人の魔物が現れた。

 

 

 

「ごきげんよう人間ども諸君。今夜はどういったご要件かな?」

 

 

 

「誰だ貴様!」

 

 

 

「私は質問に質問で返すやつは嫌いなんだよ。でも私は心が広いからね。まずは君達の質問に答えようか。私はガヴァン。この大森林で今最もノリにノッてる魔物だ。さて、今度こそ君達が質問に答える番だね。」

 

 

 

「我々はこの森に住むエルフを奴隷として回収するためにやってきた!上層部からは邪魔をする魔物は殺しても良いと言われている!貴様も邪魔をするなら容赦はしない!」

 

 

 

「ふーん、じゃ敵だね。」

 

 

 

ガヴァンは人間達の前から姿を消した。

 

何の能力もない人間の戦士では、この暗闇の中ガヴァンが動いた事を認識することすら難しい。

 

そして気がついた時には、後衛にいた九人の魔法使いは首から上が無くなっていた。

 

 

 

「君達後ろを見てご覧よ。妨害魔法も回復魔法も攻撃魔法も、もう誰も使えなくなっちゃったね?」

 

 

 

「な、いつの間に!」

 

 

 

「さてと、君達は私の強さを知ってしまったわけだけどさぁ、私の存在が世間に露呈すると困るんだよねぇ。なにせ私150年前に死んだはずのヴァンパイアだからさ。死の淵から蘇ったヴァンパイアが人間を襲ったって言いふらされると面倒なわけよ。」

 

 

 

「な…何が言いたい?」

 

 

 

「簡単なことだよ。君たちにはここで死んでもらう。逃げだしたければどうぞご勝手に。あ、でも私が知りたい事教えてくれたら返答によっては生かしといてあげるかも。」

 

 

 

「…何が知りたい?」

 

 

 

「そうだねぇ、まずは君達がどういう組織なのか聞こうか。」

 

 

 

「俺たちはただの冒険者だ。王国に雇われただけなんだよ俺たちは。」

 

 

 

「王国?何王国だ。」

 

 

 

「ネサーム王国だ。」

 

 

 

「やっぱりそこか。150年前もあそこの王国は良くない噂が流れてたからな。で、君達はエルフ族を襲撃するの何回目?手慣れてるみたいだけど。」

 

 

 

「…今回が始めてた。」

 

 

 

ザクッ

 

返答を聞いた直後、ガヴァンはその場にいた人間の目玉に指を突き刺しえぐり出した。

 

 

 

「グァァァァァッ!!」

 

 

 

「明らかに嘘。質問から返答までの間が長いし、過去にエルフを襲ったチームと同じチーム編成。なんで嘘ついたの?質問次第では生かしてあげるって言ったよね?」

 

 

 

「そ、それは…」

 

 

 

「言わなくていい。どうせ嘘ついても分からないとかホントの事言ったら殺されるとか思ったんだろ。で、誘拐したエルフ達は何処で何してるの?」

 

 

 

「あいつらを連れ去った後のことは知らない。奴隷にされるか魔法の実験に使われるかだろうな。それ以外は知らない。」

 

 

 

「なるほど、それじゃ次の質問。王国に雇われたって言ってたけど具体的に誰が雇ったの?」

 

 

 

「そ、それは…」

 

 

 

カサカサッ

 

ガヴァンが人間達のリーダーと思われる人物と話をしている時、誰かが逃げ出そうと茂みの方へ走り出した。

 

するとガヴァンは足元に落ちていた小石を拾って投げつけた。

 

投げた石は逃げ出した男に命中し、男は目や鼻から血を吹き出して死んだ。

 

 

 

「言ったんじゃん。逃げられると情報が盛れるんだよ。君たち人間が逃げる魔物に追い打ちをかけるのと一緒。逃げても容赦なく殺すよ。」

 

 

 

「くっ……」

 

 

 

「雇い主の名前は言えないみたいだから次の質問なんだけどさ。冒険者って国から直接依頼を受けるのって許可されてるっけ?」

 

 

 

「…!!」

 

 

 

「私が知らないとでも思った?冒険者ギルドはどの国にも属さない孤立した組織。特定の国家に肩入れしないために国からの依頼は拒否している、あくまでも民間のための組織だよね?なんで王国から直接依頼されて引き受けてるの?」

 

 

 

「そ、それは…それは、その…。」

 

 

 

「君達はギルドのルールを破った冒険者?それとも冒険者のフリしてる別の組織?」

 

 

 

「あ、あぁ、あっ…。」

 

空気の流れが変わった。

ガヴァンの機嫌が悪くなってきている。

 

「最後の質問だ。貴様らは人間の敵では無いはずのエルフを襲い、連れ去り、逆らう物からは命を奪った。何故だ?何が目的でそんなことをした。」

 

 

 

「あ、うぁあ、あっあぁぁ……」

 

 

 

リーダーであろう人間の首を掴んでさらに問い質す。

 

 

 

「金が欲しくて殺したのか?連れ去ったエルフを自分の奴隷にでもしたかったのか?それとも本来勝てない相手を殺す事で愉悦にでも浸っていたか?答えてみろ人間。答えてみろよ!」

 

 

 

「に、人間を、こ、こ、殺して、みた、かった」

 

 

 

 

 

グシャ……

 

 

 

 

 

怒りが限界に達し、ガヴァンは男の首を握りつぶした。

 

 

 

「人間を殺してみたかった…か…。」

 

 

 

ガヴァンは何かを思い出した。

 

 

 

『なんで!?私は何もしていないのになんで殺そうとするの!?確かに人間の血を飲んだりしたけど必要以上に傷つけたりしてない!!なんで私を!?』

 

