この素晴らしい世界に漂流を   作:想いの力のその先へ

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第十話 クルセイダーとカズマPT

 めぐみんをどうやってPTに引き込もうか、と打算していたカズマ。だが、そこに聞き覚えのない声がかけられる。

 

「すまない! まだPT募集はしているだろうか?」

「「……は?」」

 

 まさかの問いかけ。それを聞いた圭はこの状況で加入希望者が来るとは思わず呆然とし、カズマは悪名が流れている筈の自身のPTへ新たな加入希望者が現れたことで、内心にんまり、と悪どい笑みを浮かべる。

 それとともに、圭はこの声に聞き覚えがあった。少し前、気絶したクリスを冒険者ギルドへ連れてきた時、彼女のことを心配していた女性騎士。

 

「…………もしかして。ダグネス、さん……?」

「あなたは、確か……。クリスを連れてきた、シドウケイ、だったか?」

 

 きりり、と凛々しい姿をみせるダグネス。その姿を見たカズマは頬を赤らめた。どうやら生け贄が来た、とほくそ笑んでいたことでダグネスの顔をよく見ていなかったらしい。

 圭からすると同性であることと、クリスの時のやり取りで彼女が変人らしい、ということは理解していたが、それを知らないカズマは凛々しく頼りに見えるダグネスに見惚れているようだ。

 そんなカズマの内心を見透かした圭。声をかけるかどうか悩むものの、そのまま放置することにした。だって、そうすれば面白いことになる。自身の直感がそう告げていたから。

 

 

 

 

 

 だが、下手に放置しても話が進まないと考えたのか、圭はダグネスになぜPT募集に応募しようと思ったのか問いかける。

 

「でもダグネスさん。あなた、多分冒険者としてもベテランだよね?」

「ん? あぁ、これでも職業はナイトの上級職、クルセイダー。それなりに役立つとは思うぞ」

「……なんで、そんなダグネスさんがこのPTへ? 加入してないわたしが言うのはちょっと問題かもだけど、完全な新人PTだよ? ベテランさんなら、それこそ他PTとか……。それにクリスさんはどうするの?」

 

 圭の問いかけが的外れだったのか、ダグネスはなんのこと、と言わんばかりに首をかしげる。その仕草を見て、圭もまた、なにか間違ったことを言っただろうか。と己の発言を反芻する。

 

(……とくにおかしな点はなかった、よね?)

 

 圭の仕草で彼女が何を考えているのか伝わったのか、やんわり、と淡く微笑みながら勘違いを訂正する。

 

「あぁ、そういうことか。わたしとクリスは友人――親友と言っていい間柄だが、あくまでそれだけだ。お互いにPTを組んでるわけではないよ」

「そうなの……?」

 

 二人はPTを組んでいない。ということが予想外だったこともあって、目をぱちぱち、と瞬かせながら驚く圭。

 だが、それなら問題ないのかな、とも思う。なにせ、圭自身はカズマのような転生者でもなく、めぐみんのような現地人でもない異邦人。いずれ、何らかの方法でもとの世界へと帰らなければならない。なにしろもとの世界には残してきた親友や戦友、それに探さなければいけない大事な人もいる。

 だから、こういうと冷たい言い方となるが、いつまでもカズマたちの助けをしているわけにもいかなかった。

 その役割をベテラン冒険者のダグネス、そして彼女の親友にして神の顕現体たるエリス(クリス)へ引き継げる。となれば、圭も安心できる。

 

 しかし、そこではたと気づく。そういえばこの人、あの時変な発言してなかった? と……。

 だが、そのことを確認する前にカズマがダグネスへ話しかけた。

 

「もちろん! まだ募集してますよ。それに将来有望なアークウィザードも加入してくれますから!」

「んな、ちょ……」

 

 まだ返事してない、という抗議の視線を向けるめぐみん。それを無視するカズマ。なし崩し的にめぐみんがカズマのPTへ加入したことにしたいようだ。

 

「その割には反応がおかしいような……?」

 

 先ほどまで静かにやり取りを見ていたクリスがポツリ、と呟いた。だが、それよりもクリスには疑問に思ったことがあったようで――。

 

「それよりダグネス。カズマくんのPTへ参加するって本当? いままでどこかのPTに入ろう、なんて考えたことなかったじゃない。なんでまた急に……」

「うん、それなんだが……」

 

 流し目でカズマを見るダグネス。彼女に視線を注がれたカズマは少し恥ずかしそうに身動ぎする。

 

「わたしの直感が告げるのだ。彼ならわたしを上手く使えるだろう、と」

「上手く使えるだろう、って。ダグネス……」

 

 ダグネスの発言を聞いてクリスは神妙な顔になる。それでダグネスは変な勘違いをされている、と感じて慌てて付け加える。

 

「べ、別にそういう意味深なことじゃないぞ。ただ、わたしはクルセイダーだからな。彼らのもとでなら活躍できる、と思ったまでだ」

「あぁ、そういう……」

 

 その一言で納得したのか、クリスはどこか呆れた様子で見る。見られた本人は、ほんのりと頬を紅潮させ、ぶるり、と身体を奮わせていた。

 

「あー、カズマくん? 彼女は一応、クルセイダーだからね」

「おい、クリス! 一応、とはなんだ。一応とは」

「こんなんでも盾役()()()()優秀だよ」

 

 ダグネスの抗議を無視したクリス。そのやり取りを見てカズマも、おや、とどこかおかしい部分を感じていた。が、少なくともクリスの人柄は信用できると感じていたし、彼女が売り込む以上、このダグネスという女性騎士はあの駄女神(アクア)と違って大丈夫だろう、と思った。……思ってしまった。本質的にはアクアとは別ベクトルに厄介な逸材だということに気付かぬまま。

 

「是非、よろしくお願いします!」

 

 がっしり、とダグネスの両手を握り、嬉しそうに快諾したカズマ。

 ダグネスもどこかホッとした様子を見せ――。

 

「改めて、ダグネス。クルセイダーだ。攻撃を受けとめることに関しては一切を任せてくれ。必ず役に立つぞ」

 

 凛とした、これぞ騎士と言わんばかりの対応をする。

 その裏でこそこそ、と圭はクリスに近づく。

 

「ねぇ、もしかしてダグネスさんって……」

 

 圭の言葉の意図を察したクリスは苦笑いを浮かべる。

 

「うん、あの娘。わるい娘じゃないんだけど……。ちょっと、自分の欲望。というか性癖に忠実で……」

 

 そこまで聞いた圭はやっぱり、とため息をつきそうになった。どうやら、クリスが気絶していた際、聞こえた彼女の呟きは聞き間違いではなかったようだ。

 どうやらあの女性騎士、ダグネスは生粋の被虐趣味。早い話がドMだということを理解して。そして、それを嬉々として迎え入れたカズマの今後の苦労を思い、圭は心の中で合掌するのだった。

 ……なお、それでもカズマにあえてそのことを告げる。という選択肢は端からなかったのは、彼女の直感が止めるべきではない、と囁いたからでもあったが……。

 

 とにもかくにも、これによりカズマはアークプリーストのアクアに加え、アークウィザードのめぐみん、クルセイダーのダグネス。という人材を加えることに成功。

 自身の今後、約束された成功に想いを馳せる。その妄想が露と消えるのは、そう遠い話ではなかった……。

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