僕はただぼっーとテレビを眺めている。
「ひまだなぁ」
そんなことを呟きながら頬杖を付いている、キッチンの方から痴話げんかのようなものが聞こえてくる。
「それはシオンが溶いた卵だよ!」
「ち、ちがうよ…それはあてぃしが溶いたやつだよ!」
「も~~あくあちゃんの泥棒だよ!」
「ち、ちがうもん!これはあてぃしのだもん!」
会話の内容からも溶いた卵を巡って争っているのは分かるんだけど、そんなことでも争わなくてもいいんじゃないかなぁとはちょっと思ったりする。だけど、ここで僕が変に声を掛けに行ったら余計に揉めちゃう気がするんだよな。
まず、なんであくあ姉さんやシオン姉さんがキッチンにいるのかというとそれは僕の一言が原因だった。それは何か考えずに「オムライスとか食べたいなぁ」なんて言ってしまったから。それが姉さんたちの耳に入っちゃって…今の現状になった。
するとキッチンの方から「できたぁ~」という声が聞こえてきた。そして…あくあ姉さんが作ったオムライスとシオン姉さんが作ったオムライスが運ばれてきた。
見た目だけを見たら…あくあ姉さんは手作り感が満載という感じでシオン姉さんのは…本当に完璧みたいな感じに移る。
「それにしても…そんなに見つめるのを止めてくれませんか?姉さん」
「え~弟くんの感想が聞きたいんだもん。それにシオンのオムライスを弟くんが食べると思うと嬉しくって」
「そ、そうなんですかぁ…」
さすがに見られていると緊張するけど、食べないと冷めちゃうし。僕はまず、シオン姉さんのオムライスをスプーンですくって口に運ぶ。
「おいしいです!」
「うれしいなぁ~」
「本当に美味しいですよ。見た目通りの美味しさ…いや、それを上回っているかもしれないです。普通にお店でで出来たとしても何も疑わないです」
まさかシオン姉さんがこんなに料理が上手だとは思っていなかった。もちろん、シオン姉さんが料理が得意なのは知っていたんだけど。
「弟くんにそう言われると…シオンはとっても嬉しいよ」
シオン姉さんは満面の笑みでこっちを見ているからちょっと恥ずかしい。
「あ、あてぃしのも」
「あ、そうですね。あくあ姉さんのオムライスも食べさせてもらいますね」
まず、あくあ姉さんが料理をしていることに驚いた。正直、子供の頃から一つ屋根の下で暮らしてきたけど、あくあ姉さんが料理をしているところを見たのは本当に数回しかない。それに一度だけ…火事になりそうになったこともありましたし。
あくあ姉さんのオムライスをスプーンで一掬いして口に入れる。そして咀嚼していくと…同時に…僕はスプーンを落としてしまった。
「ど、どうしたの…!?」
「あ、あくあちゃん!なにか変なもの入れてないよね!?」
「…い、いれてないよ…」
え…なにこれ……
「美味しいです!!」
「え?」
「あくあ姉さんのオムライス、美味しいですよ!見た目はちょっと手作り感がありますけど、味は美味しいです!」
手作り感があるとは言っても…そこまで不格好ではないですし。うちの姉さんたちとこんなに料理上手かったんだ。今まで一緒に暮らしていたのに全然知らなかった。
「な、なんだぁ……弟くんも心配させないでよ。シオンはあくあちゃんが何か変なものを入れちゃったんじゃないかと心配になっちゃたじゃん」
「す、すいません」
まさかこんなに美味しいとは見た目だけでは思わなかった。見た目が全てではないと改めて思わされた気がする。
「…おいしい?」
「はい!とっても美味しいです!あくあ姉さんも疑問に思うなら食べてみてくださいよ」
「…う、うん」
あくあ姉さんもスプーンで一掬いして口に運ぶ。そして何度か咀嚼した後に…目が輝きだした。味見だってある程度はしただろうし、さすがにオムライスを作るのが初めてって訳でもないでしょうし、自分の味ぐらいは分かっているものかと思っていたけど、あくあ姉さんの反応を見る限りはいつもよりも確実に美味しく仕上がっている感じですかね。
「お、おいしい!」
「美味しいです。あくあ姉さんって料理上手だったんですね!」
「………う、うん……///」
「あくあちゃんだけずるいよ~シオンのオムライスは~?」
「シオン姉さんのオムライスも美味しいですよ」
「え~~あくあちゃんのよりもおいしい?」
「そ、それは…どうですかね。どっちも美味しかったですし」
ここでどっちが美味しいとか言うと絶対にどちらかを傷付けてしまう。ここは間を取って…穏便な形で終わりにしたい。
「あ、あてぃしの方が…お、おいしいもん…」
「え~シオンの方が絶対に美味しいよ!」
この二人の言い争いを眺めながら僕はどっちのオムライスも「美味しいなぁ」と思いながらどんどん食べていくのだった。