この素晴らしい世界に漂流を   作:想いの力のその先へ

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第十一話 予感

「ま、まぁ。なにはともあれ、めぐみんさんとダグネスさんはカズマくんのPTに参加する。ってことで良いのかな?」

 

 圭の確認にダグネスはぶんぶん、と首を力強く縦に振る。しかし、もう一人。肝心のめぐみんはどこか決心がつかないようで沈黙を保っていた。

 

「どうしたの、めぐみんさん?」

「いえ、わたしは――」

 

 未だ迷いがある。それを目敏く感じ取ったカズマは彼女の後押しをするため、口を開いた。

 

「なぁ、めぐみん……」

「はい? なんでしょうか」

「もし、お前が本当にこのPTに入りたくない、ってんなら俺は無理強いできない」

「はぁ……?」

 

 先ほどまでとの言動の違いに訝しがるめぐみん。しかし、そのことはカズマも織り込み済み。その上であえて伝えていた。全てはこの後の言葉の布石とするために。

 

「ダグネスも良く聞いて欲しい。俺とアクア、アークプリーストのあいつは、最終的な目標として魔王討伐を掲げている」

「…………!」

「なんと……」

 

 カズマが神妙な顔をして話した目的に驚くふたり。むろん、これはふたりを萎縮させよう、などと考えたわけではない。むしろ逆、高揚させるために話したのだ。

 なにしろ、カズマが見立てたところダグネスは女騎士として矜持を掲げているのは良くわかった。そんな彼女が魔王討伐、という目標を聞いて戦意を萎えさせるなどというのは考えづらい。それどころか民草のため、と奮起するだろう。

 そしてめぐみんの方はもっと簡単だ。種族通して中二病な紅魔族が魔王討伐などという琴線に触れることを言われ、及び腰になる筈がない。それどころか――。

 

「なるほど、なるほど! それで紅魔族随一の爆裂魔法の使い手。このわたしの力を借りたいと!」

 

 ――計画通り。

 

 表面こそ神妙な顔をしているが、内面では見事に釣れた、と新世界の神ばりにあくどい顔を笑みを見せて高笑いしていた。

 無論、そんなことはおくびにも出さず畳み掛けるように頭を下げる。

 

「もちろん、俺たちだけで成し遂げられるなんて考えちゃいない。だからこそ、ふたりの力を借りたいんだ」

「……そこまで崇高な使命を抱いていたとは。私の目に狂いはなかった。このダグネス、サトウカズマどのの力となろう!」

 

 高らかと宣言したダグネス。心の中でガッツポーズをしたカズマ。ふたりの視線がめぐみんへと注がれる。

 彼女もまた、ダグネスに負けじとガタン、と音を立てて椅子から立ち上がる。そして、ばさりとマントをひるがえした。

 

「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、いつの日か魔王を討ち取りし者! 我が爆裂魔法の力、あなたに預けましょう!」

 

 ――成った!

 

 カズマの脳内では拍手喝采の雨あられ。その中心ではなにやら軍師服を身にまとったカズマが羽扇を仰ぎながら、ほほほ、と軽やかに笑っていた。

 

 そんな内心を察してか、圭はふたりに悟られぬようにしながらジト目をカズマへ向けていた。

 なにしろ、圭自身悪魔召喚師。デビルサマナーとして巡ヶ丘のパンデミック以降も様々な戦場を渡り歩いていた。その中にはもちろん、交渉などといった事態もあったわけで。その彼女からすると、今回の交渉。少々お粗末に過ぎた。

 もし、ダグネスの交渉術がもう少し高ければ、逆にカズマが丸め込められていたかもしれない。と、考えてしまう程度には。そう考えて、圭はため息をつく。

 そもそもカズマは学生だったのだ。むしろ、良く健闘したと言える。自身が師匠、蘆屋晴明に弟子入りする前であればここまでの交渉はできなかっただろう、と思い直した。

 

 それに、めぐみんは一発屋。ダグネスも少々灰汁が強い、という問題はあるが現状カズマたちからすれば頼りになる存在なのは間違いない。

 問題はその灰汁の強いふたりをカズマが御せるか、だ。だが、それも問題ないだろうと思っている。

 確かにカズマは仲間であるアクアを平然と囮にする非道な部分がある。が、それはそれとして機転が利き、突拍子もない、正道ではない搦め手を打てるだけの知力がある。そういう風に見てとれた。

