ホロメンとの高校生活 作:主義
カフェでのバイトはそれなりに順調。欲しい物を買うにしても貯金をするにしても十分なお金が支払われている。だから今まではカフェのバイトだけで良かったんだけど、ちょっと大きなものが欲しくなってしまってどうしてもカフェのバイトだけは足りないとなってしまった。
それから色々と副業で出来そうなバイトを探していた。そして結果的に恋人代行を始めたのだ。
最初はどうなるかなぁと思っていた。でも、予想以上に順調。お客さんの望むようなことをしてあげればしっかりと満足してくれる。そして僕の銀行口座の貯金残高も増える。
今日もお客さんと待ち合わせをしている。その人の名前は『彗星』さん。僕は急いで待ち合わせ場所に向かっていき、そこには待ち合わせの人物らしきの人がいる。
でも、その人物は僕のよく知っている人。この人なわけないと信じたいけど、こんな人っ子一人もいないようなところに来る人は約束の相手以外はあり得ないと個人的には思うから話しかけてみる。
「あ、あの…」
「…あ、後輩くん!待ったよ」
「す、すいません……って…もしかしてこの『彗星』さんって星街先輩だったりしますか?」
「もちろん!!」
星街先輩は満面の笑みを浮かべていて、僕はマジかぁという顔をしていた。
「星街先輩が…恋愛代行を使っているなんて…」
「ううん、そんなの普段は使わないよ。でも、キミがやり始めたって聞いたからやったんだよ」
いや、未成年ができるわけないんですけどね…。星街先輩がどんな手を使ったのかは分からないですね。
「なんで…そんなことを」
「え、だって、後輩くんが彼氏になってくれるんでしょ?」
「そ、それはそうですけど、星街先輩ならもっとイケメンな方がいると…」
「すいちゃんは後輩くんがいいの。他の誰でもなくて、後輩くんがいい!」
「それに今日は私がエスコートしてあげるからさ」
「あ、はい」
普通、そういうのって反対じゃないですか。
そしてその日を皮切りに星街先輩は一週間に一度ぐらいの頻度で恋人代行を使うようになった。今日に関しては会社から「ここに言ってくれ」とだけメッセージに来ていた。普通はこんなことはない。あくまで恋人代行をしている側にかなりの自由があってやりたければやってもいいし、予定が入れば断ったとしても問題ない。でも、それでお客さんを失う可能性もありますけど。
だから会社からメッセージが送られてくるなんてほとんどないんですよね。
そんなことを考えながら歩いていると、約束の場所に着いた。でも、そこには知っている人がいた。
「え、トワさん?」
「あ、先輩!」
「常闇さんはどこかお出かけですか?」
「うん。かなたんとお買い物に行ってくるんですが…先輩もどうですか!?」
「すいません。ちょっと用があって」
「そうですよね。先輩はいつも忙しいですし」
声を掛けてしまったけど、これからのことを考えていると声を掛けるべきではなかったかもしれない。だってこれからたぶん、お客さんと会うから。運営会社がなんでこんなことを送ってきたのかは分からないですが、たぶんこの場所にお客さんが来るんだと思いますし。
そんなことを思っていると急に後ろから誰かに抱き着かれた。さすがに急なこと過ぎて困惑が頭の中を埋め尽くしている。
僕は深呼吸をしてから振り返っていく。
「だれ………って大空さんですか」
「スバルっす!」
変な人に抱き着かれたんだと強張っていた体の力が抜けていく。
「驚かせないでくださいよ」
「スバルは驚かせていないっすよ。ただ、キミがいたから抱き着いただけっす!」
なにその当たり前な感じで大空さんは言っているのだろうか。確かに女子同士であればそういうことが当たり前なのかもしれないけど、さすがに異性に抱き着くのは当たり前じゃないですよ。
「大空さんは常闇さんと同じで買い物ですか?」
「ううん。スバルはキミに会いに来たの!」
「ぼくですか?」
「うん!!」
大空さんと何か約束をした覚えはないんですが。それにこれからお客さんと会うからもし、無意識に約束をしていたんだとしたら謝らなくてはならないですね。
「すいません、これからちょっと用がありまして」
「うん!その用がスバルたちのことでしょ?」
「え…どういう…」
僕が困惑しているのと同じように常闇さんも大空さんから抱き着いてきたところ辺りから状況が理解できていないようで唖然としてしまっている。
すると今度は兎田さんと不知火さんがやってきた。
「お二人まで…」
「来たぺこ!!あんなこと言われちゃったら行かないわけにはいかないぺこですよ!」
「まぁ…あたしも先輩のことはかなり気に入ってるし」
