僕の姉さんはとても心配症だったりする。すいせい姉さんとアズキ姉さんとは別々に住んでいるので顔合わせることは少ないけど、それを補うために通話をすることや連絡はかなり頻繁に行っている。
そして少しでも僕の連絡が遅れると―――――――
『ねぇ、何かあったの!?』
『今すぐに行くからね!』
という感じのメッセージが送られてくる。なので僕は姉さんたちの連絡に関してはかなり注意を払っている。僕は姉さんたちの『行く』とかはただ言っているだけじゃなくて本当に来てしまうことを知っているから。
それは僕が一人暮らしを初めて…まだ数日しか経っていない頃のこと。さすがにまだ学校生活とバイトと一人暮らしという環境に慣れていなくて連絡が遅れてしまったことがあった。
ちょっと嫌な予感がして…速足で家に帰るとそこには姉さんたちがいた。
「も~お姉ちゃんたち心配したんだよ」
「ご、ごめんなさい……ってやっぱり来てましたか」
こんなに連絡を返さなかったとなると…家に来ちゃいますよね。
「…すいちゃんは弟くんに何かあったんじゃないかってすっごく心配で…」
「ごめんなさい。これからはしっかりと連絡を返すようにするので」
という感じのことがあった。それぐらいに姉さんたちは心配症。ちょっと過剰すぎるかなぁとは思うもののそれも姉さんたちの優しさなので何にも言えない。
そして社会人として働いている今でも定期的な連絡は続いている。これはいつ終わるんだろうかと思ったりもするけど、たぶん終わらない気がする。姉さんたちの心配性は変わらない。
上司の方から一回でキミのことを呼んでいる人がいるという意味の分からないことを言われたので、僕は仕方なく一回へと足を運んだ。そしてそこで目にしたのは姉さんたちが受付の人たちに詰め寄っている風景。というかほぼすいせい姉さんが。
「や、やめてください!姉さん!」
「あ……お、おとうとくん~~」
「よ、よかったぁ…」
すいせい姉さんは飛びついて来て、アズキ姉さんは胸をなでおろしている。
「なんで姉さんたちがこんなところに来ているんですか?」
「だ、だって…弟くんの既読が付かないから」
携帯を確認してみると確かに姉さんたちから連絡が来ていた。でも、さすがに仕事中だったので確認しなかったというかできなかった。
「いや、それにしても弟の職場にまで来ちゃうなんて」
「すいちゃんたちは弟くんに何かあったら嫌なの。だから小まめに連絡を取ってるし、何かあったら絶対に駆けつけなくちゃいけないから」
それにしても…じゃないですか。さすがに社会人になってずっと携帯を見ているというわけにもいかないですし。
「アズキは弟くんが無事だったなら…それだけでいいよ」
そしてその場はこれ以上、騒ぎならないように帰ってもらった。
それからは普通に仕事をして、いつものように帰り道を歩いていると目の前に姉さんたちがこちらにむかって手を振っていた。
「おとうとくん~~」
「帰ったんじゃないですか?」
「ううん、弟くんが帰るまで待ってたんだよ」
こういうところがあるから無碍に出来ないんですよね。姉さんたちも悪気があってやっているわけではないので。
「姉さんたちの気持ちはうれしいですけど…もうちょっと僕を信用してください。僕は大丈夫ですから。そう簡単にくたばったりしませんし」
「で、でも…アズキは心配だよ。弟くんは大人だし、もう一人で何でも決められる年になっているのは分かっているけどやっぱり心配で」
「すいちゃんは心配だよ。お姉ちゃんが弟のことを心配しちゃいけないの。いつまで経ってもすいちゃんにとっては弟だし、心配なの。なにかあったらすぐに助けに行ってあげたい」
二人の行動の根本にあるのはやっぱり…『心配』なんですよね。僕がちょっと頼りなさ過ぎて二人が心配しなくちゃいけない対象にいるんだと思う。もっと自分が大人で一人で大丈夫というところをしっかり見せられれば何か変わっていたのかも。
「少しずつ僕も頼りになる男になるので…少しずつ姉さんたちが『大丈夫』だと思ってもらえるように頑張ります」
「え~~弟くんはそのままでいいよ。すいちゃんは弟くんの『王子様』になりたいもん」
「ど、どういうことですか?」
「弟くんと一緒にいるのはすいちゃんたちだってこと」
すいせい姉さんが言っている意味はまるで分からない。折角、僕がちょっとでも頼りになる男になろうと決意を口にしただけなのに。
「アズキも弟くんといたい!」
「あ、あずき姉さんまで!?」
「アズキだって弟くんを守るし、お姉ちゃんとしてずっと一緒にいるもん」
僕にはこの二人の姉さんのことは理解ができないかも。
そんなこんなことを考えながら僕とは姉さんたちと家に帰るのだった。