 

 

『理由なんてねぇよ。』

 

 

 

 

 

殺したいから殺した。

 

遠い昔の記憶、ガヴァンが始めて遭遇したヴァンパイアハンターが、ヴァンパイアを襲う理由として言い放った言葉だ。

 

 

 

「100年や200年では変わらないな。私も変わらず優しかった方が幸せだったのかもな。」

 

 

 

ガヴァンは自分自身も気が付かないうちにその場にいた人間たちを全員殺していた。

 

 

 

「ヴァンパイアは血を求めて人を殺す。私は血を飲まなくてもある程度栄養を補える。だがその分他のヴァンパイアより血に敏感に反応する。」

 

 

 

特に怒りで満たされている時に血に触れてしまうと興奮状態となり身体能力も格段に上がる。

これがガヴァンが持つ恐ろしいスキルの一つ「ブラッドレイジ」の効果だ。

 

 

 

「勢いに任せてしまったけど…命を奪うのはやり過ぎだったかもしれないな…。彼らにだって帰りを待つ家族や仲間がいたかもしれないのに…。」

 

 

 

ガヴァンは、自分以外の種族を見下す他のヴァンパイアとは違い、中途半端に他を尊重し優しくしてしまう性格だった。

出来れば何事も平和に解決したい。

しかし、怒りや悲しみを抑えられない性格や血を求めるヴァンパイアの本能がそれを許さないのだ。

死にかけの少女に手を差し伸べ、崩壊寸前の村を復興に導いたのもガヴァンの本質であり、邪悪な人間と判断すれば容赦なく命を奪うのもまたガヴァンの本質だった。

 

その後村に戻ったガヴァンは、仲間たちに必要以上の精神的負担を与えないために「帰ってもらった」とだけ伝えた。

誰一人逃がさなかったのでガヴァンの情報が伝わる事は無いが、誰も帰ってこないのだからどの道王国には怪しまれるだろう。

 

 

 

 

 

翌朝

 

冷静に自分の行いを振り返ったガヴァンは、事態が悪化したように思えてきた。

色々考えた既に、村に住むもの達を集めて演説のようなものを始めた。

 

 

「昨日の件で恐らく王国の人間は、遅かれ早かれ私達の存在に気付いて反撃してくると思う。昼は当然として、仮に夜来たとしても敵の数によっては私一人いたところでどうにもならないかもしれない。私の迂闊な行動のせいで事態は悪化したようにも思える。でも、この大森林に住む生き物達が力を合わせれば、決して乗り越えられない事態では無いはず。そこで私は考えた。この大森林に住む全ての生き物を集めて新たな組織を作ろうと。」

 

 

 

「質問いいっすか?」

 

 

 

「はい、そこのゴブリンくん質問どうぞ!」

 

 

 

「誰が行くんですか?」

 

 

 

「誰か一人に任せるのは非効率的と判断。東西南北四方向に絞って、四組のチームを形成しようと思ってる。」

 

 

 

「振り分けはどうするんですか?」

 

 

 

「エルフとゴブリンとオークとドレイクで各種族一人づつの計四人だ。出先で出会った魔物や亜人種族に我々の村の場所を伝える。保護が必要な場合は連れ帰ること。他に質問はあるか?」

 

 

 

「大丈夫です!」

 

 

 

「よし、ではこの件は決定として、実はもう一つ計画を立てている。この計画は私とアサヒがリーダーとして実行する予定だ。」

 

 

 

「え?アサヒちゃん大丈夫なんすか?」

 

 

 

「問題ない。休み始めてしばらく経っているし、そもそも異世界人は普通の人間より丈夫だ。当然本人の合意も得ている。」

 

 

 

「具体的に何をするんですか?」

 

 

 

「良い質問だねエルフさん。今回私とアサヒをリーダーとして編成する今回のチーム、目指す先はノウン魔王国だ。」

 

 

 

「ま、魔王国!?」

 

 

 

魔王国。

 

世界には何人かの魔王が存在する。

 

その魔王達が支配する国が魔王国と呼ばれ、主に人間系種族から恐れられている。

 

だが、実際のところは魔王国全てが他国と敵対的という訳ではなく、魔王国は全て危険という訳ではないらしい。

 

 

 

「ノウン魔王国は多種多様な魔物が共存する国であり、その支配者である魔王デムリル・ノウン・ハウザーは全魔王の中で最も穏やかで慈悲深いとも言われている。そしてこれは不確かな情報ではあるが、どうやら魔王デムリルの配下にはアサヒぐらいの女の子もいるらしい。これが事実だとしたら私もアサヒとの接し方を学べる良い機会だと思っている。そういう訳で、この大森林を代表してノウン魔王国を訪れ、今後について色々と考えてこようと思っている。」

 

 

 

「おぉぉぉ…」

 

 

 

いつにも増してリーダー感が出ているガヴァンの様子を見て、ゴブリンやエルフがザワついている。

 

 

 

「それでは早速チームを編成してくれ。私はアサヒを起こしてくる。」

 

 

 

目標は大森林の中心の新たな町を作ること。

その目標を達成するため、ガヴァン達はノウン魔王国を目指して旅立つのであった。




本編で語られない設定を語ろうのコーナー

作中に登場する人物や国の名前は深く考えずその場のノリで決めている。
例えば主人公ガヴァンはガブっと噛み付くヴァンパイアでガヴァン(作者の友人原案)だったり、アサヒは最近作者が見たアニメのキャラから持ってきたもの。
名付けの法則性は無いけど名前の由来色々想像してみると楽しいかも。
ものすごく暇な時に由来想像ゲームで遊んでみてください。
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