なんか二人は話しているけど、僕の頭の中は困惑しかない。だってこのままだと僕が『恋人代行』をやっていることがバレるかもしれない。それだけはどうにかしても避けなければならない。
「スバル先輩も来ていたぺこか!」
「スバルとしてはぺこらが来たことが意外っすよ。あの学校かゲームぐらいしかしないぺこらが休みの日に外に出るなんて…」
「それはぺこーらに対して喧嘩売っているってことでいいぺこか!?」
「スバルはそんなつもりはないっすよ。ただ…事実を言っただけ」
「それが煽ってるって言ってるぺこ!」
なんか予想以上に大空さんと兎田さんの相性はあんまり良くないようだ。不知火さんはそんな二人の様子を辞すかに眺めているという感じ。
「お二人とも、落ち着いて下さい」
「スバルは煽ってないですぅ~~」
「それが煽ってる!!」
どうやら二人はお互いにお互いしか眼中にないらしくて僕の声は届いていない。でも、不知火さんの感じを見ると別に珍しい感じじゃなくていつもの感じみたいですし、止めなくていいんですかね。
「それにしても不知火さんはなんでここに?」
「あ、そのことならすいちゃんい呼ばれたんです」
「すいちゃん…って星街先輩のことですか?」
「はい、先輩なんですけど、フランクな感じでいいって言われたので」
女子同士ならそういうことも先輩、後輩関係なく出来るもんなのかなぁ。僕は星街先輩のことを『すいちゃん』なんて呼べないですし。
「そうなんですか。それで星街先輩に呼ばれたんですか?」
「はい。一日暇で先輩と遊びたかったらそこに行ってと連絡が来たんです」
不知火さんは僕に星街先輩から来たというメッセージを見せてくれた。そこには不知火さんが言うようにこの場所と僕のことについて書かれていた。
だとしたら今日、僕がここに呼び出したのは星街先輩。でも、それだったら普通に僕への直通のメッセージがあるはずですし。態々、会社を通してくるなんて。
「本当ですね。星街先輩は一体なにを考えているんだろう」
そんなことを考えていると……僕は常闇さんの方に視線を向けるとどうやら天音さんが来たらしく、二人で楽しそうに話している。あの感じだとそう時間が経たないうちにここを離れてくれる。
そんな期待通り、常闇さんと天音さんはどこかへと去っていった。
星街先輩の考えはいくら考えても分からない。すると僕の携帯に誰からかメッセージが届いた。確認をしてみると…星街先輩からのメッセージだった。
開くとそこには『後ろにいるよ』とかいてあった。その文章を見た時に背筋がゾクッとしてしまったが、振り返らないわけにいかない。僕は少しずつ振り返っていくと青い髪が見えてくる。
完全に振り返るとそこには星街先輩が立っていた。
「やっほ~~」
「星街先輩…」
「ちょっとびっくりした!?」
「あんまりこういうことは止めて欲しいですね。僕はあんまりホラーは得意ではないので」
「じゃあ、またするね!」
「星街先輩ってSですね」
「うん!キミのびっくりする顔が見たいもん!」
星街先輩は満面の笑みでこちらに笑いかけていた。
兎田さんや不知火さん、大空さんも近づいて来て僕と星街先輩を含めて五人。
「それでまず僕を呼びだしたのは星街先輩なんですか?」
「うん!もちろん!」
「それはなぜですか?」
「だって皆にキミが『恋人代行』をしていることを知って欲しくて!」
その瞬間はとても静かで流してくれるのかと思ったけど、数秒後には三人の驚きの声が聞こえて来る。
「え、恋人代行なんてしてたの!?」
「知らなかったぺこ」
「やっぱり先輩はすごいです!」
なぜか、不知火さんだけは憧れの目で見て来るけど憧れるようなことじゃないですよ。それに高校生のバイトの中でもかなりグレー。うちの運営に関してはかなり年齢確認に関してもガバガバなこともあって、やれているけどアウト。そしてこれを学校側にバラされでもしたら確実に僕は退学に追い込まれることになる。どうしてもそれだけは避けなくてはならない。
「今日は後輩くんのことを一日買ったからさ。皆で後輩くんと一緒にあそぶぞ~」
星街先輩は片手を天高く突き上げると、残りの三人も同じように真似をする。
僕はまだ混乱しているんだけど、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに星街先輩や大空さんは僕の手を引いてどこかに連れてこうとしている。ここで何をしても無駄なので…口止めだけしっかりしておこうと心に決めた。
その日は本当に丸一日、遊んだ。僕としては色々と心配なことがあって楽しむどころではなかったけど、他の四人はとても楽しんでくれていたみたいで良かった。
あとで銀行口座を見たら…すごいことになっていたのはまた別のお話。