 そういった人材は、得てしてここという場面でとんでもない爆発力を発揮する。

 それにカズマは戦闘者ではない、それこそが彼の鬼札となるかもしれない。なにせ、戦闘者ではない、ということは定石では図れない行動をとる可能性もある。それが型破りとなるか、形無しとなるかはカズマのセンス次第。それゆえに期待してしまうのだ。

 

 ――かつて圭たちが経験したランダル・コーポレーションにおける最終決戦。メシア教の切り札であった神霊、それを仲間たちと撃破したのと似たようなことをカズマが再現してくれるのではないか、と。

 あの時は、圭の師匠である蘆屋晴明。そして増援として来てくれた今代の葛葉ライドウの力があってこその勝利だった。

 その役割をこの世界では佐藤和真という少年が担ってくれるのではないか、圭はそんな予感がしている。そして、デビルサマナーというオカルトに属している者たちからすると、そんな勘こそが重要だった。

 

 なんと言っても師匠である蘆屋晴明、そして圭自身もそんな勘に幾度となく命を救われたのだから。

 そのような考えが浮かび、思わず圭はふふ、と笑いがもれる。

 

「……晴明さんも、きっとこんな気持ちだったのかな?」

「……どうしたのですか、ケイ?」

 

 突然笑いだした圭に、めぐみんは不思議そうにしている。圭は、そんな彼女へなんでもない、と答えた。

 

「ちょっと、昔のことを思い出して、ね? ……でも、これで安心かな?」

 

 そう言って圭は、ぐぐ、と座ったまま背伸びをする。そして、座りっぱなしで固まった身体をぽきぽき、と骨を鳴らしながらほぐす。

 身体がほぐれた圭はすく、と席から立ち上がる。

 

「それじゃ、わたしはこれでお暇しようかな」

「……ええっ!」

 

 圭の言葉に驚くめぐみん。彼女からすると圭もまたカズマのPTに参加、もしくは既に加わっている、と思っていたからだ。

 それがふたを開けてみれば参加するわけでもなく、この場を去るという。それで驚くな、というのが無理であった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! これはケイも参加する流れでは?!」

 

 めぐみんのツッコミにこくこく、と頷いているカズマとダグネス。しかし、この場でクリスだけは、やっぱりこうなったかぁ、と額をおさえていた。

 

「……えっ? あぁ、そういう。うん、とね。わたしは参加しないよ? 加わっちゃうと皆のためにならないし、ね」

「ど、どうしてですかっ!」

 

 捉えようによっては、自身たちが足手まといになる。ともとれる発言に憤慨するめぐみん。しかし、同時にそれが事実だった。

 なぜなら、カズマたちは知らないことでなおかつ厳密にはこの世界とは(ことわり)が違うが、現状、圭のLvを数値化すると43。一見すると中途半端な数値に見えるかもしれない。しかし、それは誤りだ。

 なにせ、平和な世の中――もっとも、直近で神話規模の大戦が起きた巡ヶ丘を含めると例外的ではある――では10Lvで手練れ。20を越えたら超エリートと呼べる世界での数値だ。それこそ、圭が本気を出せば1つや2つの軍事基地。この世界で言えば城塞都市くらいならやろうと思えば単騎で制圧できる。それほどの力を持つのだ。明らかに現状のカズマPTには過剰戦力だった。

 

 それに圭はカズマのように転生者ではなく異邦人。いずれこの世界からもとの世界。悪魔が跋扈し、神が顕現する悍ましくも麗しき故郷へと帰らなければならない。

 その時に圭がいなければなにもできない、では困るのだ。もちろん、圭も帰るまでの間、可能な限り手伝おうとは考えている。

 なにしろ、圭がこの世界へ紛れ込んだことで縁が()()()()()()()

 今後も少なからず来訪者が、望まれざる者――悪魔たちが降臨する可能性が生まれてしまった。無論、そんな状況になれば悪魔召喚師たる圭は微力を尽くすつもりだ。

 だが、同時にどうしてももとの世界でやらなければならないことがある。現在、行方不明となっている恩師にして想い人、蘆屋晴明の捜索だ。

 

 だから、この世界のみに注力することはできない。

 ……もしも、もしもだが。晴明が見つかり、もとの世界が安定した状態で、まだこの世界が危険であるのなら、そのときは改めて手伝うため仲間たち、学園生活部の皆と訪れて良いかもしれない。

 そんな皮算用を叩きながら。

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