この素晴らしい世界に漂流を   作:想いの力のその先へ

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第八話 爆裂魔法使いめぐみん

 めぐみん、と名乗った少女を胡乱げに見つめるカズマ。

 

「めぐみん、って……。冷やかしに来たのか?」

「ちがわい! おう、わたしの名前に文句があるのか、話を聞こうじゃないか!」

 

 対するめぐみんも自身の名前がバカにされたと思い喧嘩腰になる。

 そんな二人を尻目にしゅわしゅわを楽しんでいたアクアは、改めてめぐみんの容姿をみて、得心したように声をあげる。

 

「あぁ、あなた。その紅い目、紅魔族なのね。なら、その名前もアークウィザードなのも納得だわ」

「紅魔族?」

 

 アクアが言った紅魔族という名称を聞いて首をかしげる圭。

 そんな圭をよそにめぐみんは自身満々な様子で胸を張る。

 

「そうです! 我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん! 我が必殺の魔法は山を崩し、地をも蹂躙します! ほらほら、いまなら優秀な魔法使いが加入するんですよ? お買い得じゃないですか?」

 

 めぐみんの媚びるような態度に胡散臭いものを感じるカズマ。彼は視線でアクアに紅魔族とはなにか、を説明するように促す。

 

「えぇっと、カズマやケイに分かりやすく説明すると、紅魔族という種族はそれぞれ高い知性と魔力をもって種族自体が高い魔法使いとしての適正を持つわ。もちろん個体差があるからどうしても苦手な子もいたりするけど。あと特徴として紅い目と、そして……。……それぞれが変な名前を持ってるわ」

「あなたもわたしの名をバカにしますか!」

 

 プリプリと怒るめぐみん。そんな彼女にアクアは、事実なんだからしょうがないじゃない、とぞんざいな反応を見せる。

 それを尻目にカズマは別に彼女がこちらをからかっているわけではないんだな。と、納得していた。

 カズマの反応をよそにめぐみんはプリプリと文句を言っている。

 

「人の名前を変だと言ってますが、わたしからすれば街の人たちのほうが変な名前なんですよ!」

 

 彼女の物言いに少し好奇心を刺激された圭は問いかける。

 

「ちなみに、めぐみんさんのお父さんとお母さんのお名前は?」

「母はゆいゆい、父はひょいざぶろー」

「「「………………」」」

 

 予想よりもひどい名前に沈黙する三人。

 それを名前が聞こえなかった、と判断しためぐみんは――。

 

 ――ひょいざぶろー! ろー! ぉー!

 

 ギルド内に虚しくめぐみんの父親の名前が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、この、なんとも形容しがたい空気を何とかするためカズマはめぐみんに話しかける。

 

「ところで、その眼帯は? 怪我でもしてるのか? それならこいつが治療できるけど……」

 

 アクアをこいつ呼ばわりしながら心配するカズマ。それに対してめぐみんは心配されたことにどこか照れ臭そうにしながら。

 

「いえ、これは……。我が魔力を抑えるマジックアイテムです。そうしなければ我が膨大な魔力は暴走しかねませんから」

 

 めぐみんの説明を聞いたカズマは感心した様子で頷く。

 

「へぇ……。封印みたいなもんか。凄いな」

「まぁ、嘘ですが。ぶっちゃけただのファッションアイテムです。……あっ、あっ、やめ。ひ、引っ張ってはいけません!」

 

 めぐみんのしれっとした様子にイラッとしたカズマはめぐみんの眼帯を引っ張る。そして――。

 

「アイッタァァァァァァ、目ガァ――――!!」

 

 二人の漫才を見て苦笑する圭。彼らの気の抜けたやり取りを見てかつての仲間たちを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前や、おふざけのことはともかくとして、魔法使いとしての実力は本物なのだろう、という事でカズマたち。そしてついでに興味本意で圭もまためぐみんの実力を見せてもらうため、いつもの平原へと移動していた。

 

「それでアクア? 爆裂魔法ってのは、本当に凄い魔法なんだよな?」

「ええ、そうよ。爆裂魔法は習得が難しいと言われる爆発系魔法の最上位。まさしく最強クラスの魔法よ?」

「おい、なんでこっちに振らないんですか」

 

 二人のやり取りに、なぜ専門家のこちらに話を振らない。と、抗議の声をあげるめぐみん。

 そんな彼女に圭は、まぁまぁ、と落ち着かせようとしている。

 

「どうしてもめぐみんさんに聞くと、主観的な情報になっちゃうし。だからカズマくんもアクアさんに聞いたんだよ、多分……」

「多分、ってなんですか。多分って……」

 

 じと目で圭をみていためぐみん。そしてはぁ、とため息をつくと。

 

「爆裂魔法は最強魔法ゆえ準備にも時間がかかります。その間、カエルの足止めは任せます!」

 

 そして詠唱の準備に入るめぐみん。そんな彼女にカズマは指示を出す。

 

「じゃあ、準備が完了したら一番奥のカエルを狙ってくれ! アクア、俺たちは手前のカエルを仕留めるぞ! 今度こそリベンジだ。お前も元なんたらなんだから、少しは頼むぞ!」

「なんたらってなによ! なんたらって! ちゃんとした女神ですぅ!」

 

