「今日って休日っスよ」
「そうですね、休日です」
「ちょこのこと置いていくの…」
「いや…そういうことではなくて」
「んなたん…ねむい」
「まだ朝も早いですしね」
「あたしから逃げられないよ」
「…逃がしてください」
こんなやり取りを…朝6時の玄関でやっている。僕としては早く外に出たいけど、四人の姉さんたちがそれを阻止すべく、僕の服とか体を掴んでいる。
「んーなたんとあそぶの」
「そうっスよ!!スバルたちと遊ぶって約束していたじゃないっスか!!!」
確かにスバル姉さんの言うように今日は…土曜日。何も予定が入ってなかったので買い物の約束を姉さんたちとしたのだ。それは覚えているし、忘れているわけではない。
でも、急にどうしても外せない急用が出来てしまったのだ。
「だから…さっきも説明しましたが、どうしても外せない用が…」
「なに?あたしらと遊ぶよりも大切なことがあるの?」
「ちょこたちとあそぼうよ~」
この姉さんたちは簡単に食い下がってくれない。もちろん、今回に関しては僕が百パーセント悪くて反論の余地はないし、するつもりもない。批判は甘んじて受け入れるつもりだけど……。
「ちょっと今回は勘弁してくれませんか?」
「だぁめ…んなたんからはなれちゃ」
ルーナ姉さんは僕の腕を強く抱きしめたまんま放してくれない。まだ寝起きなので…眠そうなのに…。
「頼みますよ。後で必ず埋め合わせはするので、今は離してくれませんか?」
「やだもん!!んなたんははなさない!」
「ぼたん姉さん、どうにか助けてくれませんか?」
「…今回は弟くんの味方は出来ないかな」
「そ、そんなぁ…」
「あたしも弟くんと遊びたいし。そのために今日一日オフにしたんだし」
姉さんたちも忙しくて全員の予定を合わせるのはとても難しいのは僕も知っている。毎日、忙しそうにしているのを一番近くで見てますし。そして今日はかなり前から姉さんたちで予定を立てていて、この日だけは丸一日休みを貰った。
「…本当にごめんなさい…」
「そ、そんな風に謝られると…す、すばるも悪い気がしてきた…」
そしてやっと放してくれそうな感じになったと思ったら…どうやらそうでもなかったようでまたルーナ姉さんの握る力も強くなってくる。
「やっぱり…無理かも」
「え…」
「んなたんもはなさない」
「え…」
「す、すばるも一緒がいい」
「…え……」
「ちょこもあそびたい!」
「……え」
次の瞬間にスバル姉さんとちょこ姉さんとぼたん姉さんが僕に抱き着いて来る。それぞれ的確に体の部位を抱きしめて来るので身動きが取れない。さすがに男でも女性四人に抱き着かれたら…どうしようもできない。
「…は、はなしてください!!」
「スバルはぜっっっったいにはなさない!!」
「ちょこも!」
「んなたんも!」
「あたしもその流れにのって…はなさない!」
そしてさらに抱きしめる力が強くなっていく。こうなってくるとどちらにしても姉さんたちを引きはがすのに時間も掛かるし、説得するのにも時間が掛かる。それに姉さんたちもこの日のためにオフを取ってくれている。
「はぁ…仕方ないですね」
「それじゃあ?」
「今日はお断りの連絡を入れますよ。さすがにこれじゃ行けませんし、姉さんたちは死んでも放さない感じですしね」
僕の言葉に特に三人は喜んでいて、もう一人はそんな三人のことを見守っている。僕は見守っている、ぼたん姉さんに話し掛けた。
「ぼたん姉さんは味方してくれると思ったんですけど」
「うん、普段なら弟くんに味方してあげてもよかったんだよ」
「ではなぜ?」
「だってあの三人が昨日の夜からさ、「明日は皆で遊園地とかいいかな」「ちょこはジェットコースターがいい!」「んなたんは…のんびりしたやつがいいのら」とか話しているのを聞いちゃってるからさ。さすがに今回はね。あれだけ楽しみにしていたし、今日ぐらいはリフレッシュさせてあげたいと思うしね。最近色々と立て込んでて皆忙しかったしさ」
そんなに楽しみしていたんですか。それはぼたん姉さんの気持ちも分かる。それなら僕を引き留める時の姉さんたちの必死さも理解はできる。
「そうなんですね」
さすがにそんなことまで聞いちゃったら…行くしかないですね。
「それで今日はどうするんですか?」
さっきの話を聞く感じは遊園地で決まりみたいな話ですけど。
「これから遊園地にGO!」
「え~ちょこは水族館がいい~」
「んなたんはげーむがいい~」
見事にそれぞれのしたいことが違う。昨日の話を聞く限りは遊園地で決まりみたいな感じだと思っていたんですけど。
「なんでだよ!みんな、昨日は遊園地で賛成みたいな雰囲気だったじゃん!!」
「いや、やっぱりちょこは水族館の方がいいかなぁって」
「んなたんはゲームがいいのら!!」
「いや、どう考えても遊園地だろ!」
「水族館でしょ!」
「ゲームをやるのら!!」
それからこの三人は午前中ずっと揉めてて…最終的には遊園地に行くことになったのであった。
感想があれば