ホロメンとの高校生活 作:主義
『借り物競争に出場する生徒は入場ゲートに集まって下さい』というアナウンスが聞こえてきた。
「じゃあ、行ってきますよ」
「余も応援するから!」
「シオンも応援するし!あやめちゃんよりも大きな声で!!」
「なにぃ~~余の方が大きいもん!」
「シオンの方が大きいし!」
なぜか、二人は言い争いを始めてしまった。
「ちょこも応援しているから頑張ってきてね」
「はい、頑張ってきます!」
「スバルも応援しているっす!」
「…が、がんばって…ね」
「はい、頑張ってきます!」
そして僕は入場ゲートへと足を進めることにした。
入場ゲートに着くとそこには借り物競争に参加する人たちが集まっていた。体育祭実行委員らしい人たちが統率を取ろうとしているが、この人数となると少し難しい気がする。
僕は自分が並ぶべき場所に並んで腰を下ろす。地面だけど、どうせ汚れるんだし、いいよね。
「あれ…キミも参加するの?」
声のした方向に振り向くと…猫又さんが隣で体育座りをしていた。
「猫又さんも借り物競争ですか?」
「うん…走るのとか苦手だし…これが一番いいかなぁって」
「まあ、リレーに比べれば確かにまだいいかもしれませんね」
でも、お題に寄っては走らなくてはならないかもしれない。すぐに見つかるようなものでいいけど、そうじゃないとかなりキツイ。最悪、残り一人になる可能性だってお題に寄っては全然ありえるんですよね。
「キミも頑張ってね…」
「猫又さんも」
借り物競争は全部で六レース行われることになっている。そして僕は一番最後の六レース目。
「お願いします……簡単なお題にしてください!」
そう神に願わずにいられない。
『午後の部、始まります。まず午後最初の競技は借り物競争です。出場者は50m走ったところにある、テーブルの上の紙を取り、そこに書かれているお題のものや人を持ってきたり、呼んできたりして実行委員のところにまで来てください。判定は実行委員が下します』
アナウンスと当時に出場する選手は入場する。もちろん、僕も。
僕が緊張している間にどんどんと進んでいって、もう自分の番になってしまう。
そしてスターターピストルが音と同時に走り出して…テーブルの紙を一枚取ってから確認する。
「え…で、でも…これだったら…」
僕は紙の条件に合う人を急いで探す。一年生が多くいるとことにいって…探すと目立つということのあってすぐに目的の人物を見つけることが出来た。
「兎田さん!」
「…な、なにペコ…!」
「僕と一緒に来てくれませんか?」
「…え?」
「お願いします。兎田さんが必要なんです!」
「…いいぺこ」
「本当ですか!?」
「う、うん!」
そして僕は兎田さんの手を握って急いで実行委員のところに向かう。
「はい、どうですか?」
「お題を見せてください」
「それでは証拠を」
「証拠なんてあるぺこ?」
「正解です!」
そして僕はどうにか借り物競争を乗り越えることが出来た。兎田さんはかなり混乱しているみたいだけど。今回のお題は『ぺこと語尾に付けている人』だった。こんなお題の答えは兎田さん以外に思い付かなかった。というか兎田さんしかいないんじゃないだろうか。
「協力してくれてありがとね、兎田さん」
「せ、せんぱいの頼みなら…いいぺこ」
「そっか、本当にありがとね」
もし、兎田さんに嫌と言われていたらこのお題的にクリアはほぼ不可能だった。本当に兎田さんには感謝だ。後でなにかパフェとかでも奢ってあげよう。
「暇な日ってありますか?」
「ひ、ひまな…ひですぺこ…」
「はい。今回は兎田さんに助けてもらったので…何か奢りたいので」
「いいぺこ、だいじょうぶぺこ!!ぺこーらはせんぱいのちからになれただけで!」
「…で、でも…僕が兎田さんい奢りたいので…だめですか?」
「…本当にだいじょうぶぺこ…」
「僕に奢られるのは嫌ですか?」
「そ、そんなことないぺこ!で、でも……」
「じゃあ、あとで暇な日を連絡してください。兎田さんの予定に合わせるので」
やっぱり先輩だし……それに後輩に奢るという経験を今までしたことがないからちょっと憧れだったんですよね。
「あ、皆さん……ってなにか怒っていますか?」
「ううん。シオンはぜんぜん~おこってないよ!」
「スバルが…怒るわけないじゃん!」
「お、おこってないもん」
「余だって怒ってるわけじゃないし!」
「ちょこも怒ってないよ」
皆さん、そうは言っているが、顔が怒ってない時の顔じゃない。明らかに怒っている気がする。それから怒っている理由を聞いても五人はずっと「怒ってないよ」と言われてしまった。