 アクアとカズマはぎゃいぎゃい騒ぎながらジャイアントトードへ駆けていく。……アクアだけが。

 そんな二人、主にアクアを大丈夫かなぁ、と見つめる圭。

 しかし、ある意味圭の予想通りアクアはジャイアントトードにぱくり、と食べられてしまう。

 

「はは……。やっぱり……」

 

 こめかみをぴくぴく、と痙攣させ呆れる圭。そして彼女はカズマを見て――。

 

「あの、カズマくん? アクアさん助けなくて良いの?」

 

 なぜかアクアを助けようともしないカズマに問いかける。

 しかしカズマは――。

 

「ああ、大丈夫、大丈夫。あいつがいま身を挺してカエルの足止めをしてくれてるだけだから」

 

 いやぁ、さすが女神さま。というカズマの棒読みの言葉を聞いて戦慄する。すなわち、こいつあっさりと仲間を見捨てやがった。という気持ちで。

 カズマに対して戦慄していた圭だが、横から。めぐみんからすさまじき力の波動を感じる。

 驚き、彼女を見ると。そこには彼女を中心として魔法陣が描かれ――。

 

「これが、これこそが! 我が至高にして究極の、人間が行える最強の一撃!」

 

 めぐみんの魔力が杖に集まる。そして増幅し、凝縮される。それはまさしく破壊的にして、破滅的な暴力(ちから)

 

「――エクスプロージョン!」

 

 平原の空に一筋の光が奔る。空を穿つ光、それは目標であるジャイアントトードの上空でふたたび魔法陣を描き出し、光が、空が堕ちる。

 その破滅的な力は、カエルごと平原を蹂躙。ビリビリ、と大気を震わせるほどの轟音とともに爆炎が顕現する。

 あれほどの力であればカエルがどうなったか、などと考えるまでもない。

 圭は先ほどのカズマのときとは別の意味で戦慄する。

 

「……なんて、威力。トリスアギオン。いえ、メギドフレイムクラスの魔法じゃない……」

 

 彼女が戦慄するのも無理はない。彼女が知る魔法、魔界魔法の中で火炎系、アギ系は初級のアギ、中級のアギラオ、そして上級のアギダインと威力が上がっていく。

 そして彼女が先ほど例えに出したトリスアギオン。それは上級のアギダインを越える魔法であり、メギドフレイムに至ってはそのさらに上。行使できる存在も魔王-アモンだけという、まさしく究極の火炎魔法だ。

 圭からすると爆裂魔法は、その究極魔法と同程度の威力があるように見えた。

 むろん、圭は魔法系統に関して門外漢であり、詳しく分かるわけではない。それでも、そう思わせるだけのものがある。それ自体が驚異的といえる。しかも、その力を行使するのが自身よりも年下。中学生くらいに見える少女なのだから。

 

 すさまじき力を持った少女を畏敬の念をもって見る。が、しかし――。

 

「あれ……?」

 

 なぜか倒れている。思わず、どういうこと? と、悩む。

 そこにカズマの声が聞こえてきた。

 

「めぐみん、危ない! カエルがでてくるぞ、そこから離れるん――」

 

 そこでカズマの声も止まる。めぐみんが倒れていることに気付いたのだ。

 そして、今度はめぐみんの声が聞こえる。少なくとも気絶はしていないようだ。

 

「……ふ。我が奥義、爆裂魔法はその威力ゆえ消費魔力も膨大。具体的にいうと魔力がすっからかんなので動けません。あの、助け――」

「「ちょっ――!」」

 

 思わず突っ込み声を上げる二人。そして圭はめぐみんの首根っこを掴むと、その場を離脱。

 

「た、助かりました……」

「いや、それは良いんだけど!」

 

 まさか、一発でガス欠になると思っていなかった圭は突っ込みをいれようとして――。

 

「……うん、あの威力ならむしろガス欠にならない方がおかしい、よね?」

 

 そういえば、と納得していた。それはともかくとして……。

 

「カズマくん! とりあえず、こっちはどうにかするから、アクアさんの方は任せるよ!」

「……おう!」

 

 本来、今回圭は手を出すつもりはなかった。圭とカズマたちがパーティーを組んでいない以上、倒してもクエスト討伐数に換算されないからだ。

 しかし、いまはそんなことを言っている場合ではない。だが、めぐみんというお荷物を抱えている状態ではサックスによる攻撃、ならびに悪魔召喚ができない。もちろん、彼女を下ろせば良いだけの話だが、そうして下ろした瞬間カエルに食べられたら、さすがに目覚めが悪い。だから、彼女は別の方法を選択する。

 

「この……!」

 

 サックス以外の武装であるハンドガン。デザートイーグル50AEを抜き放つ。

 

 ――ガォン、ガォン、ガォン!

 

 それを()()で連射する圭。むろん、普通の人間がそんなことをしようものなら反動でとんでもないことになるだろう。

 しかし、圭は生命エネルギーであるMAGで全身を強化し反動を抑え込んでいる。

 そして、そんな化け物ハンドガンで狙われたカエルの末路など考えるまでもなく……。

 

 ずずぅん、と地に沈むジャイアントトード。いくらモンスターといえど、ただの生き物が耐えきれる筈もなく絶命する。

 

「……焦ったぁ」

 

 予想外の出来事をなんとか捌ききった圭は、そう言って息を吐くのだった。

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