残りはクラスリレーを残すだけになった。やっと長かった体育祭も終わりを迎えそう。アナウンスがなるまでグラウンドから少し離れたところで…体を休める。
急に頬に冷たいものがあてられて体がビクッとしてしまった。
「キミの反応、可愛いね」
「ま、まつり先輩」
「ちょっとお疲れムードかなぁと思って買ってきてあげたよ」
僕はまつり先輩からお水を受け取った。まつり先輩は普段、おちゃらけているように見えて、すごく人をよく見ている人なんですよね。
「ありがとうございます」
僕はペットボトルを開けて水を喉に流し込んだ。
「さすが先輩でしょ!まつりはとっても優しいからね!」
「そうですね、まつり先輩はとっても優しいですね」
「…体育祭は疲れた?」
「そうですね…ちょっと疲れてますけど、大丈夫です。僕の出る、競技はあと一つなので」
クラスリレーを走り終えれば僕の役目は全て終わる。そしたら燃え尽きたとしても問題ないですし。
「え~それじゃ、だめだよ。体育祭が終わったら打ち上げでしょ!」
本当にまつりさんは全然、疲れているように見えない。体力がバカなのかなぁと感じるけど、やっぱりまつり先輩はまつり先輩なんですね。
「さ、さすがに僕は遠慮したいですね」
「え~~キミが来たら盛り上げるのにぃ~」
「それに普通、打ち上げはクラス単位でやることじゃないんですか?」
「もちろん、クラスのもやるよ。他にも可愛い後輩たちとも打ち上げしたいじゃん!」
この人は本当に体育祭というものを全力で楽しんでいる気がする。
「で、でも、キミが疲れているんだったら別日にずらしてもいいけどね」
「別日にずらしてもやるんですね」
「もちろん!」
まつり先輩の元気さには絶対に敵わないなと改めて思わされた。でも、こんなに元気な人を近くで見ると自分も少し勇気づけられ滝がする。
「それじゃあ…最後まで頑張りましょう!」
そう意気込んだのと同時にアナウンスで『2年生のクラスリレーに出場する生徒は入場ゲートに集まってください』が流れてきた。
「まつり先輩、ありがとうございます!」
「…うん?まつりは何もしてないよ」
「まつり先輩はそうかもしれませんが、僕は元気づけられたのでお礼を言わせてください。本当にありがとうございます」
この人にはやっぱり…特殊な力があるのかも。
「あ、あと、これ買ってきてもらってまつり先輩に頼むのは悪いんですが、これを持っていてくれませんか?」
僕はまつり先輩からもらったお水をまつり先輩に渡したい。
「いいよ」
「ありがとうございます」
そしして僕は入場ゲートに向かった。
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「って…これ…後輩くんが口付けた水だよね……ま、まつり…はどうすれば!」
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そんな状態を知るよりもなく、僕は入場ゲートに着いた。さすがに二学年が全員出場するだけあって入場ゲートはかなり混雑している。満員電車と言っても良いぐらいの混雑さ。下手に動けば中に入って押しつぶされるだけ。
「どこに並べばいいのかなぁ…」
そんなことを呟くと同時に肩を誰かに叩かれた気がして振り返るとそこには…この人混みで今にも泣きだしそうな、湊さんの姿があった。
「ど、どうしよう…」
「大丈夫です。湊さんは僕の手を握っていてください」
「う、うん…」
ここからどうにか脱出して湊さんをこの人混みから救い出さないと。
それからかなり大変だったが…どうにか人混みから抜け出すことに成功した。さすがにこの状況に実行委員が大きな声で『整列してください』と言っていた。するとそれぞれ自分が並ぶ順番のところにいき、やっと統率が取れた気がする。
「それにしてもすごかったですね」
「う、うん」
「湊さんに怪我はないですか?」
「…だ、だいじょうぶ…。きみは?」
「僕は大丈夫ですよ。湊さんに怪我がなかったんなら良かったです」
「…………///」
なぜか、湊さんの顔はどんどん赤く染まっていった。
「だ、だいじょうぶですか?」
「う、うん…だいじょうぶ……///」
「そうですか?それならいいんですが、なにかあったら言ってくださいね」
「…うん」
それから最後のクラスリレーが始まり…終えた。転ばずに終えられたのは本当に良かったです。50mという短い距離なだけにそこまで先頭からも離れることなく、次の人にバトンを繋げた気がする。
最終的に…紅組は白組を下して勝ったのだった。
感想があれば